小説というのは一般的にハードルが高いイメージがあるのか、これまでは「小説で気軽に遊ぶ」という試みがあまりなされてきませんでした。しかし、それではジャンル自体の斜陽化がますます進んでしまうと危惧して、このたび私はお世話になっている文学金魚編集部さんに「リード小説」という遊び感覚の投稿企画を提案したところ、それを実際にやってみようということになりました。

 このリード小説とは、未発表オリジナル小説のあらすじや売り文句を綴った、いわゆるリード文(映画の予告編みたいなもの)だけで成立させた100字〜130字程度の超スーパー短編です。小説の帯や裏表紙の記載されている文章をイメージしてくださればわかりやすいかと思います。

 なお、その小説の完成原稿があるかどうかは問いません。つまり、リード小説は構想段階だけで書くことができるわけです。ね、お手軽でしょ? アイデアだけはあるけれど、何百枚も原稿を書ききる自信がない、あるいはその労力が面倒くさい、という企画屋タイプの方にはぴったりのジャンルです。

 というわけで、今年の初頭から私が発案者となり、文学金魚ツイッターアカウント(@bungakukingyo)にて、ツイッターユーザーのみなさん(フォロワーだけで1万5千人強)からオリジナルのリード小説を募集し始めました。募集当初は出足が鈍く、みなさん様子をうかがっている感じだったのですが、徐々に投稿数が増えてきて、最近は「リード小説家」と呼んでも良さそうな常連の投稿者もちらほら出てきました。


 なお、現段階の投稿作品群はツイッターの検索欄に「#リード小説」(#は半角)と打ち込んで検索すれば、誰でも簡単にチェックできます。今回はそれらの中で私が勝手に選んだ優秀作品(16年3月末現在)を以下にいくつか転載いたします。

@bungakukingyo:20XX年、女性誌によるシングルマザー美化戦略により、世は空前の離婚ブームとなっていた。そんな中、小学五年のヒロシはイジメに悩んでいる。クラスで一人だけ、両親がいるからだ――。かくして、ヒロシは父母を恨み、二人の仲を引き裂く計画を企てる。#リード小説

@bungakukingyo:「守備側が9人いて、攻撃側の1人に鉛のような球を全力で投げるんです」米国人がいくら説明しても、侍文化が根強く残る日本人にはなかなか伝わらない。「9対1では卑怯だ!」「守備側が鉛球を投げるなら、それは攻撃ではないか!」明治時代の野球物語。 #リード小説

@bungakukingyo:接待ゴルフの雲行きが怪しくなってきた。取引先の部長が下手すぎて、このままだと俺が勝ってしまう。俺はなんとしてでも負けるべく、後半はスコアを落とす作戦に出たのだが、手を抜けば抜くほどなぜか好ショットを連発して――。果たして敗北の行方は?#リード小説

@bungakukingyo:片田舎の村長選挙に与党公認の候補者が送り込まれてきた。五期連続無投票当選中の現職に動揺が走る。平均70歳の我が陣営にとって初めての選挙戦。資金力では勝てないと悟った現職は、ある作戦を企て秘書に命令する。「ブログとツイッター買ってこい!」#リード小説

@bungakukingyo:ある日、1年後から来た俺だと名乗る俺そっくりの男が、焦ったような顔で俺に言った。「この1年間おまえは絶対に何もするなよ、わかったな!」そこで男は消えた。・・・なんだよ、これ。超気になるじゃん。この1年間、俺に何かが起きるということか? #リード小説


 以上、なんとなくイメージが湧いたかと思います。あくまで遊びです。

 また、リード小説の投稿についてもツイッターさえ開設していれば、誰でもいつでも可能です。以下の方法で、気軽にどしどし投稿してください。リード小説は、あまり深く考えずにプロアマ問わず「小説で遊びましょう!」という試みです。

<投稿方法>
1:ツイッターの文学公式アカウント(@bungakukingyo)宛てに、あなたのリード小説を@ツイートしてください。その際、文末などにハッシュタグ「#リード小説 」と付けることを忘れずに!
2:文字数は一回のツイートでおさまるようにしてください。
3:タイトルはあってもなくても可。おもしろければOK!

<注意点>
 現在までに集まったリード小説にざっと目を通すと、既存のいわゆる「140字小説」との差別化ができていない作品が多いようです。140字小説はそれだけで完結した作品なので、雰囲気や文学的表現を重視した詩的なパッケージ感だけで勝負してもOKですが、リード小説は読者に「最後まで読んでみたい!」と思わせるセールス力を重視しているので、そこから物語の広がりが想像できるもの、つまり読者のワクワクドキドキを喚起できるスイッチであってほしいわけです。だから、映画の予告編にたとえているのです。