December 14, 2005

★『Colours and Sounds』ライナー

MF

以下の文章は、12月21日発売のTHE MOONFLOWERS『Colours and Sounds』(DDCA-5029/30)のブックレットに掲載しているライナー・ノーツです。ネタバレになりますので、CDを購入して、音楽を聴きながら読みたいという方は、以下の文章を読まないで下さい。DISC 2(カヴァー&リミックス集)に関するテキストは後日。
DISC SHOP ZEROでは、このCDの発売を記念して、バンドやDISC 2参加者の関連作品を紹介する大特集を展開しています。是非、ご覧になって下さい。
ZERO / THE MOONFLOWERS大特集
 まずは個人的な話から――。今、あなたが手にしている、ムーンフラワーズが1995年に発表したセカンド・アルバム『カラーズ&サウンズ』を、発売そして日本公演から10周年という記念すべき年に再発売できることは、大きな喜びです。フューチャー・エイリアンたちは、このアルバムを携え、生後間もない赤ちゃんとともに日本の地に降り立ちました。そして10年後、僕にも赤ちゃんができました。このアルバムを再発売するのは、僕らの子どもたちが音楽を楽しむ年頃になるまで、このアルバムを残しておきたいから、というのが理由のひとつです。そしてもうひとつは、僕らの大切な友だち、トビー・パスコーの魂をいつまでも僕らのそばに置いておきたいから――。

 ムーンフラワーズは、1988年に英国の港街ブリストルで、それまでロカビリーのバンドをやっていたというリバプール出身のショーン・オニール(ヴォーカル)を中心に、サム・バーンズ(キーボード、ベース)、ポール・ウォーターワース(ベース)、ジェシ・ヴァーノン(ギター、ヴォーカル)らによって結成されました。ライヴとセッションを繰り返す中でメンバーも推移し、最終的には彼らにトビー・パスコー(ドラム)、ジーナ・グリフィン(ヴァイオリン)を加えた形でバンドは成長をしていきました。



 最初のリリースは1989年に〈エレクトリック・スターズ・レコード〉からの「We Dig Your Earth」。ショーンの趣味が強く出たロックンロール調のEPでした。続いて1990年にリリースしたシングル「Get Higher」は、当時のインディ・ダンスのブームに乗って全英チャートの上位にランクされ、大きな注目を集めます(当時の英国でもっともヒップな雑誌のひとつ『The FACE』で大きな特集を組まれたりも)。

 自らインディペンデント・レーベル〈ポップ・ゴッド〉を運営していた彼らには、当然のごとくメジャー会社からオファーが殺到します。しかし彼らは、関係者を迎えたライヴで全裸でステージに上がり、30分の持ち時間を1曲のみ演奏するという行動に出ます。その場の大金によってコントロール権を奪われることに「ノー」とケツの穴を突き出したのです。



 91年の1月には反・湾岸戦争ソング「Warshag」をリリース(開戦直後のリリース!)、続けて「Fire」「Groovepower」とシングルのリリースを重ねていきます。シングル曲や英国BBC放送での「John Peel Sessions」出演時の音源を集めた『Hash Smits』がリリースされた頃から、ここ日本でも注目を集めだしました。その後、「Tighten Up」やクラッシュの「Armagideon Time」、ビートルズの「Norwegian Woods」などのカヴァーをリリース。英国メディアの反応は先述の“事件”以降、冷ややかになってしまいました(それでも、グラストンベリーをはじめとしたフェスティヴァルでのオーディエンスからの人気は絶大だったのです)が、ここ日本での人気は揺るぎないものになりました。



 93年、オリジナル・ファースト・アルバム『From Whales To Jupiter, And Beyond The Stars To Rainbohemia』をリリース。このアルバムを最後に、彼らは農場を買い上げ、ブリストルからフランスのノルマンディへと移住し、集団生活を始めます。

 納屋に手を入れスタジオに改造し、リンゴの木を育て、バスキング(路上演奏)をする――という自給自足の生活を送りながら、95年にようやく完成したのが、この『カラーズ&サウンズ』です。

C&S

 70分に及ぶこの大作は“宇宙の生命体”“革命”“反射作用”“意識の極限”という4つのパートから構成されています(アナログ・レコード盤では2枚組4面)。このことを頭に入れてアルバムを聴くと、より彼らの世界を感じ取れるかもしれません。

part 1
 オープニングは「やぁ人類」という、エジプト人女性ラシャ・シャヒーンのアナウンスから始まる「Future Alien」。蛇足ですが、この詩は“宇宙人が地球語を話す”設定のため、文法がおかしくなっています。初期ファンカデリックの作品を連想させるファンキーでサイケデリックな幕開け。続く「What Is Going To Happen」は、このアルバムから正式加入したジーナ・グリフィンのヴァイオリンが全面にフィーチャーされたインスト。「Nopar King」は「No Parking(駐車禁止)」とひっかけた、ショーンならではの言葉遊びから生まれたタイトル。当時、ブリストルを中心に旋風を巻き起こした、所謂“トリップ・ホップ”の人力版ともいえる楽曲。パート1のラストは、ショーンのアジテーションのようなポエトリーで次への導入となる「The World Leaves The World」。

part 2
 パート2はビギニング・オブ・ジ・エンド「Funky Nassau」を彷佛とさせる軽快なファンク・ナンバー「Shake It Together」からスタート。これにはシングルでリリースされたヘヴィ・ダブ・ヴァージョン(disc "FLOWER"にも収録)の他、いくつかの別ヴァージョンがあります。「Revolution」は文字通り“革命”についての歌。ジプシー音楽への傾倒(というか必然?)が感じられる楽曲。「Path Of The Free」もショーンの詩人ぶりが伺える、早口でまくしたてられる言葉とその意味が曲とマッチ。その反動を受けて静寂から始まる「White Bird」は、革命に破れた失意の中にも微かな希望の光を見い出す、ジーナの歌声とヴァイオリンの表現力が活かされています。

part 3
 パート3はインスト「Sun And Moon」で幕開け。妖精の誕生を歌う「Winkstress」、日本の「四季の歌」を連想せずにはいられない「Friends」は、彼らが漆黒の闇夜に焚き火を囲んで歌う姿が目に浮かびます。ノルマンディで物質社会から離れ、自然と向き合った彼らだからこそ生まれた歌だと思います。ゲスト(といっても友だち)のリルが、魂に歌いかける「Too Much Love」。後にジェシがソロで再演します(disc "FLOWER"にも収録)が、歌う人の性別が変わると、その受け止め方も違って感じられる気がします。

part 4
 パート4は、アルバムのタイトルでもある『Colours And Sounds』から。これもノルマンディでの生活が反映された歌詞が印象的。次のアルバム『Brainwashing And Heartists Blue Life Stripes』収録の「Let It Rain」にも通じる、生と死について考えさせられる楽曲。続く「Keepers Of The Fire」は、後にメンバーもそれぞれの別プロジェクトで取り上げる名曲(disc "FLOWER"にジェシのヴァージョンを収録)。ラストは、ショーンのガールフレンドで来日にも同行した、ケイトのバグパイプがこれまでの全てを浄化してくれるような「The Worlds Most Famous Unknown People」。メンバー&友だち大集合で合唱し、このアルバムの大団円を迎えます。

 余談ですが、このアルバムを彼らがレコーディングしたという納屋を改造したスタジオ(現在はサム&ジーナ一家の住居)で聴いたことがあるのですが、まるで目の前でバンドが演奏しているかのような特別な響きがありました。現在はコテージとしての営業もしている(www.labanciere.com)ので、興味がある方は利用して、アルバムを聴いてみて下さい。



 このアルバムを1995年5月に発表した彼らは、同年9月に来日し、東名阪でライヴを行ないました。その時の記録はVHS『The Moonflowers Fly To Japan』に残されています。バンドはその後、同時期に録音していた曲を元に2枚のアルバム『Brainwashing And Heartists Blue Life Stripes』(1997年)、『Don't Just Sit There...Fly』(2000年)を完成させ、サムとジーナ以外のメンバーはブリストルへと戻ってしまいました。

 それからも、ノルマンディやブリストルで合流し(メンバー不定のため、レインボヘミアンズという別名で)バスキングやライヴを行ないながら活動を続け、その後の展開も楽しみなところだったのですが、2002年6月1日、トビーの死によって、ムーンフラワーズの歴史は突然に幕を下ろしました。

MFCS

 最後に、トビーの死後、彼の幼なじみでもあるジェシがブリストルの情報誌『Venue』に綴った文章を転載して、この解説を終わりたいと思います。※このブログではコチラに掲載しています。

 音楽は素晴らしいもので、その肉体がなくなった後も、その魂が吹き込んだ音は永遠に残ります。僕らは、このアルバムを聴くことで、トビーの、そしてムーンフラワーズの魂にいつでもアクセスできるのです。そして、それを聴き続ける限り、ムーンフラワーズの歴史は終わらないのです。これからも、ずっと、ずっと。
 
飯島直樹


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