昨年が生誕100年だった、ロラン・バルトの読みやすい評伝。バルトは思想が変遷していくので、一つの○○主義という言葉で言い表すことができないのだが、それにしてもその一生を概観してみると、よく言えば興味・関心の幅が広いものの、一つのものを完成できないままに別のものに興味が移ってしまう、悪く言うと移り気なところもあるのかな、と感じた。あるテーマを見つけてそれで博士論文を書こうと一旦は決まっても、やがて別のものに興味が移って完成しない。新しいテーマで改めて書こうと思ってもやっぱり完成しない。興味の幅が広いからこそ、様々な分野で面白い評論を書いているのは確かだが、中途半端になってしまう部分もあるんじゃないか。

やがて評論から小説の執筆へと向かうが、これもごちゃごちゃ考えるばかりで書けないで終わる。その考えるばかりで完成できないところが、さらに彼の病弱だった頃のエピソードや、物柔らかそうな雰囲気(実情は詳しく知らないけれど)などと絡み合う、というか、よく噛み合っているようにも感じた。ものの言い方とか、ちょっとペダンチックな言葉の綾に酔っている感じもする。で、ふわっとして完成しない。

個人的にバルトというと、昔、『テクストの快楽』を読んだ時は、何言っているんだか、というよく分からなかった印象が強かったが、『表徴の帝国』は面白く、異文化コミュニケーション論的視点から捉えても面白い内容だった。