偶然

2017年01月25日

運命

886073d3.jpg「人の命ってはかないものね・・・」
真っ赤な目に涙を浮かべてお嫁さんがおっしゃいました。

自宅の前には血痕が残っていました。おばあさんは自宅の前で車に跳ねられたのです。
お顔は傷だらけで、鼻骨は折れ、所々、針金のような糸で縫ってありました。
頭は手術のため髪を剃られ、一部頭蓋骨がありません。
本当に痛々しいお姿です。
布団をめくると、点滴痕からの出血で布団が真っ赤に染まっていました。
血液で汚れたお身体を拭き、布団を敷き替え、ご家族と一緒にお身体を拭いて差し上げます。ご家族は、泣きながら身体を拭き、全身を写真に残していました。
「辛いけど、全てを残しておきたいの。」
そうおっしゃって、紫に腫れあがった右足を、折れてしまった骨盤を、神経痛で痛がっていた左足を・・・全身をお写真に残していました。
白い経帷子にお着替えをして、お顔をなるべく痛々しくない様にお化粧を施します。
擦り傷や打ち身はファンデーションで目立たなく、針金のような糸は出来るだけ短く切って、その上からワックスで皮膚を作ります。
欠けてしまった唇は綿花とテープで唇を作り、お口を閉じて差し上げます。
髪の毛を剃られてしまった頭は黒い三角巾で巻き、部分かつらで前髪だけ作って差し上げました。
元通りのおばあちゃんには程遠いかもしれません。それでもご家族は
「きれいになった。これなら皆に見てもらえるよ。」
そうおっしゃって下さいました。

緩いカーブを抜けた先に自宅があります。カーブを抜けると朝陽がとても眩しくて目がくらむそうです。朝陽が一番眩しい時間に、いつもはゴミ捨てになど行かないおばあちゃんが、その日に限ってゴミを捨てに自宅から出ました。
偶然が重なり事故が起きるのかもしれません。
『運命だった』そんな一言で納得出来ることではありませんが、人の『死』は運命で決まっているのかもしれません。
運命で決められたその瞬間にいつもと違う行動をとってしまったり、悪い偶然が重なるのかもしれません。


angel0425 at 10:30コメント(2)トラックバック(0) 
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