日記

1990年生まれ。虚実入り混じっております。

2013年12月

【22】今日の日記。

最近はギター演奏にハマっていて、1人暮らしの部屋でアンプを繋ぎながら大音量で自作曲を弾いているのですが、1つ困ったことがあります。毎回、僕が部屋でギターを弾き始めると、僕とセッションがしたいのでしょうか、隣に住む人が壁をドンドンと鳴らしてきます。しかし、その鳴らす音のリズムが僕の鳴らすギターの旋律に合っていないばかりか、壁の叩き方もとても乱暴です。僕はこの人には音楽の才能がないと見切り、彼の壁パーカッションを無視して1人で練習を続けていました。
すると、まだセッションを諦めきれないのでしょうか。今度は隣の人が僕の部屋のピンポンを幾度となく鳴らし続けています。ただ、やはりリズムはバラバラだし、そもそも、僕の構想するバンドには「ピンポン」などという楽器はありません。なので、当然のように無視を決め込んでいたのですが、もうこのあたりになると、執拗にセッションをせがむ彼のことが怖くなってきました。どうせ、この人とセッションしてもうまくいくはずありません。早く諦めてくれないかな。そんなことを思いながら、セッションストーカーが立ち去るのを待っていました。
しかし、セッションストーカーは立ち去るどころか、今度は玄関のドアを力いっぱい叩きながら「おい、出てこい。うるせえんだよ。殺すぞ」とわめき散らしています。
もしかしてボーカル希望でしょうか。しかし、僕がやりたいのは下品な歌詞を怒鳴り散らすパンクミュージックではなく、老若男女が気に入りそうなポップミュージックです。そして彼の声を聴く限り、彼にはボーカルの才能もありません。僕は彼の狂気じみたセッション欲にガタガタ震えながら彼が立ち去るのを待ちました。
しばらくすると怒声は止み、彼は立ち去りました。そして、30分程経った頃でしょうか。玄関先から「すみませーん」という声と共に誰かが来ました。玄関の扉を開けるとそこには警察と大家さんが立っていたので僕は嬉しくなって聞きました。
「もしかしてバンドに入りたいのですか?」

【21】今日の日記。

社会人になると様々な人と交流を持たねばならず、それに伴いストレスを感じることが非常に多くなります。しかし、社会人の辛い所はそうしたストレスを人前で見せられないことで、人前ではストレスフリーな笑顔を取り繕ってへらへらと生活しなければなりません。ただ、このストレス隠し通すと言うことが新たなストレスを生むことになり、社会人はストレスにまみれ、心の闇がブラックホールのように肥大化していくのです。
実際、こうした傾向は僕の場合においても例外ではなく、家に帰ると貯め込んでいた心の闇が爆発。最近では米粒11粒に呪いの言葉を込め、3合の米を炊くという行為に勤しんでいます。
そして、先日のことなのですが、こうした普段の取り組みが評価されて「この心の闇がすごい2013」にノミネートされました。
知らない人のために説明しておくと、「この心の闇がすごい」はこの国を代表するサイコパスを多数輩出している権威ある賞です。歴代の重大事件を起こした犯罪者達がこの一年間の間に行われた狂気を感じる行為を評価し、次世代を担う犯罪者を発掘しようとするもので、そうした目的上、「重犯罪者の登竜門」と呼ばれています。
当然、国民も「この心の闇がすごい」に大きな関心を抱き、毎年ノミネートが出揃った頃にはネットを中心に誰が受賞するのかが頻繁に議論されます。
そして、今年の下馬評では僕の「呪い米3合炊飯」への評価が一番高く、受賞確実との声も多く聞かれました。また、僕のデビュー当時からのファンからは「これで受賞し有名になるのは少し複雑な気分」とのコメントもありました。僕はそうした書き込みをほくそ笑みながら拝見し、自身としても受賞確実な面持ちで発表当日を迎えました。
しかし、待てど暮らせど電話は鳴らず、結果としては「上司への恨みを呪詛しながら藁人形にバックドロップをかますOL」が受賞。受賞したOLは副賞として保護観察処分を頂いていました。
後日、雑誌「月刊心の闇」に選考委員からの評価コメントが掲載されると聞き、書店へ行き雑誌を購入。中身を読んでみると、選考委員を務める下着泥棒が「呪い米3合炊飯」に対して
「陰湿さはあるものの、藁人形バックドロップOLに比べると勢いに欠ける。しかし、今後が楽しみな若手サイコパスが出てきてくれて嬉しい」との評価を書いていました。
正直、受賞を逃し悔しい気持ちでいっぱいです。引退することも考えましたが、やはりどうしても賞を頂きたいので来年は心の闇の本場、アメリカに渡り、人種差別に苦しむことで自身の心の闇を磨いていきたいと思います。

【20】今日の日記。

サンタさんの仕事と言えば、クリスマスイブの夜に空飛ぶトナカイに乗って来て、子供が寝ている枕元にそっとプレゼントを届ける。
誰しもがそのように思い浮かべるけど、実際はそうではない。
実際のサンタさんはデスクワーク中心で、プレゼントの需給計画とか世界での配達戦略を指揮している。そして、プレゼントの配達業務は僕達のような下請け会社がハイエースに乗って子供のいる家を一軒一軒回っていくのです。
サンタさんの下請け会社に入ってもう10年ほど経つが、辛いことと言えば守秘義務によって子供達に自分が本当のサンタさんであることを言えないこと。
自分の姪ですらクリスマスの朝起きてプレゼントがあると
「サンタさんありがとう」とか言うのだけれども、個人的には
「サンタさん及び関連会社の皆さま、いつもお疲れ様です」と言って欲しいのです。
しかしまあ、夢を大事にする性質上しょうがないと言えばしょうがないのですが。
という訳で、今年も子供達の笑顔のためにハイエースに乗り込み、配達業務に勤しんできたのです。しかし、今年は何故か「犬」の要求が多かった。訪ねる家、家、家で子供の靴下の中にある紙に「犬が欲しい」と書かれていて、その度に犬を枕元に置いてきたのですが、配達の終盤頃になると手持ちの犬はすべてなくなってしまいました。
そんな状況の中で訪問した女の子の家。個人的には犬以外であってくれと思っていたのですが、願いむなしく、女の子の靴下の中にある紙には「可愛いワンちゃんが欲しいです」とたどたどしい平仮名で書かれていました。
仕方ないので、本部に連絡。犬の在庫を調べたところ犬の在庫はもうないらしく、「自分でどうにかして」の一点張り。困ったことになりました。
このまま帰っても良かったのですが、朝起きてプレゼントがなかった時の少女の心境を思うと、なんとかして少女の期待に沿ったものを置いて行かなければならないと思いました。そして1時間くらい考えたでしょうか。思慮に思慮を重ねた末についに閃いたのです。
僕は急いで本部に連絡をしてプレゼントの到着を待ちました。
30分後、少女の部屋に1人の中国人男性が来ました。
年齢は30歳くらい。頭は角刈り。そして、老婆がピスタチオを拾っている図柄のTシャツを着ています。見た感じパッとしない彼の名は「ワン・チャン」と言います。
正直、僕の中ではもう「ワンちゃん」も「ワン・チャン」も変わらないだろという気持ちがありました。「ワン・チャン」が可愛いとは到底思えませんが、女の子はサプライズに弱いと言うし、どうせ朝起きたら「やったー!ワン・チャンだー!」とはしゃぐに決まっています。
そうして日本語のわからないワン・チャンを身振り手振りで少女のベッドに潜り込ませ、添い寝したのを確認して家を出ました。
「きっと目覚めたらびっくりするに違いないぞ」
帰りの道中、期待で胸が膨らんで仕方がありませんでした。
後日、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断書と共に苦情の手紙が少女の母親からサンタさんカスタマーサポートセンターに届きました。当然、下請けがやりましたなんて言えないので、サンタさんが慰謝料、治療費を全額負担したそうです。
結果としてクリスマスにPTSD(心的外傷後ストレス障害)をプレゼントした形になってしまったけど、とにかくまあメリークリスマス。

【19】今日の日記。

コンビニにエクレアを買いに行こうと夜道を歩いていると、道中、100円パーキングの中でカップルが仲睦まじそうにいちゃいちゃしているのを見かけました。
彼らは公衆の面前であるにも関わらず、そんなことはまるでお構いなしの様子でキス作業やハグ作業、はたまた愛の言葉を耳元で囁く作業に興じています。
といっても、そこは繁華街の近くの100円パーキング。車が頻繁に往来し、彼らはその度にキス作業を中断し車をやり過ごした後に再びのキス作業に戻ったりしています。
正直、繁華街も近いので人通りもそこそこあるし、よくもまあそんなムードもない難儀な環境で愛を確かめ合えるものだ、これが愛の力なのかしらと不思議そうに眺めていると、男の方が僕に気付いたようで、ちらとこちらを確認すると満足そうに笑みを浮かべキス作業やハグ作業を僕に見せつけるように行い始めました。 
その時に気付いたのです。これは決して「他人の目をも気にしない盲目な愛」なのではなく、他人に対して「こんなにもムードのない場所でもいちゃつける自分らの愛情」を見せつけるために行っているのだと。
確かに、言われてみれば、夜景の見える高台などのムードのあるデートスポットでいちゃつくことは誰でもできるのです。それこそ豚でも猿でも。そんな中、ムードのある状況から極度に離れている状況で愛し合い、それを他人に見せつけることは自らが他のカップルよりも特別な愛情を有していることを実感させ、それが2人の自尊心を満足させるのです。いわば、いちゃつきの差別化。いちゃつくカップル達にも差別化の時代が到来したのです。
なるほど。そうした気付きを得て、これはビジネスチャンスかもしれないと思った僕は彼らのために普段の生活ではいちゃいちゃできなそうな所を廻る「いちゃつきツアー」を企画、実行しました。
国会議事堂、手術中のオペ室、避難訓練中の小学校、養豚場など様々な所を巡り、それぞれの場所で僕が「はい、いいですよ」と言うと、数十組のカップルが堰を切ったようにいちゃつき始めるのです。皆、お金を払っている訳だし、血眼になって猿のように。
そして散々それらの場所を巡った後、最後にメインイベントとしてエベレストまで出向き、いちゃつきを図るのです。
といっても、やはりそこはエベレスト。酸素も薄いし、なにより寒い。ムードなんてかけらもありません。しかし、こんなにも寒く、酸素の薄い、生命の危機が脅かされるほどの環境でも愛し合える自分達はやはり素晴らしいのです。僕の「はい、いいですよ」を合図に皆、意識が朦朧として白目を剥きながらも燃えるように愛し合っています。その様子から見て、相当な快感であることは間違いありません。
そして、そうした自由時間も終わり、ツアーの行程は終了。僕は日本に帰りましょうと参加者に言ったのですが、エベレストが恋しいのでしょうか。誰ひとり帰ろうとはせず、皆がその場に居残ると言い始めました。まあ、参加者の希望だし優先してあげようと、僕はそのまま彼らを残して帰途に就きました。
後日、聞いた話ですが、彼らは抱き合ったまま白骨化しているそうで、今では登山家達の登山の目印なっているそう。今後、数百年は登山家たちに愛し合う姿を見てもらえることでしょう。良かったですね。

【18】今日の日記。

先日、街を歩いていると、前を歩く中年男性が突然倒れ込むのを目撃しました。
これは一大事と思い、急いで男性の所に駆け寄ると、男性は苦痛に顔を歪め、
「く、くすり」とかすれる声で話しています。
この時点で相当パニックだったのですが、なんとか助けねばと思って辺りを見渡すと傍らに彼のセカンドバッグが。きっとバッグの中に薬があるに違いないと思い、バッグの中を一心不乱に漁ると、予想通り、袋に包まれた錠剤を見つけました。
早速、僕の持っていた水と一緒に錠剤を彼の口にねじ込み、救出を図ったのですが、彼はそれらを吐き出すばかりで一向に飲み込もうとしません。
彼の行動の意図がわからず、困惑していると、なにやら彼がボソボソ言っているのに気が付きました。耳を澄ませてその声を聞いてみると、とてもとても小さな声で
「食後・・・食後・・・」と言っていました。
まさか、と思い、錠剤の入った袋を見てみると確かに「食後30分以内服用」の文字が。
それを見た僕は急いでコンビニに駆け込み、おにぎりを買って来て彼に食べさせたのですが、懸命の介護むなしく、おにぎりを食べている途中で彼は絶命しました。
瞳孔が開き、おにぎり片手に冷たくなっていく彼を見て僕は思ったのです。
カップスープなら助かったんじゃないかって。

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