改正独占禁止法が成立しました。
教科書等を改訂しなければならないわけですが、公取委の委員長は私的独占ガイドラインを作成すると国会で答弁していましたし(便利な世の中です。インターネットで国会の委員会の質疑をすべて見ることができます)、本格的な改訂等の作業はぼちぼちといくしかないかと思っていました。ところが、来週の授業の準備をしていて愕然としました。来週は、不公正な取引方法に入るのですが、一体どうやって授業をすればいいのでしょう。施行は先だといったって、法改正がなされたのに改正前の法律で説明するわけにはいかない・・・法改正のほとんどはずっと先に教えればよいエンフォースメントの部分だとはいえ、とくに不公正な取引方法の定義部分(2条9項)は大きく変わっている(各行為の要件自体は変わってないのはまだ幸運です。ちなみに、前から気になっていましたが、2条9項1号ないし5号に「正当な理由がないのに」、「不当に」が定義なしにいきなり出てくるのはやや気持ち悪いです。これらを従来通り公正競争阻害性で説明するために、解釈において、立法の経緯や目的規定等から理由付けを行う必要がありそうです)、少なくともこの部分の教科書は使えない、というわけで、この部分は自前の教材をとりあえず作ってしまうしかないかと覚悟を決め、条文も六法に載ってないので法案をコピーして配布しようかと思っております。新一般指定も、自分で作ってしまったりして(笑)・・・項の番号を繰り上げるだけでよいと思っているのですが。
(追記)教材を作っているのですが、2条9項の順番に説明すると、共同の取引拒絶→差別対価となるのですが、その他の取引拒絶(一般指定2項)の説明をする前に差別対価を説明するのはなかなか難しいです。そこで・・・ではないのですが、2条9項2号は、一般指定3項と6項の従来の関係、一般指定6項は前段のみが2条9項に置かれていること、「他の事業者の事業活動を困難にするおそれ」という要件が新たに加えられたこと等から、2号にいう差別対価は、3号に定める不当廉売に準じる不当廉売型差別対価(売り手段階の差別対価)のみだと解されるとし、単独の取引拒絶の論点は後に回し、2号を3号と一緒に説明しようと思っているのですが(したがって新一般指定でも3項が残ることになります)、そのような理解でいいのですよね、きっと・・・といいつつ、実は、現行法ですべて授業をしてしまい、最後の1時間で改正の内容を解説すればそれで完璧に理解してもらえ、かつ授業としてももっとも効率的だ、と思い直したりもしているのですが・・・
公取委の審決データベースに、NTTの東京高裁判決が出ていました。先に触れた判示部分を判決の原文で確認したところ、次のようになっていました。
「FTTHサービス市場におけるユーザーの大半は、ニューファミリータイプを分岐方式のサービスであると認識していたというより、むしろ、芯線直結方式と分岐方式のいずれのサービスを受けるのかの明確な認識はなく、最大100M bpsの通信速度の光サービスを利用できるという程度の認識しか有していなかったか、仮にニューファミリータイプは分岐方式でのサービスであるとの認識を持ったものとしても、それが芯線直結方式のサービスと比較して利便性において目に見えた差があるとの認識は有していなかったと認めるのが相当である。」こう認定できるのであれば、本件は、一応は、典型的なマージンスクイズだ(と呼ぶかどうかはともかく)として説明はできそうではあります。
念のためにと、同日に出たと報道されていた多摩談合事件の取消訴訟の東京高裁判決を検索するとヒットしました。あわてて読んでみると、なかなか興味深いです。
判決は、「上記受注調整により、実質的評価としては、地元業者より企業規模が大きいなど価格競争力に優れたゼネコン同士の競争は一切失われ、受注予定者となったゼネコン1社(受注予定者となったゼネコンをメインとする1組のJV)と価格競争力の劣る地元業者1社ないし3社(地元葉者をメインとする1組ないし3組のJV)との競争と評価すべき状況を作出しているのであるから、このような状況を作出したこと自体をもって競争を実質的に制限しているのであり、アウトサイダーである地元業者が入札に参加しているからといって競争の実質的制限が生じていないことにはならない。」としています。競争実質的制限をこのようにいえるのであれば、ゼネコンのみが参加し、しかし談合の基本合意に参加していないアウトサイダー(地元業者等)がかなり存在する談合や、ストーカー炉談合事件で談合をしたとされた5社のほかにクボタ(どの程度価格競争力が劣るかが問題にはなりますが)がアウトサイダーとしていても、基本的に不当な取引制限に該当するといえそうです。
教科書等を改訂しなければならないわけですが、公取委の委員長は私的独占ガイドラインを作成すると国会で答弁していましたし(便利な世の中です。インターネットで国会の委員会の質疑をすべて見ることができます)、本格的な改訂等の作業はぼちぼちといくしかないかと思っていました。ところが、来週の授業の準備をしていて愕然としました。来週は、不公正な取引方法に入るのですが、一体どうやって授業をすればいいのでしょう。施行は先だといったって、法改正がなされたのに改正前の法律で説明するわけにはいかない・・・法改正のほとんどはずっと先に教えればよいエンフォースメントの部分だとはいえ、とくに不公正な取引方法の定義部分(2条9項)は大きく変わっている(各行為の要件自体は変わってないのはまだ幸運です。ちなみに、前から気になっていましたが、2条9項1号ないし5号に「正当な理由がないのに」、「不当に」が定義なしにいきなり出てくるのはやや気持ち悪いです。これらを従来通り公正競争阻害性で説明するために、解釈において、立法の経緯や目的規定等から理由付けを行う必要がありそうです)、少なくともこの部分の教科書は使えない、というわけで、この部分は自前の教材をとりあえず作ってしまうしかないかと覚悟を決め、条文も六法に載ってないので法案をコピーして配布しようかと思っております。新一般指定も、自分で作ってしまったりして(笑)・・・項の番号を繰り上げるだけでよいと思っているのですが。
(追記)教材を作っているのですが、2条9項の順番に説明すると、共同の取引拒絶→差別対価となるのですが、その他の取引拒絶(一般指定2項)の説明をする前に差別対価を説明するのはなかなか難しいです。そこで・・・ではないのですが、2条9項2号は、一般指定3項と6項の従来の関係、一般指定6項は前段のみが2条9項に置かれていること、「他の事業者の事業活動を困難にするおそれ」という要件が新たに加えられたこと等から、2号にいう差別対価は、3号に定める不当廉売に準じる不当廉売型差別対価(売り手段階の差別対価)のみだと解されるとし、単独の取引拒絶の論点は後に回し、2号を3号と一緒に説明しようと思っているのですが(したがって新一般指定でも3項が残ることになります)、そのような理解でいいのですよね、きっと・・・といいつつ、実は、現行法ですべて授業をしてしまい、最後の1時間で改正の内容を解説すればそれで完璧に理解してもらえ、かつ授業としてももっとも効率的だ、と思い直したりもしているのですが・・・
公取委の審決データベースに、NTTの東京高裁判決が出ていました。先に触れた判示部分を判決の原文で確認したところ、次のようになっていました。
「FTTHサービス市場におけるユーザーの大半は、ニューファミリータイプを分岐方式のサービスであると認識していたというより、むしろ、芯線直結方式と分岐方式のいずれのサービスを受けるのかの明確な認識はなく、最大100M bpsの通信速度の光サービスを利用できるという程度の認識しか有していなかったか、仮にニューファミリータイプは分岐方式でのサービスであるとの認識を持ったものとしても、それが芯線直結方式のサービスと比較して利便性において目に見えた差があるとの認識は有していなかったと認めるのが相当である。」こう認定できるのであれば、本件は、一応は、典型的なマージンスクイズだ(と呼ぶかどうかはともかく)として説明はできそうではあります。
念のためにと、同日に出たと報道されていた多摩談合事件の取消訴訟の東京高裁判決を検索するとヒットしました。あわてて読んでみると、なかなか興味深いです。
判決は、「上記受注調整により、実質的評価としては、地元業者より企業規模が大きいなど価格競争力に優れたゼネコン同士の競争は一切失われ、受注予定者となったゼネコン1社(受注予定者となったゼネコンをメインとする1組のJV)と価格競争力の劣る地元業者1社ないし3社(地元葉者をメインとする1組ないし3組のJV)との競争と評価すべき状況を作出しているのであるから、このような状況を作出したこと自体をもって競争を実質的に制限しているのであり、アウトサイダーである地元業者が入札に参加しているからといって競争の実質的制限が生じていないことにはならない。」としています。競争実質的制限をこのようにいえるのであれば、ゼネコンのみが参加し、しかし談合の基本合意に参加していないアウトサイダー(地元業者等)がかなり存在する談合や、ストーカー炉談合事件で談合をしたとされた5社のほかにクボタ(どの程度価格競争力が劣るかが問題にはなりますが)がアウトサイダーとしていても、基本的に不当な取引制限に該当するといえそうです。
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