2007年07月16日
審査講評仮up
58th『奏』の審査講評
▽審査方法
各審査員持ち点100点。
一般審査員(2名)は総合100点。
OB審査員(56th4名57th4名)は専門50点総合50点。
ただ、電飾の人間が3人いたため、1人を総合100点とし、俺は針金と構図(専門100点)を見ました。
総合に比べ、専門では点数に差を付けるつもりでいたので(部分的に突出しているクラスがあったりするため)、結構思い切った点数のつけ方をしています。
審査員で話合った結果、点差のバラつきを抑えるために、基準(※)を設けて、(直前にちゃんと話し合えなかった審査員を除き)20点満点でつけました。
小数点そのままで計算すればいいのにと思ったんですが、四捨五入されたっぽいので、下の表では足してから四捨五入してます。計算は音速暗算ですので、間違いあれば指摘お願いします。
▽※基準に関して
20点満点を1〜10、6〜15、11〜20の3つに分割し、
それぞれを1年2年3年という風に分けました。
1年の最高傑作は例年の2年の平均程度、3年の1番下と同じくらいまで来るのではないだろうかという考えに沿ってです。
また総合点とは違い専門点に関しては、1年生でもたまに3年生と比べ遜色の無い色塗りをするクラスが現れたり、逆に電飾は3年でも失敗してしまえば真っ暗なわけで、この枠を超える作品があるのも不自然では無いと考えました。
要は学年ごとに10点満点+αといった感じです。
俺は「コレは部分的には上の学年でも全然通用するな」と思ったらためらわず上の学年と同様な点数をつけました。
「勝手にそれぞれ1〜50点で付けてね」と言うよりは、個々の点差のばらつきを抑えられたと思ってます。
▽特別賞について
審査員は事前に「今年は審査員特別賞は無い」と伝えられていました。
例年どういう風に審査員特別賞を選んでいたのかは知りませんが、
今年の特別賞に審査員は全く関与していないです。
恐らくは旭川の人達が持って行きたい行灯を選んだのかと。確証は無いですが。
教官も関与してるかも知れません。
| クラス | 針金(20点満点) | 構図(20点満点) | (針金+構図)×2.5(100点満点) |
|---|---|---|---|
| 1-1 | 5 | 4 | 23 |
| 1-2 | 3 | 2 | 13 |
| 1-3 | 3 | 4 | 18 |
| 1-4 | 3 | 3 | 15 |
| 1-5 | 9 | 7 | 40 |
| 1-6 | 6 | 7 | 33 |
| 1-7 | 5 | 6 | 28 |
| 1-8 | 7 | 8 | 38 |
| 1-9 | 12 | 9 | 53 |
[1-5]針金9点構図7点
地味ながらも迫力のある構図が光ってました。
その構図を支える地味ながらも(あえて繰り返します)そつの無い針金がより印象的でした。
1年でこれだけ違和感の無い体と衣が作れるのは凄いことやと思う。
個人的には、視線を下に向けて欲しかったです。
[1-6]針金6点構図9点
太鼓が凄かった。
ねぶたの(と思われる)写真をテントに貼って作業してたけど、いつの作品なのか、ちょっとわからないので興味があります。
太鼓は針金塗り電飾と文句無し。
炎と足が同化してるのはもったいなかったです。
あと、炎のせいで太鼓が結構隠れてるので、炎の形を工夫して太鼓が隠れないようにするとよりいい感じかと。
[1-9]針金12点構図9点
金魚の曲線美と顔の正確さは間違いなく3年レベルです。
歴代1年金賞中最高傑作と言われる「甘興覇」(53th)と肩を並べる傑作です。
金魚を中央に配置し、それを囲むようにポイ・右手・体が配置されているこの構図はかなり素敵です。人が中央なら最近それなりにあるけど、動物が中央でそれを人が囲むという発想は割と無いです。
行列終了後に色々見てみましたが、何より支柱の配置が美しくて、1年離れしていると思った。右手も金魚も揺れずに固定するのは至難の業です。こういうのが難しいんです。1、2年の人はここ大事。忘れないように。
ここまで絶賛しておいて構図の点がそこまで伸びていない(十分高いんですけど)のは、人の顔といい姿勢といい55th大賞の影響をモロに受けているため。少し減点。
| クラス | 針金 | 構図 | 総点×2.5 |
|---|---|---|---|
| 2-1 | 10 | 12 | 55 |
| 2-2 | 12 | 10 | 55 |
| 2-3 | 10 | 9 | 48 |
| 2-4 | 10 | 13 | 58 |
| 2-5 | 9 | 12 | 53 |
| 2-6 | 14 | 13 | 68 |
| 2-7 | 17 | 16 | 83 |
| 2-8 | 11 | 14 | 63 |
| 2-9 | 12 | 7 | 48 |
[2-1]針金10点構図12点
この作品も結構好きで、受賞作品+1組の4つで賞を争うと俺は予想していました。
九尾がいい感じ。
また、人と九尾が雲の上で戦っているみたいで、雲を全体に配置したアイディアは成功していると思います。
衣や雲でもっと躍動感の針金を見せて欲しかったです。
また肌色とオレンジが似た感じで、特に九尾はオレンジ一色に見えて(尻尾のグラデは弱いです)めりはりが無いので、墨や模様を思い切って入れた方が良さそう。
[2-2]針金12点構図10点
針金は割と丁寧かつ大胆に作られてる印象でしたが、余った空間が多くて、採点時はそこをどう評価するかが難しかったです。
構図的には、割とよく見る(?)蛇の構図ですが、やはり余った空間が気になるので、蛇をもっとうねらせる等の工夫が欲しかったです。
細かいことを言えば、剣を持っている意味がわからなかった。どの方向に斬ろうとしているのか、それとも突き刺してるのか。ただ置いてあるという印象を受けました。
評価には関係無いですけど、剣と蛇の単色塗りの使い方に好感が持てます。
個人的には、剣の赤はもうちょい濃い方が映える気がしますが。細かすぎますか?
[2-3]針金10点構図9点
武器にはこだわりが感じられ、好感が持てます。
今年はかっこいい武器が増えて妙に嬉しかったです。
顔の視線を上向けたのはわざとだと思いますが、やっぱり下に欲しいです。顔の印象が相当違うので。
足はいい感じだけど、ふくらはぎとかが弱弱しくて、ちょっと残念な感じに。
構図に関しては別途。
[2-4]針金10点構図13点
髑髏が凄い。かなりのインパクト。
針金は、特に衣の凹凸が無く、地味な印象を与えています。
人の姿勢が直立で、ただそこに座っているだけに見えてしまうので、体ごと傾けるとかするだけでだいぶ変わると思います。
炎のクオリティが地味に高かったりします。
[2-5]針金9点構図12点
朱雀の針金は細部まで作られていて職人の魂を感じました。
朱雀は凄く好きだったんですが、他の人や動物の針金の精度が余り高くなかったのが残念です。
この題材を扱うなら、人を主役にするにせよ、動物を主役にするにせよ、人を胴体で切って真ん中に配置するのは損なような気がしました。
動物が(人も?)どこか1点見てる方が、締まった構図になると思います。
[2-6]針金14点構図13点
人の顔が付いて急に印象が変わった行灯。
人の左腕のぐっと引っ張っている感じがかなりいいです。
こういう動きの伝わる針金が今年は少なかったので好印象。
鳥の作りこみ具合(針金と電飾)はなかなかです。
改善点は鳥の顔(下向いて欲しい)、尾羽(地味で余り伝わっていないと思う)、配色(鳥も剣も肌色も全部暖色系)といったところでしょうか。
[2-7]針金17点構図16点
針金と構図に関しては3年生と遜色無いです。
2年生の中では頭1つ抜け出している印象。
特に人の針金が秀逸で人の動きが伝わってくる、かなりいい針金です。
針金の改善点は龍。更に細かいことを言えば衣が少し薄っぺらいかなぁと。人の体に動きがあるので衣ももっと動いてていいと思う。
構図は紫焔がいい感じ。炎のとんがりが前方にも欲しかった(ほとんど上向きしか無い)、龍の体の動きが地味という部分以外は言うこと無いです。
[2-8]針金11点構図14点
銀賞と針金で差が付いてますが、これは武器が肩に刺さってる分の減点を針金から引いたせいで、構図から引くべきでした。すいません。
銀賞と針金においてはさほど差は無いと思います。
見れば見るほど武器がかっこいい。(光った時少し色が薄すぎて形がわかりづらいのが残念。)
龍の構図は新しかったが、どうだったか。なかなか魅力的な曲線だったけど、やはり龍は色々うねってないと物足りなく感じてしまう。
[2-9]針金12点構図7点
人の左足なんかは好きで、綺麗な針金作るなと思います。
龍が完全に横向いていて余り見えないのはもったいない感じが。やっぱり正面から見えたほうがいいと思います。
この行灯もですが、人の顔の視線の向きに違和感を感じます。
向かって左下が自然な視線の向きだと思うんですが・・・。
構図に関しては別途。
| クラス | 針金 | 構図 | 総点×2.5 |
|---|---|---|---|
| 3-1 | 16 | 16 | 80 |
| 3-2 | 12 | 13 | 63 |
| 3-3 | 15 | 11 | 65 |
| 3-4 | 18 | 14 | 80 |
| 3-5 | 18 | 17 | 88 |
| 3-6 | 19 | 17 | 90 |
| 3-7 | 15 | 18 | 83 |
| 3-8 | 14 | 17 | 78 |
| 3-9 | 19 | 18 | 93 |
[3-1]針金16点構図16点
直前まで全然終わっていなくて、審査の時はその先入観を払うのが1番大変でした。
針金構図共に3年の平均を少し超えるくらいかなと思ってこの点数です。
髪が顔を隠すような感じになったのは残念。それが無ければ針金の点がもう少し伸びたかも知れないです。
[3-2]針金12点構図13点
表現したいものが針金で表現し切れていないと判断して、辛めにつけました。
顔は相当いいけど、見えないので、余り点数には結びついていないです。
顔の角度も含めて、行灯全体がどこを向いているのかがわからず、一体感が感じられなかったので、その分構図の点も引いています。
電飾と塗りは素晴らしかったんですが、針金と構図に関してはこういう結果になりました。
[3-3]針金15点構図11点
割と針金はうまいなと思ったのですが、量が少なかったので、平均的な数字になっています。
構図に関しては別途。
[3-4]針金18点構図14点
針金の作り込み具合はなかなかだったと思います。
構図に関しては、鳥の羽が壁のようになってしまったこと、鳥と人のからみが無い等で引きました。
飛び立っている鳥(足が浮いてる)を表現しようとした行灯は記憶に無かったので点数をもう少しつけようかとも思ったのですが、
飛び立っている感じが出し切れていない(動きが無い)ので、特に加点しませんでした。もう少し鳥の胴体を曲げさせるとか、何か工夫が欲しかったです。作り込み具合を見る限り、技術はあると思うので。
[3-5]針金18点構図17点
鬼の顔がいい感じ。また人と鬼の視線がちゃんと絡み合ってる辺りもなかなか好きです。
他クラスに比べ少し龍に不満を感じたので針金は18点にしました。
構図は、龍のうねらせ方、人の配置の分引いて17点。
[3-6]針金19点構図17点
針金に関しては、今年の3年で1、2を争う出来だったと断言できます。
左手の接続で大変なことになって、結果不自然な感じになってしまいましたが、
そういった部分は構図の方で引いています。
左側の妖怪(?)にもう少し迫力が欲しかったです。
[3-7]針金15点構図18点
構図は龍の色の奇抜さ(成功してたと思います)と龍の手のインパクトを評価しました。原色が多いかなと思ったわりに、審査員席で見るといい具合の配色でした。
人の針金に凹凸が無く、顔の精度も高くなかったのですが、龍の立体鱗を評価して15点にしました。
龍の立体鱗は見た記憶が無いのですが、初の試みなのかどうか知りたいです。立体鱗がもっと前に来ると良かったんですが。
[3-8]針金14点構図17点
どう評価するかが1番難しかったです。
斬新さの割に構図の点が伸びていないのは、一体感が余り無かったせいです。
針金に関しては、どれを1番見せたいのかというメインのものが何なのかが伝わって来ず、どれを重点的に点を付ければいいのかわからなかったです。(大概の行灯は顔が目立つので、それなりに顔の比重は大きいです。)
豚の顔は結構いいと思ったんですけど、さすがに豚メインちゃうし・・・。手の合わせ方とか、細部に気になる針金があって、減点しました。
[3-9]針金19点構図18点
針金は顔以外、特に言うこと無いです。龍は意見分かれるかも知れないけど、俺は好きです。龍はむしろ色で損したと俺は見てます。
構図に関しては、前から見て肌色の面積が物凄く多くなってしまったのが残念です。内側の赤い衣や龍の紫も目立たないので、余計激痛です。
ただ、腕を違和感無く配置したこと。これは高く評価されるべきでしょう。
右下にスペースこじ開けて剣を持たせる構想は好きです。(できれば龍の方向に向けて欲しかったですが、好みの問題かも知れないです。)
また、墨入れが針金の迫力に比べ、だいぶ足りていないと思います。この手の行灯は墨入れが大事なのでは?(墨入れは俺の点に関係無いんですが、思ったので。)
炎の作り込み具合が凄いと思ったのに、それが前からだと全く見えないのが残念でした。
かなり針金の精度の高い(歴代最高クラスでしょう)炎だったと思います。
▽3年講評まとめ(審査時の心境って感じの文章に・・・)
実は3年の中でどの行灯が1番凄いのか、俺の中では結論出てなかったりします。
光ってる行灯が余り頭の中に残ってないせいもあるんですが・・・。
出発前の正直な感想を言うと、4組6組9組の3クラスを超僅差で5組が追う感じかなぁと思ってました。
6組と9組が終わってたのか終わって無いのか見てない状態なので、終わるという前提ですけど。
4組は光ってからの期待値込みで、6組と9組はやはり針金の圧倒する迫力。他クラスには無いもの持ってたと思います。
ただ、例年、例えば去年などに比べ、この出発前の手応えはかなり弱かったです。
自分の判断に自信が持てなかったというか。
横で別の審査員が「今年の大賞は○組かなぁ」なんて言って来たら揺らいでしまいそうな。凄い不安定な気持ちで審査員席に向かいました。
審査員の正直な気持ちとしては、ある程度確信のある状態で審査員席に向かいたかったんですけどね。あとは光ってくれるのを待つだけ。そんな状態で。
審査員席で思ったのは、2組の行灯が綺麗に光ってるなと。
誰も指摘しないから思い切ってここで書くけど、
多分、2組が5組の後だったのもあると思う。それは見てる方としては、しょうがないこと。
作っている側としては、納得行かないかも知れないけど、2組の点数が(少なくとも俺の予想以上に)伸びた理由の1つではあると思う。
俺が付けた点次第では(結果論ですけど、1番点数に差つけたのは俺みたいです)、2組は金賞どころか大賞も有り得たわけで、光った時の2組の行灯を色塗り職人は参考にすべき。綺麗過ぎる。
賞の上位に食い込むべき何かを夜になって見せ付けたクラスがこの2組。
構図的な話をすると、
今年は、新たな題材に取り組むクラスと、龍や鳥といったかつて多く見られた題材に挑戦するクラスとに2分化。
人の体を作らない行灯が急激に増えたが、
正直、体の動きが無いというのは構図のみならず、針金においても大きなマイナスで、
今回そのメリットを生かしきった行灯は無いように思えたし、
2年金賞や銀賞のような人の動きがある行灯はやっぱり素晴らしいと思う。
また針金と関連してくるが、せっかくの針金が隠れたりして見えなかったりする行灯が多くて、
凄くもったいなかった。
審査員席は予想以上に見上げる感じなので、もっと下を意識して欲しい。
針金は、気に入った箇所を列挙しておくので、参考にしてくれればと思う。
・顔・他パーツ(1組)
・ひょうたん(1組)
・波(2組)→最近この手の波増えた
・背中(3組)
・顔(3組)→墨入れが地味で残念
・真ん中の鳥(4組)→特にとさか
・鬼(5組) ・人の髪(5組) ・衣(6組) ・龍の手(7組) ・立体鱗(7組)→個人的にはかなりグッときた ・雲(8組)
・炎(9組)→最強
・龍の口の脇のとんがり(9組)
これらを混ぜ合わせると最強の行灯が!
言いたかったこととか思い出し次第付け足していきます。
▽「構図に関しては別途」
今年のいくつかの行灯で共通して気になることがあったので。今までの年では無かったことなんですが。
背景の使い方についてですが、背景をただの板のように使っているように思える行灯がいくつかありました。
背景は、余ったスペースをうまく活用するもので、板のように配置しては、本体の奥行きが狭くなって、平べったくなってしまうだけです。
また、横での絡みはあるのですが、前後での絡みが無く、行灯の一体感が薄くなっていると思います。
行灯を奥行きで三層くらいに割って、層ごとに別の作品が作られているように見えます。
一体感が無いだけでなく、後ろの層が隠れてしまい、奥行きの無い行灯という印象を与えています。(少なくとも俺にはですが。)
もともと行灯は縦横に比べ妙に奥行きが狭いので、奥行きを無駄使いするような背景の使い方は非常にもったいなく思えました。
背景というのは、本体に合わせて、形を変えていくべきもので、背景のせいで本体が狭くなるようなこと(又はそう見えること)があっては本末転倒です。

