日記

1990年生まれ。虚実入り混じっております。

2014年08月

【61】「あざ」を持つ美少女

職場にいる天然で可愛い女性。いつも、太ももに「あざ」を作っています。
「なんかー、家で転んで「あざ」できちゃって超痛いの。これ見て」
そんなことを口走りつつ、女性はイケメン男性に近づき、スカートを捲りあげ、太もも付け根にできたこぶし大のあざを見せつけるのです。
そのセクシーさに男性陣は、一様に生唾を飲み込みます。
そうして女性は、その手法を用いてここ数年、何人もの男性を「オトして」いるようなのです。
僕はいつも、女性のそうした姿を遠巻きに見ていて、1つ気になることがありました。その女性の「あざ」はいつだって同じ場所、同じ大きさなのです。
まさか、「大きく育て」などと呟きつつ、毎日同じ場所の太ももを拳で殴打、「あざ」を作っているのでしょうか。いや、そんなことあるはずがない。
気になった僕は女性の元に出向き、意を決して質問してみたのです。
すると、女性は少しびっくりしたような表情を浮かべて「よく気付いたね」と言いました。
そして僕はすぐさま『この「あざ」は自らで制作されているのですか?』と問いかけたのですが、その問いに女性は首を横に振りました。
「やっぱり、毎回あざを作るのは面倒くさいじゃない。痛いし」
「だから、刺青を入れたの。あざの刺青」
耳を疑いました。「あざの刺青」って何なのでしょうか。
すると、女性はスカートを捲りあげて「あざ」を僕に見せつけてきました。しかし、いくら見ても刺青とは思えないほど自然な「あざ」です。痛そうです。
『これ、彫師の人に彫ってもらったの。だからこの「あざ」は一生消えないの。うふふ。でもこの刺青で男を釣れるのなら安いものよ』
僕は絶句。なんかもう、女子魂、猛々しいと言うか何というか。「女子力」も行き着くとここまでになるのか。と驚愕したのでした。
そんな驚いている僕の姿を見ながら女性は「こんなの、最近のオンナノコじゃ当たり前よ」と言って、ガハハ、可憐な風貌には似つかわしくない笑い声を上げたのでした。

【60】名探偵と首の痛み

朝、起床。首に激痛。痛くて首を左右に振ることができない。
この状況。「寝違えた」なんて言ってしまえば簡単だが、やはり、僕くらい名探偵になるとわかるのである。これは「寝違え」に見せかけた「傷害事件」だと。
その理由。「寝違え」は非常に高度なテクニックである。特に目立った外傷がないのにも関わらず、こんなにも痛いなんてそんな器用なこと、研修もなしに不器用な僕にできる訳がない。きっと誰か研修を受けた器用な人が部屋に侵入。何かしらうまいことやったのだろう。
更に言えば、「寝違え」=「自傷行為」である。つまりは「リストカット」などと同等であるのだが、睡眠中、無意識にこのような自傷行為を行うほど僕は気を病んでいない。
以上の理由から僕は、この首の痛みは他人による犯行であると断定したのである。
と、ここまでの論拠を見ていて、とても不安になった人も多いだろう。でも、大丈夫。理由はどうであれ、最終的には犯人を見つけ出してしまうのだから。だって僕、名探偵だから。悲しいかな名探偵なんですよ。僕は。うふふ。
そして、僕は犯人を捜すために近辺の捜索に乗り出した。が、犯人を裏付けるものは何一つ落ちていないばかりか、玄関、窓等の出入り口のすべてを確かめても、誰かが入ってきた形跡もなければ、出ていった形跡もない。ならば答えは簡単。
「つまり、犯人はこの中にいる!」
と大声をあげてみても、この部屋には僕しかいない訳で。
部屋を沈黙が包み、冷や汗がたらりと頬を伝った。このまま、犯人を特定する証拠が何一つ見当たらなければ僕は自らが犯人であることを認めなければならない。つまりは敗北。名探偵、初めての敗北。
「だって俺、名探偵のはず・・・」
あれほどあった自信もすっかり消失し、力なく床にへたり込んだ。
「もしも、名探偵じゃなかったら、俺はただの何の取り柄もないダメ人間ではないか・・・」
紙ほど薄っぺらい自分自身を支えていたしょうもない思い込みが崩壊し、身寄りのなくなった精神は方々に散らばった。体は言うことを聞かず、フローリングの床に涙がぽたぽた落ちるばかり。その体勢のまま、いつまでも泣いていた。

【59】UMA

「次の未確認生物の方どうぞ」
その言葉を合図に、東京近郊のとある会議室、得体の知れない生物が扉を開けて室内に入ってきた。ただ、中にいる面接官の人間たちは特に驚くことなく淡々と、席に座った得体の知れない生物に向かって「それでは自己PRをどうぞ。時間は3分間です」と投げ掛けた。
すると、生物は立ち上がり、自らの頭頂部に生えている触覚のこと、胸にある扉を開けると収納スペースになっていることなど、自らが如何に珍しい生き物であるかを、ことさらおかしく必死にプレゼンした。額からは緑色の汗が噴き出している。
プレゼンをしていて生物は、面接官の目が徐々に変わっていくのを実感していた。実際、プレゼンの途中であるにも関わらず、面接官の口々からは「すごい・・・」「本物の未確認生物だ・・・」などの感嘆の声が上がっていた。
プレゼンが終わってからも室内には驚嘆のざわざわが治まることはなかった。生物は手ごたえを感じ、少しばかり得意げな顔を浮かべ、立っていた。
その後、5人いる面接官が満場一致で「未確認」の札を上げ、生物は晴れて「人間公認の未確認生物」となることができた。
「おめでとう。感動した」
生物学の権威から声を掛けられ、金色に輝く「未確認生物ステッカー」を手渡された。
「良かった。これでこれから未確認生物を名乗れる」
未確認生物は、ステッカーを手にし、これまでの他の生物に迫害されてきた日々のことを思い出していた。ただそのような暗然たる日々も今日で終わり。長期にわたり世界を支配する人間さんから「未確認生物」という称号を頂けば、自身がそこらへんにいる生物とは一線を画す特別な存在という証明になり、他の生物から一目置かれることは間違いない。家に帰ったら他の下等生物からのいじめに苦しむ息子と娘にこのステッカーを見せてやろうと思った。きっと喜ぶに違いない。
生物は笑顔を湛えて建物を出ると、珍しく焼き鳥を買って帰宅した。

【58】ネットショッピングの誘惑

僕は昔からネットショッピングに興じているのですが、最近、サイトの様子がおかしいのです。
ページ右側にある「あなたへのおすすめ商品」の欄。今までは、僕の趣味に合ったCD、書籍などが掲載されていて、僕自身、それらの情報を頼りに商品を購入。趣味の幅を広げていたのですが、最近ではその欄にて

包丁
金属バット
偽造パスポート
拳銃
目出し帽

など、随分とアウトローなものばかり薦めて来るのです。しかも、すべて高額な定価表示に横線が引かれ、50円で販売となっています。50円。破格です。
何故、そんなものが大手のネットショッピングサイトで取り扱っているのかはわかりませんし、そもそも僕自身、人を騙してお金を儲ける、人を殺す等の衝動は持ち合わせてないのでお薦めされる筋合いがありません。が、日常生活ではまず手に入らないこれらの商品がワンクリック、たったの50円で買えるなんて大変魅力的です。
初めて見つけたその日から、僕はそのサイトを見る度に購買欲求に駆られています。時には、それらの商品をカートに入れ、購入手続きを進めることもままありました。ただ、「真っ当に生きなさい」という祖母の遺言が脳裏をかすめ、寸前の所で思い留まるので購入したことはありません。
きっと意志薄弱者の僕のこと。買ってしまったらそのうち、それらの商品を実戦で使いたくなってしまうに違いありません。つまり、「購入決定」のワンクリックを押した途端、僕は犯罪者になるのです。誘惑も相当のものですが、犯罪者にはなりたくない一心でなんとか耐え忍んできました。
しかし、3日前のこと。たまたまサイトを開くと、おすすめ欄に「バールのようなもの」が販売価格50円で追加されていました。あの、ニュースでよく聞く「バールのようなもの」を手に入れられるなんて・・・。僕は欲しさのあまり、歯ぎしり、地団太を踏み、そして発狂したのでした。
それからと言うもの、時間を見つけてはサイトを開き、「あの有名犯罪者も使用!」と紹介されている「バールのようなもの」の商品説明を眺め、ニヤニヤしてばかりいます。その所為でしょうか。いつも遊んでいる友人からも「目が濁ってる」と言われました。
念のため言っておきますができればそんなもの、買いたくないのです。僕は祖母の遺言通り、真っ当な人生を歩みたいのです。ただ、「バールのようなもの」の魔力は恐ろしく強大で、どうしても購入し、振り回したい衝動に駆られてしまうのです。
そのため、ここ数日はなんとかしてそのサイトを開かないように努力しています。更に、心にゆるみが生まれないように、毎日のように嗜んでいたお酒、タバコを断ちました。しかし、どうしても「バールのようなもの」が頭から離れません。
このままでは大変危険です。僕自身、危機感を覚え、熟慮に熟慮を重ねました。
その結果、来月から出家することにしました。いつ戻って来れるかはわかりません。

【57】時間の動かし方

一秒が過ぎ、一分が過ぎ、そして一時間が過ぎる。
私たちは、そうした生活をさも当たり前のように感じ、日々を過ごしている。
しかし、考えてもみて欲しい。世界中にある時間と言う概念が毎秒毎秒、停滞せずに動き続けているのである。そう考えると、それを実現させるためには常に時間を突き動かす、持続的なエネルギーというものが必要になるだろう。
では、そのエネルギーの源はどこにあるのであろうか。
気になった僕はそのエネルギーを作り出していると言われる施設にお邪魔したのであった。

 この施設に入るまで、僕の頭の中では、てっきり、時を動かすために優秀な科学者たちが寄り集まって強大な化学反応でも起こしているのかと思っていた。しかし、案内人に通されて目の当たりにした光景。それは、貧弱な野球部員が先輩に怒鳴られながら、どんぶり飯を食わされている光景であった。
「そんなんじゃレギュラー取れねえぞ!」
ストップウォッチを手にする先輩の声が館内に響き、貧弱な野球部員は目に涙を浮かべながら、どんぶり飯を食らう。食らう。見たところ、おかずはない。
唐突にその姿を眺め、軽くパニック、気が動転していた僕であったが、腕時計を見てみれば、確かに、彼が一杯のどんぶり飯を食べるごとに時計の針が1分動いているのである。まさしく、時を動かしている瞬間に立ち合っている。僕は得も言われぬ興奮を覚えたのでした。
しかし、彼の姿を見ていて1つ気になることがあった。これだけのご飯を食べているのにも関わらず、どんぶり飯を食らう彼の体は驚くほど貧相なのである。
案内人にそのことを聞けば、彼の摂取しているカロリーこそが時を動かすエネルギーに利用されているのだと言う。だから、彼がいくらどんぶり飯を食べたとしても、筋肉が付き、野球に適した肉体になることはないらしい。つまり、彼がレギュラーになる日は果てしなく遠いのだが、彼の中では、まさか自分の食べているどんぶり飯のカロリーが時を動かすエネルギーに変換されているなどは知る由もない。
きっと、朦朧とする頭の中では、この苦行の先に、自身がレギュラーになり、仲間と共に甲子園で躍動する姿が浮かんでいることだろう。
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