放射性物質に汚染された災害廃棄物に関して、国がこの間やってきたことは、原理的に間違ったことを独善的に基礎自治体に押しつけていることであり、それに反対する市民らを脅すなど民主主義国では到底考えられないことを連日連夜行っていると思います。

>今日も隣の学科長が東京新聞の一面を私のところに
> 持ってきて、この種の問題を広域処理しようとするこ
> と自体、エントロピー理論の観点から180度間違っ
> ていませんか? と言ってきました。

 彼は何ら環境問題の専門家でも放射性物質の専門家でもありません。画像処理技術の専門家です。

 エントロピー増大の法則とは、自然(世界)は常に、エントロピーが小さい状態から大きい状態に進むということです。すわなち、自然はすべからく『秩序から無秩序へ』という方向に進むといってもよいでしょう。

 たとえば卑近な例をとれば、整理整頓された部屋は、そのままほっておくと、次第に乱雑になります。けっして勝手に整理されることはありえません.

 たとえば、コーヒーにミルクを一滴たらし、ほおっておくとミルクは次第に広がり、最後にコーヒーと完全に混ざってしまいます。これは一箇所に集まっていたミルクの分子が、時間とともに散らばっていったという現象でです。

 今回のがれき問題に関連し、国が基礎自治体などに押しつけていることを簡単に説明すれば、一箇所に集まった汚染物質の状態から汚染物質を含むがれきが全国にバラバラに散らばる状態を意味します。これをエントロピー増大の法則と言います。

> >  ※エントロピーは物や熱の属性で、それらに対する
> >   拡散の程度を表す状態指標量と言えます。

 まさにその通りで、放射性物質に汚染された災害廃棄物を燃やす、燃やさないの問題以前に、せっかく汚染が一定範囲に集中して存在、分布しているのに、それをあえて意図的に広域処理により汚染を拡散させるのは愚の骨頂といえます。エントロピーを意図的に増大させるあってはならない行為と言えます。

 さらにひとたびエントロピーが高まると、それをもとの状態に戻すには膨大な費用がかかります。がれき処理ではありませんが、除染という行為をみればよくわかります。一説では、日本中で除染を行うと20兆円とか40兆円も費用がかかるされています。もうこうなると、除染が日本社会特有の一種の利権と化すことになってまいます。

 このように、もともと原発事故はトンデモな事故であることは間違いありません。原子力村のひとびとが想定していなかったにせよ、これほどトンデモなことはありません。

 しかし、国がやろうとしていることは、せっかく一カ所に集まっている汚染を意図的に薄く 広く拡散させることであり、その結果、中長期的にもその処理がきわめて困難となり、費用がかかるのはあたりまえの話です。

 次の問題は焼却処理に関わる問題です。

 周知のように、災害廃棄物にはさまざまなプラスチック類、金属、非鉄金属、アスベスト、農薬はじめさまざまな物質が混在しています。これはいくら分別しても混在は免れません。それらを一般廃棄物用あるいは産廃用の焼却炉で焼却すれば、本来存在しない膨大な量の化学物質、それも有害な物質をあえて生み出してしまいます。

 さらに一般廃棄物焼却炉のように高い煙突で拡散させれば遠くまで汚染が拡散します。それは時間をかけ水などで川にそして海に運ばれ、食物連鎖により濃縮されます。オンタリオ湖のPCBでは、最高で2500万倍まで濃縮されています。


出典:マリンブルー21資料もとに環境総合研究所


出典:環境省資料をもとに環境総合研究所作成

 ※オンタリオ湖PCBの生物濃縮の事例は、「失われし未来」にあります。
   以下の図を参照してください。


出典:「失われし未来」の図を元に環境総合研究所作成

 これは何も、放射性物質に汚染された災害廃棄物問題に限らず、PCB、ダイオキシン類、水銀など重金属類の汚染についても、ほぼ同様のことであると考えます。

 にもかかわらず、我が国では廃棄物処理法のもと、ゴミは国策のもと燃やして埋めるを永年繰り返してきました。国策という意味は、国が自分たちの政策、施策、ガイドラインなどに追随すれば、補助金、地方交付税などにより実質的に70〜84%の補助率で焼却炉を建設する基礎自治体に巨額の税金を投入してきた事実があるからです。

 これについては、以下の論文をご覧ください。
 
青山貞一:廃棄物焼却主義の実証的研究〜財政面からのアプローチから 武蔵工業大学環境情報学部紀要(大学名は現在、東京都市大学)

 以前、テレビ神奈川の私への連続インタビューのなかで、私が話した「本牧にある海面埋立方式の一般廃棄物最終処分場に放射性物質に汚染され濃縮された下水汚泥の焼却灰や飛灰を処分してゆけば、飛散などにより再浮遊し、海に放射性物質が落ちたり、漏れ出て長期的には魚介類を汚染する可能性が否定できない」というコメントに対し、環境省の言いなりになっている横浜市が、市民の危惧、不安をよそにテレビ神奈川の報道局に「市民を煽るな」とクレームをつけにきたそうです。

 現場の記者らは横浜市の行為に怒り心頭でしたが、その後、取材にこなくなったことをみると、おそらくテレビ局の上層部が横浜市の恫喝に屈した可能性すらあります(そうでない場合は、ご連絡をください)。

 市民、住民からもっとも近いところにいる市町村がこれですから、どうしようもありません。第三者(青山貞一)が研究者として、過去の経験からコメントしていることに、こともあろうか、テレビ局に直接行政がそんな報道するなと言ってきたわけで、あきれてものがいえません。日本の自治体には、自分の頭でまともに考える能力がほとんどなくなっているというのが実感です。

 さて、上記の数々を考慮すれば、福島第一原発事故に起因する放射性物質対策の基本、とりわけ今回のように発生源近くに汚染が集中している状況では、たとえば福島原発ないしその敷地周辺 に、私たちが提案しているような遮断型の施設をつく り、そこに放射性物質を封じ込め、長期にわたりしっかり汚染物質を管理する方法を採用するのが当然です。これはイタリアのセベソ事故後の対策を見るまでもなく明らかです。

 にもかかわらず、国や環境省は、上記の原則や理論をまったく理解せず、今までがそうであったように、何でも集め、 燃やすことに奔走しています。国は福島県民を何ら 説得できず、安易に全国各地で災害廃棄物をもやし埋めることを指示し、思考停止の多くの自治体は、国賊呼ばわりされるのを恐れ、それに従いつつあるのが現状でしょう。
 
 この分野における日本の常識は世界の非常識であることは間違いありません。悪い意味でのガラパゴス化を永年日本はやってきたのです。

 以下は私たちが提案している案です。

復興は安全で安心、環境に配慮した
 持続可能なまちづくりのグランドデザインから


                 青山貞一、池田こみち

 ここに示す提案は、復興のための各種のインフラ整備はじめ巨額の資金がともなうものであり、ここで間違えると将来に大きな禍根を残すこともある。さらに平地にまちを復興する場合、将来、再度大きな津波がきた場合にどう物理的に対応するかという大きな課題がある。

 青山貞一、池田こみちは、この重要課題について、瓦礫処理に連携し、海岸側に20−30mの防波堤(防潮堤)を構築する政策提言をしている。この政策提言は、欧州諸外国における実例をもとに、日本の廃棄物処理法、沿岸法など現行法とも齟齬がない形で構築が可能であり、費用対効果にも優れた方法であると考えている。

 東日本大震災の瓦礫の処理に関連し、日本政府(環境省)は、私たちが30年間批判してきた燃やして埋めるやり方を瓦礫に適用しようとしている。

 だが、この「燃やして埋める方式」は、汚染を大気、水、土に広げるだけで、本質的な問題解決にならないことは間違いありません。ましてや放射性物質を含む場合は論外である。

 また瓦礫処理を廃棄物処理という範疇だけで、目の前の瓦礫をなくすだけの処理では今回、まちづくり、とくに津波対策との関連では問題解決にならない。

 津波対策を考慮した瓦礫処理として私はひとつの大胆な計画を提案する! 

 それは沿岸域の陸側最先端部分に、コンクリート構造物で管理型処分場に類する堰堤、防波堤型の処分場をつくることである。

 まず、提案する防波堤型の瓦礫処理の概念図を以下に示す。



出典:青山貞一、池田こみち

 これは堤防型の管理型最終処分場の中に、瓦礫類を燃やさず埋め立てることになる。 規模は、たとえば堤防ブロック一つ当たり、幅(30m〜50m)×長さ(50〜100m)×高さ(15〜30m)とする。この防潮堤、防波堤を兼ねた瓦礫の処分場を地域の実情に合わせ、10、20と連たんさせることになる。

 以下に平面図を示す。


出典:青山貞一、池田こみち

 処分場の上には、表土をかぶせ低木などを植える。

 当然、時間がたてば表土は沈降、沈下する。

 必要に応じ、たとえば福島県の場合には、遮断型として管理型処分場の上にコンクリートのフタを付ける。福島県内の海岸では、放射性物質を含む土砂、瓦礫が多くなるので、遮断型とすれば万全である。

 また瓦礫は分別し、この処分場に処分するのではなく、仮置し、将来、リサイクルなりリユースできるものはすればよい。

 こうすることで、ほとんど瓦礫類を遠隔地に運ぶ必要も、燃やす必要もなくなる。環境汚染は通常の管理型処分場と同じであるから、2次処理まですれば排水を公共用水域に流すことも可能である。

 ただし、福島県の場合は、放射性物質を含む瓦礫となる可能性が大なので、遮断型とし内部に雨水、海水が入り込まないような構造とし、放射性物質を含む排水が外部に出ない構造とする。

 一方、宮城県、岩手県など、放射性物質を含む瓦礫がほとんど存在しない場合は、コンクリート構造の管理型処分場とし、コンクリートのフタを付けない場合は、2次処理まで可能な水処理施設を50〜100mの間隔でつける。

 コンクリート構造物は汚染水の重力浸透を防ぐので水処理装置を常時モニタリングしながら監視すれば汚染の問題は深刻にならないであろう。

 10年以上経ったら、小高い古墳状の緑地でありスーパー堤防となる。もちろん、この場合には、その内側の平地でまちづくりが可能となるので、新たに山を削ったり造成する必要もない。

 この方式のヒントは、北イタリアでミラノ北にあるセベソにある。またスーパー堤防はオランダのペッテンやデンフェルダー地方にある。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防の断面概念図
出典:青山貞一、池田こみち

 以下の写真はオランダのペッテンにあるスーパー堤防である。

 堤防の海側は自転車道路となっており、自転車が高速で走行している。オランダのペッテンの堤防では、それより海側の波打ち際は散歩道や犬の散歩道、ドッグランとなっており、鎖を解かれた犬が喜んで泳いでいた。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一

 また堤防の陸側は、牛、羊などの家畜の放牧場となっていた。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一

 さらに上の断面イメージにあるように、陸側にはもう一つの防波堤があり二段構えとなっていた。その外側には、以下のようなかわいらしい住宅がたくさんあった。

オランダ・ペッテン地区にある防波堤の内側の住居
撮影:青山貞一

 費用対効果(費用対便益、B/C)は計算していないが、従来の日本の運んで燃やして埋める方式に比べれば環境負荷、環境汚染は大幅に少ないし、もとより大津波を考慮したフリーハンドのまちづくりが、震災以前の従来の平場で行えることになる。となれば高台を造成したり、隣地開発し大規模な住宅地を造成する場合に比べ、B/Cは絶大だと思う。

 なお、防波堤(防潮堤)の高さは、明治三陸津波及び東日本大津波の各地の波高を考慮すべきである。以下の表によれば、波高の高さは地形などの条件で、地域により異なるが、およそ15m〜30mとなろう。