王子製紙による北越製紙へのTOBに加えて、日本製紙が北越製紙の株式を取得していることが公表され、ややこしいことに、(「ワンピース」的には新たな場面にはいっていきなりto be continuedという感じに(?))なってきました。
王子による北越へのTOBの件、独禁法的にも興味深くなくはないのですが、生々しすぎて沈黙しておりました。しかし、生々しくない問題を一つ。
日本製紙が取得比率を10%未満に抑えるのは、「独占禁止法の制約を受けないのが狙い」といった記事が出ています。たしかに、企業結合ガイドラインによれば、10%未満の場合は結合関係が成立しないと読めます。だから、取得比率を10%未満に抑えるというのは、独禁法の問題を一切回避できるという点では意味があるといえましょう。
しかし、10%がたとえば15%、20%と増やしたとしても、持株比率は結合関係の成否に関するあくまで1つの考慮要因ですし、三菱商事が25%を取得するとすれば結合関係の成否においては10%だろうが20%だろうがたいした違いはないと思われます。しかも、結合関係の成立と独禁法違反との間には長くて遠い道のりがあります。
独禁法10条の株式取得の規制は、事後報告規制ですから、合併や事業譲渡と異なり、事前に届出し公取委の事前審査を受ける必要はありません(むろん、事前相談したり、相談なしで公取委が独自に株式取得前に審査するのは自由ですが)。そもそも、企業結合規制の手続見直しの際に、主要諸国と異なり10条に事前届出制度が導入されなかったのは、本件の王子のようにTOBの際に事前届出・事前審査とするのはTOBへの制約になりかねないというのが1つの理由でした。新聞報道では、王子製紙は、公取委に事前相談をしていたようですが、相談の結論が出る前に途中でTOBを開始し、事前相談は打ち切られたようです。株式取得の少なくとも手続の進行という観点から見れば、公取委が東京高裁に緊急停止命令を求めることを(また、排除措置命令がだされうることを)例外として、独禁法違反は株式取得の手続進行の妨げにならないよう設計されているのです。
また、日本製紙の北越製紙の株式取得が独禁法に違反する蓋然性があるかといえば、少なくとも紙全体で見れば第2位メーカーですので(仮に個別の紙でシェアがきわめて高いものがでたとしてもそれはごく一部でしょうから、事後的に条件付き案件として処理されるはずであり日本製紙が万一被る痛手も少ないでしょう)、「協調行動による競争の実質的制限」の問題が起こるだけが問題になるだけですが、この点については、あくまで新聞報道を見る限りですが、過去の競争状態や過去の行動から見て、生産調整等の「業界秩序」維持への関心は日本製紙は少なかったようですので、独禁法違反の蓋然性は王子製紙よりずっと低い、100%取得しても独禁法の問題はおそらくは生じない、といってよいのではないかと思います。
したがって、日本製紙がなぜ10%以上を保有しないのかを独禁法を根拠に説明することは難しそうです。ということで、10%程度保有すればTOBを失敗させるという目的達成には十分であり、それ以上の株式を大金を払って取得していくことは不要だ、そこで独禁法を考慮して10%未満に抑えましたといえば世間や株主等の聞こえがいいということかなと思ったりしています。と書きましたが、うがちすぎかもしれませんね。

PS. 昨日録画しておいた「ワンピース」、海賊たちが司法の塔の屋上に勢揃いしたところでなぜか録画が切れていました。あれで昨日は終了したのでしょうか。終了してなかったのなら悲しいです。だれか続きを録画していませんか?