控訴審判決でも開門して調査しろという一審判決を踏襲する判決となりました。大変良かったですね!
その昔、菅直人議員が諫早湾の現地で干拓事業を真っ向から批判していた映像が昨日、テレビで繰り替えされていました。
崖っぷちの菅政権ですが、国はさっさと判決を認め、まずは5年間開門し、第三者がしっかりと調査すべきです。
私たち環境総合研究所は、当時本業そっちのけで3ヶ月かけてボランティアで諫早湾干拓事業でつくられた突堤にある水門を開門した場合、潮(方位、流速)がどの程度戻るかについて3次流体シミュレーションを行いました。
シミュレーションでは対象範囲、境界条件の設定として、有明海、不知火湾全体を対象として計算するなど、膨大な計算量となりました。しかも、大潮、中潮、小潮それぞれの満潮、干潮時をひとつの目安としています。
調査報告は全体で4章から構成されています。
◆青山貞一、鷹取敦、池田こみち(環境総合研究所・東京)
諌早湾閉め切り開放に伴う潮流の予測・評価に関する自主調査研究
http://eritokyo.jp/independent/gulf/isahaya/isahaya3/index.html
その結果、実在する二つの水門をあければ、かなり潮流は回復することが分かりました。当時、佐藤謙一郎衆議院議員(民主党)からの提案で、築堤の真ん中にもうひとつ門を開けた場合どうなりますか?というリクエストに対応し、3つあけた場合の詳細シミュレーションも行っています。
これらの成果は当時、朝日新聞一面にカラーで報道されました。
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水門開放シミュレーションと政策提言(朝日新聞一面) |
◆環境総合研究所(青山貞一、池田こみち、鷹取敦)の開門シミュレーションの詳細は以下
諌早湾閉め切り開放に伴う潮流の予測・評価に関する自主調査研究
http://eritokyo.jp/independent/gulf/isahaya/isahaya3/index.html
http://eritokyo.jp/independent/gulf/isahaya/isahaya4/index.html
http://eritokyo.jp/independent/gulf/isahaya/isahaya5/index.html
http://eritokyo.jp/independent/gulf/isahaya/isahaya6/index.html
また開門シミュレーションに先駆け、ダムをつくったことによっていかに水質が悪化したかについてのスプライン補間法による解析もCOD,T−N,P−Nについて詳細に行いました。 以下はそれを報ずる東京新聞(佐藤直子記者)です。
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長崎県諫早湾干拓事業による水質悪化を警鐘 (東京新聞記事) |
◆環境総合研究所(青山貞一、池田こみち、大西行雄(理学博士)、鷹取敦(工学修士)、鷲三知恵(理学))の水質解析の詳細は以下
諌早湾調整池閉め切り前後の水質変化の解析・評価について(2001/2/6)
諫早湾調整地環境モニタリング調査結果の暫定的解析と評価について
この分野は環境総合研究所の同僚で大阪代表の大西行雄さん(京大大学院博士課程→京都大学防災研究所→琵琶湖研究所→環境総合研究所大阪代表、理学博士、EFORUM幹事)が日本を代表する研究者であり、専門家です。
シミュレーションのための数値計算モデルは大西さんが京大院時代開発し、東大、東北大、山口大、愛媛大などで使われてきた3次元流体モデル(潮流モデル))を使用しています。当然、大西さんにも助言、指導をもらいましたが、干潮満潮で地形が変化する、すなわち境界条件が変わる点は十分考慮されていません。
干潟を本格的に考慮するための研究を行うために、トヨタ財団、WWFなどの助成金にトライしましたが、いずれも却下されています。
その後、鷹取さんが石川県などからの仕事でこの分野を引き継ぎ九州大学流体力学研究所の先生らの指導も受けモデル構築をしてきたので、再度モデル改造にトライしてみたいと思います。
また地裁、高裁勝訴を記念し、東京工業大学大学院で行う非常勤講義の中でこのシミュレーションをビジュアルに解説してみたいと思います。
以下は判決骨子
