MAGNA HISTORIA

The Life and Opinions of Ando Rei 安藤麗の生活と意見




バッハのCDも数十枚聞いて解説書にもすべて目を通していれば、いやでも多少は知識がついてくる。

このCDは1724年にライプチヒで演奏されたコラール・カンタータ4曲、BWV 62、139、26、116を収める。

櫻田亮氏の清冽なテノールが素晴らしく、特に最初の3曲にはテノールが活躍するアリアがあり、コロラトゥーラが見事に歌われる。

BWV 62「来たれ、異邦人の救い主よ」は、冒頭が切羽詰まった雰囲気のオーケストラの伴奏に乗せて歌われ、シリアスな曲調が印象的なのだが、内容的にはイエスの到来の喜びへと至る。

個性的なのはBWV26の「嗚呼、いかに儚く、いかに虚しき」で、急速なテンポで流れるような音型が繰り返される冒頭や、3本のオーボエと通奏低音を伴うバスのアリアが聞きごたえある。
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ここ数日毎日聞いているのはこちらの教会カンタータのCD。

バッハが悲しい、暗い曲を書くと、それは非常に内省的で深く重いものになる。バッハの曲のそういう雰囲気が昔から大好きで、他の作曲家にそれを求めてもバッハにはかなわない。

カンタータのBWV 39の冒頭が受難曲の一曲目のように壮大で深く悲しく、感動的。「飢えた人にはあなたのパンを裂いて与えなさい」という歌詞で始まるのだが、その歌詞を歌わせるのにこんなにも憂いに満ちた音楽になるところがよい。とてもよい曲。

収録曲はその後BWV 187、129、1045と続くが、後ろ2曲は3本のトランペットとティンパニを伴ったとても華やかで明るい楽曲。

BWV 1045はシンフォニアニ長調という独奏ヴァイオリンと管弦楽のために書かれた一楽章の協奏曲のような作品。ヴァイオリンが技巧的なパッセージを繰り広げ、管弦楽も祝祭的な雰囲気に満ちた作品なのだが、これはどうもカンタータの冒頭の1曲として構想されていたのではないかと見られている。この時代のヴァイオリン協奏曲というと、オーケストラは弦楽のみか、せいぜいのところ木管楽器が少し加わる程度なので、協奏曲として捉えるなら、トランペット3本とティンパニを伴うのは随分と大規模なもの。
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ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))
H・P・ラヴクラフト
東京創元社
1974-12-13



ラヴクラフトの名前を最初に覚えたのは大学生くらいの時だと思うのだが、実際に読む気になったのはここ数年のこと。クトゥルー神話云々というイメージができてきたのも、実際に読む前に、本田透氏の著作の中で言及されているのを読んでからだったと思う。その後、『這いよれ! ニャル子さん』が話題になって、知人らがその話をしているのを見かけたりするうちに、実際読んでみようかなと思うようになった。

好きな人は凄くはまっているラヴクラフト作品だし、その世界が神話化されて次々と色々な人達の創作に影響を及ぼしているのはわかる、が、自分がそこまで耽溺できるかというと、そういう感じでもない。が、しばらく読み続けてはみようと思っている。別個の作品それぞれに通底する世界観があって、たくさんの物語の断片が増殖して、壮大な神話化を遂げる仕組みは興味深い。

とりあえず、創元推理文庫の全集一巻を読んだ感じだと、この中では「インスマウスの影」が一番よかった。不気味な町で異形の存在に常に追われ続け、そこからの脱出劇がサスペンスとしてハラハラさせるものがある。
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昨日に続いて、また鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハのカンタータ全集をじっくりと聞いている。シリーズ36弾は1725年にライプチヒで演奏された4曲、BWV 42、103、108、6。

最初のBWV 42は30分弱あって長大なんだが、これはアルトのアリアが13分強と飛びぬけて長い。美しく聞かせる演奏だけれども。

BWV 103はリコーダー(フラウト・ピッコロ)が大活躍するのだが、特に冒頭の息継ぐ間もない分散和音のパッセージが見事だった。

印象的なのはBWV 6で、冒頭が聞き覚えのある旋律で、これはヨハネ受難曲の最後の感動的な重厚な合唱とよく似ている。かなり重々しいが、テクストのもとになっているルカ伝24章13−35節も、イエスの死後に、弟子が一時だけ復活したイエスに出会うという感動的な物語になっている。このCDで特徴的なのは、この曲でヴィオロンチェロ・ダ・スパッラという、大きめのヴィオラのような楽器をストラップで結んで首にかけ、ヴァイオリンのように奏する楽器を使っているところ。

この楽器は実際に演奏しているところを別の楽団の演奏会で見たことがある。でかい楽器を首からぶら下げているので、そんなに見栄えがかっこいいものではないのだが、チェロのように足の間に挟んで弾くよりも複雑な音型を素早く奏でやすいかもしれない。
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色んな演奏家がバッハのカンタータに取り組んでいるのだが、最近私は鈴木雅明さんの指揮するバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏が一番好きな気がしてきた。バッハの時代と同じように、合唱のソプラノやアルトのパートを少年合唱団に歌わせ、さらにはソロパートもボーイソプラノやボーイアルトを用いる演奏もあって、それは確かに好きだし、悲しい曲調には女声よりも少年の歌声の方がより切なく響き(と感じるのは個人的感覚?)、その魅力は代えがたいとは思う。が、なにぶんバッハのカンタータは凝った作りになっていて、技術的にも高いレベルを要求されるため、少年合唱団の歌唱にはどうしても時に力量不足を感じることがある。

BCJの場合、アルトはカウンターテナーを使い、このCDではソロをロビン・ブレイズが務めているが、ソプラノは女声。生き生きとしたテンポ感もいいし、声楽も器楽もとりわけ透明感があって美しい。段々、BCJのCDの所蔵枚数が増えてきた。

BWV 36は転用を繰り返して作られた楽曲だが、曲調は中々魅力的。その他、BWV 47と27を収録。BWV 27はアルトのアリアの別バージョンも収録されていて、オルガンの明るい旋律が光る。
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すきになったら
ヒグチユウコ
ブロンズ新社
2016-09-14



いい絵本を読んだ。少女とワニの愛。美女と野獣のような、ボリス・カーロフの「フランケンシュタイン」に出てくる怪物と少女のエピソードのような組み合わせ。どことなく切ない雰囲気もあるものの、温かくまとまる。絵も話もよかった。
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バッハ父子のトリオ・ソナタ集
ニコレ(オーレル)
日本コロムビア
2005-12-21



フルートの名手オーレル・ニコレとオーボエの名手ハインツ・ホリガーが通奏低音と一緒にヨハン・ゼバスティアン及びその次男カール・フィリップ・エマヌエルのバッハ父子のトリオ・ソナタを演奏したもの。豪華な競演であるし、この二人ならいい演奏は間違いないだろうと期待する。

J. S. バッハの一曲目ニ短調BWV1036は実際は他の作曲家が書いたんじゃないかと言われて、実際J. S. バッハらしくない展開をする曲なんだが、これはこれで聞いていて面白かった。たとえば第2楽章最後で通奏低音部がソロになって終わるところとか。

二曲目ト短調BWV1029はヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・チェンバロのソナタをフルートとオーボエを旋律楽器として編成し直したもの。ガンバのために書かれているが、その前にこのような原曲があったのではないかと推測されているようだ。

次のトリオ楽章ヘ長調BWV1040は約一分半の短い一楽章。カンタータ第208番のアリアから作られたようだ。その後さらにカンタータ第68番へと転用された。

後半はC. P. E. 作品。ニ長調のWq. 151とイ短調Wq. 148それぞれ、C. P. E. だけれどそこまでエキセントリックな曲調ではなく、比較的落ち着いて品のある楽曲であった。後者の第3楽章は動きが激しくて面白い。いわゆる多感様式が出ている。なお、C. P. E. の指定ではフルートとヴァイオリンを旋律楽器に使用することになっており、ここではヴァイオリン声部をオーボエが担当している。
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最近、多分バッハと同じくらいの頻度で聞いている欅坂46のアルバム。初めて「不協和音」を聞いた時は、これは私のことを歌っているんじゃないかと思うくらいで、その内容に感動したね。本当に、僕は嫌だ!と思うことがたくさんあって……

ただ、アルバムに関しては購入をしばらく控えていた。収録曲をそれぞれの一部ではあれ全曲視聴してみて、シングル曲以外はいまいち力の入らない棒読みのような歌い方が多いものだったから、どうなのかなと思っていたのだ。

が、気に入っている曲もあって、とくに今泉佑唯(以下ずみこ)ソロの「夏の花は向日葵だけじゃない」が聞かせる歌なので、今回はType-Bを購入。欅のレギュラー番組で放送された幕張メッセでのライブ公演でサプライズ復帰してこの曲を歌って会場が騒然となった感動場面はよかった。ずみこの歌い方は聞きごたえがあって泣ける。題名の歌詞、名言だな。余談だが、この曲の雰囲気、若干西野カナっぽい気もする。

ただ、その他やはり全体的にはもうちょっと力というか声量がほしいなという印象。特別うまく歌ってくれと思っているわけじゃないが、力がきちんと入っていない歌い方なのが気になる。
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悲しみよこんにちは (新潮文庫)
フランソワーズ サガン
新潮社
1955-06-25



昔、サガンが人気を博した時代があったようで、サガンの小説は色々翻訳が出ている。作者が18歳の時のデビュー作がこれで、多分一番有名。主人公はセシルという名の少女。父親が女たらしでどうしようもなく、アンヌとエルザという二人の対照的な愛人が登場し、セシルとの友情やら軋轢やらが描かれる。あまり深い話じゃないというか、描かれるエピソードを通して登場人物が或は読者が何かを悟るでもない内容。登場人物の中では年長者で、精神年齢もそれなりのアンヌの描き方は段々味も出てくるのだが、あっけない結末をつけられてしまう。

深みのある話ではないが、ここに瑞々しい青春期の家族や恋愛に対する思いが示されているといえばそういうところはあるかもしれない。

訳文がかなり直訳調なのが気になった。無生物主語をそのまま主語として訳すような文章が多いし、「あなたがたには少しいらいらさせられるわ」なんて表現が出てくると、受け身の訳文にしなくてもいいんじゃないか、と思うが。

でも、なんか読んじゃった。
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この前著作を紹介したセプールベダと対立して論争したラス・カサスの本。最初はなんてひどいことをと思いつつ読み進めていたのだが、段々書かれている拷問が酷過ぎて頁を繰るのが辛くなるほどであった。正直、気分のいいものではないのだ。

訳者による解説が充実していて、この本が政治的に利用されてしまったこととか、ヨーロッパの他の言語に訳されて広まった際のことなど、受容の歴史的な経緯が興味深く書かれている。
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