自殺について (角川ソフィア文庫)
ショーペンハウエル
角川学芸出版
2012-06-22



読んだ。私は、人生で初めて読んだ哲学書が岩波文庫に収録されているショウペンハウエルの『自殺について 他四篇』で、中高生の時だったと思うが、物凄く感激した記憶があり、これがきっかけで哲学書も色々手を伸ばすようになった。当時の私には難しいところもたくさんあって、多分よく分かっていなかった箇所も色々あったと思うのだが、その力強い文体で論理的にこの世界に生きる苦悩や、聖書に何の典拠もないのに自殺を糾弾する教会への批判を展開する内容に、大いに魅せられたのだ。私に大きな影響を与えた本を三冊挙げよと言われれば、必ずこれを挙げるくらい、強烈な印象を与えた本だ。

さて、この角川文庫版は岩波文庫版と重複する内容もあるが、そこに含まれていない小論も幾つか含まれ、厚みがぐんと増している。中黒の使い方に独特なところがあるが、訳文はこちらの方が口語的で読みやすい。ただ、岩波版の方が力強さはあるかなという気もする。

今になってこの本を読んでみて、あの頃の鮮烈な衝撃が蘇るかというと、蘇らなかった。そこまで生きることを絶望的に嫌なものとして捉えなくなっていいじゃないか、と思った。嫌な事ばっかりで生きるのは辛いという実感は私にもあるし、ショーペンハウアーの言うことに納得できる部分もあるのだが、ここまで本質的に人生が苦悩ばっかりとまで言うこともなかろう、と思うのだ。この世界において幸福を感じて生きるのは、意志の肯定も否定も何も考えず、哲学的認識が大いに欠けている生き方かもしれないのだが、かといってショーペンハウアーの考え方も必要以上に生きる不幸を強調しているようにも思うのだ。

多分、中高生の頃よりも今の私の方がこの本が理解できる。が、冷静に読んでみるとそこまで同調できないなというところも多々あるのだった。私自身の理解力も、考え方も、年月を経て変わっているのだろう。