定年

2019年09月04日

人生100年

5b7fcb5a.jpg人生100年時代と言われる昨今です。

90歳のおじいちゃんのお世話をさせて頂いた時のお話です。
おじいさんは数年前に脳梗塞で倒れ、その後は寝たきりになってしまいました。
リハビリが上手くいかなかったのか、手足は麻痺して全く動きません。
両腕は曲がったまま、両足も赤ちゃんのように丸まった形で固まっていました。
そんなおじいさんにスーツを着せて差し上げます。
現役時代に毎日着ていたスーツだそうです。
曲がって動かない両手に袖の細いスーツやワイシャツの袖を通すのは、とても大変で、娘さんやおばあさんに手伝って頂き、必死で着せます。
何とかスーツに身を包んだおじいさんは、少し誇らしげな表情に変わったように見えます。
歯のないお口に綿で歯を作り、痩せて落ち窪み開いた目を閉じます。
髪型をワックスでばっちりと決め、現役時代のおじいさんの出来上がりです。
傍で、笑顔で見守る息子さんが、色々なお話をして下さいます。
60歳で定年退職したおじいさんは、60歳から庭師になるために、弟子入りをしたそうです。
そして親方について教わり、庭師として75歳まで働きました。
75歳の時に、腰を痛め、庭師も引退したというのです。
定年後、やりたかった事を自由に出来るようになったのかもしれません。
家族を守り続け、子供を育て上げ、ようやく自分の為に生きることで出来たのかもしれません。

人生100年時代、定年後の人生はまだまだあります。
定年後は、家族の為でなく、自分自身の為に生きる時間なのかもしれません。
その時間を、初心に戻り、年下の親方に教わるおじいさんに教えてもらったような気がします。
定年後は、新しい人生の始まりだよ。
もう一度、ゼロから始めてみよう。やりたい事を自分だけのために。
と。


angel0425 at 11:05コメント(0) 

2018年02月05日

突然死

037bd223.jpg70歳を迎えるお父さんは定年を目前に控えていました。

その日は突然に訪れました。畑仕事をしていた時、突然倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。大動脈解離だったそうです。
そのお顔は微笑んでいるようにとても穏やかなお顔でした。
突然の事で、ご家族は死を受け入れられずにいました。
年齢の割にはがっちりとしたお身体の硬直は固く、そのお身体は突然の死であることを物語っていました。
着ていた柄浴衣を脱がし、ご家族に温かいタオルでお身体を拭いて頂きます。
息子さんも奥様も亡くなった時の様子を、堰を切ったように話して下さいます。
心の整理が出来ていないのです。
私に話すことにより、何とか死を受け入れようとしているのです。
お二人の目に涙はありません。涙すら出ないのです。
白い経帷子にお着替えをして、紫黒く変色したお顔を、血色よく見えるようにお化粧を施します。
ドライシャンプーをして、髪型を整えます。
硬直で固まった指をゆっくりとほぐし、合掌をして差し上げます。
支度が整うまで、話題はお父さんの人柄です。
死を迎えて知ったお父さんの人脈の多さに息子さんは驚いていました。
奥様は、ご主人が自分を残して死んでしまったら、お前が心配だと言っていたとおっしゃり、込み上げる涙を呑みこみました。
これからだったのに。夫婦で静かな時間を過ごすのはこれからだったのに。
後悔は尽きません。

でも、微笑んでいるお父さんのお顔を見ると、とても幸せそうです。
100まで生きるとおっしゃっていたご主人だそうですが、代わりに奥様が100まで生きてあげて下さい。
ご主人の代わりに、これからの時間を思いっきり楽しんで生きて下さい。
奥様が100歳を迎えたら、「俺の代わりによく頑張った!」そう言って迎えに来てくれるでしょう。
ご主人はそう願っているに違いありません。
きっと。


angel0425 at 12:51コメント(0) 
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