がれき(災害廃棄物)に含まれる放射性物質(おもにセシウム)の含有量(単位:ベクレル/kg)と放射線量(単位:μSv/h)の関係について質問が多数寄せられていますので、以下に私が書いた学会論文(1)と独立系メディア E-wave Tokyo(2)に書きました論考から、推計式を示します。

   ただし、土壌の場合は膨大なデータがありますが、放射性物質を含むがれき(災害廃棄物)に関しては、両者の関係式を割り出すための基礎データがほとんどないので、あくまで参考にとどめてください。

<土壌の場合>

 ご質問の件ですが、土壌に含まれる放射性物質の含有量と時間あたりの放射線量(μSv/h)との間には、以下のような関係がおおむね認められていますが、これはあくまで土壌の場合であり、放射性物質を含むがれきではありません。

  私どもが文部科学省の土壌に含まれる放射性物質の 含有量(単位:Bq/kg)と放射線量(単位:μSv/h)データの相関分析を行ったところ、おおむね10,000Bq/kg=1μSv/hとなりました。

 ただし、上記におけるμSv/hは地上1mの高さで土壌からの放射線量を計測した値となっています。データ数は1,356地点です。  上記については、私たちの以下の論文の4.に書いてありますので、ご覧ください。

※(1)◆青山貞一・鷹取敦・池田こみち  福島原発事故に起因する放射性物質による地域汚染の実態解明と汚染構造の把握(速報)、環境アセスメント学会誌、2011年 Vol.9 No.2 
 http://eforum.jp/aoyama-takatori-ikeda_assess_society-2011-9.pdf

 私たちの解析に類する値は、以下のURLにある推計でも、ほぼ同様の値があります。以下はそのうちのひとつです。  http://www.justmystage.com/home/suzakihp/fk2/f25.html  ただし、以下の推計では、当初、単位が Bq/kg ではなく Bq/m2 (平方メートル)となっており、後半の方に、 Bq/kg と Bq/m2 の換算式があります。 

 それによれば おおむね  1Bq/kg = 20Bq/m2 となっており、単位をBq/kgにすると、私たちの解析値とほぼ同じ値となります。 <がれきの場合>  一方、がれきについては、がれき中の放射性物質の含有量を測定したデータ、とりわけ土壌のように多くの測定数のデータは見あたりません。以下は私が書いたがれきの場合の推計です。

※(2)◆青山貞一;不透明な瓦礫処理と環境・利権問題  掲載月日:2011年10月5日  
   独立系メディア E−wave Tokyo
   http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col1188..html

 以下は関連論考 ◆青山貞一:「除染」は「移染」そして「利権」  独立系メディア E−wave Tokyo  以下は上記の論考の関連部分であり、  おおむね 6,000Bq/kg = 1μSv/h から

 8,000Bq/kg = 1μSv/h となっていることがわかりましたが、あまりにも基礎データ数がすくないので、土壌ほどの信頼性はないと思います。

 以下、上記の論考の関連部分  放射性物質に汚染された瓦礫やそれを焼却処理した場合の焼却灰の放射能(Bq/kg)と空間線量(μSv/hなど)の相関分析結果はあるものの下水汚泥についてはほとんどありませんが、同一のBq/kgなら土壌より下水汚泥の方がμSv/hがやや高いと推察されます。

 理由は下水汚泥の方が均一に放射性物質が入っているからです。土壌の方がやや深いところに放射性物質が少ない部分がある、つまり分母がその分大きくなって薄められる(=Bq/kgが小さめになる)のではないかと推察されます。  その後、以下のURLにある原子力安全基盤機構 廃棄物燃料輸送安全部による「災害廃棄物の放射能濃度の推定方法について」平成23年6月19日という報告を見つけました。

 http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/03-mat_2.pdf  

 上記の報告を見ると6,000Bq/kgで約1μSv/hとなっており8,000Bq/kgだと1μSv/hを超えることが分かりました。  仮に上記の土壌に類すると仮定すると8,000Bq/kgは1μSv/hを超えることになり ます。そもそも、環境省は、これについての実証分析を行いデータを公表していないことが問題です。

 上記の仮説がそこそこ正しいとすると、国や自治体が汚泥や焼却灰を8,000Bq//kg以下だから管理型処分場に処分してもよいというのは、きわめて乱暴な話となります。まして10万Bq/kgも管理型処分場に処分できるとなったら大変です。

 というのも、処分した汚泥や焼却灰が乾燥し、管理型最終処分場から放射性物質を含むあるいは付着した粒子状物質が再浮遊すれば近くの住宅地の大気や土壌、植物を汚染し、その空気を吸った住民はもともと地面から受ける放射線に加え、それらの放射線の曝露を受けることです。

 ちなみに8,000Bq/kgで年間8760μSv超、になります。

 8,000Bq/kgで年間8760μSvとしたら8万/kgだと88mSv、約10万Bq/kgだと約110mSv超となります。

追記
  昨年秋、10月と12月に福島県いわき市の薄磯地区でがれきの放射線を測定する機会がありました。測定は地上1mでがれきからの距離は約1mです。値は0.7μSv/h超えとなりました。以下にデータを示します。

◆青山貞一・池田こみち: 第5次福島県放射線現地調査結果<福島県いわき市小浜港〜薄磯海岸> http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col1200..html

 先に示した関係式から推計すると、ここの瓦礫に含まれるセシウムの含有量(放射能量)は、 4200Bq/kgから5600Bq/kg となります。