2007年04月
2007年04月23日
●試聴記:「クレメンティのピアノ・ソナタ」

試聴記:クレメンティ 3つのピアノ・ソナタOp.40(第1番〜第3番)
曲目:
クレメンティ「3つのピアノ・ソナタ Op.40」
演奏:ピエトロ・デ・マリア(ピアノ)
今回はクレメンティの曲を聴いてみました。
クレメンティについてはピアニストの系譜〜モーツァルトからリストまで〜
でも紹介してますのでご参照下さい。
現在、作曲家としてのクレメンティは、
「ソナチネ」や「グラドゥス・アド・パルナッスム」など
ピアノ教材用の曲で有名になっていますが、
通常の観賞用音楽も多く作曲しています。
交響曲なども作っており、最近はCD化もされています。
評判は上々のようです。
今回の試聴記では、交響曲でもよかったのですが
やはり本領であるピアノ曲を選ぶことにしました。
クレメンティのピアノ曲は実に膨大な量が残されています。
CDの全集では20枚前後にも及びます。
ヨーゼフ2世の御前演奏で弾いたといわれるのが「ピアノ・ソナタ 作品47-2」で
それを選ぶのも面白そうだったのですが
参考までにカタログ上に最も多い曲を調べたところ
「ピアノ・ソナタ 作品40」がダントツの1位でした。
録音が最も多いということは、多くの演奏家がこの作品を
クレメンティの代表作として認めているということだと思うので、
今回はこの作品を聴いてみることにしました。
因みに選から漏れた「作品47-2」ですが
後にモーツァルトがその主題を「魔笛」序曲に流用しました。
実はモーツァルトはクレメンティを酷評しながらも密かに認めていたため
競演の際に聴いたこの主題を借用したのだという説があります。
また別に、クレメンティを揶揄するために借用したという説もあります。
どちらが合っているという確証はないのですが、
モーツァルトの性格から、どうも後者ような気がします。
クレメンティのピアノ・ソナタは
3曲をセットにして1つの作品としていることが多いようです。
この作品40も第1番から第3番までの3曲で構成されています。
楽章配置は、1番が4楽章形式、2番は2楽章形式、3番は3楽章形式と
それぞれ異なっていて自由に作られています。
調性はト長調、ロ短調、ニ長調と順に上昇していき、
真ん中に短調が挟まれている点でメリハリも付いています。
それぞれ単独で演奏されることもあるようですが
一気に聴いても退屈せずに楽しむことができます。
第1番は、出だしこそ軽妙で古典派的な雰囲気ですが
3楽章にスケルツォを配置しているなど決して旧時代的ではありません。
第2楽章の叙情的な部分も、ゆったりしすぎない演奏も相まって
大変効果的に感じられます。
第2番は、短調の作品ということで、
出だしからベートーヴェン的な不穏な空気が漂います。
その後の畳み掛ける速い部分も脱古典的で聴き応え充分です。
この曲はクレメンティの中でも例外的に
昔からしばしば演奏されていたようですが
それも納得がいく非常な名曲だと思います。
第3番は3楽章形式の最もオーソドックスな構成となっていますが、
第1楽章は作品40の中で最も長大で充実した曲となっています。
この曲も単独で演奏される機会が多いようです。
個人的に、古典派のピアノオンリーの曲というのは
あまり積極的に聴かないのですが、この作品は当たりでした。
最近は廉価版が充実しているので
試しに聴いてみようというチャレンジも容易にできるようになりました。
今回のCDも800円台での購入でした。
他にも500円台のものや、10枚で2000円弱というような
とんでもない価格のCDが発売されています。
あまり買いすぎると1枚1枚に対する思いも薄れる可能性はありますが
多くの曲や演奏に接することができるのでありがたい限りです。
wrote by Solomon
2007年04月03日
試聴記:「ベートーヴェンの弟子たち」

●試聴記:「ツェルニー、リース:ピアノ協奏曲」
曲目:
1.ツェルニー「ピアノ協奏曲 イ短調 Op.214」
演奏:フェリシア・ブルメンタール(ピアノ)
ヘルムート・フロシャウアー(指揮)/ウィーン室内管弦楽団
2.リース「ピアノ協奏曲 嬰ハ短調 Op.55」
演奏:フェリシア・ブルメンタール(ピアノ)
テオドール・グシュルバウアー(指揮)/ザルツブルク室内管弦楽団
録音:1968年
今回はロマン派初期の珍しいピアノ協奏曲を収めたCDです。
録音はやや古いですがステレオ録音で鑑賞には問題ありません。
このブルメンタールという女流ピアニストはマイナーな曲を多く手がけていて
昔から貴重でありがたい音源を提供してくれる人として有名だったようです。
ツェルニーとリースはそれぞれ
「ピアニストの系譜〜モーツァルトからリストまで〜 」と
「サリエリと同時代の交響曲〜その2〜 」で取り上げている音楽家です。
リースは交響曲のほうで取り上げていますが、実際にはピアニストとして活躍したので
「ピアニストの系譜」のほうで取り上げても良かった人物です。
このCDのタイトル「ベートーヴェンの弟子たち」からも明確なように
両者ともにベートーヴェンにピアノを教わった弟子ということになります。
まずツェルニーですが、
生前は作曲家よりもピアニストとしての活躍が大きかったので
大規模なオーケストラ付きの曲は多く残しませんでした。
しかし当時の人気は非常に高く、この曲もコンサートの常連だったようです。
音楽は「イ短調」ですが、暗い感じは与えずポンポンと進んでいきます。
2楽章と3楽章が切れ目なく続くのはベートーヴェンの影響でしょう。
終結部の盛り上がりも中々で、かなり楽しめる曲のように感じました。
ちょっと残念なのはピアノのブルメンタールが時に危なっかしく感じた点です。
もう少し速い部分できびきびとした表現があればと思いました。
また、ここで指揮をしているフロシャウアーは「知る人ぞ知る」といった人物で
カラヤンファンなら誰もが聞いたことのある名前でしょう。
カラヤンが合唱曲を振る際に常にパートナーに選んでいた
ウィーン学友協会合唱団で長年合唱指揮を担当していた人物です。
もっとも、カラヤンの振る合唱曲は、オーケストラは素晴らしいものの
合唱は不揃いで損をしているというような評価が多くあって
その合唱担当であるフロシャウアーがどんな指揮をするか
多少の心配もあったのですが、ここでは健闘していました。
因みにツェルニーはウィーンで活躍したので通常ドイツ読みですが
ボヘミアの出ということもありチェコ読みでチェルニーとする場合もあります。
続いてベートーヴェンの一番弟子ともいうべきリースの曲です。
元々、リースの両親はベートーヴェンと親交がありました。
リースの父はベートーヴェンのヴァイオリン教師だったのです。
そのためベートーヴェンはリースに無償でピアノを教えました。
またリースの母が逝去したときもベートーヴェンが葬儀の手配をしています。
先にブログでリースを取り上げたときは「音源未入手」という表記でした。
これではいけないと思い頑張って入手したのが今回のCDです。
この曲は、8曲あるリースのピアノ協奏曲のうち第3番に当たります。
当時リースの最も人気のある曲だったようです。
ツェルニーのものと同様、短調で書かれていますが
暗さが前面に出ることはなく、ほいほいと聴き進めることが可能です。
あっさりしてて楽しめますが耳に強く残る曲ではないようです。
曲としてはツェルニーのほうがやや楽しめると思いますが
演奏はこちらのほうがいい気がします。
ツェルニーやリースの音楽は、既にロマン派に差し掛かっていた時期のものですが
古典派的な作りから脱することができない古いタイプの音楽だと指摘されます。
確かにそういう部分もあるかもしれません。
しかし、それを言ってしまえばこの時代のほとんどの作曲家がそうなります。
それらはいずれもベートーヴェンとの比較であり、
多くの評価者によればベートーヴェン以上に偉大な作曲家は存在しないからです。
今普通に聴くと、交響曲の前プロとして演奏会にかけられても
少しもおかしくない曲に感じられます。
ただ、やはり既にモーツァルトやベートーヴェンの曲が世に出ており
シューマンやリストがすぐ後に控えている時代ということを考えた場合
歴史上に金字塔を打ち立てるほどの存在感は示せなかったのかもしれません。
最近は埋もれた音楽の発掘も随分進んできているので
こういった知られざる作曲家の音源が多く出てくることも今後期待できるでしょう。
wrote by Solomon

