2017年10月10日
【舞台】 関数ドミノ（2017）
これだけ科学技術が発達した現代でも、まだまだ私たちが気付いていないこの世界の法則がたくさんあるはずだ。それが何かの拍子に突然私たちの住む世界にむき出しの姿を現す。その時私たちの中にそれに気付く者がいなかったら、その法則はなかったことになる。しかし気付く者がいたとしたら…。現実の世界とほんの背中合わせにある不思議な世界とのかかわりを、センス･オブ･ワンダーな視点で描いていく劇作家・演出家、前川知大の描くＳＦ的物語の中でも最もその考察が深いそんな作品「関数ドミノ」が、瀬戸康史ら若手の伸び盛り俳優や勝村政信・千葉雅子ら演劇界を支える演技派俳優が集結したキャストで上演されている。過酷な運命を背負う登場人物の中でも、「法則」に真っ先に気付いてしまう青年役を鬼気迫る演技で表現する瀬戸をはじめ、非科学的で狂気さえ帯びる考え方をあくまでも現実との境界線ぎりぎりに疾走する前川戯曲を真摯にそれぞれの身体にとらえながら描き出していく俳優陣の熱演もあって、東京・下北沢の本多劇場はまるで異次元に入り込んでしまったような得も言えぬ雰囲気に包まれている。演出は俳優でもある寺十吾。企画・製作はワタナベエンターテインメント。
舞台「関数ドミノ」は、２０１７年１０月４〜１５日に東京・下北沢の本多劇場で、１０月２１〜２２日に北九州市の北九州芸術劇場中劇場で、１０月２４日に大分市のホルトホール大分大ホールで、１０月２６日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、１１月５日に北海道網走郡大空町の大空町教育文化会館で、１１月６日に北海道北見市の北見芸術文化ホール中ホールで、１１月１０〜１２日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。右端が瀬戸康史（撮影・神ノ川智早）
【写真転載・無断使用厳禁】＝画像データはダウンロードできません
★舞台「関数ドミノ」公式サイト
イキウメは２００３年結成。主宰の前川は２０１０年に紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。２０１１年には優秀な戯曲に与えられる鶴屋南北戯曲賞を受賞。そして２０１２年の読売演劇大賞で大賞と最優秀演出家賞をダブル受賞するなど、戯曲と演出の両面で高い評価を受けている。
２０１４年には人気作だった戯曲が「太陽２０６８」として蜷川幸雄の演出で上演され、２０１６年には『太陽』として映画化。もうひとつの代表作として知られる「散歩する侵略者」が黒沢清監督によって『散歩する侵略者』として映画化され、フランス時間５月１７日に開幕した今年の第７０回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品されるなど、前川ワールドが劇団の外側にも大きく広がっている。
そして、当ブログでも２０１４年版の劇評を掲載するなど積極的に紹介してきた舞台「関数ドミノ」。２００５年に「イキウメ」が初演し、２００９年に再演。２０１４年にも再再演されている。前川やイキウメが快進撃を続ける原動力となった作品でもある。これまで劇団外での上演はなかった作品だけに、今回は大注目となった。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。事故車両のイメージ（撮影・神ノ川智早）
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きっかけは、とある都市で起きた奇妙な交通事故。
信号のない横断歩道を渡る歩行者のもとに、速度も落とさず車がカーブしてきたが、車は歩行者の数センチ手前で、あたかも透明な壁に衝突したかのように大破する。運転していた新田直樹（鈴木裕樹）は無事だったが、助手席に乗っていた妻が大けがを負い、意識不明の重体になっている。
事後処理を担当する保険調査員、横道赤彦（勝村政信）はこの不可解な事故に手を焼き、目撃者ら関係者を集めて検証を試みるが、さまざまな方角からの目撃証言を聴くことで、ますます不可解な雰囲気になる。
当然のことながら、結論の出ないまま解散となる。しかしある目撃者が奇妙な仮説を話し始めた。誰もが耳を疑いながらも、その仮説に引き込まれていく。
最初に仮説を語り始めたのは、真壁薫（瀬戸康史）。彼は日ごろからものごとを斜めから見るタイプで、結構きついこともはっきり言う。考え込むと世界がどんどん深くなっていってしまうところがあり、やや神経症的な部分を心配した母親から知人の精神科医、大野琴葉（千葉雅子）のクリニックに通わされているほど。
真壁は、交通事故現場にいた目撃者の中に、そんな奇跡を引き起こせる人物がいると考えた。それは左門森魚（柄本時生）ではないかと予想していたのだ。
仮説はこうだ。誰の目にも見えないが、車が大破していることから、何らかの固い物体が歩行者と車の間にあって、そこに衝突したのだと。それは誰かが瞬間的に創り出したものだと。強く望むことでそんなものを創り出すことができる人間がこの世には存在するのだと。それを「ドミノ」と呼ぶ、と。
一定の説得力を持ってはいるものの、単なる妄想のようにも思えるこの仮説。もちろん非科学的であり、世間が納得するとは思えない。結論を変えるほどの力は持たないまま、目撃者たちは自分たちの場所へと帰っていった。
しかしやがて、そういうドミノのような人間がいないと説明ができないようなことが次々と明らかになっていく。反応は様々だが、やがて関係者たちは「壮大な実験」へと歩を進めていく。それは奇跡の再現になるかもしれないし、取り返しのつかない大破局を呼ぶものかもしれない。
物語はわたしたちが決して足を踏み入れてはならない場所、しかし誰もが足を踏み入れたくなる場所へと私たちを運んでいく。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。真壁は自らの仮説にますます確信を強めていく。前方が瀬戸康史、後方が勝村政信（撮影・神ノ川智早）
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真壁と左門に焦点が当たるものの、自分の病気を治してもらおうとドミノに急接近する土呂弘光（山田悠介）や、真壁を強力に支持する秋山景杜（小島藤子）、左門に近い田宮尚偉（池岡亮介）、平岡泉（八幡みゆき）らも含めた若者たちの群像劇として物語は描かれており、さまざまな欲望が錯綜する中にも、未来への希望が見え隠れする。
２０１４年版よりも年齢設定が若い２００９年版の脚本をベースにしたことのメリットがうまく出ている格好だ。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。苦悩の色濃い若者たち（撮影・神ノ川智早）
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瀬戸はただ単に演技が巧いだけでなく、特にここ数年は、ややキャラクターの強い役やエッジの利いた役などにも果敢に挑戦していて、今回の真壁という役柄は安定した演技力と難役の経験による新しい引き出しの増加という２つがうまく活きた人物と言える。
真壁はまるで狂気にさらされているような様子を見せるものの、物語の真実がそこにどんどん寄っていくために、観客全体が彼の異常な世界に引き寄せられているような気分になる。
ゆっくりとしかし確実に核心へと近づいていく物語の構造の中で、瀬戸はその天性の表現力を大いに発揮している。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。熱演する瀬戸康史（撮影・神ノ川智早）
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柄本は、小説家志望の青年を自然体で演じている。自分の知らないところで、スーパーマンのように仕立て上げられる展開や、いつのまにか自分以外の人間が自分のなぞの力を利用しようと近づく秘密結社のようになっていく様をあ然として見守りつつも、とんだ「災難」としてなかなか受け止めきれない。柄本の一見ぼうっとした雰囲気の中に左門の火花が散っていく様子の表現はなかなかのもの。柄本の演技が作品の中で重要なポイントになっている。
山田は、物語の中盤から一気に表舞台に立つセンシティブな役柄をしっかりと表現している。人間の弱さと強さが如実に表れる役柄だけに試行錯誤はすさまじいものがあったに違いない。
池岡が演じる田宮も今回は存在感がくっきりとしている。せりふをきちんと空間に置いていく池岡の口舌の確かさが心地よい。
小島は既に数々の映像作品で注目されてきた逸材だが、朗読劇をのぞけば、まだまだ舞台経験は少なめ。それでも彼女が舞台映えするのは、感情をきちんとせりふに乗せられる能力の高さ。もっと頻繁に舞台に出てほしい存在だ。
その小島に比べれば、八幡は日本大学芸術学部演劇学科を卒業し、新国立劇場演劇研修所を第９期生として修了しているばりばりの演劇人。八幡が演じる平岡は、左門らへの感情の在り方が変化するだけに、確かな演技力が求められるが、八幡は十分にその期待に応えている。
鈴木が演じる新田は登場人物の中ではこの集団の中での「居方」が一番難しい役柄。なにしろくだんの交通事故で妻が意識不明になっており、その原因をめぐっては一切妥協する気持ちはない。しかし一つ間違えば加害者であったところを、歩行者を守ったなぞのシールドによって、加害者にならなくて済んだということもでき、あまり強く言えないところもある。しかし真壁を中心とするこの集団の人々はドミノだの奇跡だの、科学で説明できないことばかり持ち出して説明しようとし始めるものだから、にわかには味方もできない。鈴木はそこらあたり目まぐるしく立場が変化する新田を忍耐強く演じている。
★舞台「関数ドミノ」の一場面（撮影・神ノ川智早）
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千葉と勝村が演じる大野医師と横道調査員は、若さが暴走する彼らの外側に居て、いさめたり、整えたりする役割を担う。ドミノという奇跡に対してもこの２人はそれぞれ信じ方の度合いやアプローチが違い、そこも見どころになる。
イキウメの「関数ドミノ」には各年版それぞれの面白さがあり、それぞれにファンがいるのだが、今回の２０１７年版「関数ドミノ」は新たな決定版に名乗りを上げたといえそうだ。
舞台「関数ドミノ」は、２０１７年１０月４〜１５日に東京・下北沢の本多劇場で、１０月２１〜２２日に北九州市の北九州芸術劇場中劇場で、１０月２４日に大分市のホルトホール大分大ホールで、１０月２６日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、１１月５日に北海道網走郡大空町の大空町教育文化会館で、１１月６日に北海道北見市の北見芸術文化ホール中ホールで、１１月１０〜１２日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。
上演時間は、約２時間（休憩なし）。
★舞台「関数ドミノ」チケット情報（東京公演・北九州公演・大分公演・久留米公演・大空町公演・北見公演・兵庫公演）＝最新の残席状況はご自身でお確かめください。
舞台「関数ドミノ」は、２０１７年１０月４〜１５日に東京・下北沢の本多劇場で、１０月２１〜２２日に北九州市の北九州芸術劇場中劇場で、１０月２４日に大分市のホルトホール大分大ホールで、１０月２６日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、１１月５日に北海道網走郡大空町の大空町教育文化会館で、１１月６日に北海道北見市の北見芸術文化ホール中ホールで、１１月１０〜１２日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。右端が瀬戸康史（撮影・神ノ川智早）
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イキウメは２００３年結成。主宰の前川は２０１０年に紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。２０１１年には優秀な戯曲に与えられる鶴屋南北戯曲賞を受賞。そして２０１２年の読売演劇大賞で大賞と最優秀演出家賞をダブル受賞するなど、戯曲と演出の両面で高い評価を受けている。
２０１４年には人気作だった戯曲が「太陽２０６８」として蜷川幸雄の演出で上演され、２０１６年には『太陽』として映画化。もうひとつの代表作として知られる「散歩する侵略者」が黒沢清監督によって『散歩する侵略者』として映画化され、フランス時間５月１７日に開幕した今年の第７０回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品されるなど、前川ワールドが劇団の外側にも大きく広がっている。
そして、当ブログでも２０１４年版の劇評を掲載するなど積極的に紹介してきた舞台「関数ドミノ」。２００５年に「イキウメ」が初演し、２００９年に再演。２０１４年にも再再演されている。前川やイキウメが快進撃を続ける原動力となった作品でもある。これまで劇団外での上演はなかった作品だけに、今回は大注目となった。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。事故車両のイメージ（撮影・神ノ川智早）
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きっかけは、とある都市で起きた奇妙な交通事故。
信号のない横断歩道を渡る歩行者のもとに、速度も落とさず車がカーブしてきたが、車は歩行者の数センチ手前で、あたかも透明な壁に衝突したかのように大破する。運転していた新田直樹（鈴木裕樹）は無事だったが、助手席に乗っていた妻が大けがを負い、意識不明の重体になっている。
事後処理を担当する保険調査員、横道赤彦（勝村政信）はこの不可解な事故に手を焼き、目撃者ら関係者を集めて検証を試みるが、さまざまな方角からの目撃証言を聴くことで、ますます不可解な雰囲気になる。
当然のことながら、結論の出ないまま解散となる。しかしある目撃者が奇妙な仮説を話し始めた。誰もが耳を疑いながらも、その仮説に引き込まれていく。
最初に仮説を語り始めたのは、真壁薫（瀬戸康史）。彼は日ごろからものごとを斜めから見るタイプで、結構きついこともはっきり言う。考え込むと世界がどんどん深くなっていってしまうところがあり、やや神経症的な部分を心配した母親から知人の精神科医、大野琴葉（千葉雅子）のクリニックに通わされているほど。
真壁は、交通事故現場にいた目撃者の中に、そんな奇跡を引き起こせる人物がいると考えた。それは左門森魚（柄本時生）ではないかと予想していたのだ。
仮説はこうだ。誰の目にも見えないが、車が大破していることから、何らかの固い物体が歩行者と車の間にあって、そこに衝突したのだと。それは誰かが瞬間的に創り出したものだと。強く望むことでそんなものを創り出すことができる人間がこの世には存在するのだと。それを「ドミノ」と呼ぶ、と。
一定の説得力を持ってはいるものの、単なる妄想のようにも思えるこの仮説。もちろん非科学的であり、世間が納得するとは思えない。結論を変えるほどの力は持たないまま、目撃者たちは自分たちの場所へと帰っていった。
しかしやがて、そういうドミノのような人間がいないと説明ができないようなことが次々と明らかになっていく。反応は様々だが、やがて関係者たちは「壮大な実験」へと歩を進めていく。それは奇跡の再現になるかもしれないし、取り返しのつかない大破局を呼ぶものかもしれない。
物語はわたしたちが決して足を踏み入れてはならない場所、しかし誰もが足を踏み入れたくなる場所へと私たちを運んでいく。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。真壁は自らの仮説にますます確信を強めていく。前方が瀬戸康史、後方が勝村政信（撮影・神ノ川智早）
【写真転載・無断使用厳禁】＝画像データはダウンロードできません
真壁と左門に焦点が当たるものの、自分の病気を治してもらおうとドミノに急接近する土呂弘光（山田悠介）や、真壁を強力に支持する秋山景杜（小島藤子）、左門に近い田宮尚偉（池岡亮介）、平岡泉（八幡みゆき）らも含めた若者たちの群像劇として物語は描かれており、さまざまな欲望が錯綜する中にも、未来への希望が見え隠れする。
２０１４年版よりも年齢設定が若い２００９年版の脚本をベースにしたことのメリットがうまく出ている格好だ。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。苦悩の色濃い若者たち（撮影・神ノ川智早）
【写真転載・無断使用厳禁】＝画像データはダウンロードできません
瀬戸はただ単に演技が巧いだけでなく、特にここ数年は、ややキャラクターの強い役やエッジの利いた役などにも果敢に挑戦していて、今回の真壁という役柄は安定した演技力と難役の経験による新しい引き出しの増加という２つがうまく活きた人物と言える。
真壁はまるで狂気にさらされているような様子を見せるものの、物語の真実がそこにどんどん寄っていくために、観客全体が彼の異常な世界に引き寄せられているような気分になる。
ゆっくりとしかし確実に核心へと近づいていく物語の構造の中で、瀬戸はその天性の表現力を大いに発揮している。
★舞台「関数ドミノ」の一場面。熱演する瀬戸康史（撮影・神ノ川智早）
【写真転載・無断使用厳禁】＝画像データはダウンロードできません
柄本は、小説家志望の青年を自然体で演じている。自分の知らないところで、スーパーマンのように仕立て上げられる展開や、いつのまにか自分以外の人間が自分のなぞの力を利用しようと近づく秘密結社のようになっていく様をあ然として見守りつつも、とんだ「災難」としてなかなか受け止めきれない。柄本の一見ぼうっとした雰囲気の中に左門の火花が散っていく様子の表現はなかなかのもの。柄本の演技が作品の中で重要なポイントになっている。
山田は、物語の中盤から一気に表舞台に立つセンシティブな役柄をしっかりと表現している。人間の弱さと強さが如実に表れる役柄だけに試行錯誤はすさまじいものがあったに違いない。
池岡が演じる田宮も今回は存在感がくっきりとしている。せりふをきちんと空間に置いていく池岡の口舌の確かさが心地よい。
小島は既に数々の映像作品で注目されてきた逸材だが、朗読劇をのぞけば、まだまだ舞台経験は少なめ。それでも彼女が舞台映えするのは、感情をきちんとせりふに乗せられる能力の高さ。もっと頻繁に舞台に出てほしい存在だ。
その小島に比べれば、八幡は日本大学芸術学部演劇学科を卒業し、新国立劇場演劇研修所を第９期生として修了しているばりばりの演劇人。八幡が演じる平岡は、左門らへの感情の在り方が変化するだけに、確かな演技力が求められるが、八幡は十分にその期待に応えている。
鈴木が演じる新田は登場人物の中ではこの集団の中での「居方」が一番難しい役柄。なにしろくだんの交通事故で妻が意識不明になっており、その原因をめぐっては一切妥協する気持ちはない。しかし一つ間違えば加害者であったところを、歩行者を守ったなぞのシールドによって、加害者にならなくて済んだということもでき、あまり強く言えないところもある。しかし真壁を中心とするこの集団の人々はドミノだの奇跡だの、科学で説明できないことばかり持ち出して説明しようとし始めるものだから、にわかには味方もできない。鈴木はそこらあたり目まぐるしく立場が変化する新田を忍耐強く演じている。
★舞台「関数ドミノ」の一場面（撮影・神ノ川智早）
【写真転載・無断使用厳禁】＝画像データはダウンロードできません
千葉と勝村が演じる大野医師と横道調査員は、若さが暴走する彼らの外側に居て、いさめたり、整えたりする役割を担う。ドミノという奇跡に対してもこの２人はそれぞれ信じ方の度合いやアプローチが違い、そこも見どころになる。
イキウメの「関数ドミノ」には各年版それぞれの面白さがあり、それぞれにファンがいるのだが、今回の２０１７年版「関数ドミノ」は新たな決定版に名乗りを上げたといえそうだ。
舞台「関数ドミノ」は、２０１７年１０月４〜１５日に東京・下北沢の本多劇場で、１０月２１〜２２日に北九州市の北九州芸術劇場中劇場で、１０月２４日に大分市のホルトホール大分大ホールで、１０月２６日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、１１月５日に北海道網走郡大空町の大空町教育文化会館で、１１月６日に北海道北見市の北見芸術文化ホール中ホールで、１１月１０〜１２日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。
上演時間は、約２時間（休憩なし）。
★舞台「関数ドミノ」チケット情報（東京公演・北九州公演・大分公演・久留米公演・大空町公演・北見公演・兵庫公演）＝最新の残席状況はご自身でお確かめください。
