2005年01月18日

貸与権創設は利用者不在を促進か

【出版インサイド】本のレンタルにも「貸与権」導入 著作権使用料で交渉難航(産経新聞)

再び貸与権創設と、それにまつわる不手際オンパレードにまつわる新聞記事です。記事を見ていただければ分かりますが、「こんな状況じゃ商売を続けられない」として、昨年中に閉店したレンタルブック店もあるそうですし。

記事を追いながら、気になる部分にちょっとコメントしてみます。

 しかし、新古書店や漫画喫茶が増え、ブックレンタルも著作者の利益に影響を与えると危ぶんだ漫画家、出版団体らが結束して貸与権を要求。昨年六月、書籍・雑誌にも適用が認められた。


上記を読むと、いかにも漫画喫茶は貸与権に関係があるように誤解されやすいと思います。しかし、漫画喫茶は書籍・雑誌を店外に持ち出すような貸出による対価を得ている訳ではないので、「貸与行為」が存在しません。漫画喫茶と貸与権は関係ありませんのでご注意を。

 条件が決まらないまま施行が近づき、昨年十二月、センターは暫定措置として全国のレンタルブック店に営業登録を求めた。センターが管理業務を始めるまでを暫定期間とし、その間の営業を違法とみない。条件が決まり次第、一月一日にさかのぼって使用料を求めることにしている。


上記内容も、すっと読めば「なるほどね」ですんなり通過してしまいそうですが、下記の指摘を忘れてはいけないでしょう。

著作権管理事業法を空文化させる文化庁 (藝夢日報 - ダイジェストさん)

貸与権について(正々堂々blog)に、出版物の貸与権について文化庁著作権課で意見交換した話が掲載されていますが、

第2点は、法施行から貸与権管理センターの実働までの間の使用料については暫定措置の上、センター実働後なんらかの形での(コミック・レンタル店に過大な負担とならないような形での)支払いを求めることになるであろう、ということ。

とあるのですが、既得権益化を図る出版社で書いたように、使用料規程を文化庁に提出してから1ヶ月経たないと、「使用料規程を実施できない」できないんですが、何を根拠に法施行からの支払いを求めることになると文化庁担当者は考えておられるのか不思議です。


訴求請求しようというのが、実は法的に間違ってるぞ、と。

再び産経の記事に戻ると、

 一方、公共図書館での非営利、無料の書籍・雑誌の貸し出しについては、著作権者の許可なく行うことができる。日本推理作家協会は昨年八月、「貸与権が認められたことに伴い、レンタル業による貸し出しとの整合性を図るため、公共図書館の無料貸し出しに対しても“公貸権”の導入、貸出猶予期間の設定など制限を設けてほしい」との要望を文化庁に出している。


公立図書館の話が出てきているが、今回の貸与権最大の副作用・市立図書館および企業内図書館の問題が書かれていないのは大変遺憾です。例えば、私立病院内の図書室などは、貸与権許諾なしには書籍・雑誌の貸出が出来なくなってしまっているのです。これは無償貸与であってもダメです。非営利・公共図書館だけが対象外です。

レンタルブックチェーンを狙った弾丸は、見事にそれてとんでもない被害者を出しているはずなのですが、こちらはまだ大きく取り上げられてきていないようです。

 作家の東野圭吾さんは「利益侵害だけを理由に、著作権を主張しているわけではない」と、強調する。「作家、出版社は、書店で定価で買ってくれる読者によって報酬を得、次の本作りができる。書店で買う人、新古書店で安く買う人、レンタル店で安く借りる人、図書館で無料で読む人が、同じ読書サービスを受けるのはアンフェア。より早く新刊を読めるなど、書店で買うお客さんを優先したい」


さあて、これを聞いてどう答えたもんだか・・・。

まず一読者としてカチンとくるのは、「同じ読書サービスを受けるのはアンフェア」との部分でしょうか。どこがアンフェアなんでしょうか?

新刊購入:在庫がある好きな書店で買えばいい。自宅の側でも勤務先の側でもいい。状態もキレイなのを選べる。キレイに読み終えれば、古本屋での引き取り価格も高くなる。在庫がなければ取り寄せることも出来る。おまけに、どちらかといえば他人より先に読める。但し定価。

古本購入:居住地にもよるが新刊書店よりずっと選択肢の限られた古本屋で購入。在庫があるかないかは運任せ。見つかるまで通う根気が求められる。状態・価格も運に左右される。同時に自身の鑑定眼も必要。運が良ければ、まあそう流行に後れず読める。数ヶ月とか数年とか、長く待てるほどに価格は下がることが多い。但し品薄になってしまうと、次に出会った時にはプレミア価格を覚悟するケースも。どこまでも本人の責任で判断。

レンタル:日本全国に2〜300店しかないので、気軽に利用できる人は限られる。一定期間中に読まねばならないという制約がある。汚したり痛めたりしないよう注意する必要がある。貸出中で借りられないこともあるし返却が必要だから、やはりごく身近にないと実質利用は難しい。電車賃を使って往復すること自体、レンタル料から考えてもナンセンス。ただし、眼を通せればそれでよし、という本を購入せず、部屋を狭くすることがないというメリットも。

図書館:個人ではちょっと買えないような高価な書籍や、絶版で購入できない書籍でも借りられるありがたい場所。但しコンビニエンスストアほどの数はないし、営業時間も短いので、利用には出かけていく時間と労力が必要。貸出待ちの場合は忍耐を要求されるし、借りたあとも期日までに読み切らねばというプレッシャーを背負った読書となる宿命あり。

これだけ全く異なる行動を要する作業を一緒くたにされても困ってしまうのです。同一の体験だとは思えませんし、全ての人に4つの選択肢があるわけでもないですよね。

しかし、そもそも「読書サービス」ってなんでしょうね?
書店で本を売ってるのは、私は、あれは商売だと思ってましたが(笑)。サービスなんですか? 図書館の貸出もサービス?
誰が誰にサービスしてくれているのでしょうか?

お金を払って「本を読んであげる(=音読、朗読)」のを読書サービスと呼ぶなら分かります。それともまさか東野圭吾さんは、本を一般人に見せてあげたり売ってあげたりすることを指してサービスと言ってるんじゃありませんよね?

まあこの記事を読んで、
「そうかよ!、分かったよ!、もう東野圭吾の本は購入する以外は一切読まないことにするよ! 立ち読みもしないし、ファンの誰かが面白いから読んでごらん、貸してあげるからと言ってくれても断るよ!、レンタルも図書館借り出しもしないよ!、要するに、書店で新刊を見てそれで購入する気になった時以外は、一切東野圭吾の文章は読まないよ!」
って気にもなっちゃうのですけれど、まあ新聞記事だしなあ・・・、という思いもあるのですよね。

新聞に掲載された短いコメントって、ホント当てにならないというか、真実を伝えることは滅多にない、というか、前後の文脈無視のケースも多いので、この短いコメントだけで東野圭吾不読運動を始めるのは早計だと思います。

でも、私は気分を害しましたけどね(笑)。
ただ、もしもどこかで東野圭吾さんが、十分に詳しい説明や意見表明をされていることがあれば、それを見てから最終的な判断をしたいと思いました。


anyway.yk at 01:30│Comments(0)TrackBack(7)貸与権 

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