バッハのチェンバロ協奏曲第4番イ長調 BWV1055、同第5番ヘ短調 BWV1056、同第6番ヘ長調 BWV1057、そして同第7番 ト短調 BWV1058をトレヴァー・ピノックのチェンバロ と指揮、イングリッシュ・コンサートが演奏したCD。このアマゾンのジャケット写真は間違っていると思うが。

瑞々しい演奏なのだが、録音は1980年。CDにはADDの表記、つまり録音はアナログだったものをデジタルマスタリングしたもの。結構昔の演奏なんだな。

昔からバロック音楽が好きだが、最初はどうも古楽器の音が好きになれなかった。軽くて、弱弱しいと感じていたし、楽器によってはモダン楽器とあまりにも音色が違いすぎて、ある音色から親しみを覚えた楽器に対しても、それが古楽器になれば、また別の楽器の音色を聞くような違いを感じたのである。

実は人生で最初に買ったCDが下のリヒターによるバッハのチェンバロ協奏曲集で、いまだにその重厚な迫力ある演奏が聴く人に与える感動は大きいだろうし、私もこれでバッハの曲は素晴らしいと感嘆した。けれど、もうこんな重々しい弾き方でバッハを演奏する人もいないだろう。これはこれで価値を持っているとしても、古楽演奏に関する研究も進んだ今、リヒターを見習って演奏するような時代ではなく、その意味ではあくまでも過去の遺産として、その価値を輝かせているのかなと思う。


そのリヒターの世代の後、といってもこのピノックの演奏がもう40年近くも前のものになってしまった。

さて、今では古楽器の演奏もそれほど抵抗なく聞くようになった。ピノックの盤も今でも全く古びない演奏で、楽しく聞ける。

バッハのチェンバロ協奏曲は、ヴァイマルやケーテン時代の旋律楽器のために書いた協奏曲をライプツィヒ時代になってチェンバロ協奏曲に編曲したものと考えられている。だが、この編曲の以前、ケーテンにいた頃、ブランデンブルク協奏曲第5番を書いており、これがチェンバロ協奏曲の先駆けのような作品。ただ、個人的にブランデンブルクの第5番は様式的にそれほど気に入っているわけではなく、というのも、あまりにも第1楽章のチェンバロ独奏カデンツァが長くて、均整が取れない心地がするのだ。いつまで続くのか、これは、という気分になってしまう。この第5番はチェンバロ協奏曲風だが、一応チェンバロはヴァイオリンとフルートと共に独奏楽器群の中の一つなので、そういう中で目立ちすぎというか暴走気味な感じがしてしまう。

これと比較して聞くと興味深いのが、ここで紹介しているピノックのCDに収録された、ブランデンブルク協奏曲第4番を編曲したヘ長調の協奏曲で、原曲のヴァイオリンパートはチェンバロに置き換えられ、2本のリコーダーと共に独奏楽器として活躍する。チェンバロも独奏楽器として活躍しているとはいえ、それでも曲のバランスとしてはこちらの方がよいと感じる。ピノックとイングリッシュ・コンサートの演奏も明るく躍動感があってよい。