本日の新聞では、いろんな独占禁止法関係の記事があります。日経の記事を引用すると・・・
矢崎総業などカルテルで罰金 法令順守の強化急務−独禁法違反、厳罰化の傾向では、米国での自動車用組み電線(ワイヤハーネス)などの販売を巡る反トラスト法違反で合計5億4800万ドル(約419億円)の罰金支払いに応じると発表、罰金額の内訳は矢崎が4億7000万ドル(約359億円)、デンソーが7800万ドル(約60億円)です。
次は、EU、サムスンを調査 アップル提訴を問題視−競争法違反の疑いです。これは後述します。
さらに、DeNA、謝罪と賠償求めグリーと田中社長提訴では、公取委が取引妨害で排除措置命令だした例の事件を受けて、グリーが昨年11月、10億5000万円の損害賠償をDeNAに請求していたが、今度はDeNAが、損害賠償と謝罪文掲載を求める訴訟を東京地裁に起こしたとのことです。法的根拠は一般不法行為のようです。
さて、ここで取り上げるのは、欧州委員会のサムスンの調査です。日経の記事では、次のように言っています。
日経は、欧州の「支配的地位の濫用」をいつも「優越的地位の濫用」と書くのですね。日本の独占禁止法の「優越的地位の濫用」(独占禁止法2条9項5号)と混乱するのでまずい訳語だと思うのですが、相変わらず使っています。それはさておき、これは、FRAND条項違反を支配的地位の濫用と構成しようとしているのではないか、欧州委員会はまだ諦めてなかったんだ1)、ということで、原文を見ることにしました。
1)欧州委員会は、Qualcommを調査し、2007年10月の異議告知書では、本条項の支配的地位の濫用該当性を明示したのですが、2009年11月24日に調査を終了する旨の報道発表をしています。
欧州委員会のプレスリリースはこれですね。
やはり、FRAND条項違反による支配的地位の濫用を問題にしています。もしこれを認めたら、各国の競争当局がやろうとして、どこの競争当局も成功していない法律構成に初めて成功することになります。とはいえ、Qualcomm事件等では、reasonableの部分が問題になり、対価(ロヤリティ)が高額すぎることを問題にしようとしていましたが(金額がreasonableな額かどうかは神学論争にもなりかねない難しい論点ですよね。さらに不当に高額であることがなぜ反競争効果をもたらすのかの説明もーEU法は支配的地位の濫用について、一応は「搾取的濫用」もあり得る立場だとはいえー容易ではないですね)、今回は侵害訴訟を提起することにより、license any standard essential patents を「しなかったこと」を問題にするようであり、一種の単独の取引拒絶ですから、対価の高さ自体を問題にするより、違法としやすいのかなという感想は持ちます(アップルに対してのみ不利な条件を課したと構成し、non-discriminatory 違反とすることもできそうですが、いずれにせよ競争法上は広義の単独の取引拒絶です)。いずれにせよ、今後の調査を見守りたいです。
役所の公表文書だから著作権法違反は問われないでしょうから、全文引用しておきます。Antitrust: Commission opens proceedings against Samsung
(追記)
ググってみたところ、Wireless Wire Newsのこの記事はかなり正確そうでした。下の「参照情報」も参考になります。
矢崎総業などカルテルで罰金 法令順守の強化急務−独禁法違反、厳罰化の傾向では、米国での自動車用組み電線(ワイヤハーネス)などの販売を巡る反トラスト法違反で合計5億4800万ドル(約419億円)の罰金支払いに応じると発表、罰金額の内訳は矢崎が4億7000万ドル(約359億円)、デンソーが7800万ドル(約60億円)です。
次は、EU、サムスンを調査 アップル提訴を問題視−競争法違反の疑いです。これは後述します。
さらに、DeNA、謝罪と賠償求めグリーと田中社長提訴では、公取委が取引妨害で排除措置命令だした例の事件を受けて、グリーが昨年11月、10億5000万円の損害賠償をDeNAに請求していたが、今度はDeNAが、損害賠償と謝罪文掲載を求める訴訟を東京地裁に起こしたとのことです。法的根拠は一般不法行為のようです。
さて、ここで取り上げるのは、欧州委員会のサムスンの調査です。日経の記事では、次のように言っています。
、EU競争法(独占禁止法)違反の疑いで韓国のサムスン電子の調査を始めたと発表した。サムスンは欧州各地でスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の特許侵害で米アップルを提訴しているが、同社が同業他社を市場から閉め出す目的で優越的地位を乱用しているかどうかを調べる。
サムスンは1998年、欧州の電気通信関連の標準化を進める欧州電気通信標準化機構(ETSI)に対し、欧州の携帯電話技術の標準化に不可欠な特許は第三者に「公平、合理的、無差別という条件で使用許可を与える」との約束をしていたという。
サムスンがアップルを相手取った訴訟は通信技術に関する特許侵害が理由で、アップル製品の販売差し止め請求は「第三者が特許技術を使いやすくするというETSIとの約束に違反したおそれがある」と欧州委は判断した。
日経は、欧州の「支配的地位の濫用」をいつも「優越的地位の濫用」と書くのですね。日本の独占禁止法の「優越的地位の濫用」(独占禁止法2条9項5号)と混乱するのでまずい訳語だと思うのですが、相変わらず使っています。それはさておき、これは、FRAND条項違反を支配的地位の濫用と構成しようとしているのではないか、欧州委員会はまだ諦めてなかったんだ1)、ということで、原文を見ることにしました。
1)欧州委員会は、Qualcommを調査し、2007年10月の異議告知書では、本条項の支配的地位の濫用該当性を明示したのですが、2009年11月24日に調査を終了する旨の報道発表をしています。
欧州委員会のプレスリリースはこれですね。
The Commission will investigate, in particular, whether in doing so Samsung has failed to honour its irrevocable commitment given in 1998 to the European Telecommunications Standards Institute (ETSI) to license any standard essential patents relating to European mobile telephony standards on fair, reasonable and non-discriminatory (FRAND) terms. The Commission will examine whether such behaviour amounts to an abuse of a dominant position prohibited by Article 102 of the Treaty on the Functioning of the EU (TFEU).
やはり、FRAND条項違反による支配的地位の濫用を問題にしています。もしこれを認めたら、各国の競争当局がやろうとして、どこの競争当局も成功していない法律構成に初めて成功することになります。とはいえ、Qualcomm事件等では、reasonableの部分が問題になり、対価(ロヤリティ)が高額すぎることを問題にしようとしていましたが(金額がreasonableな額かどうかは神学論争にもなりかねない難しい論点ですよね。さらに不当に高額であることがなぜ反競争効果をもたらすのかの説明もーEU法は支配的地位の濫用について、一応は「搾取的濫用」もあり得る立場だとはいえー容易ではないですね)、今回は侵害訴訟を提起することにより、license any standard essential patents を「しなかったこと」を問題にするようであり、一種の単独の取引拒絶ですから、対価の高さ自体を問題にするより、違法としやすいのかなという感想は持ちます(アップルに対してのみ不利な条件を課したと構成し、non-discriminatory 違反とすることもできそうですが、いずれにせよ競争法上は広義の単独の取引拒絶です)。いずれにせよ、今後の調査を見守りたいです。
役所の公表文書だから著作権法違反は問われないでしょうから、全文引用しておきます。Antitrust: Commission opens proceedings against Samsung
Brussels, 31 January 2012 - The European Commission has opened a formal investigation to assess whether Samsung Electronics has abusively, and in contravention of a commitment it gave to the European Telecommunications Standards Institute (ETSI), used certain of its standard essential patent rights to distort competition in European mobile device markets, in breach of EU antitrust rules. The opening of proceedings means that the Commission will examine the case as a matter of priority. It does not prejudge the outcome of the investigation.
In 2011, Samsung sought injunctive relief in various Member States' courts against competing mobile device makers based on alleged infringements of certain of its patent rights which it has declared essential to implement European mobile telephony standards. The Commission will investigate, in particular, whether in doing so Samsung has failed to honour its irrevocable commitment given in 1998 to the European Telecommunications Standards Institute (ETSI) to license any standard essential patents relating to European mobile telephony standards on fair, reasonable and non-discriminatory (FRAND) terms. The Commission will examine whether such behaviour amounts to an abuse of a dominant position prohibited by Article 102 of the Treaty on the Functioning of the EU (TFEU).
In line with the Commission's Guidelines on standardisation agreements (see IP/10/1702 and MEMO/10/676), standard setting organisations, including ETSI, require the owners of patents that are essential for the implementation of a standard to commit to license these patents on FRAND terms. This commitment serves to ensure effective access to the standardised technology. Such commitments were given to ETSI by many patent holders, including Samsung, when the third generation ("3G") mobile and wireless telecommunications system standards were adopted in Europe.
In order to guarantee undistorted competition and to reap the positive economic effects of standardisation it is important that FRAND commitments be fully honoured by the concerned undertakings.
(追記)
ググってみたところ、Wireless Wire Newsのこの記事はかなり正確そうでした。下の「参照情報」も参考になります。