知人の娘さんが、来年大学受験とのこと。医学部をめざしているのだそうです。
受かって欲しいが、学費のことがあるのでできれば国立が、とは親の願い。
話によると私立の医大に6年間通うとなると家一軒ぶん買えるくらいのお金がかかるのだそうです。優秀な子供をもつのも大変です。

そんな人生とは全く無縁の私ですが、アンサンブルの練習でときどき某医大のゼミ室にお邪魔します。わがアザータのリーダーO氏がOBなので、場所をお借りしているのです。

日曜は、そのアザータの次回演奏会(4月)に向けての初練習でした。
オーケストラのために書かれたバレエ音楽を8本の管楽器+コントラバスで演奏するのですが、これがキツイ。体力的にも、技術的にも、相当がんばらなくてはなりません。このアンサンブル、趣味というよりほとんど苦行ではないかというくらいハードルが高いです。メンバーのマニアックさにも舌を巻きます。そういえば学生の頃からどうも「普通」のアンサンブルに声をかけられたことがありません。ある意味人徳でしょうか。

そんなことを書こうと思ったのではないのです。ここからが本題。
アンサンブルの練習が終わり、さて、飲み会だと楽器を片付けていると、ホルンのS氏が妙なものを見つけてきました。

それは、ゼミ室のテレビ台の下にありました。
A4のコピー用紙がばさっと置いてあっただけなのですが、S氏の目をひきつけるには十分でした。そこには

シーン1「ピーマン」
と書いてあったのです。
なんだこれー?とS氏夫妻とのぞきこむ私。どうも、台本のようです。大学の演劇部が最近公演をやった、その台本がなぜかおきっぱなしになっていたのです。
しかし登場人物が「にんじん君」「じゃがいも君」「りんごちゃん」「ピーマン」それに「たまねぎこ」です。医学部なのに「財前教授」とか「ブラックジャック」とかじゃないんです。なんだ、こののどかな雰囲気は。

そしてパンフレットも発見。
そこにこの芝居のタイトルが勘亭流の文字で書いてありました。

あっぱれ野菜祭

衝撃でした。
なにがって、その内容。小学校の学芸会でもやらないような。。。
以下、冒頭と、クライマックス(?)よりたのしげなところを抜粋。


にんじん君  そおいや、今日のことピーマンには話した?
りんごちゃん ごめん、言えなかった
じゃがいも君 じゃあ、なんて言って来たの?
りんごちゃん バナナちゃんとフルーチェしに行くって・・・。
じゃがいも君 そうなんだ、やっぱ言えないよなあ・・・。
にんじん君  バーモント家にカレーしに行くから、
       一緒には行けないなんて。

***

りんごちゃん ピーマン・・・よ、よかったね。
       なんか、素敵な野菜の仲間って感じで・・・。
       たまねぎこさんとも、野菜同士ですっごくお似合いだと思う。
       私、所詮りんごだし、果物だし・・・もともと住む世界が違っ
       たのよね。
       ううん、本当はわかってたの。わかってたけど、それを認める
       のが怖かった。

ピーマン   りんごちゃん・・・。

りんごちゃん いいの、私は大丈夫だから・・・。あの茅ヶ崎で出会ったピー
       マンとの思い出を胸に、この先に待ち構えているであろう荒波
       にも立ち向かって行くわ。

ピーマン   りんごちゃん、僕・・・。

りんごちゃん (スペシャルスマイル)絶対に、台風が来ても木から落ちたり
       しないから!もっと強いりんごになるから!


こういっちゃ、なんですが。
これが別の学校で見つけたなら、「くだらないことやってるなー」なんですが。
医大でこれを発見したことにある感慨をおぼえました。
この人たち、将来お医者さんになるんだよね。かなり高い確率で。
一橋大プロレス研究会の試合(パフォーマンス?)を見たとき以上にグッとくるものがありました。

うちのリーダーのO氏はどんなに間違ってもぬいぐるみかぶってスペシャルスマイルなんかしないと思われる、スペシャルマジメな風貌だし、いかにも、「医者」って感じの性格だし、みんながみんなそうとは思わないけど少なくとも彼を通じてしか医大の人間を知らなかった私としては、「あっぱれ野菜祭」的要素がこの学校に存在するということが衝撃でした。なんだ、医学部ってエリートの集まりだと思ってたけど、意外と普通なんだね。じゃ、ありません。意外とアホなんですね。

外に出ると救急車が来ていて、門の外には生々しい血が落ちていました。
こんな日常の中にいると、ときどきはぬいぐるみをかぶって「りんごちゃん」になって別の世界に遊びたくなるのかもしれません。凡人には医者にもじゃがいも君にもなれないのです。

神田川を渡る夜風に吹かれながら、そんなことを考えました。

ツボに入ってしまったS氏と私は、今日になって「あっぱれ野菜祭」のwebsiteを「ハッケンしますた!」とか「アルバムも!」とかアホ報告をしあっていました。

関係者のみなさま、万が一これを読んでも怒らないで下さいね。
むしろ公演に行けなくてものすごく残念なんですから・・・・。