2016年01月24日

トゲオオハリアリのオスが望む最高の死に方・・・

トゲオオハリアリ 交尾
沖縄に生息するトゲオオハリアリ。
翅芽痕の付いた女王役がオスと交尾をしています。
メスの腹部が白いのはインク。
女王役は働きアリとは体のつくりは同じで、翅芽痕があることで区別できるのですが、肉眼では分かりにくいので、腹部に個体識別できるように印を付けているのです。
このように印を付けることで、女王役の行動がよく分かります。
トゲオオハリアリは、他のアリのように体のつくりが働きアリと異なる女王アリという階級は存在せず、働きアリの中の1匹だけがオスと交尾をして受精卵を産むことができます。
詳しくは過去のトゲオオハリアリの女王役をご覧ください。
この仕組みを観察によって発見した研究者の方がすごいです。

皆さんご存知かと思いますが、すべてのアリの働きアリはメスです。
オスは繁殖期のみ現れて、結婚飛行で新女王と交尾をすると死んでしまいます。
トゲオオハリアリも同じで、メスには生まれつき翅はなく、結婚飛行はしませんが、オスは交尾をして子孫を残すためだけに産まれてきます。

トゲオオハリアリ 交尾
巣の外で交尾をした女王役は、オスを付けたまま巣の中へ戻ります。

トゲオオハリアリのオス
すると、周りの働きアリたちが集まってきます。
このように交尾に成功して子孫を残せるオスは、とても幸運です。
オスはこの日のためだけに存在するのに、未交尾メスよりも、圧倒的に多くのオスが育てられるので、ほとんどのオスは交尾できずに死んでしまうのです。
しかし、この幸運なオスの最後があまりに残酷。

アリは家族で暮らす社会性昆虫で、子育てをしたり、農業をしたり、牧畜をしたりと人間と似たような行動も多く、絵本などでも可愛く擬人化されているのを見かけます。
死んだ仲間をお墓に埋葬する、なんて表現もよく見かけますが、たしかに死んだアリは一箇所に集めるのですが、これはお墓ではなくゴミ捨て場で、食べカスや排泄物も同じ場所に集めます。
巣の中で死んだ仲間は、そのまま放置すればカビなどの雑菌が繁殖して不衛生になるため捨てる必要があるのです。
そして、女王が産んだ卵を大切に世話をしますが、空腹になれば生き残るために卵や幼虫も食べてしまいます。
当然人間のような感情もなく、すべては厳しい野生で生き抜いてきた無駄のない合理的な行動なのです。
トゲオオハリアリのオス
トゲオオハリアリのオスの最後を見ると、それを改めて実感します。

トゲオオハリアリ 交尾
巣に入ってから1時間後。
頭部が取れています・・・。

トゲオオハリアリ 交尾
周りの働きアリに噛み切られたのです。
この状態でもオスは普通に動いて交尾が続いています。

トゲオオハリアリ 交尾
その後も解体が続きます。

トゲオオハリアリ 交尾
交尾開始から3時間後。
脚と翅も切り取られました。

トゲオオハリアリ 交尾
こんな姿になっても、オスの交尾は続いています。

トゲオオハリアリ 交尾
交尾開始から15時間後には胸部も切り取られ、ついに腹部だけになってしまいました。

トゲオオハリアリ 交尾
この状態でも離れない腹部がすごい。

トゲオオハリアリ 交尾
節が外されていきます。

トゲオオハリアリ 交尾
そして、交尾開始から19時間後。
完全に取り外され、メスに精子を渡したオスは、生きる最大の目的を果たしました。
このオスは成虫になってから、たった6日間の命でした。
解体されたオスの体は食べられ、コロニーの栄養となり無駄にはなりません。
交尾中に食べられる虫と言えばカマキリが有名ですが、実際は交尾を終えたオスは素早くメスから離れて逃げることが多く、複数のメスと交尾をします。
しかしトゲオオハリアリにそんな考えは一切なく、1匹のメスに確実に子孫を残してもらう道を選び、文字通り「死んでも離れない」で交尾をします。
このように長時間離れずにいることで、他のオスとの交尾を防ぐことができ、自分の子孫を確実に残すことができます。

トゲオオハリアリのオス
トゲオオハリアリの交尾は、あまりにがっちりと交尾器が連結するため、周りの働きアリによる解体が行われないと、お互いの意思では外すことができません。
つまり、交尾に成功したオスは、全個体がこの解体によって交尾しながら殺されるのです。
交尾中に殺されて解体されるまでが交尾行動の一部なのです。
残酷に見えますが、これがオスが確実に子孫を残すために進化した方法なのです。

トゲオオハリアリ 交尾
交尾を終えたメスは、女王として受精卵を産んでコロニーを繁栄させます。

ちなみに他の結婚飛行をするアリたちは、交尾後にオスが死ぬのは同じですが、雌雄は自然と離れます。
トゲオオハリアリが1匹のオスと交尾をするのに対して、他の多くのアリは結婚飛行で複数のオスと交尾をします。
複数のオスと交尾をした方が、遺伝子に多様性が出て丈夫なコロニーになるという話もあります。
キイロシリアゲアリ
キイロシリアゲアリの結婚飛行。
1匹の女王に群がる複数のオスたち。

ヨコヅナアリ
ヨコヅナアリの結婚飛行。
同じく1匹の女王に群がる複数のオス。
オスが多すぎて、この写真では女王の姿は見えません。

生き物たちの生き残り戦略はすごいですね!

コメント一覧

1. Posted by すい丸   2016年01月24日 21:43
とても興味深く考えさせられる内容でした。


産まれて1番初めに交尾するメスは たった1匹から家族を増やすのですよね?
だとしたら 最初に交尾したオスは 誰が外してくれるのでしょうか‥。

ふと、疑問に思ってしまいました。

2. Posted by taku   2016年01月25日 09:57
トゲオオハリアリは他のアリのように新女王が単独でコロニーを作ることはなく、女王役が死んだり、コロニーが大きくなり巣別れなどでコロニーが分裂した時に新たな女王役が交尾を行うので、周りには必ず仲間たちがいるのです。
3. Posted by すい丸   2016年01月29日 16:43
なるほどっ!
アリの世界 興味深いです。
去年の夏に子供の自由研究でアリを観察して すっかりアリにハマってしまったので、今年の春はアリを親子で本格的に飼うつもりです。
今からワクワクしています。

その際は またお世話になりますのでよろしくお願い致します。

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