2018年09月13日

ミロンガのために! Para la milongas!  

あれからもう7年になる。2011年の冬、トリオ・ロス・ファンダンゴスにとって2回目のブエノスアイレス。ミロンガ「エル・ベソ」でケンジさんに促されるままに、そこでかかる曲に注意を向けていて気づいたこと。自分たちの演奏しているような曲がほとんどかからない。それまで繰り返してきた自分たちの演奏のしかたも、みんなのダンスと合わない。これは…。それが始まりだった。この直後から、われわれの演奏は変わり始める。ブエノスアイレスのミロンガで。
その後、レパートリーが変わっていく。ミロンガでみんなが踊って楽しいかどうか。それが選曲の規準になっていった。演奏のノリも変わっていく。この変化は、2011年のブエノスアイレス前に出したわれわれのCD「4」と、2011、2013のブエノスアイレス公演の後で出した「5」の収録曲の違いにもはっきり表れている。→コチラ
この頃からあちこちのタンゴフェスに、そして各地のミロンガに招かれる機会が増える。我々の演奏で嬉しそうに踊る方々の姿を見、「踊りやすい!」「楽しい!」そんな声をミロンガで聞く度、幸せだなあと感じるようになっていく。
その頃、ある演奏者がこんな風に言うのを聞いた。「わたしたちはまだ若くて、経験も浅いので、ミロンガでの演奏が中心なんですけど…。」居合わせたわれわれ三人は思わず顔を見合わせて笑った。もはやそんなに若くもないわれわれが、ますますミロンガでの演奏の経験を積み、深めることを課題にしようとしていたからだった。
タンゴ演奏者たちにとってミロンガで演奏することは、そう難しいことではない。文字通り、そこに行って演奏すればいいだけのこと。しかし、ミロンガの「ために」演奏することには、独特の技術や経験が必要だとますます思わせられている。ミロンガでみんなが何を求めているかを知ること。みんなの身体を意識すること。ミロンガ全体の雰囲気を察知すること。どんな曲が、なぜ好まれるかを、踊る人たちの立場に立って考えること。みんなのダンスをみて感じながら、その雰囲気や動きを読みながら、自分たちの演奏をリアルタイムで柔軟にコントロールすること。テンポ、ノリ、歌い方、畳みかけ方、緩め方…。時には咄嗟に曲順や、曲そのものを入れ替えたりすることもある。それらのすべてが、ミロンガと一体になるために必要。そしてそれはミロンガでしか培うことのできないもの。
だから、きっとミロンガにおいては、どんな演奏であれ生演奏なら良い、とは限らない。その演奏が、踊っているみんなのためのものかどうか。奏でられているタンゴはミロンガとの交歓をしているか。一緒に踊っているか。どんなに演奏技術が優れていても、なお、ミロンガではそのことが問われるのだと思う。
コンサートで座って聴いてくださるお客さんと違い、ミロンガで踊っている人々は、耳だけでではなく、身体全体で聴き反応している。聴いていないのではなく、全身で感じている。その身体たちとの対話が、したい。そう考えてきた。
ミロンガでは確かに、みんなが演奏者たちの音楽に食い入るように注目し、耳を傾け、拍手喝采を送るなどということはないかもしれない。そこでは精緻なアレンジや高度な演奏技術も目立たないかもしれない。すべては、ダンスを経由して、受け止められるからだ。それが音楽家によっては、ミロンガでは自分たちの演奏が添え物のように扱われた、と感じる所以かもしれない。だからしばしば演奏家は、真っ直ぐに自分たちの演奏に向き合ってくれるコンサートやライブで認められる方が自分たちとしてより高く評価されたと感じ、安心するのかもしれない。
しかし実際には、ミロンガでは、みんないわば、ダンスで聴き、感じ、受け取り、応答している。それと演奏が対話し、響きあうとき、演奏はミロンガの中に共に入り込み、そこで共に踊る。これまで何度も、ミロンガのライブでそれが現実化したと感じる瞬間を何度も経験した。
昨年関西タンゴフェスティバルでのこと。ステージ上で気がつくと集まったほぼ全員がフロアで踊っていた。その曲が静かに終わった後、恐らく百名以上が踊っているそのミロンガで、誰も身じろぎもせず、全員が余韻に浸り、フロア全体が静寂に包まれる瞬間が訪れた。実際にはそれはそんなに長い時間ではなかったはずだけれど、まるでそこにふと、「永遠」が姿を現した、そんな風にも感じた瞬間。そしてそれに続いて、翌日、名古屋のミロンガでも同じ事が続けて起きる。奇跡のような深い静寂の、数秒間。深く、ほんとうに深く、我々の演奏が踊っているみんなのダンスの中に響き、ミロンガそのものと一体になったと感じる瞬間。忘れられない、宝物のような経験。
トリオ・ロス・ファンダンゴスは活動開始から19年。そしてますますミロンガのために演奏していきたいと考えている。各地のミロンゲーロ、ミロンゲーラのみなさん、どうぞ宜しくお願いいたします。
そして、ミロンガ以外のライブやコンサートにもぜひおいでいただきたいと願っています。ミロンガで磨かれ鍛えられているわれわれの目指す「カラダとココロ踊るタンゴ」を、座って聴いてくださる皆さんにも楽しんでいただきたいのです。

どうぞ宜しくお願いいたします!

Para la milongas!   

Posted by aogoomuzik at 22:29Comments(1)

2017年05月15日

ありがとう、タンゴ。(タンゴの節句2017終了!)

タンゴの節句2017終了!

4/27、リハーサル。聴かせるタンゴ、見せるタンゴ、みんなで楽しむタンゴ、そして踊れるタンゴがこれまでになく散りばめられたプログラムをみんなで確認。

4/28広島・カフェテアトロ・アビエルト。ナマ音ノーマイクが楽しい。ライブ感は初回の、そしてこの会場ならでは。

4/29下関・コルトーホール。前日の感触を元に、さっそくプログラムの流れを少し変更して流れを整え、スピード感をあげる。今年のお酒「おおかわち」も美味。

4/30小倉・北九州芸術劇場小劇場。大入り札止め。ついにケンジさんの歌登場!休憩時間に早々にワイン売り切れ!終演後帰っていく皆さんのホクホク顔。やっぱりふるさとだあ。

番外編5/2 咆哮と覚醒Rel Jazz Revolution#4。大名ROOMSで開催されたフリージャズのフェスティバルに呆けすとらで参加。ケンジ&リリアナも出演。「BsAs午前零時」。ヘヴィー。グルグル。ノイズ。ジャズ。ロック。暗黒地底タンゴ。すみません。

5/3宮崎・宮崎市民文化ホール。椅子が足りない!満員状態がさらに満員に。受け入れてくださる宮崎のアコーディオン教室の皆さんの手作り公演の温かさが溢れて。頭があがりません。

5/4大分ブリックブロック。ここ数年、そして特に昨年は震災の直後で、お客さんが少なくなって心配したけれど、今回ちょっとひと安心。アンケートも回収率も過去最高。感謝!

5/6福岡アクロス福岡円形ホール。千秋楽!ここも大入り札止め。満員のお客さんが、ステージを取り囲む。ああ、もう終わってしまうのかあああ、と感慨に浸る間もなく、大盛り上がりのうちに終演。

5/7サテライト企画・トリオ・ロス・ファンダンゴス主催ミロンガ、アトマにて。タンゴの節句6公演で得たものを自由に、より力強く、放出、解放する、そんな感じ。ミロンガはもはや我々の故郷。帰ってきた!帰り着いた!

そんなこんなの、タンゴの節句+αのタンゴの日々。

タンゴは、どこを切っても悲しみが満ちている。けれど、どこを切っても喜びが溢れている。それは渾然一体でひとつなのだ、きっと。裏も表もなく。タンゴのダンスもそうかもしれない。二つの身体で、一つ。

悲しいことがあっても、辛いことがあっても、タンゴはそれを受け止め、包む。そして、いろいろあるよな、まあでも踊ろう。笑おう。生きよう。そう語りかけてくる。タンゴとはそういうこと。

一緒に歩く。それがタンゴの原型。今回ケンジコーナーで何度もケンジさんはそう語っていた。身体を寄せ合って共に歩くタンゴのダンスの原初のスタイル「カンジェンゲ」の原意は「最下層」「最底辺」を意味するのだとも。いっしょに生きる、いや生き延びるってことなんだなあ、タンゴ。

100年以上の歴史を経ても、洗練されても、そのエッセンスは残っている。中心に。根底に。それがきっと今もこのカラダに響くんだ。

孤独、居場所のなさ、愛すること、大切にすること、失うこと、身を切られるような痛み、いっしょに生きていくことへの渇望と喜び…。それらがタンゴの中に息づき、歌い、踊っている。ステージ上で、何度も、切ない思いに胸がいっぱいになり溢れそうになる。しかしそれもこれも、湧き上がる喜びとひとつなのだった、いつも。

ありがとう、タンゴ。
これからも、よろしく。

ケンジ&リリアナに
スタッフのひとりひとりに
お手伝いくださった方々に
おいでくださったお客様おひとりおひとりに
メンバーとその家族に

ありがとうございました。


あ、そうそうすでにタンゴの節句2018の予定が入っているのは以下。
4/30小倉・北九州芸術劇場小劇場
5/5宮崎・宮崎市民文化センター
5/6福岡・アクロス福岡円形ホール

あっははは、鬼さん大笑い!
元気に生き延びて、辿り着きましょう!


あ、そうそう今年は昨年以上にあちこちでライブします。
6月は関東ミロンガツアー
9月は関西ツアー
12月はブエノスアイレス
そしてその間間に、広島や宮崎や大分や福岡や小倉や下関やあちこちでぜひライブをやりたいと画策中。どうぞみなさん宜しくお願いいたします!!  
Posted by aogoomuzik at 12:24Comments(0)TrackBack(0)

2017年04月17日

18歳になりました。

トリオ・ロス・ファンダンゴス。4月4日で18歳になった。世界が広がるお年頃。
1999年に3人で演奏したのが楽しくて始まったこのトリオ。出会った不思議。
2011年の2回目のブエノスアイレスでケンジ&リリアナに連れていってもらったミロンガで迎えた転機。それまでの演奏を続けることができなくなった。すでにそのブエノスアイレスでのライブミロンガから我々の演奏は変わり始めたのをはっきり思い出す。あのときから、なにもかもが変わった。ミロンガが、我々を変えた。
2014年、上海。2015年、ルクセンブルグ、ウィーン。踊るためのタンゴが我々をいろんなところに誘い連れていってくれるようになった。日本国内でもミロンガとの出会いがどんどんひろがり、深まっていく。
18年、同じメンバー。いろんなこと、それぞれに、そして一緒に。そしてまだ先へ。
ありがとう。
見守り育ててくれたおひとりおひとりに。
応援してくださったお一人お一人に。
タンゴに。
ミロンガに。
そして、人生に。

みなさん、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
  
Posted by aogoomuzik at 16:21Comments(0)TrackBack(0)