周術期急性管理で麻酔科医と患者がよく直面する2大問題は、創痛と悪心・嘔吐である。
全身麻酔を行うことで、一定の確率で悪心・嘔吐が発生する。
一般的にはApfel scoreという項目を用いて、5段階に階層化した上で患者の治療を行う。スコアが低い場合には予防しないこともあるが、スコアが高いハイリスク症例の場合、ドロペリドール、吸入麻酔の回避、麻薬の不使用、ステロイドの投与などによって吐き気を予防することが多い。しかしそれでもハイリスク症例の完全な悪心・嘔吐予防は難しい。
手術室では使用出来るため、元々鎮静剤として用いられてきたドロペリドールを少量使用することが多い。その副作用で、悪心・嘔吐を予防している(添付文書の使用用途外なので、手術室外では使用出来ないことになっている)。
悪心・嘔吐に対する一般的な使用法としては、ごく少量(0.625-0.1mg)を手術終了30-60分前に緩徐に静注する。一部では術後の硬膜外持続鎮痛に2.5mg/日で混合する向きもあるようだが、この方法は手術終了前の単回投与と同等の効果である。しかし漫然と行われている。
PONVの予防として、0.625-1.25mgのドロペリドール静注を第一選択として定めるガイドライン1)もあり、ドロペリドールを積極的に使用することは問題ないと思われる。
その一方、ドロペリドールの硬膜外持続投与により術後25時間にて急性ジストニアを来し、硬膜外投与の中断5時間後に症状消退を認めた報告2)がある。この報告では術中に1.25mgを投与した上で術後2.5mg/日の投与がされているが、術中の投与がされていなくとも術後約43時間で発症した症例もある。
ドロペリドールの安全な投与量に関しては、0.625-1mgの低容量で用いた2957人中の2名に急性の錐体外路症状を認めた3)との報告もあり、急性発作の確率はそれほど低くない可能性がある。
硬膜外ドロペリドールは単回投与でも持続投与でもPONVの抑制は同等とする報告4)もあり、安易な持続投与は避けるべきと考える。
吐き気を予防するのは重要なことである。1度の術後悪心・嘔吐経験した患者は、次にそれを避けるためなら2万円以上の出資をしても良い、と考えるようになるという研究もある。
しかしその代償が大きいようでは困る、というのもまた事実だろう。
全身麻酔を行うことで、一定の確率で悪心・嘔吐が発生する。
一般的にはApfel scoreという項目を用いて、5段階に階層化した上で患者の治療を行う。スコアが低い場合には予防しないこともあるが、スコアが高いハイリスク症例の場合、ドロペリドール、吸入麻酔の回避、麻薬の不使用、ステロイドの投与などによって吐き気を予防することが多い。しかしそれでもハイリスク症例の完全な悪心・嘔吐予防は難しい。
手術室では使用出来るため、元々鎮静剤として用いられてきたドロペリドールを少量使用することが多い。その副作用で、悪心・嘔吐を予防している(添付文書の使用用途外なので、手術室外では使用出来ないことになっている)。
悪心・嘔吐に対する一般的な使用法としては、ごく少量(0.625-0.1mg)を手術終了30-60分前に緩徐に静注する。一部では術後の硬膜外持続鎮痛に2.5mg/日で混合する向きもあるようだが、この方法は手術終了前の単回投与と同等の効果である。しかし漫然と行われている。
PONVの予防として、0.625-1.25mgのドロペリドール静注を第一選択として定めるガイドライン1)もあり、ドロペリドールを積極的に使用することは問題ないと思われる。
その一方、ドロペリドールの硬膜外持続投与により術後25時間にて急性ジストニアを来し、硬膜外投与の中断5時間後に症状消退を認めた報告2)がある。この報告では術中に1.25mgを投与した上で術後2.5mg/日の投与がされているが、術中の投与がされていなくとも術後約43時間で発症した症例もある。
ドロペリドールの安全な投与量に関しては、0.625-1mgの低容量で用いた2957人中の2名に急性の錐体外路症状を認めた3)との報告もあり、急性発作の確率はそれほど低くない可能性がある。
硬膜外ドロペリドールは単回投与でも持続投与でもPONVの抑制は同等とする報告4)もあり、安易な持続投与は避けるべきと考える。
吐き気を予防するのは重要なことである。1度の術後悪心・嘔吐経験した患者は、次にそれを避けるためなら2万円以上の出資をしても良い、と考えるようになるという研究もある。
しかしその代償が大きいようでは困る、というのもまた事実だろう。
- Gan TJ, et al. Society for ambulatory anesthesia guidelines for the management of postoperative nausea and vomiting. Anesth Analg 2007; 105: 1625-28.
- 山田佐世子他. 制吐作用を目的としたドロペリドールの持続硬膜外投与によって急性ジストニアを呈した1症例. 麻酔 2010; 59: 238-41.
- Schaub I, et al. Low-dose droperidol (≤1 mg or ≤15 µg kg-1) for the prevention of postoperative nausea and vomiting in adults: quantitative systematic review of randomized controlled trials.
- Lee IH, et al. The antipruritic and antiemetic effects of epidural droperidol: a study of three methods of administration. Anesth Analg 2007; 105: 251-5.