2013年09月

2013年09月25日

最期の手紙

d791e44d.jpg「俺は30、お前は28。まだ若いのう・・・」

100歳近いおばあちゃんが遠い昔にご主人からもらった最期のお手紙だったそうです。若くして戦争に駆り出されたご主人はその後、戦死したそうです。
おばあちゃんはそれからずっと独りで生き抜き、今、その人生を閉じたのでした。
気さくなご家族はおばあちゃんの昔話をしながら一緒にお身体を拭いて下さいます。でも、そこにいるご家族はおばあちゃんの子孫ではないのです。
おばあちゃんには子供がいません。
多分、ご兄弟の子孫でしょうが、本当のおばあちゃんのように大切に思ってくれているようでした。
小さな子供まで一緒にお身体を拭いて下さり、おばあちゃんが白い経帷子に身を包むのを笑顔で見守って下さいます。
お化粧を始めると、少しずつ昔話をして下さいます。
そして、ご主人の最期の手紙のお話をして下さいました。
「俺は30、お前は28。まだ若いのう・・・」
きっと、おばあちゃんがずっと心に大切に閉まってきたご主人の最期の言葉なのでしょう。
ご家族に何度も話して聞かせたに違いありません。
お化粧を施し髪形を整えたおばあちゃんは恥ずかしそうな笑みを浮かべたお嫁さんのようでした。
さあ、2度目のお嫁入りです。
何十年も大切に想い、いつか逢えることを夢見て独りで頑張って生きて来たおばあちゃんのお嫁入りです。
きっと「よく頑張ったね。」そう言って抱きしめてくれるに違いありません。

「俺は30、お前は28。まだ若いのう・・・」
その言葉にはたくさんの想いが込められていたのでしょう。
若くして命を失う悲しみ、まだ若い、愛する妻を独りにしてしまう苦しみ。
妻とのこれからの長い二人の人生を絶つ悔しさ。
そして、まだ若い妻に再婚してでも幸せになってほしい、そんな想いも込められていたのかもしれません。
おばあちゃん、今度こそずっとご主人といっしょですよ。
うんとうんと幸せになってくださいね。


angel0425 at 16:56コメント(0)トラックバック(0) 

2013年09月01日

初恋の人

0dc8d1d3.jpg喪主様のお名前は私の初恋の人と同じお名前でした。
ひょっとして!?と微かな想いでご挨拶をさせて頂きます。
しかし、そこには喪主様はいらっしゃいませんでした。突然亡くなられた大きなお身体のお父さんの浴衣を脱がせ、お母様と妹さん夫婦とお身体を拭きます。ご用意された新品のパジャマにお着替えをしてお顔を整えます。
お顔剃りをしながら、お母様に何気なく喪主様の年齢をお聞きしました。
私と同じ年です。小学校をお尋ねすると・・・やっぱりそうでした。
40年前、想いを寄せた初恋の人でした。
お母様と昔のお話を色々とさせて頂くと、お部屋は笑いで包まれました。
ちょっぴり恥ずかしいけれど、とても懐かしい気持ちでした。
そして、喪主様を呼んで来て下さったのです。
40年ぶりの再会です。
喪主様は覚えてないとおっしゃいましたが、お母様がこっそり私の耳元でささやきました。
「照れてあんなことを言ってるけど、絶対に覚えているわよ。」

偶然の再会で私の心は小学生に戻ったようでした。
「悲しかったのに楽しくなってきちゃったわ。」
お母様が笑顔でおっしゃいました。
お父様もこの会話を聞いていらっしゃるに違いありません。
悲しんでいてはお父様も後ろ髪を引かれるようで安心して旅立てません。
笑顔で送ってあげて下さいね。

遠い遠い昔に憧れた大切の人のお父様を送り出すお手伝いが出来た事、とても嬉しかったです。
偶然の出会いは、ほんの少し私の心を甘酸っぱい思い出で満たしてくれました。



angel0425 at 19:06コメント(0)トラックバック(0)癒し 
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