2010年12月23日午後5時から一時間5分、岩上安身氏による小沢一郎議員へのロングインタビューがネットメディアのUstreamとニコニコ動画の生中継として行われた。

終了後、共同通信、読売新聞、中日新聞、産経新聞などが以下のような記事を公表した。共同通信の記事を使って中日新聞など多数の地方紙が以下のような記事を読者に伝えている。

■小沢氏、胡主席と11月に会談 APEC来日時
共同通信
2010年12月24日 00時35分
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2010122301000650.html

民主党の小沢一郎元代表は23日のインターネット動画番組で、
中国の胡錦濤国家主席が11月に横浜市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席のため来日した際に、会談していたことを明らかにした。 小沢氏は「胡氏がこの間、日本に来たとき『会いたい』と言うから、『儀礼的な社交辞令で会うのは嫌いだ』と言ったのだが」と説明。会談は15〜20分間だったといい、小沢氏は映画「山猫」の一節を引きながら「変わらずに残るためには、変わらなければならない。これが私の人生の政治哲学だ」と伝え、中国共産党独裁体制の転換を暗に求めたという。(共同)

■小沢氏、中国主席と会談していた…11月横浜で
読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101223-OYT1T00564.htm

民主党の小沢一郎元代表は23日、インターネットの番組で、衆院政治倫理審査会(政倫審)への対応について、「(小沢氏の資金管理団体の政治資金規正法違反事件は)司法の手続きに入っているから、立法府が同時並行で同じようなことをやるのは、三権分立の精神から言うと筋違いだ」と述べ、出席しない考えを改めて強調した。

「(政倫審に)出席しないことが障害となって野党が審議拒否するとか、選挙に負けるのであれば出る。ただ、現実には違う問題で野党はいろいろ言っている」とも語り、問責決議が可決された仙谷官房長官らの続投に問題があるとの考えを示唆した。

また小沢氏は、11月に横浜市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際、中国の胡錦濤国家主席と会談していたことを明らかにした。「(胡主席が)『会いたい』というから(会った)。僕は、儀礼的な社交辞令で会うのは嫌いだから『結構だ』と言ったのだが」と経緯を説明したうえで、会談では胡主席に「(中国は)変わらないとだめになる」と述べ、中国政府の統治手法に限界があるとの考えを伝えたという。
(2010年12月23日21時10分 )

一方、当該インタビューのうち、上記の記事に関連する部分をテキスト化してみると以下のようになる。

★岩上安身:小沢一郎インタビュー カメラ(1) カメラ(2)

岩上:
延長してもよろしいですかね。よろしいですか。ちょっと5分、10分。

小沢:
あ、いいです。

岩上:
じゃあ、ちょっとご了解得たので少しお話を続けさせていただいて。
今、あのすごい佳境なんですけれどもね。

日本が現実、置かれているというのはそれはやっぱり国際社会の力学の中で、やっぱり置かれている。それは北朝鮮がどんなに脅威であっても、やはり中国がノーと言っている限りアメリカだってできない。

小沢:
できない。

岩上:
やっぱり中国の存在というのは大きいわけですね。

小沢:
中国は、今、半島についていえば現状維持ですから。金正日の政権をいいとは思っていないんじゃないですかね、内心は。だけどそれをぶっ壊したら、ごちゃごちゃになって、北朝鮮は存在しなくなっちゃいますから。そうするとあれが自由主義、民主主義で半島が統一されたら、すぐ満州と境ですから。

岩上:
そうですね。そこに米軍が駐屯する可能性がある。喉元に。

小沢:
米軍以上に国民の交流が激しくなりますから。それで朝鮮族というのはもともと満州にいっぱいいるんですから。

岩上:
吉林省やなんかに。

小沢:
いっぱいいるんですよ、騎馬民族ですから、高原の。北の方は特にね、北朝鮮は。そういう意味で中国にとっては統治の上で困るんですよ。だから現状維持なんですよ。その気持ちは分かるけれども、もう少しあんな無茶苦茶な乱暴はやめさせなきゃだめだよと、いうことを中国に言わなくちゃいかん。

岩上:
小沢さんは、中国のトップ政治家と直に会ってですね、さしで話が出来る非常に数少ない政治家なわけですけれども、この今の状況なんかで、非常に今、半島問題というのは緊迫しておりますけれども、中国の指導者達とは話し合いをしたことが、あるいは話し合う可能性というのはあるんですか。

小沢:
僕?今は僕は何にも立場がないからね、なるべく余計なことをしないようにしているんですけど。背景は中国ですから、中国がああいう多民族の大きな国家ですから、なかなか強い権力じゃないと統治持たないんですね、統一が。その点は分かる。だけどその権力で統治するっていう手法から、民主主義の民意を尊重するっていう手法に徐々に変えていかないと、僕は、必ず政権の限界が来るよ、と。共産党政権は崩壊するよ、と。

岩上:
はっきり言ったんですか。

小沢:
ええ言いました。

岩上:
相手はどなた。

小沢:
え?

岩上:
相手はどなたに。

小沢:
相手は中蓮部の部長さん。ちょっと前ですけどね。それがそうでないスタッフの人とも議論した。

岩上:
胡錦濤さんとか、ああいう方ともそういう。

小沢:
胡錦濤さん、こないだ日本に来た時、会いたいというから、僕は儀礼的な社交辞令で会うの大嫌いなもんですからね、いいって言ったんだけれど、会いたいっていうから、それじゃ15分か20分で何言おうかと思って、それで僕は自分の好きな「山猫」のあの

岩上:
ビスコンティ。

小沢:
おう、イタリア革命の「変わらずに残るためには変わらなければならない」これが私の自分の人生と政治の哲学だ、胡錦濤主席にもこの言葉を贈りたい、と。

岩上:
中国に「変われ」と言ったわけですね。

小沢:
「変われ」と言った。変わらないと駄目になるよと

岩上:
一党独裁ではなく、徐々にでもいいから民主化しろと。

小沢:
そうそうそう。その通り。ソフトランディングが大事だと。

岩上:
直言したわけですね。

小沢:
短い時間ですし、その場でね、どうこう言わないけど、「山猫」の革命の時の映画の台詞にアレして彼に贈った。言葉を言った。


読売、産経、中日、共同通信などの記事では、小沢一郎議員が2010年11月、横浜市で開催されたアジア太平洋閣僚会議(APEC)の際に中国の胡錦涛主席にあって話したこととされているが、上記インタビューでは、今年の11月はじめ横浜市のAPECの際に会ったとは小沢氏はひとことも話していない。

私(青山)自身、当初、読売の記事を見たとき、当初、読売の記者はこういうところに着目して記事化しているのかと思っていた。

すなわち、尖閣列島中国漁船問題が発生した後で、2010年11月のAPEC開催時に小沢氏が胡錦涛主席と会って上記のような話をしていたとすれば、これはすごいことだと思っていた。

しかし、インタビューのアーカイブを再度一から聞いて見ても、APECの際に小沢氏が胡錦涛主席に会ったなどという発言はどこにもないことが分かった。

そんなとき、阿修羅Webでこれは誤報でないかという以下の書き込みを発見した。
読売12月24日の誤報(小沢氏、中国主席から「会いたいと」11月会談)

その書き込みの中に、以下に掲載する民主党公式Webがあった。

それは2008年5月7日時点で、当時民主党代表だった小沢氏が中国の胡錦涛国家主席との会談したことに関する記述である。しかもその中に、小沢氏の上記の言説を裏付けるフレーズがあったのである。

2008/05/07
両国が協力すれば解決の道拓く
小沢代表が胡中国国家主席との会談で



出典:民主党公式Web

出典:民主党公式Web

小沢一郎代表は7日午後、来日中の胡錦濤中国国家主席と都内で会談し、日中両国の友好、民主党と中国共産党との友好を確認した。

冒頭、小沢代表は、胡主席の今回の来日が日中両国、両国民の信頼・友好構築のための大きなきっかけになることを期待していると歓迎の辞を述べ、さらに、昨年の中国訪問時の歓迎に対する感謝の意を述べた。

胡主席は、両国は幅広い共通利益を持ち、世界の安定と平和に大きな責任を持つとしたうえで、こうして民主党のリーダーと会談できることをうれしく思うとして、「今回の訪問は、相互信頼、未来を企画し、新たな発展を築くため」と来日の意義を強調した。

また、この間、中国は著しい発展を遂げたが、「中国は世界最大の発展途上国であり、格差、アンバランスもあり、近代化にはまだ長い道のりがある。私たちは、2020年にゆとりある社会を構築することを目標に立てた。改革開放を推進し、力強い原動力とシステムを保障する。人間本位、人間を一番大事にし、均衡・持続可能な発展を遂行する。そして私たちの政治体制を改革し、社会主義、民主、人民の利益を保障する」と今後の中国の目指す方向を明らかにした。

小沢代表は、相互互恵関係を築くことは同感だとし、「両国関係も国内の問題も両国が協力すれば解決の道を見出せる」と表明。そのうえで、「変わらずに残るためには変わらなければならない」(イタリア革命を描いた映画の一節、小沢代表が20歳の頃に見て感銘を受けたもの)との言葉を紹介、「これを政治哲学として、日本も変わらなければと訴えてきたが微力の故、実現していない。中国国民、日中、世界のために胡主席の力強いリーダーシップを発揮してほしい」と要望した。

これを受けて、胡主席は、「哲理のある話をうかがった。30年来の我が国の発展は、改革開放を原因としている。世界の平和に貢献するためにも改革開放をゆるぎないものとしていく。それが13億人の人民の意志であり、我が党の信念、理念である」と表明、また、民主党からの中国訪問を歓迎するとした。

小沢代表は、「誠意をもってあたれば、難問は解決できると思う。両国関係だ
けでなく、人類史、世界史的にも大きな役割を果たせると信じている」と応えた。

会談には民主党から、羽田孜最高顧問、菅直人代表代行、輿石東代表代行、前原誠司副代表、北澤俊美副代表、鳩山由紀夫幹事長、山岡賢次国会対策委員長、奥村展三総務委員長代理(役員室担当) 、野田佳彦広報委員長、細野豪志(日中)交流協議機構事務局長が同席した。

となると、読売新聞も共同通信も、さらに共同通信の配信を受けた中日新聞、産経新聞などは、小沢氏に一切取材せず、2008年5月の小沢、胡錦涛会談を2010年11月のAPEC開催時の会談とはき違え報道したことになる。

報道のイロハは、5W1H、すなわちいつ、どこで、だれが、なにを、...とあるが、いつ、すなわち期日はきわめて重要な要素だ。

◆5W1Hとは

ニュース記事の最初の段落はリードと呼ばれる。ニューススタイルの規則では、リードには以下の「5W」の多くを含むべきとされている。すなわち、Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(どうして)したのか、である。しかし日本においては、「5W」にさらに下記の「1H」を含む「5W1H」であるべきであるとされる。How(どのように)日本では、教育現場で国語や英語の文法の指導に使われることもある。

出典:Wikipedia

私は大学で3年前まで、情報編集リテラシー(ビデオ編集実習)の授業を担当していた。この演習では、ニュース報道を想定し、5W1Hをベースに学生がニュース素材のビデオクリップを制作する。当初、NHKなどのOBが担当していたが、私もテレビ局関連シンクタンクにいたこともあり、5年ほど担当した。

おそらく読売、共同などの記者は小沢サイドに一切取材せず、また過去の記事などを調べもせず、思いこみによって2010年11月のAPEC開催時と原稿を書き、デスクも整理部もチェックせず、報道された可能性が高い。

そうだとすれば、5W1Hも満足に確認できない新聞は、果たして新聞社などといえるのであろうか?

また誤報だとすれば、まさにこれは「期ずれ」である。小沢氏の政治資金規正法問題で強制起訴される内容は、4億円で世田谷区の土地を購入した時期の「期ずれ」である。

小沢氏の「期ずれ」は、理由あって年月日の期日を翌年当初にしているが、今回の大新聞の記事は、いずれも小沢氏が常々述べているように、大メディアは裏も取らず間違った記事を出している。だととすると、一体新聞各社はどう弁解するのだろうか?

それとも単なる「期ずれ」に過ぎないと、修正もせずとぼけるつもりであろうか?