ガムット・バッハ・アンサンブルの演奏会に行った。会場と曲目は以下の通り。

上野学園石橋メモリアルホール 2015年11月15日(日)15:00開演

カンタータ『イエスよ、今ぞ讃えられん』BWV 41
カンタータ『いざ来たれ、異教徒の救い主よ』BWV 62
マニフィカト ニ長調 BWV 243

一曲目のカンタータとマニフィカトはトランペットやティンパニが編成に組まれた華やかな曲。BWV 41にはチェロ・ピッコロによるオブリガートが指定されたアリアがあるのだが、それを今回、指揮の大槻カール晃士氏がチェロ・ダ・スパッラで演奏という珍しい機会に恵まれた。ストラップで楽器を肩に掛けて演奏するタイプのチェロで、多分普通のチェロより小さかったと思うが、しかし深みのある音色だった。

また、BWV 62も、この二曲と比べて編成は控えめであるが、冒頭が非常に躍動感のある重厚な演奏で、こういう演奏法で魅力的にできる楽曲であることが発見できた。救い主の到来を求める切実な訴えが迫りくる響きだった。

さて、プログラム終了後、大槻氏が聴衆へのお礼と「世界の平和のために短い曲を演奏します」という簡潔な説明を行い、アンコール曲が演奏された。

ミサ曲ロ短調のDona nobis pacem(我らに平和を与えたまえ)だった。

これが大変に感動的だった。演奏者も聴衆も先のフランスで起こった悲劇的事件という共通の文脈は持っていて、そこにあえて「この前パリで」とか「テロ事件が」という時事的、政治的問題の説明を加えず、この曲を演奏することが、かえって混じりけの無い切実な思いの強さを感じさせるものとなった。演奏後、私がお世話になっている演奏者にロビーで挨拶をしたのだが、このアンコール曲はやはり先の事件を受け、急遽決まったものだという話を伺った。演奏者も聞き手も、双方目頭の熱くなる体験であった。

バッハを演奏し、その音楽の普遍性を伝える者として、これがあるべき姿なんじゃないか、と感じ入った。