2018年06月15日

信じることは難しい

「仕事をしたい。大工だ」
昼休みに突然会社に壮年男性が訪ねてきた。

詳しく話を聞けば、仙台の刑務所を出たばっかりで、故郷の九州に帰る途中で金銭がなくなったとのこと。


「じゃあ仕事する?」って言うと

「九州帰りたい」って言う(笑)
「野宿になっちゃう」って言う(笑)


(あんたがいったんじゃんか…)
と、思いつつも、彼は次に達筆に書かれた誠意文を見せてくる。。


「九州まで幾ら?」って聞くと
「21000円」って即答(笑)




これは十中八九、寸借詐欺だろう。
いや。。しかし、まて。
詐欺にするもしないも、
僕次第なんじゃないのか?って、
その壮年男性の刺青眉毛と瞳を直視する。


以外に瞳の奥は濁ってない。


「解った」といい。
21000円を渡した。
30000円の小遣いの70%である(笑)


壮年はキョトンとして
「九州帰ったら必ず返します」
って言う。

「返さなくていい」
と僕は言う。




僕は彼と縁を結ぶことにした。
彼の心の奥底には必ずこの事象が
こべりつくだろう。
本人が解っていなくとも。
来世か来来世か解らないが、
きっとこれを因子とした果実は
我々二人に現れてくるに違いない。




「がんばってね」と
最寄り駅までの道を教えた。



以前に、市橋達也の逃亡記録を著した文庫を読んだことがある。

印象的なことが書いてあった。。


(昔付き合ってた彼女に「皆に好かれるにはどうしたらいいんだろう…」って聞くと「そんなの無理に決まってる」と言われ酷く悲しく成った、今僕は逃亡して指名手配され、皆に好かれることは無かったけど、憎まれることは出来た、っとおもったら涙が溢れて止まらなかった。)



という文章があった。


それをおもいだした。


僕らは商店街のくじ引きのように、ジャラジャラと六角形の箱の中で回され、カチンカチンとお互いにあたり、善悪も良悪も区別することなく「縁」だけを結び続けているんだな…


市橋達也服役囚も
真面目に働かず人からお金をとる人も
真面目に働く僕らも

不完全な人間であるから


なんの違いもなく

明日はわが身の紙一重で

この世は成り立っている。    




たまたま

今世は善人でしたね。

と呼ばれ


悪人だったな。


と呼ばれる違い。



親鸞いわく
善人なほもて往生をとぐ
いわんや悪人をや。



人を疑うことは、いとも簡単なのに。
何かを信じることは斯くも難しいことなんだと思うと、疑いの世界にこれ以上拍車をかけてはいけないと思った(笑) 


おっさんを
全面的に信じることにした。




妻にその夜 この出来事を話すと。


表情も変えず

「自分のお小遣いだからいいんじゃないの…傘地蔵ならいいね。」


といわれ 


背筋が凍ったのは
言うまでもない。


aokazu0319 at 16:03ひとりごと・・  この記事をクリップ!
略歴

青山圭成

1977年3月19日生まれ。A型。日本大学工学部建築学科卒業。一級建築士・一級建築施工管理技士。趣味は歴史散策・歴史小説。

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