青山貞一ブログ

独立系メディア「今日のコラム」に連動するブログ

福島原発

福島原発事故の長期災害リスク 鷹取敦 青山貞一


みなさま

青山貞一です。

 今日は昨日、収録したビデオの編集を行いました。
 鷹取敦さんへのインタビューです。

◆福島原発事故の長期災害リスク 鷹取敦 青山貞一 独立系メディア

 この動画は、福島県内で原発事故による放射能リスク
以外の災害死だけで、すでに1500人に及んでいる
実像に迫るものです。しかも、66歳以上の高齢者が
死亡者の大部分であるというセンセーショナルなもの
です。

 今後、おそらく放射能、放射線による死亡もでてく
ると推察されますが、原発事故による災害関連死がか
くも多いのはなぜか?

 以下は動画のリード文です。

<動画のリード文>

 本動画は、2011年3月11日に東日本大震災に伴って発生した東京電力福島第一
原発の過酷事故による被害のうち、放射性物質による直接の健康リスク以外の側
面について指摘したものである。

 事故発生直後の緊急避難により、高齢者、障害者、病気を持った方等が困難な
状況に陥り犠牲が出た。その後、福島県から15万人もの強制避難、自主避難さ
れ、長期避難によるいわゆる「災害関連死」によって原発による強制避難地域の
高齢者を中心にストレスや閉じこもりがちで孤独な生活により、既に1500名
近くの方が亡くなっている。

 災害関連死以外に、地元の主要な産業である農業・漁業の経済的な損失や将来
への不安、家族、地域における人間関係の破壊や分断、放射線による健康リスク
への不安や、外出を控える事等によるストレスや生活習慣病などの健康影響の顕
在化、差別への不安、不信等多くの問題が起きている。

 日本政府の対応は、過去の原発事故、放射能汚染事故の教訓に学ばず、トップ
ダウンで「安心安全」を強調する対応に終始し、被ばくの高い人への優先的な対
処を行わず、意志決定の透明性、住民参加、正確な記録等、最低限行うべきこと
すら行っておらず、住民へ適切な選択肢を示すこともせず、問題をより深刻にし
ている。

 政府の対応を根本から見直すとともに、研究者による正確な実態把握と公表に
加え、ニセコ町が行っているように、自治体が策定している原子力防災計画へ住
民参加による反映すること等が必要である。

がれきの広域処理の本質的問題  池田こみち、青山貞一


 がれきの広域処理が全国的社会問題となっています。

 政府は広告代理店を使い巨額の広告費で新聞、テレビで一方的 にCMを流し、事務連絡で基礎自治体にがれきの処理を押しつけ ています。  

 独立系メディアE-wave Tokyoの本動画は、この政府の動きを察 知し昨年春から一貫して関わってきました池田こみち氏にさまざ まな角度から青山貞一がインタビューするとともに、詳細編では 討議を行っています。

 ご覧頂ければ分かるように、環境省のこの間の対応は、到底、 民主主義国家とは思えないものであり、かつ非科学的なものです。

◆池田こみち・青山貞一:がれきの広域処理の本質的問題  詳細編(約1時間)You Tube http://www.youtube.com/watch?v=PbaPles54N8&feature=youtu.be

◆池田こみち・青山貞一:がれきの広域処理の本質的問題  要約編(約12分)You Tube http://www.youtube.com/watch?v=ncCbPfMNsx8&feature=youtu.be  

 なお、以下は池田こみちさんのこの問題に関する一連の論考、 ブログ、講演動画などです。ぜひ参考にしてください。

◆池田こみち:広域処理は問題の山、「がれき、復興足かせ」疑問 東京新聞 >          http://eritokyo.jp/independent/ikeda_tokyonp_20120215.pdf

◆奈須利江:議論無く受け入れ疑問、「広域処理考え直すべき」 東京新聞 >  http://eforum.jp/nasu_tokyonp_20120308.pdf

  3月11日東京でこの分野の専門家によって開催されましたシンポ > の動画(青山が編集、ただしこのシンポのパネリストになっていま せん)を公開しています。

 ●特集:震災がれきの広域処理を考えるシンポ―法的問題・安全性を問う >  (全4時間)

  ◆池田こみち:災害廃棄物広域処理の環境面からの妥当性について You Tube >    http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Mfbd-JTjn1s

 ◆奈須りえ :財政・地方自治制度・民主主義の論点から You Tube >  
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=0G6NEFTkoes

 上記のうち私の研究の同僚であります池田こみち及び奈須さんの > 動画に問題の所在があります。それぞれ30分ですが、ぜひ一度ご > らん下さい。 > >  以下は当日配布した池田のレジメとパワーポイントです。これもご覧 > 下さい。

◆池田こみち:災害廃棄物広域処理の環境面からの妥当性について
    震災がれきの広域処理を考えるシンポ・パワーポイント   http://www.eforum.jp/komichiIkeda_koikishori_sympo120311.pdf

◆池田こみち:災害廃棄物広域処理の環境面からの妥当性について
   震災がれきの広域処理を考えるシンポジウム・レジメ
http://www.eforum.jp/ikeda20110311/ikeda-debriswideareatreatmetissue.pdf

青山貞一:民主党、原油価格高騰を理由に原発再稼働容認へ 

前原政調会長が原油値上げを理由に原発再稼働を容認することを公言した。前原政調会長は、結果的に自ら工事中止を宣言した八ッ場ダムといい、何でも「再開」を容認する政治家である。

原発再稼働、民主が容認へ 夏の電力不足を懸念
 朝日新聞・2012年2月16日  民主党は15日、定期点検で停止中の原発の再稼働を容認する方向で調整を始めた。夏場に電力不足になるとの予想に加え、イランからの原油調達の削減などでエネルギー不足への懸念が広がる中、夏前の再稼働をめざす野田内閣を後押しする狙いがある。
 党エネルギープロジェクトチーム(PT)は3月をめどに、ストレステスト(耐性評価)の厳格化や地元同意などを条件として、「原発再稼働なしには今夏、電力不足に陥る可能性がある」との趣旨の報告書をまとめる方針。前原誠司政調会長ら党幹部は再稼働を唱えており、政府が夏までに策定するエネルギー基本計画への反映を目指す。
 PTは15日の会合で、原子力安全・保安院が関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)のストレステストを「妥当」とした審査書について協議。経団連など経済3団体幹部から、夏場の電力不足や原油高騰への懸念から原発の再稼働を強く要請された。


 ここでは、前原政調会長の発言に見られるように、今後、民主党は原油価格の高騰を口実に、経団連などの要望をもとに原発を稼働してゆく可能性について、欧米中東などの国際情勢をふまえ述べてみたい。

 周知のように、オバマ大統領も、大統領選挙との関連でイランへの強硬な態度をとり続けている。米国では、大統領の選挙が近づくと戦争を起こすという歴史的事実もある。湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争などもブッシュ親子がしてきた無謀な中東での戦争もまさに、その一環と言えば言える。

 イランはここ数年、イラク国内の政治勢力に影響力を強め、その結果、反米色が強い議会勢力が大勢を占めるに至っている。  そして、今後、万一ホルムズ海峡封鎖などとなれば当然だが、封鎖に至らなくてもEUや米国の対イラン経済封鎖が強まると、イランが西側諸国に石油の積み出しを停止することも考えられる。ましてEUなり米国が軍事行動にでれば、イランがホルムズ海峡を封鎖する行動をとることは間違いない。

 となると、日本のイラン石油依存率が10%であるだけ、ではすまない。クウェート、サウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国からの原油輸送も危なくなる。  同じ10%程度依存している中国が先の国連安全理事会でロシアとともにイラン制裁に拒否権を発動した理由も、実は日本同様、石油の中東依存が高いからといった憶測があり、中国の思惑が見える。

 もし、欧米あるいはイラン、どちらからともなく軍事行動が起きれば、間違いなく原油の積み出しや輸送に甚大な影響が出ることは間違いなく、その結果、原油価格が高騰し、現在、それに大きく依存している日本の火力発電の燃料が高騰することは明らかである。

 さもなくとも、ここ数ヶ月原油価格は高騰してきた。しかし、同時並行的に進む超円高により、原油価格はかなり相殺されてきた。しかし、万一交戦状態となり、中長期戦となれば、間違いなく、原油価格はとどめなく高騰することは間違いない。

 福島第一原発事故以降、日本では石油、石炭、天然ガスなどを燃料とした火力発電所が原発が停止しても、それなりに供給を満たしてきたわけだが、ホルムズ海峡が封鎖されたり、交戦状態となれば間違いなく原油価格の暴騰となり、経済界や与野党を問わず原発再稼働やむなしということになりかねない。

NY原油、反発=イラン輸出停止報道で  
時事通信 2月16日(木)0時27分配信
【ニューヨーク時事】
 15日午前のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、イラン産原油の供給停止をめぐる不安から買いが先行し、反発している。午前9時40分現在、米国産標準油種WTIの中心限月3月物は前日終値比0.73ドル高の1バレル=101.47ドル。
 イランの英語衛星テレビ局、プレスTVは同日、欧州連合(EU)によるイラン産原油輸入禁止に対する報復措置として、同国が欧州6カ国への原油輸出を停止したと報じた。イラン石油省はこのメディア報道を否定したものの、供給窮迫(ひっぱく)懸念は根強く、買いが先行。早朝の時間外電子取引では一時102.54ドル約1カ月ぶりの高値まで上伸した。  WTI原油先物チャート(1時間足:7日間) 出典:http://chartpark.com/wti.html  米国にひたすら盲従する日本は、小泉首相の時、ブッシュ大統領(当時)らのイラク戦争突入を支持した。


 その昔、選挙戦で戦争ではなく外交で問題解決と主張し、イラクから米軍を撤兵し、アフガンに移したオバマ大統領だが、そのオバマが選挙対策を含めイランに手を出せば、おそらく日本はホルムズ海峡開放などを理由に、全面的にそれを支持しかねない。

 現在、東電は大口電気需要者などに、電気料金の大幅値上げを説明する文書を出しているが、この時期に原油が暴騰した場合、東電や政府までが大幅値上げとともに、全国規模での原発再稼働を言い出しかねない状況にある。

 前代未聞の福島第一原発事故でやっと危険で利権にまみれた原発から脱却する道筋が見えてきた日本だが、自然エネルギーに移行するとば口で、民主党政権が原油価格問題を口実に原発稼働再開となるのは、何とも遺憾である!

福島原発事故で、本当に恐ろしいのは魚介汚染


  •  「福島原発事故で、本当に恐ろしいのは魚介汚染」の動画を公開します。

 池田こみちさん(環境総合研究所)がインタビューア、青山が先に書いた論考をもとに対応しています。
 
◆青山貞一「福島原発事故で、本当に恐ろしいのは魚介汚染」

 昨年4月、日本政府がグリーンピースの虹の戦士号の領海内立ち入りを2〜3ヶ月待たせたあげく却下したこと、福島県内の漁業関係者が環境総合研究所に魚介類の分析を依頼しながら、その後なしのつぶてとなったこ
となどの裏事情についても言及しています。
 
 動画の時間は44分です。 

◆青山貞一「福島原発事故で、本当に恐ろしいのは魚介汚染」

 原発事故以来、官民を問わず膨大な量のモニタリングデータが公にされてきたが、なぜか魚介類に含まれる放射性物質汚染に関するデータは、きわめて限られている。

 理由はやはり太平洋側の海洋汚染が相当深刻なためだろう。

 日本の気象庁の気象研究所が2011年11月16日に発表したシミュレーション結果によると、放射性物質のうち、とくに放射性セシウムは今年の4月までに70〜80%が海に落ち、陸地に降ったセシウムは30%程度と推測している。

 気象研究所の研究チームによれば、2011年3〜4月は偏西風で運ばれるために陸地に落ちる量は少なく、その分海洋が汚染されたとみている。ヨウ素131は放出量の約65%が海に落ちたとしている。

 ちなみに私たち環境総合研究所が2011年春に行った放射性物質の3次元の移流、拡散シミュレーションでも類似の結果がでている。
 
 陸側におちた放射性物質も最終的に海に流れ込む。今後、近海魚や回遊魚だけでなく、底生魚介類の汚染が深刻になると推察される。

 本動画は、この分野第一線で漁民やNPOとも議論しあう中で調査研究をしてきた青山貞一さんに詳しくその実態、裏事情、一般国民はどうすればよいかなどについてのご意見を伺った。

 池田こみち 環境総合研究所副所長/インタビューア 2012年2月6日 

原発のコスト  鶴岡憲一

   福島原発事故が多数の住民の避難・離散や各種産業への深刻な影響を現地以外の地域にまで広げているが、ようやく放射能汚染の除去が各地で進み始めた。それに伴い、汚染物質の処理という、原発の持続可能性にとって最大の問題点が明瞭に顕在化してきた。

 そうしたなか、原発の地元自治体を中心に再生可能エネルギー推進と脱原発を求める声が高まってきたが、同時に、事故発生からしばらくは影を潜めていた原発必要・存続論も「再生可能エネルギーはコストが高くつく」という従来からの批判のかたちでまたも唱えられ始めている。日本のエネルギー政策をどちらの方向で進めるのか。判断のキーポイントのひとつとして、原発の発電コストの問題が改めて問われている。


原子力委を困惑させた原発コスト論

 2010年9月7日に開かれた第48回原子力委員会。その議事録からは、大島堅一・立命館大学教授の発表に、近藤駿介委員長ら原子力委員の側が困惑した様子がうかがえる。原子力委は原子力を国策として推進する基礎として原子力政策大綱を定めているが、大島教授は発電コストの面から大綱の見直しを提言したためだった。

 経済産業省・資源エネルギー庁や電気事業連合会(電事連)などが、原発推進を主張してきた大きな理由は、原発による発電コストが再生可能エネルギー発電はもとより、火力、水力発電と比べても低く優位を保っているというものだった。
 電事連は、PR用に公表してきた「原子力2010」で、経産省の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会で2004年に配布された資料などを引用するかたちで、水力、石油、天然ガスと石炭による発電システムを40年間運転した場合の繊Ν瓢のコストを比較したグラフを示している。それによれば、2008年時点の主要5発電方式では石炭発電が5.7円、天然ガス発電で6.2円、石油等発電10.7円、水力発電は11.9円なのに対し、原子力発電コストは5.3円としていた。これに対し、大島教授は原子力委に提出した説明資料は「原子力単体でみた場合であっても、原子力は安価な電源とは言いがたい。『原子力+揚水』でみれば、最も高い電源である」と指摘したのである。

 ここでいう「揚水」発電は、いわば原発のアダ花というべき発電方式だ。つまり、原発の場合は夜間出力を下げる調整を繰り返した場合に安全性への支障が指摘されてきたことなどから出力を落とさずに発電している。当然、夜間の発電量は消費量を超過することになるため、その分の電気で高所に設けた貯水池に水をくみ上げておき、昼間に水力発電として利用している。従って、通常の河川ダムによる水力発電より割高になるのである。

 大島教授の見解は、電力会社の経営実績を反映した有価証券報告書などで公表されているデータを基にまとめられていた。経産省や電事連のように「40年間運転」のような仮定に基づく“試算”版ではないだけに、原子力委員側からは正面からの反論は出されなかった。だが、原発推進の大きな拠り所としての原発コスト割安論に有力な異説を突きつけられたかたちになっただけに、例えば近藤委員長は大島教授が表明した意見からは「政策的なインプリケーションを導きようがない」などと感情的とも言えそうなコメントを行ったのであり、原子力委側が苦々しく受け止めた様子が議事録にはにじんでいる。


トータルで見て「最も高い」原発コスト

 有価証券報告書では天然ガスや石油、石炭別の費用が示されていないため、大島教授は原子力委への提出資料では、それらを「火力発電」としてまとめて計算している。

 それによれば、2000年代の原子力発電のコストは揚水発電分を除いても8.93円で、9.02円の火力発電に次いで高い。揚水を除く通常水力発電が3.59円と安い反面、揚水発電は42.79円で、大島教授は「原子力+揚水」コストは10.11円に上るとしている。まさに、原発は発電の3方式のうち「最も高い電源」ということになる。

 大島教授の見解が経産省や電事連の公表数字と異なるのは、計算方式の違いに由来する。その特徴は、原発の発電コストを単に燃料費や運転保守管理費のような直接的費用やバックエンド費用としての使用済み核燃料の再処理費用、放射性廃棄物の処分や廃炉の費用のほかに、政府が国家予算から支出する開発費用や立地費用まで含めるトータルな視点で計算していることである。

 大島教授の計算の妥当性を裏付けていると解釈できそうな数字は、実は電力業界も示してきた。電事連が04年にまとめた各電源コスト比較は、有価証券報告書を基にした00〜02年度平均実績単価が、実績設備利用率78%の原発が8.3円で、火力発電は同41%で10円、原発並みの80%とした場合は7.3円となり、原発より低くなるとの算定値をも示していたのである。

 経産省OBの天下り先財団法人として知られる日本エネルギー経済研究所(以下、エネ研)も11年8月に公表した原子力発電コストについては、有価証券報告書記載の情報に基づく「実績値としての発電コスト」を計算した結果として、06〜11年度平均で7.2円と示した。ただし、エネ研は大島教授の計算要素のうち「開発費用」については、高速増殖炉や高温ガス炉のほか核融合など先端技術を含むから全てを既存の原発単価に含めることは適切でないとしている。また、政府の原発関連予算でも巨額な原発立地対策費を大島教授が原発コストの考慮要素とした点については、その一部は社会として原発に対して行う費用負担を示す要素である点を認めつつも、「開発費用」と一緒くたにして、「立地費用」の全てを発電の総単価に含めることを否定しているのである。

 さらにエネ研は揚水発電についても、電力需要ピーク向けの供給源としての役割を担っている点を考慮してコスト計算すべきという趣旨の主張をしている。揚水発電を電力供給ベース電源と同様な算定要素とみなすべきではないという意味と解釈できる。

 しかし、揚水発電施設は、原発による夜間の余剰発電分をできるだけ揚水発電用に振り向けなければ稼働率が下がる。従って、電力会社にとっては昼間の電力需要が通常の供給力を上回るおそれがある日は揚水発電力をピーク対策として確保しておくにしても、そうでない日は揚水発電の稼働率をできるだけ上げて燃料費が高い火力発電量を減らす方向で運転するのが経済合理性にかなう。仮に日数がわずかなピーク日対策を主目的として発電コストが大幅に割高な揚水発電施設を整備し、その費用を電気料金でまかなうとすれば国民の理解を得られるはずがない。そうした面を考慮すれば大島教授の「原発+揚水発電」という計算方法のほうが現実的と言えよう。


回避不能な原発費用

 エネ研が原発コストの要素として考慮することに異論を唱えた「開発費用」と「立地費用」は、実態としては電力会社にとって原発の新増設や維持には回避できない費用としての性格が強い。特に、迷惑施設とみられがちになってきて以後の原発に立地費用は欠かせないものとなってきており、巨額だ。各官庁が2011年度予算概算要求で計上した原子力発電関係経費を原子力委が網羅的に整理し10年11月に評価・決定した資料(以下、原子力委決定)でみると、「立地地域との共生」として整理された要求額が総計1593億円にも上っているのである。

 いずれもエネルギー対策特別会計から、電源開発促進税法など電源3法に基づいて交付されるものだが、単年度分だけでもこれほどの規模である。11年8月19日付けの毎日新聞は経産省の資料や自治体の財政状況を基に独自調査した結果として、原発の営業運転が始まった1966年以降、立地自治体や周辺自治体に国や電力会社から投入された「原発マネー」が2兆5千億円に上る、と報道した。内訳は、電源3法に基づく交付金が9152億8300万円、道県が徴収する核燃料税が6749億6820万円、原発について市町村が徴収してきた固定資産税が約9千億円としている。

 同紙が「少なくとも」としているように、こうした原発マネーは原発の増加とともに増えてきたはずであり、正味の総額はさらに大きいと推察される。もちろん、電力会社が納める原発関連税も電気料金収入から払われるため原発コストと評価するのが妥当だろう。

 原発コストのうち立地費用は関係自治体にとって魅力的な財源であるには違いない。しかし、濡れ手で泡のような金の使途はやはり安易に使われがちになる。

 一例は会計検査院が2000年度に報告した新潟県刈羽村のケースだ。東電の原発が集中する地域の一角に属する同村が交付金45億円を主な財源として99年に建設した生涯学習センターについて、見積もりが工事費、備品費とも過大だったことも指摘し、約2億8千万円が不当な事業費に当たり、不当な交付金は約2億6千万円だったとしたのである。

 麻薬じみた原発関連の補助・交付金の不健全さを自治体の側から証言したのは、福島県南相馬市の桜井勝延市長である。「交付金は“まき餌”みたいなもの。受け取りという既成事実ができてしまうと、言いたいことも言えなくなる」と述べ、2011年度分の交付金受け取りを辞退することにしたのである。桜井市長はまた、福島原発近隣の多くの住民が避難を余儀なくされるという深刻さにもかかわらず「関係首長から大きな声が上がらないのは、そういうことだと思いますよ」(以上、11年8月23日付け東京新聞)としている。

 「開発費用」についても原発関連での回避不能な性格を持つものが確実に存在する。

 例えば、高速増殖炉など核燃料サイクルは国が今後の日本の原発利用の方向として定めて計上してきたからには関連技術の開発費用は原発計算要素とみなせる。

 そうした費用は巨額である。例えば、前記原子力委決定によれば、独立行政法人・日本原子力研究開発機構での研究開発費として文科省が計上した約1768億円のうち高速増殖原型炉「もんじゅ」など核燃料サイクルなどの開発研究費用は約1099億円に上っている。さらに経産省も核燃料サイクル関連で約57億6千万円を計上している。同省は原子力発電の高経年化対策や耐震・燃料の信頼性実証などの費用として約109億7千万円も計上しているが、いずれも考慮外に置いてよい開発関連費用ではない。

 さらに原子力委決定で「原子力と国民地域社会の共生」と分類された項目には広聴・広報等の要求額が示されているが、総額は約45億円となっている。立地先住民の原発に対する不安や批判を地域振興資金の名目で緩和し受け入れてもらうためのものが立地費用であり、地元住民の不安を解消し原発と共生できることを理解してもらう活動などで使われているのが広聴・広報費用とすれば、やはり回避不能費用の一種とみるべきだろう。
福島原発事故の後、資源エネルギー庁が、九州電力の玄海原発の再稼動や他の電力会社のプルサーマル発電などをめぐって国が主催した説明会で賛成意見を表明させるよう電力会社に働きかけたり、メディアの報道をチェックしていたほか、「原発は安全」とする小学生向けDVD教材を作製、配布していたことなどが発覚、報道されたが、原発関連の広聴・広報費用はそうした活動にも向けられていたとみられる。


試算困難な原発コスト

 原発に欠かせない費用はまだある。事故対策費用が一例だ。ただ、事故の規模は福島原発事故のように大規模なケースのほか比較的小規模なものまであり、それを一般化して示すことは難しい。実際、福島原発事故の場合でみても、経産省は放出された放射性セシウム137は広島原爆の168個分に上ると試算しており、福島県は県民への影響を長年月にわたって調査するとしているが、その調査費用に加え、放射性障害が出現した場合の対策費などは相当大規模になることが考えられるが推算不可能なため計算要素に加えることは困難である。大島教授もエネ研も事故対策費用はコスト計算から外している。

 やはり概算も難しい費用に長期的な放射性廃棄物の処理・管理費用がある。原発が必ず出す放射性廃棄物の処理は、某紙の元科学部長によれば「専門家は誰もが分かっているのに知らないふりをしている」という問題だ。福島原発事故ではまさにこの課題が具体的なかたちで顕在化した。水素爆発で散乱した原発のがれきはもちろん、事故によって拡散した放射性物質が住宅敷地や農耕地、学校の運動場のほか震災で大量に出たがれきまでも汚染した。また、下水処理場で出る汚泥に放射性物質が含まれており、それらの処理が廃棄物処理と同質の対策課題として各地の自治体にとって難題となっている。放射性物質を汚染するために表土を削っても、汚染の影響を長年月にわたって確実に遮断・管理できる方策は確立されていない。貯蔵場所の決定も関係自治体や住民の同意を得られにくい。

 この状況こそ、原発の最大の問題点である原発起源の放射性廃棄物処理の困難さを明確化したと言える。その一般的な対策費用も算定困難だが、福島での除染費用について公明党は第三次補正予算の独自案に2兆3千億円を盛り込んだように、原発コストを論議する際に見逃してはならない要素であることは間違いない。

 また高レベル放射性廃棄物については、排出源となる東電自身の説明によれば、ガラス固化体として再処理施設内の専用の貯蔵施設に30〜50年間貯蔵し冷却させた後、ガラス固化体を鋼鉄容器に封入したうえで地下300辰茲蠖爾っ倭悗暴菠される。だが、鋼鉄容器は「1000年は穴があかないように設計されます」といい、放射性物質の漏出防止のための多重バリアシステムを用いるとしているものの、「放射性物質が溶け出したとしても、それらは非常にゆっくりしか移動できなくなります」という表現ながら、漏出の可能性を否定していない。資源エネルギー庁も同様な方法を紹介しているが、驚くべきことに、「人間による管理を必要としない」としている。放射性物質が地下水によって「移動」することを認めているにもかかわらず、である。

 高レベル放射性廃棄物の放射能レベルがウラン鉱石並みに達するまでには1万年かかるとされる。地層を変動させる活断層さえ完全に把握できもしないのに、そのような廃棄物を人間の管理無しに安定的に地層に閉じ込められると考えるのは専門家のおごりであって、管理コストは必ず生じるとみるべきである。その規模が小さくおさまるとはとても考えられず将来世代への付け回しとなるに違いない。そのコストの算定は不可能としても事故対策費と同様に巨額に上る可能性は否定し得るものではなかろう。


不透明コストもある

 以上のような様々なコストに加え、間接的ながら原発コストに含めるのが妥当と言える費用も顕在化している。その一つが電力会社の役員らによる政治献金だ。

 関西消費者団体連絡懇談会が政治資金報告の分析に基づいて11年7月に発表した調査結果によれば、電力9社の役員計868人は06〜08年の間に合計約1億1700万円を自民党の政治資金団体に献金していたという。また、共同通信は同月23日付けの発信で、同協会の09年分の個人献金のうち72.5%が電力9社の役員・OBによるもので、当時の役員の92.2%が献金していたとしている。電力業界は74年に企業としての政治献金をやめていたが、以上のような実態は電力業界が個人献金のかたちながら組織ぐるみとみられても仕方のない方法で献金していたことを示したと言える。

 献金の陰には、原発関連費用のうち相当多額な部分が政府予算から支出されていること、その原発を主柱のひとつとする地域独占体制での電気の発送電を認められている9社は、その体制を維持するには発送電分離のような電気事業の自由化を政治力で阻止する必要があること、などの事情がうかがえる。

 また、九州電力幹部ら9人は09年に佐賀県議会の原子力安全対策等特別委員会の委員長(自民)の政治団体に個人献金を行っていたことも判明したが、自治体が原発の運転などに注文をつけられる立場にあることから原発絡みの議会工作として献金したとみられる。

 東電の役員年収は社長で約7200万円、取締役は1人平均約3400万円に上ることも表面化したが、高額な人件費を可能にする安易な電気料金設定方式は個人献金の基になり、原子力規制官庁の経産省から天下りしてきた幹部を副社長など役員として処遇する費用にも寄与してきただけに、献金や天下り官僚への報酬の全部ではないにしても原発関連コストとみても違和感はないだろう。

 他方、立地費用のうち「地域振興」名目の金が国の予算からだけでなく電力会社からも原発所在地向けに出されてきた。一例は、福島県内の大規模スポーツ施設「Jヴィレッジ」である。福島原発事故では本来のスポーツ目的の利用を差し止めて事故対策拠点となっているが、福島第一原発5,6号機の増設の見返りの意味を持つ地域対策として、東電が130億円を出して建設された。11年9月15日付け朝日新聞は、東電の原発などがある3県の関係自治体に総額400億円を超える「地元対策資金」を寄付していたことが分かった、と報道した。やはり電力業界版の立地費用と言えるが、原発を受け入れるかどうかという自治体の決定を左右する可能性のある金とも言えるだけに、「賄賂性を感じる」という公認会計士・松山治幸氏のコメントを同紙は紹介している。

 さらに、原発事業を推進する上ではメディアや原子力専門の学者の言動が大きな役割を果たしてきたが、その方面にも原発関連費用が振り向けられてきた面がある。

 例えば、東電の清水正孝氏は社長当時の11年5月13日の参議院予算委員会で「広告宣伝費、マスコミ関係では平成21年度実績で約90億円」と証言した。これとは別に、同月15日のフジテレビ番組で当時の細野豪志首相補佐官は「東電の広告料は250億円」と述べた。河野太郎衆院議員は「電力業界全体では1000億円」という研究者の推計をブログで紹介しているが、内外の厳しい競争にさらされている企業ならともかく、地域独占事業を国から認められている会社、業界としては異様に巨額である。

 その用途の一分野として、メディア側は様々な疑惑を招いてきた。象徴的なのは3.11の当日、勝俣恒久会長ら東電幹部がマスコミ関係者を引き連れて訪中していた例である。3.11後、不要になったと思える段階になっても、被災者への仮払いも行わない段階で頻繁に節電を求めるテレビコマーシャルを東電が流していたのも、「テレビの批判をかわすためではないか」と疑われた。原発視察を名目として記者たちを負担なしで招待していた例も記者OBから報告されている。3.11を機に、事故の規模を低く見せかけるようなコメントを行った学者が目立ったことから、大学に電力会社が原子力関連の研究費を提供していたケースも表面化した。東電が東大工学部に04年以降、寄附講座に支出した金額は公表分だけで4億5千万円に上るという(志村嘉一郎著「東電帝国 その失敗の本質」)。

 そうした広告宣伝費や研究費の全てが原発コストにつながっていたとは断言できないとしても、原発の安全神話づくりに寄与してきた面は否定できない。

 それらを含め、原発コストは総合的に評価しないと実態を見誤ることになる。だが、日経新聞の末村篤・特別編集委員が事故の5ヵ月後になってさえ、11年7月12日付け朝刊に「『原発』の総費用を明らかに」という記事を掲載したように、いまだにその全容は示されていない。ちなみに、先の原子力委決定は同じ事業費用を別の事業目的としても記載しているため一部重複があるが、重複分を極力除いた概算要求合計額は約7276億円にも上る。その出所は、国民が納める税金のほか、電気料金に含めて国民から集め国庫や原発立地自治体に収めさせるものであり、いずれにしても国民の負担によっている。

 福島原発事故では、ひとたび重大事故が起きた場合の被害の大規模さ、収束に向けたコントロールの困難、少なからぬ自殺者まで出す深刻さ、現実化した将来世代への付け回しなど様々な原発の問題点が露呈された。それらとともに、現時点で大島教授が算定したような原発コストも含めて評価すれば、今後のエネルギー政策の選択肢としては段階的な脱原発以外にはあり得ないはずである。

原理的に間違っている国の汚染瓦礫処理と私たちの提案  青山貞一・池田こみち

放射性物質に汚染された災害廃棄物に関して、国がこの間やってきたことは、原理的に間違ったことを独善的に基礎自治体に押しつけていることであり、それに反対する市民らを脅すなど民主主義国では到底考えられないことを連日連夜行っていると思います。

>今日も隣の学科長が東京新聞の一面を私のところに
> 持ってきて、この種の問題を広域処理しようとするこ
> と自体、エントロピー理論の観点から180度間違っ
> ていませんか? と言ってきました。

 彼は何ら環境問題の専門家でも放射性物質の専門家でもありません。画像処理技術の専門家です。

 エントロピー増大の法則とは、自然(世界)は常に、エントロピーが小さい状態から大きい状態に進むということです。すわなち、自然はすべからく『秩序から無秩序へ』という方向に進むといってもよいでしょう。

 たとえば卑近な例をとれば、整理整頓された部屋は、そのままほっておくと、次第に乱雑になります。けっして勝手に整理されることはありえません.

 たとえば、コーヒーにミルクを一滴たらし、ほおっておくとミルクは次第に広がり、最後にコーヒーと完全に混ざってしまいます。これは一箇所に集まっていたミルクの分子が、時間とともに散らばっていったという現象でです。

 今回のがれき問題に関連し、国が基礎自治体などに押しつけていることを簡単に説明すれば、一箇所に集まった汚染物質の状態から汚染物質を含むがれきが全国にバラバラに散らばる状態を意味します。これをエントロピー増大の法則と言います。

> >  ※エントロピーは物や熱の属性で、それらに対する
> >   拡散の程度を表す状態指標量と言えます。

 まさにその通りで、放射性物質に汚染された災害廃棄物を燃やす、燃やさないの問題以前に、せっかく汚染が一定範囲に集中して存在、分布しているのに、それをあえて意図的に広域処理により汚染を拡散させるのは愚の骨頂といえます。エントロピーを意図的に増大させるあってはならない行為と言えます。

 さらにひとたびエントロピーが高まると、それをもとの状態に戻すには膨大な費用がかかります。がれき処理ではありませんが、除染という行為をみればよくわかります。一説では、日本中で除染を行うと20兆円とか40兆円も費用がかかるされています。もうこうなると、除染が日本社会特有の一種の利権と化すことになってまいます。

 このように、もともと原発事故はトンデモな事故であることは間違いありません。原子力村のひとびとが想定していなかったにせよ、これほどトンデモなことはありません。

 しかし、国がやろうとしていることは、せっかく一カ所に集まっている汚染を意図的に薄く 広く拡散させることであり、その結果、中長期的にもその処理がきわめて困難となり、費用がかかるのはあたりまえの話です。

 次の問題は焼却処理に関わる問題です。

 周知のように、災害廃棄物にはさまざまなプラスチック類、金属、非鉄金属、アスベスト、農薬はじめさまざまな物質が混在しています。これはいくら分別しても混在は免れません。それらを一般廃棄物用あるいは産廃用の焼却炉で焼却すれば、本来存在しない膨大な量の化学物質、それも有害な物質をあえて生み出してしまいます。

 さらに一般廃棄物焼却炉のように高い煙突で拡散させれば遠くまで汚染が拡散します。それは時間をかけ水などで川にそして海に運ばれ、食物連鎖により濃縮されます。オンタリオ湖のPCBでは、最高で2500万倍まで濃縮されています。


出典:マリンブルー21資料もとに環境総合研究所


出典:環境省資料をもとに環境総合研究所作成

 ※オンタリオ湖PCBの生物濃縮の事例は、「失われし未来」にあります。
   以下の図を参照してください。


出典:「失われし未来」の図を元に環境総合研究所作成

 これは何も、放射性物質に汚染された災害廃棄物問題に限らず、PCB、ダイオキシン類、水銀など重金属類の汚染についても、ほぼ同様のことであると考えます。

 にもかかわらず、我が国では廃棄物処理法のもと、ゴミは国策のもと燃やして埋めるを永年繰り返してきました。国策という意味は、国が自分たちの政策、施策、ガイドラインなどに追随すれば、補助金、地方交付税などにより実質的に70〜84%の補助率で焼却炉を建設する基礎自治体に巨額の税金を投入してきた事実があるからです。

 これについては、以下の論文をご覧ください。
 
青山貞一:廃棄物焼却主義の実証的研究〜財政面からのアプローチから 武蔵工業大学環境情報学部紀要(大学名は現在、東京都市大学)

 以前、テレビ神奈川の私への連続インタビューのなかで、私が話した「本牧にある海面埋立方式の一般廃棄物最終処分場に放射性物質に汚染され濃縮された下水汚泥の焼却灰や飛灰を処分してゆけば、飛散などにより再浮遊し、海に放射性物質が落ちたり、漏れ出て長期的には魚介類を汚染する可能性が否定できない」というコメントに対し、環境省の言いなりになっている横浜市が、市民の危惧、不安をよそにテレビ神奈川の報道局に「市民を煽るな」とクレームをつけにきたそうです。

 現場の記者らは横浜市の行為に怒り心頭でしたが、その後、取材にこなくなったことをみると、おそらくテレビ局の上層部が横浜市の恫喝に屈した可能性すらあります(そうでない場合は、ご連絡をください)。

 市民、住民からもっとも近いところにいる市町村がこれですから、どうしようもありません。第三者(青山貞一)が研究者として、過去の経験からコメントしていることに、こともあろうか、テレビ局に直接行政がそんな報道するなと言ってきたわけで、あきれてものがいえません。日本の自治体には、自分の頭でまともに考える能力がほとんどなくなっているというのが実感です。

 さて、上記の数々を考慮すれば、福島第一原発事故に起因する放射性物質対策の基本、とりわけ今回のように発生源近くに汚染が集中している状況では、たとえば福島原発ないしその敷地周辺 に、私たちが提案しているような遮断型の施設をつく り、そこに放射性物質を封じ込め、長期にわたりしっかり汚染物質を管理する方法を採用するのが当然です。これはイタリアのセベソ事故後の対策を見るまでもなく明らかです。

 にもかかわらず、国や環境省は、上記の原則や理論をまったく理解せず、今までがそうであったように、何でも集め、 燃やすことに奔走しています。国は福島県民を何ら 説得できず、安易に全国各地で災害廃棄物をもやし埋めることを指示し、思考停止の多くの自治体は、国賊呼ばわりされるのを恐れ、それに従いつつあるのが現状でしょう。
 
 この分野における日本の常識は世界の非常識であることは間違いありません。悪い意味でのガラパゴス化を永年日本はやってきたのです。

 以下は私たちが提案している案です。

復興は安全で安心、環境に配慮した
 持続可能なまちづくりのグランドデザインから


                 青山貞一、池田こみち

 ここに示す提案は、復興のための各種のインフラ整備はじめ巨額の資金がともなうものであり、ここで間違えると将来に大きな禍根を残すこともある。さらに平地にまちを復興する場合、将来、再度大きな津波がきた場合にどう物理的に対応するかという大きな課題がある。

 青山貞一、池田こみちは、この重要課題について、瓦礫処理に連携し、海岸側に20−30mの防波堤(防潮堤)を構築する政策提言をしている。この政策提言は、欧州諸外国における実例をもとに、日本の廃棄物処理法、沿岸法など現行法とも齟齬がない形で構築が可能であり、費用対効果にも優れた方法であると考えている。

 東日本大震災の瓦礫の処理に関連し、日本政府(環境省)は、私たちが30年間批判してきた燃やして埋めるやり方を瓦礫に適用しようとしている。

 だが、この「燃やして埋める方式」は、汚染を大気、水、土に広げるだけで、本質的な問題解決にならないことは間違いありません。ましてや放射性物質を含む場合は論外である。

 また瓦礫処理を廃棄物処理という範疇だけで、目の前の瓦礫をなくすだけの処理では今回、まちづくり、とくに津波対策との関連では問題解決にならない。

 津波対策を考慮した瓦礫処理として私はひとつの大胆な計画を提案する! 

 それは沿岸域の陸側最先端部分に、コンクリート構造物で管理型処分場に類する堰堤、防波堤型の処分場をつくることである。

 まず、提案する防波堤型の瓦礫処理の概念図を以下に示す。



出典:青山貞一、池田こみち

 これは堤防型の管理型最終処分場の中に、瓦礫類を燃やさず埋め立てることになる。 規模は、たとえば堤防ブロック一つ当たり、幅(30m〜50m)×長さ(50〜100m)×高さ(15〜30m)とする。この防潮堤、防波堤を兼ねた瓦礫の処分場を地域の実情に合わせ、10、20と連たんさせることになる。

 以下に平面図を示す。


出典:青山貞一、池田こみち

 処分場の上には、表土をかぶせ低木などを植える。

 当然、時間がたてば表土は沈降、沈下する。

 必要に応じ、たとえば福島県の場合には、遮断型として管理型処分場の上にコンクリートのフタを付ける。福島県内の海岸では、放射性物質を含む土砂、瓦礫が多くなるので、遮断型とすれば万全である。

 また瓦礫は分別し、この処分場に処分するのではなく、仮置し、将来、リサイクルなりリユースできるものはすればよい。

 こうすることで、ほとんど瓦礫類を遠隔地に運ぶ必要も、燃やす必要もなくなる。環境汚染は通常の管理型処分場と同じであるから、2次処理まですれば排水を公共用水域に流すことも可能である。

 ただし、福島県の場合は、放射性物質を含む瓦礫となる可能性が大なので、遮断型とし内部に雨水、海水が入り込まないような構造とし、放射性物質を含む排水が外部に出ない構造とする。

 一方、宮城県、岩手県など、放射性物質を含む瓦礫がほとんど存在しない場合は、コンクリート構造の管理型処分場とし、コンクリートのフタを付けない場合は、2次処理まで可能な水処理施設を50〜100mの間隔でつける。

 コンクリート構造物は汚染水の重力浸透を防ぐので水処理装置を常時モニタリングしながら監視すれば汚染の問題は深刻にならないであろう。

 10年以上経ったら、小高い古墳状の緑地でありスーパー堤防となる。もちろん、この場合には、その内側の平地でまちづくりが可能となるので、新たに山を削ったり造成する必要もない。

 この方式のヒントは、北イタリアでミラノ北にあるセベソにある。またスーパー堤防はオランダのペッテンやデンフェルダー地方にある。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防の断面概念図
出典:青山貞一、池田こみち

 以下の写真はオランダのペッテンにあるスーパー堤防である。

 堤防の海側は自転車道路となっており、自転車が高速で走行している。オランダのペッテンの堤防では、それより海側の波打ち際は散歩道や犬の散歩道、ドッグランとなっており、鎖を解かれた犬が喜んで泳いでいた。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一

 また堤防の陸側は、牛、羊などの家畜の放牧場となっていた。


オランダのペッテンやデンヘルダー地方にある堤防
撮影:青山貞一

 さらに上の断面イメージにあるように、陸側にはもう一つの防波堤があり二段構えとなっていた。その外側には、以下のようなかわいらしい住宅がたくさんあった。

オランダ・ペッテン地区にある防波堤の内側の住居
撮影:青山貞一

 費用対効果(費用対便益、B/C)は計算していないが、従来の日本の運んで燃やして埋める方式に比べれば環境負荷、環境汚染は大幅に少ないし、もとより大津波を考慮したフリーハンドのまちづくりが、震災以前の従来の平場で行えることになる。となれば高台を造成したり、隣地開発し大規模な住宅地を造成する場合に比べ、B/Cは絶大だと思う。

 なお、防波堤(防潮堤)の高さは、明治三陸津波及び東日本大津波の各地の波高を考慮すべきである。以下の表によれば、波高の高さは地形などの条件で、地域により異なるが、およそ15m〜30mとなろう。

東電と経産省が増幅した原発災害  鶴岡憲一

■実態示した日本の“原発安全文化”

「日本でも原発事故で広範囲に放射能汚染される可能性は絶対に無い、とは言えない。その恐れを少しでもなくしていくには原発による発電シェアを下げていくしかない」。

そんな思いを抱いたのは、1989年9月から約2年間にわたった旧通産省(以下、現在の名称の経済産業省の略・経産省に統一)・資源エネルギー庁の取材を、読売新聞社会部の記者として担当し始めて間もなくだった。同省担当の社会部記者の大きな役割の一つに、エネルギー産業分野の事故取材がある。なかでも、万一発生すれば大事故になることがあり得る原発事故は、確率が低くても準備だけはしっかりしておかなければならないテーマだ。その作業として始めたのが、海外で起きた大事故、特に86年のチェルノブイリ原発事故や79年のスリーマイル原発事故の概要をつかんでおくことだった。

原子炉そのものが爆発し、放射性物質を欧州はもちろん、日本やアメリカ大陸にまで拡散させたチェルノブイリ事故の被害者は、旧ソ連国内で放射性ヨー素の吸飲による甲状腺がんが子供たちの間で増加し、死者が相次いでいた。ソ連よりは原発の安全対策がしっかりしていると思われていたアメリカのスリーマイル事故は、それより7年前の出来事だったが、多数の周辺住民が家族ぐるみで避難する映像は日本の国民にも大きな衝撃を与えた。ひとたび深刻な原発事故が起きた場合は鎮静化が難しく、影響が広範囲に及ぶことを示した二つの事故を詳しく知るにつけ、「こんなことを日本で起こしてはならない」という思いが強まった。

だが、日本の電力業界や原発推進論をアピールしてきた学者らの間では、特にチェルノブイリ事故後、「日本の安全文化はソ連などとは違う」とか、「ソ連の原発とはタイプが違うから、あんな事故は起きない」などとして、「日本の安全文化を海外に広める必要がある」という趣旨の見解が強調されていた。
しかし、今回の東京電力福島第一発電所の事故は、日本では未曾有の大地震に伴う大津波がきっかけになったとはいえ、原子力発電分野における「日本の安全文化」なるものが、いかにいい加減なものであったかを赤裸々に示した。

■遅すぎた海水注入

その主役はもちろん、事業主体の東電である。事故は様々な要因が連鎖的につながることによって発生するだけでなく、被害が拡大していく。そうした安全工学的な視点で東電の初期対応を検討すると、事故拡大防止の大きな機会を逸していた事実が見えてくる。

原発事故で何より回避しなければならないのは核分裂反応の暴走だが、この点では、運転中だった1〜3号機を緊急自動停止できたことは成果だった。しかし、燃料棒が冷えるまでには相当な期間が必要であり、その冷却を実現できなければ、暴走の結果としての炉心溶融につながってしまう。冷却のためには水の注入を続けなければならず、注入には電源が必要だが、通常の一次外部電源、二次の予備電源ともに津波のためにダウンした。

ところが、それ以上の電源喪失に備えた三次的電源車の準備が不十分だった。近辺に用意していなかったため呼び寄せに時間がかかってしまったのである。その間に、まず1号機の燃料棒を浸していた冷却水が放散熱のために蒸発したあげく高熱の燃料棒が露出し、温度が上昇して水素を発生させ水素爆発を起こすに至った、と推察される。

時間経過(以下、3月17日付け日経新聞)でみると、3月11日に大地震発生から約7時間後の午後10時ごろ、「冷却機能が低下」と判断された。翌12日午後2時15分には、経産省原子力安全・保安院が「1号機で炉心が溶融した可能性」に言及した。同3時36分、1号機で相当大きな水素爆発が起きた。同7時50分、政府は原子力災害対策特別措置法に基づき原子力緊急事態を宣言した。それから2時間半後の同10時20分になって、東電はようやく、付属設備による冷却水補給をあきらめて海水注入に踏み切った。

問題は、海水注水のタイミングである。スリーマイル事故後、日本でも炉心溶融は絶対あってはならない事態であると言われてきた。放射性物質の拡散を招く。その結果、鎮静化作業を難しくして拡散量を増大させ、影響地域を拡大して多数の住民避難の必要性を生むからだ。原発事故では何よりもスピーディーな初期対応が肝要とされるゆえんである。

従って、炉心溶融の可能性が推察された時点こそが海水注入を決断すべきタイミングだった。この時点で注入していれば燃料棒をある程度冷やせて水素の発生を抑えることが可能になり、水素爆発を防げる可能性が広がったはずである。水素爆発の規模は相当大きかったことがテレビで放映された。爆発瞬間の画面からも、1号機建屋の上部で鉄骨だけ残された残骸からも想像できるが、おそらく、内部の機器、装置、配管などに影響を及ぼしたと思われ、頑丈なはずの格納容器にも損傷を及ぼさなかったかどうかも懸念される。

そんな水素爆発にしても炉心溶融にしても、放射性物質を飛散させ、復旧作業員ばかりか、冷却用海水の注入に当たった消防、自衛隊などの要員への被曝の恐れを生む。その結果、1号機の復旧を遅らせるだけでなく、2〜4号機の安全確保作業も難しくすることになったとのである。

それだけに、どれほど遅くとも水素爆発が起きた時点ではただちに海水注入作業に着手すべきだったにもかかわらず、爆発の影響確認などに時間がかかったにしても、爆発から7時間弱もかかって海水を注入し始めたのは、あまりにも遅かったと言わざるを得ない。

その後の海水注入によって1〜4号機の温度が下がったことが確認されたこと、その間に2〜4号機で爆発や炉心溶融が広がったうえに、周辺住民の退避範囲が拡大され町ぐるみで避難しなければならない事態を招いたこと、放射能汚染が東北地方はもちろん関東、東海地方にまで広がっただけでなく、牛乳や葉物野菜の出荷、摂取制限にとどまらず、水道水にまで放射能汚染を及ぼす結果を生んだことなどを考えれば、東電の初期対応における判断ミスの重大性は明らかだろう。

■東電の懲りない利益優先主義

それほど重要な決断を遅らせた東電の対応は、同社の体質に根ざしていた措置と考えざるを得ない。前歴があったほか、東電自身も認めてきた欠陥だからである。前歴というのは、筆者が資源エネルギー庁の取材を担当し始めてから約4ヵ月後に起きた福島第二発電所3号機で起きた再循環ポンプ破損事故で遅かった運転停止措置である。

同庁がまとめた調査報告書によると、事故の兆候は90年1月1日夕方に発生した。冷却水の再循環流量が変動し始め、一時はおさまったが、間もなく「再循環ポンプ振動大」の警報が鳴った。しかし、東電はポンプの速度を下げただけで振動が警報設定値以下になったため運転を続けた。だが、その後も振動が安定しない状況が続き、6日未明に再び警報が鳴った。それでも振動が大きい状態のまま運転を続行し、原子炉停止を決断したのは約6時間後だった。
チェックの結果、水中軸受けリングが脱落し破損するなど、東日本で使われている沸騰水型原発では当時最大規模の破損事故であったことが判明した。
そうした原発の運転停止が安全確保のために必要にもかかわらず遅らせるという対応の背景について、東電が自らえぐり出さざるを得ないことになったのは、驚くほど多数のデータ改ざんやトラブル情報隠しなどが発覚したことがきっかけだった。

最初は2002年だった。その2年前、福島第一原発1号機の定期検査に携わった米GE社の元従業員の内部告発を機に、圧力容器内の隔壁の亀裂など東電の福島と柏崎の3原発で計29件のデータやトラブルの隠蔽が明らかになった。その件についての社内調査を発表した際、当時の勝俣恒久副社長は「国に報告すると、原発の停止期間が長くなるという不安感が強かった」(02年9月18日付け読売新聞)と語った。

その5年後には3原発の13基について、定期検査の際に、延べ199件のデータ偽装が明らかになった。そのなかには、緊急炉心冷却装置の故障のような重大トラブルも含まれていた。

東電はその際も社内調査を実施し、詳細な報告書をまとめたが、「安全にかかる問題よりも電機の安定供給を優先した」との反省文も盛り込まれていた。「安定供給を優先」といえば聞こえはいいが、要するに勝俣氏がコメントしたのと同じく、トラブル対策のために原発を停止せざるを得なくなる事態を恐れたわけである。原発の出力にもよるが、運転を1日ストップすれば数千万円から億円単位の収入減になるといわれる事情が背景にあった。「安全よりも利益を」重視してきたのだ。

役割果たさぬ保安院

東電職員の情報隠しの動機のひとつには「経産省への報告が面倒だったから」というものさえあった。この言葉を裏読みすれば「報告を怠っても大した面倒にはならない」とも解釈できる。つまり、原発の安全チェック役としての同省原子力安全・保安院が甘くみられてきたということである。

現に保安院は、元GE職員の内部告発を受けてから該当データ偽装について公表するまでに2年もかけるスローな対応ぶりで、同省事務次官からさえ「遅すぎた」と批判され、福島県の幹部からは「国も東電も同じ穴のムジナ」の声さえ出た。しかも、02年の19件のデータ隠しについて、保安院は「証拠不十分」「現時点で明確な法令違反があるわけではない」などを理由に、東電側に対する刑事告発はもちろん行政処分さえ見送った。

その後は、やや姿勢を改めたのかと思わせる対応が見られたこともあった。しかし、今回の大地震をきっかけとする事故での対応では、「やはり保安院の体質も根本的に変わってはいない」との印象を強める結果となった。

何より問題なのは、福島第一原発に保安院は現地事務所に原子力防災専門官を併任の原子力保安検査事務所長以下の原子力保安検査官8人を配置している。彼らは今回のようなケースでは最前線で東電の事故拡大防止対策をチェックし指導すべき立場にあり、適時に同省・エネ庁に情報を伝える役割も担っているはずだ。

ところが、1号機の水素爆発による大音響を聞いていたはずにもかかわらず、当時の状況ではベストな選択とみられる、海水のスピーディーな注入を東電に決断するよう迫らなかったことが疑われる。爆発から東電の海水注入着手までの時間差の大きさから、そう推察せざるを得ないのである。

他方、メディアが注目するようなトラブルで常に地元住民や自治体の不満をかきたててきたのは、事故発生時に情報の伝達が遅すぎるという点だった。そのような失態は今回も繰り返された。

1号機で爆発が起きた12日午後4時ごろ、福島県南相馬市の防災無線で「爆発したとの情報があります。屋外に出ないでください」との警告が流された瞬間、警戒に当たっていた消防団員が「すぐ逃げろ」と大声で叫びながら退避したという。だが、爆発が起きたのはそれより20分以上前の午後3時36分だった。目に見えない放射能の害から身を守るためにも、自治体が住民を適時に退避させるにも、保安院は東電が迅速な情報開示を怠るようなら強く実行を促すべきであるし、保安院の現地事務所詰め保安検査官は現場の状況を把握しやすい立場だけに、保安院そのものも迅速に情報発信できるはずでもある。にもかかわらず、今回は、菅首相が「テレビで爆発が放送されているのに、官邸には1時間も連絡がなかった」と東電に怒りをぶつける一幕まであった。

保安院が事故発生時に速やかに情報を地元に伝達してこなかった点について、筆者は国民生活審議会が消費者庁創設議論を始めた際、総合企画部会に08年初めに提出した意見書で、産業振興諸官庁が消費者の安全保護を軽視している事例のひとつとして指摘していたが、今回も同様な怠慢が繰り返されたと受け止め、あきれるしかなかった。

大規模な原発群を抱える新潟県知事らが、経産省から独立した規制機関を求めるのは、保安院が属する経産省の体質に疑問を感じているからにほかならないだろう。筆者が最初にそれを実感したのは、前述の再循環ポンプ破損事故に関して行った資源エネルギー庁の調査だった。調査活動はエネ庁が組織していた原子力技術顧問会に属する学者ら専門家で構成した調査委員会が行った。

ところが、報告書を取りまとめたのはエネ庁だった。その結論は、調査委の主要な委員が「設計ミス」を認めたのに、報告書では「溶接ミス」としたのである。「設計ミス」となれば、設計を審査したエネ庁の責任問題に発展するが、「溶接ミス」なら施工者のミスで片付けられる……そんな思惑を濃厚に印象付けた結論で、はっきり不快感を示した主要委員もいたのであった。

監督責任問題以上に、経産省・エネ庁が原発事故やトラブルにあいまいな対応を行ってきた事情としては、経産省がエネルギー政策で原発を推進してきたことで得るメリットがあると考えられる。国策としての原発増設推進であれば、それをバックアップするための巨額な予算を獲得しやすいという点だ。電力会社にしても、経産省から巨額な支援を得られる。持ちつ持たれつの関係を続ける担保のひとつになっているのが、今年1月、エネ庁長官が東電顧問に就任したような経産省高級官僚の天下りといえる。それだけに、保安院が電力会社に対して安全対策を厳しく要求することは困難であり、保安院の経産省からの分離論には正当性がある。

少なくとも、原発事故の調査機能は経産省から分離し、首相直属機関として組織変更したうえでの保安院的組織に担わせるか、現在、消費者庁の「事故調査の在り方に関する検討会」が煮詰めつつある、消費者目線で調査にあたる新たな事故調査機関に委ねるべきである。

メディアの役割

電力会社と監督官庁・機関がそのような関係にある以上、メディアが厳格に監視し、批判すべき点は遠慮なく批判していくことが求められる。

東電は今回、原発運転失格者といわざるを得ない面を様々な局面で見せた。たとえば、状況解釈についての報道陣の質問に、沈黙したりマイクを譲り合ったりした。そのことは、様々な危機的状況を予測して対策を立案しておくリスクアセスメントが不十分だったことを推察させた。トラブルを続発させた原発の継続的な安定化に欠かせない外部電源の確保に着手したのが地震発生から6日後の17日だったというのも、リスクアセスの欠如ぶりを浮き彫りにした。

また、15日に4号機で火災が起きた後の午前11時過ぎ、枝野官房長官が会見で「午前10時22分に毎時400澄Ε掘璽戰襯函覆諒射線量)が出た。身体に影響があることは間違いない」とコメントしたことについて、現地の東電担当者は「確認していない」と述べたというが、東電のイメージダウンにつながりそうな情報を示さなかった例は、そのほかにも報道されている。

さらに、計画停電を実施した初日の14日夜、茨城、千葉両県の被災地域まで停電範囲に含め、被災者の怒りを買った。その無神経ぶりは、安全確保に対する責任意識の薄弱さと裏腹とみるべきだろう。

責任意識の薄弱さの裏にあるのは、民間企業でありながら半官半民的性格を、東電を筆頭とする大手の電力会社が帯びている事情がある。電力の安定供給を義務付けられている反面、地域独占供給とともに、原価コストが上がれば電気料金への上乗せを認めてもらえる企業なのだ。そのため、癒着関係にあるはずの経産省幹部さえ「電力会社の役員は経営者ではない」と吐き捨てるように言ったことを覚えている。特別な努力など必要でない経営が、電力事業の規制緩和が遅々として進まないなかで続けられてきたのであり、そんな状態からは責任意識など高まるはずがない。

そのような東電と、その体質を改めさせられない経産省が推進しようとしてきた原発増設政策について、今回の事故の責任追及とともにメディアは見直しを強く求める必要がある。

筆者は、某新聞社の元科学部長から「原発には放射性廃棄物の処理という未解決なアキレス腱があるが、記者も専門家も分かっていながら声にだそうとしない」と打ち明けられたことがある。

今回の事故を機に、原発の増設を受け入れる国民、地域は皆無に近くなるに違いないが、それでも、経産省や電力業界は、各々の利益に深く関わる原発の増設推進を全く断念するようなことはないだろう。御用学者もその理論的根拠を提供し続けようとするに違いない。

これに対し、メディアは今後の原発安全対策の保障として、まずは保安院の経産省からの切り離しを強くアピールする必要がある。さらに、原発に重点を置いて展開されてきたエネルギー政策を、温暖化対策を視野に入れたクリーンエネルギー推進を主張していくべきである。電力会社の経営陣に安全確保や真剣な経営努力を迫る大きな力となり得るのは、電力会社の独占的地位に風穴をあけるライバルとしての分散型電源のクリーンエネルギーだからだ。

「CO2を発生させない原発は温暖化防止にも有益」などという主張を、経産省や電力業界、御用学者らから、電力会社系労組の支援をも受けている民主党まで繰り広げてきた。しかし、放射性廃棄物の処理に万年単位の管理が必要となる原発は、仮に地下埋設場を確保できたとしても、大規模な地殻変動で管理困難となる恐れを完全には否定できない。「想定外」と表現せざるを得なかった今回の大地震・大津波は、そうした危険性が地球に存在することを教えてくれたと考えるべきだ。

かつては確かに、大規模な電力需要への対応を、自然エネルギーを中心とするクリーンエネルギーに期待することは難しかった。しかし、携帯電話用電池のような小規模な発電から工場規模に対応できるような中規模発電までこなせるパワーを持つ燃料電池は、宇宙船でも使われてきたように実用技術の壁はクリアされているほか、発電効率や耐久性も向上しつつあり、原発の代替エネルギーとしての地位を、まず家庭利用型から占め始めてきているのである。「原発なくしては経済活動に必要な電力確保は難しい」とする根拠は加速度的に薄まりつつあるのだ。

かつて筆者は、古巣の新聞社の解説部に在籍していた当時、広告局のある部長から「君は電力業界と自動車業界からいちばん警戒されている」と警告されたことがある。安全と環境エネルギーという共通する課題を抱えた両業界に対し、辛口の注文を付ける記事を書いてきたことについて、業界人が苦情を告げたのだろうと察した。ただ、警告してくれた部長とは親しい間柄だっただけに、警告は筆者への牽制ではなく、「記者をクビにならないよう注意したほうがよい」と忠告してくれたものと受け止めた。無論、それを機に報道姿勢を変えるようなことはしなかった。

それにしても、東電と経産省・保安院の不手際が日本ばかりか北半球の諸国民に甚大な脅威を及ぼすに至った今となっては、もっと厳しい記事を書いておくべきだったと痛感している。現在の困難打開に力を発揮し得る現役記者への期待をこめて、そんな出来事をあえて紹介することにした

日本の悲劇 東北巨大地震と福島原発 〜本当のことを何も知らされない日本人〜  斉藤 武一(北海道岩内)

はじめに

太平洋沿岸に並んでいる10基の福島原発が次々と深刻な状態になっています。なぜ、そんなことが起きているのか日本人は、何も知らされていません。さらに、これから起きる悲劇のことも何も知らされていませんし、今もなお、電力会社と政府と原子力工学の専門家とマスコミは、本当のことを国民に隠し、国民をだまし続けています。

1.福島原発の弱点

原発には、加圧型(PWR)と沸騰水型(BWR)があるが、福島原発は沸騰水型で、沸騰水型には弱点が二つある。一つは、ブレーキに当たる制御棒が圧力容器の下から挿入されるという点にある。制御棒は、竹やりのような形で圧力容器の下にぶら下がり、水圧で押し上げる仕組みになっている。そのため地震で揺れた時は、制御棒が入りづらいという弱点がある。今回の東北巨大地震では、「幸運なことに」制御棒が入り、原子炉が停止したということを日本人には知らされていない。そして、二つ目の弱点は、圧力容器内の水を循環させる循環ポンプにある。沸騰水型では、循環ポンプが圧力容器の外にぶら下がっている形になっている。そのため地震の振動に対して非常に弱い。循環ポンプは、燃料棒を冷却する重要な役目があり、今回、原子炉が停止した後、崩壊熱を出し続ける燃料棒を冷却出来なくなった理由は、循環ポンプの弱点にあることを日本人には知らされていない。

2.非常用発電機が津波で流されていた

原発では、通常は内部電力といい原発自身が作った電気を使って運転されている。地震で原子炉が停止すると、最初に内部電力がなくなる。すると、外部電力といい送電線から電力が供給されることになっている。しかし、地震で外部電力もこなかった。その時は、非常用ディーゼル発電機が作動することになっているが、大津波が発電機のある施設をすべて押し流していた。しかし、電力会社は、津波で発電機が不能になったという程度で、施設そのものが流されていたという重大な事実を隠していた。やがてバッテリーも切れ、福島原発は、電気がなくなり完全に不能となり、電源喪失に陥る。そして、電源喪失という重大事故は、福島原発の第一原発の2号機で、巨大地震の9カ月前の2010年6月17日にも起きていた。この時もかなり危なかった。しかし、その時の教訓は生かされることはなかった。

3.なぜ放射性物質が大量に放出されたのか

原発で、どのような燃料を使っているのか何も知らされていない。最初にウラン燃料であるが、現在は濃度が4.8%という高燃焼度燃料を使っている。以前に比べて濃度が高いということは、
核分裂によって生まれる死の灰の放射性が高まる。さらに燃えた後の使用済燃料は、濃度の低い燃料より崩壊熱を多く出し続ける。そして、福島原発第一原発3号機では、濃度の高いウラン燃料に加え、プルトニウム燃料も使っている。プルトニウムは、ウランよりも激しく燃えるため、核分裂で生じた死の灰の放射線レベルはかなり高く、燃やした後の使用済核燃料の崩壊熱も高い。このことを踏まえて、格納容器が爆発するまでを追うと、最初に電源喪失で水の流れが止まり、崩壊熱によって冷却水が蒸発し、燃料棒が水面から顔を出してしまう。そのため、燃料棒のさやである被覆管のジルカロイドが高温となり、化学反応を起こし水素が発生し、格納容器に溜まり始める。そこで水素爆発が起こった。爆発の際、なぜ大量の放射性物質が放出されたのか。それは、燃料内部に大量の死の灰が入っていたからである。3号機の周辺で放射線の値が400ミリシーベルトという高いレベルになったのは、濃度の高いウラン燃料とプルトニウムによるものである。このことも、日本人には何も知らされていない。さらに、プルトニウムから生まれる死の灰の恐ろしさが隠されている。

4.使用済み核燃料が爆発した

福島原発第一原発4号機内のプールに保管してある使用済み核燃料から水素が発生し爆発した。なぜ爆発したのか、これも本当のことが隠されている。日本では、原発から出るごみである使用済み核燃料が大量に出てしまい、その保管に困り果てている。そのため、プールには昔に比べてぎっしりと原発のゴミが詰め込まれている。となると使用済み核燃料全体から出る崩壊熱は、以前に比べて多くなる。電源喪失により、プールの水の循環が止まり、冷却不能となり、プールの水が少しずつ蒸発し、使用済み核燃料が水面から露出し、崩壊熱により水素が発生し爆発した。つまり、原発のゴミの所処理に困り果て、プールに大量に詰め込んだことが被害を大きくしたことになる。このことも知らされてはいない。

5.外部被ばくと内部被ばくの違い

何度も水素爆発が起き、死の灰が福島地方に降りそそぎ、さらに首都東京にも少しずつ届き汚染は拡大している。しかし、原子力の専門家も政府も「ただちに健康に心配はありません」と繰り返している。その際、レントゲ撮影に比べたら低い値だと強調し、国民をだまして続けている。外から放射線を受けるのを外部被ばくというが、レントゲン撮影は外部被ばくのことである。健康に心配なのは、外部被ばくよりも、放射性物質を吸いこみ体の中から被ばくする内部被ばくの方である。政府も専門家もわざと外部被ばくと内部被ばくを同等に扱い、健康に心配はないと国民をだまし続けている。

6.内部被ばくの恐ろしさ

外部被ばくは、瞬間の被ばくである。放射線の量が多ければ、それに比例してガンになるリスクが高まる。しかし、内部被ばくの場合は、体の中にある放射性物質がじわじわと長時間にわたって放射線を出す。そのため放射線によって周りの細胞は破壊される。具体的には、免疫細胞が破壊され、遺伝子が傷つくことになる。そのため、放射線の量がごくごく微量でも危険である。つまり内部被ばくの場合は、10年後、20年後にガンにかかるということになる。内部被ばくの恐ろしさは、目に見えないごいごく小さなほこりを吸いこみ、被ばくしているとは知らないうちにガンにかかるリスクが高まるという点にある。政府や専門家やマスコミは、内部被ばくの恐ろしさを、まったく国民に知らせていない。

日本の悲劇から世界の悲劇へ

本当のことは何も知らされないまま、多くの日本人が放射性物質にさらされています。このままだと、日本の子どもたちが危険なことになります。内部被ばくした子どもたちの遺伝子は傷つき、傷ついた遺伝子は10年後、20年後、子どもたちの体に襲いかかってくるのです。
悲劇は始まったばかりなのです。悲劇が始まっているのに、その悲劇を日本人は知らされていません。日本を日本人自身で救えなくなっています。日本人の多くが、政府に悲劇を訴えかけておりますが、なかなか日本政府は本当のことを言いません。福島原発による日本の悲劇は、全世界の悲劇へと発展しています。全世界の人たちに心より訴えます。全世界で原発を一刻も早く停止するように希求します。

本原稿は、パソコンで日本国内に配信され、さらに英訳され全世界に発信されています。そのため、全世界に向けての文章となっています。と同時に、京都にある市民系出版社・ロシナンテ社の月刊「むすぶ」の3月28日号に掲載されます。
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