読んだ。良かった。

何やら辛いことを抱えて帰宅した女性、辛くて悔しくて悲しくて、もう死にたいのだが、死神はそんな彼女を容易に死なせてはくれない。通り一遍の慰めの言葉もかけられるが、そんな生温い言葉は強い希死念慮を抱く彼女には通用しないし、その言葉の生温さに反駁する彼女の言葉の方が説得力がある。

死神は壁のすぐ向こうに存在し、彼女のすぐ近くにいるのだが、その壁は薄いようで決して破れず、彼岸に渡ることはできない。最後、とりあえずは少し冷静さを取り戻して彼女は眠りに就くが、果たしてこの「やさしい死神」が何か救いをもたらしてくれているのかというと、この本にもしも救われる読者がいるのならそれはそれでよいけれど、私には残念ながら結末が物足りなかった。結末の前までは割と好感が持てるのだが、結局、薄い壁の向こうに死神は寄り添っているのかもしれないが、さんざん泣いて怒って静かになって眠る彼女の問題は何も解決されていないし、死神が彼女の考えを変える何かを与えたようにも思われないし、最近はやりのように言われる「認知の歪み」といったものが修正されているようにも思えず、これではまた同じような問題が再発してしまわないだろうか、と思ったのだ。それなら果たしてこの死神は本当に「やさしい」のか。これからも過酷な人生を歩むことを止めさせてはくれないのだ。

主人公が常に死を思うことで死神と共にいる、それによってつまりは孤独ではない、ということになるのか……生きづらさを抱えながらもなお生きなければならない人々に、この本の結末で何かが与えられたらという期待があったのだが、私にはどうしても希望らしきもの、あるいは、この辛さとうまく付き合うヒントのようなものが見出せなかったので、そこが残念だった。だけれど、その前までのこの辛い人生の不条理と必死に戦ってきた、それでその辛さから絶望に泣き、怒る女性の主人公の描き方には大変心打たれる部分が多く、また、決して多くない言葉ながらも、必要十分な言葉によって主人公の思いがしっかりと伝わるように表現されているところがよかった。

印象に残る、大人の絵本であった。