中堅企業の税務・財務はここがポイント

税理士法人名南経営 青木慶太朗 公式ブログ

 消費税の税率は平成294月より10%に引上げされることになっていますが、同時に負担感の緩和等を目的として、食料品等に軽減税率が導入される予定です。ただ、この軽減税率導入にあたり、平成334月よりインボイス方式という制度が導入されようとしています。このインボイス方式とはどのような制度でしょうか。

現在は帳簿方式などといわれる制度で、帳簿及び請求書等に記載された取引金額(=税込金額)108分の8を掛けることにより消費税額を計算します。帳簿等に消費税額を記載する必要はありません。現在の帳簿方式の最大の欠点は、今回の軽減税率のような複数の税率がある場合の対応が難しいことです。税率ごとに取引金額を区分していくしかないのですが、それらが正しいかの検証が難しく、不正も排除しきれないと言われます。

これに対して、インボイス方式は、課税事業者が発行するインボイスに記載された消費税額を控除税額として消費税を計算する方式です。基本的にはインボイスに記載されている税額を足すことにより計算していく形になりますので、複数税率の計算も容易と言われます。また別の長所として、現在の帳簿方式では、消費者が支払った消費税相当分が結果的に国庫に納付されず、年間売上1,000万円以下等のいわゆる免税事業者の儲け(いわゆる益税)として取り込まれてしまうことがありますが、インボイス方式ではこれを排除できます。

結果的に実際の税額計算では、一部の端数計算等を除けば両者に大きな違いはないのですが、実務上の問題点は、主に次の2点にあると考えています。

1つは、インボイス方式では、免税事業者が取引から排除されやすくなることです。例えば、1,080円の物を買うとしても、課税事業者から買うときは仕入控除ができるため、実質負担が1,000円で済みますが、免税事業者から買うときには1,080円の負担になってしまい、免税事業者から買うと結果的に8%分負担が増えることになります。会社の経費としてお金を使う場合に、例えばタクシーに乗るときには、念のため個人タクシー以外に乗りなさいとか、取引先と打合せをするときにも小規模な喫茶店は使うなということになるかもしれません。逆にこれらに備えて、個人事業者も敢えて課税事業者になる者が多いのではないかと言われます。

もう1つは、システム等の改修を強いられることです。例えば、現在の財務ソフトは帳簿方式を前提で作られていますが、これをインボイス方式のものに変えなければなりません。市販のソフトなら再購入等の負担で済みますが、中堅以上の企業で財務システムをオーダーメイドで構築している場合には、数千万円単位の出費もあり得ます。請求書の発行をソフト等に頼っている場合にはこちらの負担も生じます。

製造業など、うちは食料品を扱うことがないからまったく問題ないという誤解もあるのですが、食料品を扱わない事業者でも大いに影響を受けてしまうのがこのインボイス方式なのです。

 現在は、銀行や証券会社等の金融機関で取り扱う金融商品については、その商品ごとに課税方法が異なっています。例えば、上場株式等の売却益は20.315%であるのに対し、割引債の償還差益には18.378%、利付債の売却益に至っては非課税、といった具合です。特に平成以降の規制緩和等により新たな金融商品が多数産まれたこともあり、商品ごとに課税方法が異なることはわかりにくい部分があります。そこで、一定の金融商品については課税方法を統一しようということになり、まず上場株式等と公社債と公社債投資信託についての課税一体化が、年明けの平成2811日から始まることになりました。

 具体的な改正内容ですが、今回の改正で対象となるものについては、すべて税率が20.315%に統一された上で、対象となった金融商品間での損益通算や、損失の繰越が3年間できるようになります。つまり公社債・公社債投信を今までの上場株式等と同じような形にして課税がされるということです。例えば、公社債の利子所得を上場株式等の譲渡損失と損益通算できるようになったり、利付債の譲渡損失が出てしまった場合にその損失を他の所得と損益通算したり、3年間繰越したりできるようになったりしますので、一定の場面では有利になります。しかし一方で、今までは非課税だったのに課税になるという不利となる場面もでてきます。そこで今年12月までに売却等をしておいたほうがよいのか、よくあり得る具体的な事例として次の2つを挙げたいと思います。

 まず1つ目が利付債の売却損益についてです。今までは、利付債の売却損益については非課税である一方、損失の場合でも他の所得との損益通算や翌年以降への損失の繰越控除が認められていませんでした。これが上場株式等と公社債、投資信託の範囲内での損益通算と損失の繰越控除ができるようになります。したがって、売却益が見込めそうな利付債については今年12月までに売却した方が税制面では有利です。他方、売却損となりそうな利付債については税制面だけを考えれば来年1月以降に売却すべきということになります。

 もう1つが外貨建MMFです。これも利付債とまったく同様の考え方になります。今までは非課税扱いということもあり、外貨預金代わりに外貨建MMFをお持ちの方は意外に多いのではないかと思います。そして、最近の円安により含み益となっている方が多いのではないでしょうか。そのような場合には、非課税扱いとなる今年12月までに一度売却をしておけば、含み益については課税がされません。

 金融商品をお持ちの方でも、買ってからは放置しているという方もいらっしゃると思います。今回の税制改正は良い機会ですのでみなさんがお持ちの金融商品について、現状を見直してみてはいかがでしょうか。

法人税率の引き下げの実現可能性が高くなっています。
今まで税率引き下げに消極的であった自民党の税制調査会も容認に転じ、
昨日6月3日に政府与党が税率引き下げを決定したと報じられています。

こうなってくると次の焦点は、
現時点での税率25.5%(地方税等も合わせた実効税率では約35%)が、
何%下がるかというところでしょう。
政府与党周辺からは、まずは税率を20%台へという話が出ていますが、
そうだとすれば、あと5%下げるということになります。

ただ、この話、法人の経営者であっても、実は喜べない場合もあります。
それは、表面税率が下がっても、課税ベースの拡大が検討されていて、
実際の納税額は税率の引き下げほど減少せず、
むしろ、増税にさえなる法人もあると思われるからです。

課税ベースの拡大というのは、
法人税の表面税率を下げたことによる税収の減少を埋め合わせるために、
税率以外の部分で増税するようなイメージであり、
新聞報道であがった検討されているものの一例をあげると、
①繰越欠損金の使用制限拡大
②租税特別措置の縮小
③外形標準課税の強化
④減価償却における定率法の縮小・廃止
⑤受取配当の益金不算入制度の縮小
などです。


このうち、もっとも法人「数」において影響が大きいと思われるのが、
①繰越欠損金の使用制限の拡大
です。
現状でも、資本金が1億円超の法人を中心に使用制限がかかっていて、
所得金額の80%しか欠損金の控除ができない、
言い換えればいくら欠損金があっても黒字になれば必ず課税がされるという形になっています。
これを中小法人にも広げようということです。


平成24年度のデータを見てみると、
法人税の納税をしている法人は全体の27.3%しかありません。
ただ、全体のうち27.6%、会社数でいえば約76万社は
黒字ではあるが繰越欠損金があるため納税をしていない法人になっています。
政府側から見れば、
この27.6%の法人に納税をさせれば、
1社あたりの金額は小さくても数は多いということで、
減収分のある程度の部分の埋め合わせができるという目論見ではないかと思います。


ただ、赤字法人の側からすると、明らかな税負担増となります。
今までは法人税をまったく納めなくてよかったのに、
実効税率の引き下げを契機に納税する必要が出てくる、
なんとも皮肉な話ですが、そのような話が現実に起こる可能性が出ています。
しかもそんな会社が27.6%、4社に1社以上もあるのです。


もちろんまだ決まった話ではないですし、
ドイツやフランスでは、所得制限がありながらも、
所得金額100万ユーロまでは全額控除を認める、
というような中小企業に配慮する規定もありますので、
それらにならえば、直ちに27.6%の企業すべてに課税が起こるわけではないのかもしれません。
しかし今後この部分の動向には注目していく必要性高そうです。

このページのトップヘ