MAGNA HISTORIA

カテゴリ: マンガ



『おろち』全4巻の最終巻。心を揺すぶられた。まあまあ面白いマンガは世の中にそれなりにあるけれど、本作品のようにその凄さに圧倒されることはそうそうない。これも一種の感動といえる。

第4巻は「眼」と「血」の二作品。

「眼」は殺人の冤罪を被った父の無実を晴らす、盲目の娘の執念と努力の物語。これは本当にやるせない、社会や組織の不正義にまつわる物語であり、社会派サスペンスといった趣の作品。

「血」は「眼」の2倍の分量で、ある姉妹間に生まれた怨念、恨みにまつわる物語を数十年に渡って描くもの。ここに至って、それまで専らストーリーテラーとしての役割を担っていた謎の女性おろちがこの姉妹の物語の中心部に関わる。それまでの謎めいた素性のわからない女性であったおろち自身の魅力がここで光る。

常に姉と比べられて育った妹の劣等感に起因する恨みの強さが恐ろしく、年を重ねた彼女はもはや鬼。また、終盤の方では病床に臥した姉の形相の怖いことったら、これぞ楳図タッチの怖い顔。そして、とんでもないどんでん返しが起こることとなり、この大きなそして無残な展開は、あたかもギリシア悲劇のような悲惨な急展開であった。全4巻を締め括る、壮大な悲劇。凄かった。

凄かった!
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時々楳図マンガを読むのだが、中でも『おろち』は話の密度の濃さがすばらしい。第3巻には「ステージ」と「戦闘」の2作が収録されているが、どちらも読みごたえのある、重厚な物語である。

個人的には前者が気に入っている。幼少期に父を車でひかれ、その犯人がある芸能人であるのを目撃したにもかかわらず、子供の証言は誰にも信じてもらえない。少年は長い時間をかけて着実にこの犯人に近づき、復讐を遂げる壮大な内容。父を失った少年の途切れることない執念と、完全な復讐劇が凄い。

「戦闘」も長い時を経ても収まらない人間の怨念・執念がテーマの中にあり、親切すぎる父親の性格の背後にある、第2次大戦中のガダルカナル島でのエピソードの描写が悲惨極まりない。極限状態におかれた人間の行動や心理に切り込んだセリフには迫力がある。

とても文学的な内容であるとも感じた。
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今まで、ミステリに詳しい方が「じけんじゃけん!」は面白いとおっしゃる評判は聞いていたが、ちゃんと読んだことがなかった。『ヤングアニマル』最新号に収録されている「じけんじゃけん!」を読んでみて、なるほどこういう面白さなのか、というのが分かった。ミステリ好きには多分嬉しい、ミステリ関連の蘊蓄をヒロインが広島弁で語り、そのクールな佇まいと対照的にちょっとデレたりボケていたりする。

面白いなと思った。色んな作家名出てきたな。

みくりんの巻頭グラビア、もう正月だ。



単行本、もう4巻まで出ていたのか。
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『からかい上手の高木さん』がテレビアニメ化されて、秋葉原と渋谷にはそれぞれ期間限定のコラボカフェやグッズショップもオープンし、以前から原作を気に入って読んでいた身としては、嗚呼自分の目は正しかった、と思いあがってはいけないが、とにかくこれはよかったと思った。

本書はその『高木さん』の作者である山本崇一朗氏の短編集であるが、ほんわかした雰囲気の中で胸をきゅんとさせる『高木さん』と比べると、ギャグマンガとして激しさが増していると感じた。好みの問題もあるかもしれないが、ツンデレのツンの部分が強ければ強いほど、デレが出た時のふり幅は大きくなるので、特に表題作は『高木さん』ぽい絵柄だがお強い。
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全巻読んだ。どこの国か分からないが外国人のスイさんと日本人の旦那太田学の初々しくほんわかした生活を描き、折々のイベントごとなどが挿話として挟まれる。ずっと日本語が不自由で寡黙なスイさんが、最後の2巻くらいで徐々に口数を多くしていった。最終巻で、ちょっと夫婦関係にすれ違いが起こるも初心に戻り、それに伴ってそもそもの二人の馴れ初めがようやく明らかにされ、再び関係が再構築される。

ただ、こんな二人がなぜ結婚にまで至ったのだろうという点が、いまいち消化できなかった。毎回、ほんわかいい雰囲気の話なのだが、この一点は宙づりになっている感じがする。特に最終話の、夫婦関係を改めて考え直すという問題には、結婚を決めたことへのエピソードがどこかに挟まれていないと、中々納得できないのではないだろうか。

ラブラブカップルのほんわか日常生活が中心なので、もちろんそこに限って言えば十分楽しめる。
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読んだ。以前よりずっと好きで読んでいる。

主人公の西片は同級生の高木さんにいつもからかわれるばかりで、逆にからかってやろうと考えても全てその考えはことごとく読まれて失敗するのだが、今回は最後にこの流れを変えてしまう。からかおうと考えるのではなく、不意にこぼした一言が高木さんの胸のうちを少し乱すのだ。計算しても読まれてしまうが、高木さんの予測不可能な範疇の、計算に基づかない発言が西片から発せられることで、どうやらこれからこの作品に新たな流れが始まろうとしているかのようであり、また新たなるときめきと悶絶を予期させる。
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読んだ。高校生が居酒屋でバイトすること自体はどうなのかな、と思うところはあるが、高校進学のために一人暮らしをしている主人公、宮原もみじが温かい仲間に支えられて得意な料理をふるまい、お客さんも本人も笑顔になる温かい話である。

美味しそうな料理を作っていて評判もよく、店の雰囲気も安らげるいい感じで、嗚呼、美味しいお酒と料理を食べに行きたいものだ、という気分になる。

主人公の祖母の話や、何やら寂しい事情を抱えている同じ学校の友人との関係とか、今後どうなっていくのか、諸々期待させる。
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『干物妹! うまるちゃん』のスピンオフ作品。秋田から一人東京の高校に行くため、戸惑いながらも上京して暮らし始める海老名菜々の心温まる話だった。秋田のローカルネタ(ババヘラ・アイス、アベックトーストなど)やほんわかしたギャグを随所に交え、日常的ではあるがしかし、先に上京した兄を探すという大きな目的に向かって展開していく。

登場人物たちのローカルな常識が東京に来た時に通じない時に見せる反応が愛らしく面白い。そういう楽しみ方は都会的な感覚に浸り過ぎているからかもしれないけれど、実際この世代の秋田県民はどう思うのか、聞いてみたくはある。

最近、各地の方言に興味があって、ともすればどんくさいとか田舎臭いとか隠すべきものと見られてしまうこともあるが、語彙もイントネーションも私は聞いていて楽しい。意味が通じないレベルになってしまうと、確かに困る場面は出てくるけれども。

そういえば、最近好きな『くまみこ』もちょっと系統的に近い要素があるな。
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「観た人を悶絶と赤面の渦へと巻きこみ」という帯び文句に少し期待して読んだのだが、そこまで激しく悶える内容ではなかった。絵は綺麗で、温かみのある一話完結ものの話が多いのだが、あまりのこっぱずかしさや甘酸っぱさゆえに激しく悶絶する快感を求める向きにはちょっと物足りないかな。
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こういうの珍しいなと思って読んだ、マリー=アントワネットのマンガ、全2巻で完結。

主人公は女性の画家マリー・ド・ボヌール。彼女とマリー=アントワネットとの友情や、ルソー公爵との恋愛、アントワネットとルイ16世とのほがらかなやりとりなど、特に第1巻はゆるやかな4コマの連作で話が進む。権謀術数蠢くヴェルサイユ宮殿の人間模様が背景にありながら、アントワネットは非常に能天気で、人は悪くないのだが世間知らずで贅沢してしまう。

第2巻になってそれまでのゆるく冗談まじりの雰囲気はがらっと変わり、深刻なフランス革命の問題が劇的に展開する。第1巻のほんわかした贅沢な雰囲気が全て裏返り、王室の贅沢に怒りを感じる市民は反乱、血なまぐさい場面も出てくる。ロベスピエールも登場。ルイ16世の国民を思う気持ちは強いが、革命の波は収まらない。幽閉された国王夫妻の心理、子を逃がす場面の切なさなど、読みごたえがあった。
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