のんびりと週刊誌を眺めていれば、誌面にはイギリス王室の話題。興味を惹かれ読んでみると、なんでも英国ウィリアム王子夫妻のご子息、ジョージ王子が今月から保育園に通うとのことであった。なんともおめでたい話である。そして、その誌面の片隅にはイギリス王位継承順位の表が掲載されており、そこにはジョージ王子の名が第三位として記されていた。まだ2歳ほどでありながら英国の王位継承順位において第三位に位置付けるとは、いやはや血筋というものはすごい。今後、間違いなくジョージ王子はイギリスを背負って立つ存在になるのだろうが、是非とも健全に育ってほしいものだ。そんなことを思いつつ、雑誌のページをめくろうとしたその時、僕の胸中にある1つの疑問が去来したのである
「僕のイギリス王位継承順位は何位なのだろう」
ということを書いて中には疑問を表明する人もいるやも知れない。確かに、僕は日本人である。そして僕の知る限り、イギリス人の親族もいない。つまりは、イギリス王位継承順位は限りなく低いことが想定されるが、それでも根っからのロマンチストである僕は、根拠のない過度な期待を抱いてしまう。実は、もしかしたら僕の知らない所でイギリス王室関係の親族がいて、その結果、イギリス王位継承順位の上位に食い込むなんてこともないこととは言い切れないのである。
気になった僕は早速、雑誌を放り投げるとパソコンに向かい、ネットでイギリス王位継承順位について検索を行った。それによると、どうやらイギリス王位継承順位は5000番目まで公表されているらしく、今まで僕の一人暮らしのしょうもない借家に何も便りがないことから察するに僕の王位継承順位は5000番以内には入っていないということらしい。しかしながら、5000番以降に関しては全くもって記述がなく、例えば5001番目に僕の名があるなんていうことも何らおかしい話ではないということがわかった。
夢が広がってしょうがない。仮にもしも、自らのイギリス王位継承順位が5001番であった場合、僕にはどうしてもやってみたいことがある。それは休日、渋谷などの人混み溢れる繁華街を徘徊し、時折、周囲の人々を舐めまわすように眺め、
「俺はこいつらよりもイギリス王位継承順位が高い」
と不用意に他者を見くびることによって自らの安い自尊心を満たすことである。
自分で考えてもアホ丸出しだと思う。しかし、「王位継承順位」の概念は人間の求める地位や名誉欲、あくなき選民思想追求の果てに存在するもの。そのため、僕たち人間の誰しもが「王位継承順位」の呪縛からは逃れることはできないように思うのである。しかもそれは人間だけではない。それは例え、僕の飼うハムスターであってもだ。
百獣の王、ライオンが現在の獣界における王様であるとすれば、当然、獣界の中においても王位継承順位、言い換えれば「百獣の王位継承順位」なるものが存在しているに違いない。つまりはその枠組みの中に僕の飼うハムスターも組み込まれており、全獣の中におけるハムスターの継承順位というものも決められているのである。もしかしたら、僕が知らないだけでハムスターの百獣の王位継承順位は1位であり、今後、何らかの事態が起きてライオンが絶滅した折には僕の飼うハムスターがライオンに代わって百獣の王になるという可能性も0ではない。
実際、僕の飼うハムスター自身も自らの百獣の王継承順位が高いと思い込んでいるような節がある。こいつは僕が毎日、餌をやり水をあげ、排泄等の世話までしているというのに一向に懐く気配がない。僕がハムスターと戯れようと、手を差し伸べても、僕の手を噛み、毎度の如く走ってどこかへ駆けていくのである。これはつまり、「舐められている」ということであり、では何故舐められるのかといえば、ハムスターの中で、「我らハムスターは人間よりも百獣の王位継承順位が高い」と私たち人間を見下しているからに違いないからである。
僕としても舐められっぱなしというのも癪に障る。そのためちゃんとハムスターに対して主従関係というものを教育しなくてはならないと思う。そうして僕は極めて穏やかにハムスターに対して以下のことを話すのである。
「確かに百獣の王位継承順位はお前より下かもしれないが、イギリス王位継承順位はお前より上だ」
それを聞いたハムスターはじっと僕を見つめ、それは傍観というよりむしろ、ニヤニヤと僕のことを嘲っているような表情を見せた。そして僕はそのハムスターの表情を見て妙な不安感を抱いたのである。しかも、その不安は寝る時分になるとより強大になり、その日の晩、布団の中で僕は「もしも僕のイギリス王位継承順位がハムスターより下だったらどうしよう」という疑念が頭をもたげて一睡もすることができなかった。