2007年03月29日
試聴記:「Liszt vs Thalberg」

●試聴記:「リストvsタールベルク」
演奏:
スティーブン・メイヤー(Steven Mayer)
曲目:
1.リスト「パチーニのニオベのテーマによる大幻想曲」(12:39)
2.タールベルク「ロッシーニのモーゼの主題による幻想曲」(14:28)
3.ウェーバー/リスト編「コンツェルトシュトック」(15:51)
4.タールベルク「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーンによる幻想曲」(14:07)
5.リスト「孤独の中の神の祝福」 (16:49)
これは「Liszt vs Thalberg」と題した1837年の2人の対決を模したCDです。
(リストとタールベルクについては
ピアニストの系譜〜モーツァルトからリストまで〜を参照下さい)
リストとタールベルクの曲が交互に収録されており、
最初の2曲が2人が対決で弾いた曲です。
現在では数少ないタールベルクの曲が収録されている点で貴重なCDといえます。
メイヤーの演奏もとても良いので聴きながら当日の対決に思いを馳せましょう。
まず最初のリストの曲「パチーニのニオベのテーマによる大幻想曲」です。
パチーニのオペラは現在ではほとんど知られていませんが、
当時はかなり人気があったようです。
出だしのリズミカルな主題は覚えやすく、
技巧もふんだんに織り込まれた音楽となっています。
リストは当時、難解な曲や先進的な曲なども積極的に演奏していましたが
この対決には誰もが知ってる旋律を使った華やかで技巧的な曲を用意しました。
やはり曲の勝負ではなく演奏の勝負だったからでしょう。
続いてタールベルクの「ロッシーニのモーゼの主題による幻想曲」です。
これはタールベルクの最も得意とした曲だったようです。
出だしのロッシーニの主題は魅力的ですが少々おとなしく、
リストのパチーニとは対照的です。
しかし、個人的な意見になりますが出だしから豪華絢爛なリストの曲よりも
叙情的な開始から次第に盛り上がりをみせるタールベルクのほうが
より魅力的に感じます。
3曲目はウェーバーの「コンツェルトシュトック」です。
本来はピアノとオーケストラのための作品ですが、
リストがそれを忠実にピアノ独奏用に編曲しました。
この曲は、タールベルクの評判をスイスで聞き、
慌ててパリに戻ったリストが、対抗の意味で開いたコンサートで演奏した曲です。
その意味で直接対決で使った曲ではないものの、
これも対タールベルクとして用意された曲ということになります。
曲はウェーバーの原曲が良いというのもありますが、
オーケストラパートをピアノで表現することにかけては比類ない才能を発揮する
リストの真骨頂ともいえる素晴らしいアレンジになっており、
畳み掛ける速いパッセージは、メイヤーの演奏も相まって見事な出来栄えです。
4曲目。「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーンによる幻想曲」。
タールベルクがイギリス国歌を元に自由な編曲を行った曲です。
断片的な主題から次第に曲の形が浮かび上がってくる
ベートーヴェン的な変奏曲になっています。
因みにこの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」は
ベートーヴェンも変奏曲を作っており、またリストも編曲を行っています。
タールベルクは他にも作品がありますが、
ほとんどがこのような元ある旋律を使った編曲です。
基本的に作曲家ではなくピアニストであったということでしょう。
様々な曲を聞き比べる必要もあまりないと思うので
2曲入っていて演奏も素晴らしいこのCDは
作曲家タールベルクを知るに充分な1枚だと思います。
5曲目。「孤独の中の神の祝福」
10曲からなる曲集「詩的で宗教的な調べ」の第3曲にあたります。
晩年のリストを代表的する名曲です。最高に美しい音楽です。
個人的にはリストの原体験とも言える曲なので、
冷静には判断できないのかもしれませんが
やはりこういうのを聴かされると、作曲家としては、
リストをタールベルクより遥か上に置かざるをえなく感じます。
晩年のリストはとっつきにくい曲が多く一般には受けが悪いのですが
その魅力にハマると抜け出せません。
wrote by solomon

