2017年01月29日
アリの巣で暮らす雪虫の撮影
先日放送のダーウィンが来た!「大変身!北海道 雪になった虫」
季節ごとに姿を変えたり、エサを変えたり、住む場所を変えたりと、雪虫の生態の複雑さには改めて驚きました。
そして映像がものすごく美しかったですね。
1mmほどの幼虫のマクロ撮影もすごかったですが、羽ばたいて飛んでいる時の映像にも感動でした。

雪虫の解説をする北海道大学の秋元信一先生。
雪虫を40年も研究されているすごい方です。
ご自宅の広大な庭では、雪虫を観察するためにトドマツやヤチダモを育てています。
番組を見て、そもそも「雪虫ってなに?」と思われた方も多いかもしれません。
実際見た人たちのツイッターの書き込みを見ても、北海道に住む方々は当たり前のように雪虫についてのコメントを書いているのに対して、それ以外の地域の人たちは「見たことない」、「本州にはいないのかな?」などのコメントが多いようでした。
実は僕も雪虫のことを知ったのは大人になってからでした。
11月のある日、白い虫がフワフワ飛ぶのを見た妻が「雪虫だ!もうすぐ雪が降るのかな?」と言ったのです。
それを聞いた時、「雪虫って何?これアブラムシだよ」と答えたのを覚えています。
妻は高校卒業後に北海道の学校に行き、数年間北海道で暮らしていたこともあり雪虫についてよく知っていたのです。
また、「北の国から」の大ファンらしく、その中でも富良野で雪虫が飛ぶシーンがあるそうです。
雪虫は北海道では誰もが知っていて、雪虫が飛ぶと初雪が降ると知られているのです。
このように北海道では有名な虫ですが、初雪が降る前に大量に飛ぶ以外、その他の時期にどこで何をしているのかは、北海道の方も知らなかったのではないでしょうか?
北海道で雪虫と呼ばれる虫の正式名称は、トドノネオオワタムシ Prociphilus oriensと言います。
有性生殖で卵を産んだり、単為生殖で子供を産んだり、ヤチダモの枝から汁を吸ったり、アリの巣の中でトドマツの根から汁を吸ったりと、季節ごとに姿を変え様々な暮らしをしているのです。
今回、北海道大学で雪虫を研究する秋元先生と撮影をしたのですが、秋元先生から雪虫の一生を説明してもらいましたが、あまりに複雑な暮らしで、なかなか理解できませんでしたが、実際に飼育をして観察をすることでやっと理解できたほど、とにかく複雑な暮らしをしているのです。
そして、この仲間は本州にも普通に生息しています。
しかも東京の街中にもいるのです。
しかし、北海道のような大規模な飛行は見られないため、あまり知られていないのです。
去年は11月の晴れた日に自宅近所の公園でもかなりの数が飛び回っていて、前半は小さめの種、後半は大きめの種を見かけたので、どうやら2種以上はいるようでした。
去年、東京では11月に初雪が降りましたが、この1〜2週間前から飛んでいるのを見かけていました。
東京でこんな時期に雪が降ること自体滅多にないので、去年は東京では滅多に見れない「雪虫が飛び初雪が降る」を見ることができました。
ちなみに本州の雪虫は、詳しい生態はまだ分かっていないようです。
11月に飛んだ日に、近くの雑木林などで地中から出てくる雪虫を探したのですが見つけることはできませんでした。
いつか関東の雪虫の生態も観察してみたいです。

11月に板橋区の公園でたくさん飛んでいた雪虫。
初雪前に一斉に飛び立った成虫の雪虫は、ヤチダモで幼虫を出産します。
このとき生まれるのは雌雄の雪虫で、これらは短期間で成長して卵を産卵します。
卵の状態で冬を越すのです。

そして、春になりたくさんのツクシが生えるころ。

越冬を終えて卵から孵化した幼虫は、ヤチダモの新芽まで登り汁を吸いながら成長します。

ヤチダモの新芽を見ると、白い綿のようなものが付いていますが、これが卵から孵化した雪虫の幼虫です。

数週間後、丸まる大きく育った雪虫の成虫。
翅もなく冬に飛ぶ成虫とは、まったく違う姿をしています。

おしりから甘露を出し、それを収穫するためにアリが集まってきます。


この雪虫は自宅で飼育をしていたもので、試しにアミメアリを一緒にしたところ、アリはすぐに甘露の収穫を始めました。

クロオオアリを一緒にしたところ、甘露ではなく雪虫を食べてしまいました!
何度やっても食べれてしまったので、クロオオアリは一緒に暮らせないようでした。

成虫になった雪虫は、小さな幼虫を出産します。
何と1匹のメスが150匹も子供を産むようです!

そして育った幼虫たち。
白いワタワタに覆われています。

よく見ると小さな翅のようなものが見えますが、これは終齢幼虫です。

そして6月中旬。
成虫になるための脱皮です。

初夏の成虫。
翅があって秋の成虫に似ていますが、秋のように体に綿はなく、また秋ほど大規模に飛ばないため人目には付きません。
この時ヤチダモから飛び立った成虫は、続いてトドマツを目指すのです。

トドマツに辿り着いた成虫は、脚の長い幼虫を出産します。
この幼虫は自ら歩くことも得意です。
トドマツ周辺を歩く雪虫の目的は、なんとアリの巣に入ること!

トビイロケアリの働きアリが雪虫を発見しました。

触角で雪虫に触れて調べています。
そして、しばらくすると・・・。

アリが雪虫を咥えました!
アゴで咥えられた雪虫は、暴れることもなくじっと動きません。

そのままアリは巣の中へ雪虫を運びこんだのです。
実はここから先はアリの巣で生活をするのです!

運ばれている最中の雪虫は、脚を全く動かさず、折りたたんだりするのですが、これは他のアリに運ばれる習性のある好蟻性昆虫と同じ行動です。
これを見た時、雪虫はずっとずっと昔から、アリに巣の中まで運んでもらっているんだなと感じました。
ここから先の地中での暮らしは、雪虫を研究する秋元先生も観察したことはなかったようで、この姿を撮影することが今回与えられた最大の仕事でした。
そう言えば↑この映像を見た妻の感想は「髪長いね」と一言。
同感です。そろそろ切らなきゃなという限界の長さでした。
今回は裏方でのお手伝いで、出演するとは思っていなかったもので・・・。
出演すると分かっていたからと言って、事前に髪を切ったかは分かりませんが(笑)

誰も見たことのない雪虫の地中での暮らし。
1万匹のアリを飼う専門家として紹介して頂いたので失敗するわけにはいきません(笑)

秋元先生が毎年トドマツの苗木で行う方法を参考に考案したのがこちらのケース。

各面を取り外せるようにして、巣の断面を見れるようにしたのです。
トドマツの生育も考えてこの形にしたのですが、このケースには心配なこともありました。
壁を外した時に、上手く巣の断面が見れたとしても、撮影で明るくすると、アリたちが観察できない暗い中心部へ移動してしまうことでした。
それでも雪虫さえ表面の根に付いていてくれれば、落ち着けばアリも出てくると思ったのですが、アリが守っているとなると、雪虫をアゴで咥えて巣の奥へ運ばれてしまうことも考えられました。
そうなると撮影することができなくなってしまうのです。
実際、ミツバアリの巣で暮らすアリノタカラなども、すぐにアリが咥えて巣の奥へ運んでしまうので、自然な様子を撮影するのは難しいのです。

そこで、もう一つ製作したのがこちらのケースです。
厚みを数ミリに薄くすることで、地中での様子を見やすくしたものです。
土でアリを飼育する場合は古くから行われている方法。
こちらは前後をガラスにしたので裏からも観察可能です。
この中に数百匹のトビイロケアリを入れて巣を作ってもらいました。
薄いのでトドマツの生育が心配だったのですが、この状態でも新たな根を伸ばすトドマツの生命力に驚きました。
厚み、面積、土質、トドマツの根の太さ、中に入れるアリの数などが重要ポイントですが、どれも完ぺきでした。←自画自賛(笑)


これらの複数の装置を使い、トドマツの根から汁を吸い、アリが甘露を収穫する、今まで誰も見たことがなかった地中での暮らしを撮影することに成功したのです。

秋元先生も初めて見る雪虫の地下での暮らしに感動されていました。
そして雪虫はアリの巣の中で繁殖を繰り返し、秋になると一斉に飛び立ちヤチダモを目指すのです。
雪虫やアブラムシについて、いろいろ教えて頂いた秋元先生ありがとうございました!
ディレクターの水沼さん、カメラマンの皆さんお疲れさまでした。
初めて知ることばかりで本当に楽しい撮影でした。
季節ごとに姿を変えたり、エサを変えたり、住む場所を変えたりと、雪虫の生態の複雑さには改めて驚きました。
そして映像がものすごく美しかったですね。
1mmほどの幼虫のマクロ撮影もすごかったですが、羽ばたいて飛んでいる時の映像にも感動でした。

雪虫の解説をする北海道大学の秋元信一先生。
雪虫を40年も研究されているすごい方です。
ご自宅の広大な庭では、雪虫を観察するためにトドマツやヤチダモを育てています。
番組を見て、そもそも「雪虫ってなに?」と思われた方も多いかもしれません。
実際見た人たちのツイッターの書き込みを見ても、北海道に住む方々は当たり前のように雪虫についてのコメントを書いているのに対して、それ以外の地域の人たちは「見たことない」、「本州にはいないのかな?」などのコメントが多いようでした。
実は僕も雪虫のことを知ったのは大人になってからでした。
11月のある日、白い虫がフワフワ飛ぶのを見た妻が「雪虫だ!もうすぐ雪が降るのかな?」と言ったのです。
それを聞いた時、「雪虫って何?これアブラムシだよ」と答えたのを覚えています。
妻は高校卒業後に北海道の学校に行き、数年間北海道で暮らしていたこともあり雪虫についてよく知っていたのです。
また、「北の国から」の大ファンらしく、その中でも富良野で雪虫が飛ぶシーンがあるそうです。
雪虫は北海道では誰もが知っていて、雪虫が飛ぶと初雪が降ると知られているのです。
このように北海道では有名な虫ですが、初雪が降る前に大量に飛ぶ以外、その他の時期にどこで何をしているのかは、北海道の方も知らなかったのではないでしょうか?
北海道で雪虫と呼ばれる虫の正式名称は、トドノネオオワタムシ Prociphilus oriensと言います。
有性生殖で卵を産んだり、単為生殖で子供を産んだり、ヤチダモの枝から汁を吸ったり、アリの巣の中でトドマツの根から汁を吸ったりと、季節ごとに姿を変え様々な暮らしをしているのです。
今回、北海道大学で雪虫を研究する秋元先生と撮影をしたのですが、秋元先生から雪虫の一生を説明してもらいましたが、あまりに複雑な暮らしで、なかなか理解できませんでしたが、実際に飼育をして観察をすることでやっと理解できたほど、とにかく複雑な暮らしをしているのです。
そして、この仲間は本州にも普通に生息しています。
しかも東京の街中にもいるのです。
しかし、北海道のような大規模な飛行は見られないため、あまり知られていないのです。
去年は11月の晴れた日に自宅近所の公園でもかなりの数が飛び回っていて、前半は小さめの種、後半は大きめの種を見かけたので、どうやら2種以上はいるようでした。
去年、東京では11月に初雪が降りましたが、この1〜2週間前から飛んでいるのを見かけていました。
東京でこんな時期に雪が降ること自体滅多にないので、去年は東京では滅多に見れない「雪虫が飛び初雪が降る」を見ることができました。
ちなみに本州の雪虫は、詳しい生態はまだ分かっていないようです。
11月に飛んだ日に、近くの雑木林などで地中から出てくる雪虫を探したのですが見つけることはできませんでした。
いつか関東の雪虫の生態も観察してみたいです。

11月に板橋区の公園でたくさん飛んでいた雪虫。
初雪前に一斉に飛び立った成虫の雪虫は、ヤチダモで幼虫を出産します。
このとき生まれるのは雌雄の雪虫で、これらは短期間で成長して卵を産卵します。
卵の状態で冬を越すのです。

そして、春になりたくさんのツクシが生えるころ。

越冬を終えて卵から孵化した幼虫は、ヤチダモの新芽まで登り汁を吸いながら成長します。

ヤチダモの新芽を見ると、白い綿のようなものが付いていますが、これが卵から孵化した雪虫の幼虫です。

数週間後、丸まる大きく育った雪虫の成虫。
翅もなく冬に飛ぶ成虫とは、まったく違う姿をしています。

おしりから甘露を出し、それを収穫するためにアリが集まってきます。


この雪虫は自宅で飼育をしていたもので、試しにアミメアリを一緒にしたところ、アリはすぐに甘露の収穫を始めました。

クロオオアリを一緒にしたところ、甘露ではなく雪虫を食べてしまいました!
何度やっても食べれてしまったので、クロオオアリは一緒に暮らせないようでした。

成虫になった雪虫は、小さな幼虫を出産します。
何と1匹のメスが150匹も子供を産むようです!

そして育った幼虫たち。
白いワタワタに覆われています。

よく見ると小さな翅のようなものが見えますが、これは終齢幼虫です。

そして6月中旬。
成虫になるための脱皮です。

初夏の成虫。
翅があって秋の成虫に似ていますが、秋のように体に綿はなく、また秋ほど大規模に飛ばないため人目には付きません。
この時ヤチダモから飛び立った成虫は、続いてトドマツを目指すのです。

トドマツに辿り着いた成虫は、脚の長い幼虫を出産します。
この幼虫は自ら歩くことも得意です。
トドマツ周辺を歩く雪虫の目的は、なんとアリの巣に入ること!

トビイロケアリの働きアリが雪虫を発見しました。

触角で雪虫に触れて調べています。
そして、しばらくすると・・・。

アリが雪虫を咥えました!
アゴで咥えられた雪虫は、暴れることもなくじっと動きません。

そのままアリは巣の中へ雪虫を運びこんだのです。
実はここから先はアリの巣で生活をするのです!

運ばれている最中の雪虫は、脚を全く動かさず、折りたたんだりするのですが、これは他のアリに運ばれる習性のある好蟻性昆虫と同じ行動です。
これを見た時、雪虫はずっとずっと昔から、アリに巣の中まで運んでもらっているんだなと感じました。
ここから先の地中での暮らしは、雪虫を研究する秋元先生も観察したことはなかったようで、この姿を撮影することが今回与えられた最大の仕事でした。
そう言えば↑この映像を見た妻の感想は「髪長いね」と一言。
同感です。そろそろ切らなきゃなという限界の長さでした。
今回は裏方でのお手伝いで、出演するとは思っていなかったもので・・・。
出演すると分かっていたからと言って、事前に髪を切ったかは分かりませんが(笑)

誰も見たことのない雪虫の地中での暮らし。
1万匹のアリを飼う専門家として紹介して頂いたので失敗するわけにはいきません(笑)

秋元先生が毎年トドマツの苗木で行う方法を参考に考案したのがこちらのケース。

各面を取り外せるようにして、巣の断面を見れるようにしたのです。
トドマツの生育も考えてこの形にしたのですが、このケースには心配なこともありました。
壁を外した時に、上手く巣の断面が見れたとしても、撮影で明るくすると、アリたちが観察できない暗い中心部へ移動してしまうことでした。
それでも雪虫さえ表面の根に付いていてくれれば、落ち着けばアリも出てくると思ったのですが、アリが守っているとなると、雪虫をアゴで咥えて巣の奥へ運ばれてしまうことも考えられました。
そうなると撮影することができなくなってしまうのです。
実際、ミツバアリの巣で暮らすアリノタカラなども、すぐにアリが咥えて巣の奥へ運んでしまうので、自然な様子を撮影するのは難しいのです。

そこで、もう一つ製作したのがこちらのケースです。
厚みを数ミリに薄くすることで、地中での様子を見やすくしたものです。
土でアリを飼育する場合は古くから行われている方法。
こちらは前後をガラスにしたので裏からも観察可能です。
この中に数百匹のトビイロケアリを入れて巣を作ってもらいました。
薄いのでトドマツの生育が心配だったのですが、この状態でも新たな根を伸ばすトドマツの生命力に驚きました。
厚み、面積、土質、トドマツの根の太さ、中に入れるアリの数などが重要ポイントですが、どれも完ぺきでした。←自画自賛(笑)


これらの複数の装置を使い、トドマツの根から汁を吸い、アリが甘露を収穫する、今まで誰も見たことがなかった地中での暮らしを撮影することに成功したのです。

秋元先生も初めて見る雪虫の地下での暮らしに感動されていました。
そして雪虫はアリの巣の中で繁殖を繰り返し、秋になると一斉に飛び立ちヤチダモを目指すのです。
雪虫やアブラムシについて、いろいろ教えて頂いた秋元先生ありがとうございました!
ディレクターの水沼さん、カメラマンの皆さんお疲れさまでした。
初めて知ることばかりで本当に楽しい撮影でした。
コメント一覧
1. Posted by sige 2017年01月29日 12:23
私は越冬用のタマゴを産むためだけに生まれてくる虫に哀愁を感じるんですよねぇ・・・人間的に考えるとあまりに可哀想な気がして(笑)でも、全体のサイクルすべてがこの種ということなので、それで良いのでしょうね。
2. Posted by taku 2017年01月31日 11:39
ほんとですね。
厳しい冬を生き延びるための戦略ですが、そのためだけに誕生するとはすごいですよね。
厳しい冬を生き延びるための戦略ですが、そのためだけに誕生するとはすごいですよね。