欠陥住宅って何?

日々の住宅検査の事を中心に私事を交えて記載しています。

金物検査

我が母校の耐震補強

今の事務所は、私が子供の頃通っていた東小学校の前にあります。

下の写真は、私が小学校に入学した頃に新築された建物です。

この夏くらいから耐震補強工事が始まり、ようやく工事が完了したようです。1階、2階にV字型の筋かいが取り付けられましたね・・・

この建物は、昭和40年代後半の建物で、新耐震設計(昭和56年)になる前ですから、地震に対して非常に脆弱な構造であったと云えます。

教室を明るくするために、南全面をガラス張りにしており、南面には、地震の揺れに対して、抵抗する堅固な耐力壁がありませんでした。

そのため、工事前の状態では、東西の揺れに対して抵抗することが出来ないので、阪神大震災級の地震であれば、確実に倒壊していたと思われます。
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既存校舎の耐震補強の場合は、このように構造部を外に出して、補強することになりますが、建物の構造部は、通常、壁の中で見えなくなる箇所となります。

この見えなくなる箇所が非常に重要であり、注意して施工する必要があります。

先日の金物検査では、耐力壁となる面材の釘の不具合が多数有り、是正をお願いすることになりました。各所で下地から外れて釘が打たれています。
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耐力面材は、釘のせん断力と引抜き力で地震に抵抗しますので、このような釘の打ち損じがあっていけません。

釘が正しく打たれた耐力壁とそうで無い耐力壁の違いは、地震が起きた時にしか出ませんが、その違いが人命に影響することにもなりかねませんので、釘の打ち方一つとておろそかにしてはいけません。

金物の取付け

金物検査では、主に、図面記載通りの金物が取付けられている事と、取り付け方のチェックを行います。

先日の金物検査

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ビスを入れ忘れているうっかりミスです。手元に2本のビスしか無いので、後から残りの3本を入れようと思い、別の事に取り掛かると、大体こうなりますね・・・・・

5本で留めるべき処、2本しか入っていません。このうっかりミスが、地震の際、大きな問題に繋がる可能性となります。

是正後の写真
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ここは、ビスが斜め打ちになっており、最後までビスが正しく入っていません。
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どのビスも、入りきっておらず、途中で止まっている状態。これは、仕事の丁寧さに欠ける状態です。
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是正後の写真
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建築金物は、正しく取り付けてこそ、設計で求められる強度が出ますので、付いているだけではいけません。

金物検査は重要

昨日の金物検査の現場では、私、行政検査員、
瑕疵担保保険の検査員の3人がほぼ同じ時間帯に
検査を行うことになりました。

私は、両者より30分前から検査を開始していましたが、
検査完了は、両者より30分遅れの約2時間を要しました。

金物検査は、多くの目でチェックする事が重要だと
思いますので、3人の検査員が入ることは、それなりに
意義あることと思います。

一般的に、行政検査員、保険検査員の方は、概ね30分
位で検査を終えられることが多いように思いますが、昨日
の検査員のお二人は、私より年配の方で、1時間位の時間
をかけ丁寧に検査しておられる印象を持ちました。

私と検査所要時間が違うのは、私の方が、検査対象として
いる項目が単純に多いのと、時間をかけて詳細に観ている
からです。

やはり、お二人共、私より以上の指摘事項は無かったようです。

私は、最後にまとめて、現場担当者の方に指摘事項を伝え
ますので、お二人の検査員と違う指摘事項については、
お二人が帰られてから是正して頂くことになります。

その内容を一部ご紹介します。

先ず、この現場では、金物の取付け忘れと取付け間違いが4
箇所ありましたが、それをお二人共、見逃しておられる箇所が
あったようです。

下の左写真は、現状でも金物は入っていますが、金物の種類が
間違っています。大工さんが図面の見間違いをしたようです。

この建物は、建築主の意向により、建築基準法より耐震等級を
上げて、設計されていますが、設計通り、現場が施工されていな
ければ、設計でいくら耐震等級が高くても、実際はそのようになって
いないと云うことになります。
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下の箇所も金物種類間違いです。
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以下の私の指摘は、行政検査及び保険検査の検査項目には、
元からチェック対象となっていない事項だと思います。

下の金物は、合板に打たれたビスが、丁度合板の継ぎ目の位置に
来ています。この状態では、ビスの引抜き力が激減します。
ビスが正しく効くように、横にずらして留め直すだけのことですが、
是正前と是正後の強度には、大きな違いがあります。
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垂木を固定するひねり金物取付け不良
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上赤丸拡大写真、釘が垂木から飛び出ています。

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ひねり金物取付け忘れ7箇所
ひねり金物は、屋根を固定するために取付けます。
台風等の強風で屋根がめくり上がらないよう抵抗する訳です。
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下の写真のように、全体的にボルトナットのネジ山不足が観られましたので、
全箇所点検して頂くようお願いしました。
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金物は、地震や台風の異常事態に抵抗するために取付けますので、
建物の強度を上げれば上げるだけ、金物の量は自ずと増えます。

但し、机上計算の強度と実際の建物の強度を一致さすためには、
施工不良や施工漏れがあっては、意味がないと云う事です。

そう言う意味で、異常事態に備えるための金物を検査することは
非常に重要と云えます。

構造用面材の釘打ちの留意点

2×4の新築検査で、構造用面材の釘の状態を拝見すると
釘のはし空き寸法が少ない箇所が多く観られました。

構造用面材のジョイント部に釘が打たれていますが、
はし空き寸法が無ければ、外力を受けた際、容易に
ちぎれてしまいます。
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2×4の場合、構造用面材を留めるたて枠の寸法が38mmですから
その真上にジョイントがきて、2列に釘を打つ場合は、施工精度を
上げて、施工しなければいけません。

釘の間隔は正しくても、はし空き寸法が不足していると、下の挿絵
赤枠のように、面材に外力が加わると、割れや切断に繋がります
ので、注意が必要です。
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金物検査のポイント その2

前回ハウスメーカーの金物検査の内容を記載しま
したが、今回は、同時期に行った建築条件付きの
物件の金物検査の内容の一部を記載します。

金物は、正しく取り付いていなければ、本来求められ
る強度は出ませんので、金物検査では、図面に記載
されている各種金物が正しく取付けられているか否か
を1箇所づつ確認して行きます。

この現場では、棟梁が、弟子っ子に金物の取り付けを
全て任しており、その後のチェックを一切していなかっ
た。とのことでしたが??

金物検査を受ける状態とは言えない。余りにも問題の
多い内容でした。

ホールダウン金物の取り付け忘れ2箇所
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是正後
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筋かいプレートの取付け忘れ4箇所
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是正後
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L型金物のビスを打ち忘れ
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羽子板金物入れ忘れ
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是正後
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ボルトナットの取付け不良多数
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この現場では、盛り沢山の問題箇所がありましたが、
これは、数の多い少ないの違いはあれ、どこの現場
でもあることです。

何が一番の問題かは、明らかです。
元請の工務店は、大工さん任せ、大工の棟梁は
弟子っ子任せで作業が進んでおり、作業内容を誰も
チェックしていない。それが問題です。

当方の検査が無ければ、最後まで問題に気付かず、
そのままになっていた箇所も多数あったことでしょう。

建物が引き渡され、問題が生じてから、建物を調べると、
各所で金物不足や取付け不良があったことが分かったな
らば、大問題となります。

第三者の検査が入ることが、わずらわしい。と考える施工
業者も中にはあるようですが・・・・

我々の検査は、建築主のために行なっている検査ながら、
結果的には、施工会社のために行なっている検査だと、
私は常常思っています。

何故ならば、工事中の検査において、問題箇所を是正すること
により、その後、施工会社に対するクレームや問題発生を断ち切
ることになるからです。

仮にこの建物が、今回の是正がなされないまま引渡しが行われ
た場合、地震の際には、建物が変形したり、最悪の場合は、倒壊
する可能性もあったと思われます。

もしそうなれば、施工会社には、存続に関わる程の責任が問わ
れます。

我々の検査は、建築主のために行なっている検査ですが
結果的に、施工会社のために行なっている検査であると云う
意味がお分かり頂けると思います。



金物検査のポイント その1

現在、同時並行の新築物件の基礎に関する検査について、

・配筋検査のポイントその1~その5
・基礎立上り検査のポイントその1からその2

を記載しましたが、引き続き、金物検査のポイントについて
記載します。

阪神大震災以後に、告示1460号「木造継手及び仕口の
構造方法を定める件」と云う法律が出来ました。

これは、どこにどのような金物を取付けなければいけないか
が、決められたものです。

金物検査では、金物の種類及び取付け位置を示した
金物図面通り、正しく金物が取付けられているかを検査します。

今日は、先日行ったハウスメーカーの金物検査で指摘した箇所
の一部を紹介します。

<ボルトナット取付け不良>

在来木造住宅では、ボルトナットを多用しますが、この
ナットが正しく締まっていない現場が非常に多いです。

構造部の緩みは、地震に際して非常に危険であると云えます。
この現場では、このようなボルトナットの緩みや留め付け不良
箇所が4箇所ありました。

行政や瑕疵保険においても、金物検査(中間検査)があります
が、ボルトナットについては、検査の対象外となっていますので
それらの検査では、指摘対象となることはありません。
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<L型金物の取付け不良>

この金物は、柱の引き抜き力に抵抗するために取付け
られています。
床構造用合板から土台に留められるビスが1本合板
から外れ露出しています。

ビス、釘は、摩擦力とせん断力で外力に抵抗しますが
このように、ビスが露出していると、摩擦力が低減します
ので、正しく、構造用合板に留めることが出来る位置に
変更しなければいけません。
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<短冊金物取付け忘れ>
梁のジョイント箇所は、短冊金物で補強します。
この短冊金物の取付け忘れ箇所が2箇所ありました。
上の写真は、短冊金物が正しく取付けられている箇所
下の写真は、取り付けを忘れている箇所

単純な取付け忘れミスですが、構造上脆弱箇所となり
ますので、忘れることがあってはいけない部分です。
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<火打梁取付け忘れ>
小屋組の隅角部には、歪防止のために、斜めの材を梁
と梁にかけます。これは、木の場合と鋼製の場合があり
ます。上の写真(鋼製)がその火打梁が取り付けられた
箇所です。

小屋伏せ図を観ると、下の写真赤線箇所にも火打梁が
取り付くことになっていますが、その取り付けを忘れて
います。
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<けた行筋かいの割れと取付け箇所の不足>

けた行筋かいは、屋根がけた行方向に倒れるのを防止
するために取り付けます。
上の写真の箇所は、3本の釘を打った箇所で材が、
パックリ割ています。
これを取り付けた大工さんは、当然分かっているはず
です。何故材を取替えておかないのか???
端部が留まっていない訳ですから、無いのと同じです。

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更に、この現場では、建物半分にけた行筋かいが不足して
いましたので、取り付けをして頂きました。
左写真青点線が不足箇所、右写真が取付け完了後

けた行筋かいは、図面にも記載されることが先ずありませ
んので、大工さん任せになっていることが多いです。

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いくら地震に強い建物を設計しても、現場でその設計通り、正しく
金物が取付いていなければ、求められる強度に至りません。

人の手が加わる箇所には、間違いやミスがあることを前提に、
チェック体制を充実して頂きたいと切に思います。

けた行筋かいについて

けた行筋かいは、屋根を支える小屋づかが、けた行方向に倒れるのを
防ぐために取り付けます。

このけた行筋かいについては、どこにどのように取付けるかが
図面に記載されることが先ずありません。


雲筋交い 振れドメ








       木造住宅工事仕様書(住宅金融普及協会発行)抜粋

そのため、この取付けに当たっては、大工さん任せとなっている
のが現状です。

但し、このけた行筋かいを、どこに、どのように取付けなければい
けないかをご存知の大工さんが、少ないです。
そのため、金物検査では、この小屋筋かいの指摘事項が多いです。

先日、金物検査で伺った大手ハウスメーカーの現場では、屋根の
半分は、けた行筋かいがありましたが、残り半分にそれがありませ
んでした。

また、既に取付てある小屋筋かいも取付け方法が誤っている箇所
があります。

大工さんに「これからけた行筋かいを取付けられるんですか?」
と聞くと、「えっ・・・ここにもいるんですか?」との返事が返ってきま
した。
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上の写真の小屋組には、けた行筋かいがありません。

「もちろんいりますよ。けた行筋かいは、耐力壁に入れる筋かいと
同様、横揺れに抵抗するために、垂直に建つ小屋づか(耐力壁
の場合は、垂直に建つ柱に取付けるのと同様)に取付けなけれ
ばいけません。

現在、取付けてあるけた行筋かいは、棟木や母屋に釘打ちされ
ていますが、これも間違いです。小屋づかの横揺れを止める
ためには、小屋づかに釘打ちしなければいけませんよ。」と
是正をお願いしました。

工事途中からの検査依頼

工事が進む中で、建築主が施工内容に疑問を感じ、
工事の途中から検査の依頼を頂く事がよくあります。

先日も、工事途中から不安を感じられた建築主の方
からのご依頼で、連絡を頂いた翌日に、急遽検査に
伺った建物があります。

その現場は、瑕疵担保保険の中間検査も、ずいぶん
前に終わっており、大工工事が更に進んでいる状態でした。

全体的には、丁寧な施工が行われている現場でしたが、
検査した結果、以下の是正をして頂くことになりました。

ボルトナットの問題  7箇所
防水テープの問題  3箇所
金物取付け忘れ   2箇所

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これは単純に、ナットの締め忘れです。


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この箇所は、指でナットが廻る状態で、これも
締め忘れです。

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この箇所は、上の写真のような金物が入る箇所ですが、
それを入れ忘れています。

このように、手造りの現場作業には、ミスや間違いが起きるものです。
故意に手抜きをしている訳では無いのですが、当事者は、中々その
ミスに気づかないものなのです。

検査後、お客様からご丁寧に、”第三者の検査が入り、これで安心
出来ます。”との内容のメールを頂きました。

ビス、釘の打ち忘れ

金物検査に伺いました。

200箇所程度の金物について、金物の種類、取付状態
をチェックして行きました。

どの箇所も図面通りの金物が正しく取付けられており、これは、
久しぶりにパーフェクトの現場かなぁ~と思いました。

が・・・・残念ながら、2箇所問題が見つかりました。

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上の写真は、筋交い金物です。この金物は、筋交いに対して
6本のビスで留めなければ、設計強度が出ません。
5本打ちになっていますので、1本ビスを打ち忘れています。
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上の写真は、耐力壁となる構造用合板の下部(赤丸箇所)
に釘を打ち忘れています。

たかがビスや釘と軽んじることなかれです。
正しく留付けられた状態と、そうで無い状態では、当然
違いがあります。
平常時には、その違いは分かりませんが、地震の際に
その違いが分かることになります。

この日も行政側の検査員の方と一緒になりました。
私より後にやって来て、問題無しと云う事で、10分程度で
帰って行かれました。

私は、金物を1箇所ごと確認して行きますので約2時間
かかりました。

釘留付けの間違い

下の写真は、小屋束と小屋筋交いの接合部です。
何が間違っているか分かりますでしょうか。
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2枚の小屋筋交いを重ねて、小屋束に釘留していますが、
これが間違いです。
釘は、長さと太さがでせん断力と引抜き力が決まります。
1枚で留めるだけの長さしかない釘であるのに、2枚重ねにすれば、
当然、引き抜き力が激減します。

このような留付けは、絶対にしてはいけません。
大工として、最低限の知識が必要です。

職人さんが横着した結果が、建物の構造を弱めることに繋がります。

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小屋筋交いを小屋束の両面に振り分けて留める
是正をして頂きました。
是正前と是正後の違いが分かると思います。
地震で、簡単に外れてしまうような留付けであってはいけません。

住宅検査の必要性

本日の金物検査では、金物の取り付け忘れが多数
見つかりました。

柱頭ホールダウン金物 1箇所
筋交いプレート      1箇所
引き寄せ金物       1箇所
コーナー金物       2箇所 

以上の箇所は、図面にその記載がありますが、取付け
を忘れている箇所です。
いくら設計で、堅固な建物でも、現場で金物が付いて
いなければ、絵に描いたもちになります。

その他の指摘事項

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ナットの締め忘れ


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締まってないので、指で回すとナットが取れる。


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柱下の基礎パッキンの入れ忘れ


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基礎の水溜り


昨今の建物は、金物の数が大変多いため、今回のように、
取り付けを忘れる箇所が、どの現場でも出来てきます。
 
図面では、耐震上堅固な設計であっても、現場で
金物の取り付けを忘れると、設計強度が確保出来ません。

今回の金物が全て、忘れたままであれば、大地震の際に、
建物に影響が出ることは確実です。
このような、忘れると云う、うっかりミスが大きな問題になります。

 
本日の金物検査は、2時間で全箇所の金物をチェックしました。
 
私が検査を開始してから、しばらくして、行政側の検査機構の
の建築士の方が中間検査に来られてましたが、10分程度で、
検査を終え、その方の検査では、問題は無かった?・・・ようで
指摘事項ないまま帰って行かれました。
金物の取付け忘れが、これだけあるのに???
我々にすると、何を見に来ておられるのか不思議に思うところ
ですが・・・・・・

要するに、同時期に行う検査でも、検査の内容が全く違う
と云うことです。
彼らの検査では、金物の取付け忘れがあろうが、なかろうが、
それは検査の対象になっていないのでしょう・・・

又、金物を一つ一つチェックして行くような、1軒の建物に時間
をかけていられないと云う事情かもしれません。

 今、新築完成物件の裁判に、複数件関わっています。
どの建物も、建築基準法違反であると共に、構造的な瑕疵が
あります。

しかし、相手方は、行政の検査も、瑕疵担保保険の検査も
パスしており、建築基準法違反も瑕疵も無く、全く問題が無い
ことを主張しています。

今回検査した建物も、設計図通りの金物が無いままであれば、
建築基準法違反であり、構造上の瑕疵が存在する訳です。

行政側の検査や瑕疵担保保険の検査をパスしたことが、
瑕疵のない建物であることの裏付けにはなりません。

今日の検査結果の違いが、全てを物語っていると思います。

準耐火構造に造り直し完了しました。

8月23日に準耐火構造であるべき、大阪市内の木造3階建
住宅が、そのような仕様になっていなかったことをブログに
記載しました。

この建物の最大の問題は、準耐火構造に全くなっていない建物で、
何らの規制を受けていない、木造2階建の仕様で、3階建てに
なっている建物でした。但し、外部のサッシ周りだけは、準耐火に
適合していました。

建物内部を建築基準法通り造るためには、全階、壁、天井を
解体して、造り直す必要がありました。

報告書にその内容をまとめ、提出させて頂きました処、建物の
内部を全て解体して、造り直すことになりました。

お客様から、改めて、検査の依頼を頂き、解体から建物完成まで
計5回の検査をさせて頂き、その建物が、完成しました。

金物検査、断熱材検査、大工中間検査、大工完了検査、完成検査

金物検査では、ホールダウン金物2箇所、ボルト多数箇所が
指で、ナットが回る状態でした。
壁、天井を解体をしたから分かったようなものですが・・・・怖いことです。
当然全て、点検し、是正して頂きました。
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断熱材は、元々、図面に記載されている品物が入って
いない箇所もあり、その施工が悪い状態でした。
品物も正しい物に取り換え、良い施工になりました。

全ての検査で、是正を順次行いながら、昨日完成
検査に行きました。

一番最初の検査の際は、仕上げの状態も悪かったので
今回の完成検査でも色々、指摘事項があるだとうなぁ・・と
思っておりましたが・・・・・

なんと、ほぼパーフェクトの仕上がりでした。
私もこの素晴らしい出来には、感激しました。
お客様にも満面の笑顔で、喜んで頂けました。
本当に良かったです。

これから長年にわたり、安心安全に暮らして頂ける住まいが
完成したと思います。

担当頂いた、工務店の方は、とても誠実な良い人柄の
方でした。

最後まで、一生懸命に取り組んで頂いた事に私からもお礼
申し上げました。

会社としては、大赤字の工事となり、大変であったろうと
思いますが、自らの非を認め、誠実に対応なさった事を
素晴らしく思います。

この工務店のように、間違いを認め、誠実な対応をなさる会社
もあれば、問題が大きくなると、会社を潰して、別の社名で営業
している会社もあります。

人も会社も間違いがあります。私もそうです。皆同じ人間です。

しかし、間違ったことに気付いた時、その後どのように対応
するかで、人や会社の値打ちが決まるように思います。

人は、小手先でかわし、ごまかして、その状況から逃げ
ようとする、くすんだ心を誰もが持っています。

我々は、常に、それをためされているようにすら感じます・・・
清流に住む清き心のヤマメでいたいものです(笑)

検査って何?

先日もお客様から、「瑕疵担保保険会社の検査もあると聞きますが、
第三者の検査と何が違うのでしょうか?」と質問を受けました。

現在、建築会社は、瑕疵担保保険に加入することが義務付け
られていますので、必ず、保険会社の検査を受けなければいけません。

保険会社では、通常、配筋検査と金物検査の2回検査を行います。
当事務所でも配筋検査と金物検査は当然行います。

両者が同じ検査をするのなら、重複するので、少なくとも重複する
2回の検査については、第三者検査は必要ないのでは、と、思われるかも
しれません。

保険会社の検査と我々の検査との大きな違いは、検査項目及びその内容
の細かさだと思います。

パートナーの検査会社、カノムの長井さんが、検査の現場に行った処、
保険会社の検査員が検査を終え、帰る処だったようです。

保険会社の検査員は、長井さんが第三者検査である事を知り、”○○○の
箇所で、○○○な問題があるので、注意して観て上げて下さい。うちでは、
その項目が検査対象となっていないので、指摘事項にしていません。”
と云って帰って行ったことがあったと聞きました。

保険会社の検査員は、決められた検査項目以外に、問題と思われる箇所
があっても、それを取り上げる事が出来ない事情があるようです。

保険会社の依頼主は、建築会社であり、保険会社は、建築主がお客様で
はなく、建築会社がお客様となる関係です。
建築会社は、自由に保険会社を選べる訳ですから、検査のあまい
保険会社が、建築会社にとっては使い易いと云えます。

以下の写真は、保険会社の金物検査が終わった後、当方が検査し
指摘事項として上げた一例です。
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ナットを締め忘れています。
構造部の緩みは、建物の歪に影響します。

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赤丸箇所に金物を入れ忘れています。
さすがにこれは、保険会社の検査項目に該当する
でしょうが・・・見逃しがあったのでしょう。
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柱の下に、必ず必要となる基礎パッキンを入れ忘れています。
基礎パッキンは柱の垂直荷重を基礎へ伝えます。

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ひねり金物の釘を打ち忘れています。
屋根が暴風で吹き飛ばないように取り付ける金物です。

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耐力壁の釘の縁あき寸法がありません。
横揺れが加わると、簡単にちぎれてしまう状態です。
この建物は、このような箇所が他にも多数あり、建物全体に渡り
釘の是正をしました。

「欠陥住宅って何?」でしょう・・・・
上の5枚の写真は、構造上の瑕疵です・・・

当方の検査がなければ、このまま仕上られており、完成すれば
見えなくなる箇所ですから、検査機構の検査済証も発行されます。

現在、当方が関係して、裁判をしている相手方の建築会社は、保険会社の
検査に合格し、検査機構の検査済証も発行されているのだから、”欠陥など
無く、全く問題の無い建物である!”と主張しています。????

現状は、構造部を多数現場で変更し、建築確認図面との相違があり、
本来変更前に、建築確認の出し直しをしなければいけない建物ですが、
それを行わないまま完成し、構造に大いに問題を抱える建物です。

このような建物でも、保険会社の検査をパスし、建物完成時には、問題箇所
も見えなくなっていますから、検査機構の検査済証も発行されてしまいます。

要するに、保険会社の検査をパスし、検査済証が発行された建物は、
瑕疵の無い建物とイコールではないと云う事です。

金物の留め方

金物は、取付け方で強度が変わります。
下の写真は、構造用合板の上からビスで留め、土台と柱
を緊結するL型の金物です。

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構造用合板が柱の手前で切れている
ため、ビスが構造用合板にかかっていません。(赤矢印)
青矢印のビスも構造用合板の端から空きがありません。

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屋根裏部分
屋根を垂直に支える小屋束は、かすがいで留め
ますが、写真のように、12mmの構造用合板に打
ち付けても、かすがいが、合板を突き抜けており、固定方法とてNGです。

細かい話のようですが、地震の力を甘く見ると、大変なことになります。
このままでは、杜撰な工事のつけが、所有者に廻って来ます。

火打梁取付忘れ

火打梁は、隅角部にを設け、平面剛性を高めます。
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要するに、建物の歪をおさえるために取付る訳です。

建築基準法施行令第46条3に「床組及び小屋ばり組の
隅角には火打材を使用し・・」とあります。

下の写真赤丸箇所には、図面に火打梁の記載がされて
いますが、それが取付られていませんでした。

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小屋梁に取り付く火打梁は、小屋梁に少し欠き込み
を入れて、火打梁と組み合わせます。

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2箇所共、梁に欠き込みが見当たりませんので、
プレカット工場(材木を図面に合わせて加工する工場)
で火打梁の加工自体を忘れたものと推測します。

保険会社の金物検査、検査機構の中間検査も完了
した後ですから、それらの検査の際にも見逃されたと云う
ことになります。

このまま完成して、地震で建物が歪んだ場合、この構造部の
欠陥は、施工会社としては逃げることの出来ない大問題とな
ります。

我々の検査は、建築主のために行う検査ですが、結果的に
施工会社さんをも助けることに繋がっていると思います。

大工さんの技量 その2

前回のブログでは、問題点の多い大工工事の現場を
記載しましたが、決して悪い仕事の大工さんが多いこと
を強調している訳ではありません。

昨日、新築の金物検査をさせて頂いた現場は、どの
箇所を観ても、大変丁寧に仕事をしておられることが
分かりました。

若干の指摘事項はありましたが、この大工さんなら、
安心出来るなぁ・・・と思いながら検査を完了しました。

すると、大工さんが詳細図面を持って来られ、「ちょっと
準耐火構造の細部のおさめ方について、質問させてもら
っていいですか?」とのこと・・・・

私は、”やっぱりなぁ・・・”と思い、嬉しくなりました。

我々に色々質問をしてこられる大工さんは、大変向上心
のある優れた人が多いです。
ちゃんと分かった上で、良いものを造ろうと云う思いがある
からこそ、質問が出てきます。

逆に、我々の指摘事項に対して、”いつもこのようなやり方
で長年来ている!何が悪い!”と云わんばかりの方もいらっ
しゃいます。

この両者の技量の違いは、仕事を見なくても分かります。

自分がやっていることは、これで正しいのだろうか・・・・
常に確認し、吸収することを忘れない謙虚な姿勢の人を
世の中は求めているのだと思います。

我々とて同じことです。過去受講した耐震診断の講習も
今では役に立ちません。内容が大きく変わり再受講と
なりました。

以前は、講習に参加さえすれば、受講修了者となりましたが、
今では、講習後にテストがあり、合格しなければ受講修了
となりません・・・・

以前は、耐震診断のことを何も分かっていなくても、受講修了者と
して、役所等に登録されましたので、問題も多かったようです。

今のように、テストくらいあっても、当然かもしれません・・・^^;嫌ですが(爆)

本日、「考査」の結果、履修内容を習得されたと判断させていただき
ましたので、「受講修了証」をご送付申し上げます。と大阪府建築士会
から郵便が届きました^^








かすがい

先日の金物検査の指摘事項 最終回

「かすがい」は、ホッチキスの針のような形で、母屋、束、
梁などの構造部材を繋ぎ留める役割をはたします。

          Baidu IME_2013-2-8_19-10-32
           かすがい


あぁっ・・・これが「かすがい」かぁ・・・と思われた方もいらっしゃる
かもしれません。

「子はかすがい」と云うことわざの中で出てくる「かすがい」です。
これは、子供が不仲な両親を繋ぎ留める役割をはたす。
と云う意味ですが、「かすがい」は、建築金物を意味します。


BlogPaint
青丸箇所には、かすがいが取り付いていますが
赤丸箇所に、かすがいを入れ忘れています。

BlogPaint
この箇所にもかすがいが必要です。

4回に渡り、先日の金物検査の指摘事項を取り上げました。
基礎パッキン、筋交い金物、ボルトナット、かすがい
それぞれ構造部として、重要な箇所です。

人間のやることには、必ず、ミスがつきまとい、忘れたり間違
ったりします。

どのような仕事でも、それを前提として、行なった仕事の確認
やチェックをするのが当たり前のことです。

しかし、こと建築現場においては、そのチェック体制が万全の
会社は、大手ハウスメーカーを含め非常に少ないと云えます。


本来、現場担当者が職人さんの仕事をチェックするのではない
のか・・・と思われると思います。
その通り、当然、現場担当者がチェックする立場にあります。

職人さんが自分の仕事をチェックする。次に現場担当者が
チェックする。最後に我々第三者が検査をする。
これが最も理想的な形だと思います。

しかし、職人さんも現場担当者も工程ごとの確認やチェックを
していない状態ですから、我々が検査すると、是正項目が多岐に
渡ることになります。

現場担当者は、工程管理と現場管理が主な仕事になります。
工程管理は、期日までに建物を完成さすために、人と物の手配
を行うことが主になります。

現場管理は、各工程において、正しく工事が行われているかを
チェックし、指示監督することが主になります。

一人の現場担当者が、10物件以上担当することはざらに
あることで、この人と物の手配で追われてしまい、現場に出向い
て、細かくチェックする時間が無い。と云うことがあげられます。

但し、時間があっても、他人の行なった仕事を検査するため
には、法律や施工の知識と経験が必要になります。

ビスの打ち忘れであれば、素人でも観れば分かることですが・・・

我々の指摘事項に対して、どこがどのようにおかしいのか。その
指摘事項の意味が理解できない方もいらっしゃいます。
それでは、他人の仕事をチェックすることは出来ません。

特に物造りにおいては、ミスを如何に無くすか。それが肝となります。

今回の建物の検査を我々が行わず、今回の指摘事項が是正されず、
そのまま放置されていたとしても、壁が張られ、構造部が隠れてしまうと、
誰にも分かりません。

建物完成後、竣工検査に合格し、建築確認済証は発行されます。

建築確認の検査済証は、施工ミス等、問題が無いことの証明ではありません。

ボルトナット

先日の金物検査の指摘事項 ボルトナット

木造在来工法では、ボルトナットを梁の結合部
等に使用します。

この箇所で、多くの現場で共通する指摘事項は、
ナットの締め忘れやボルトの山不足です。

BlogPaint

 赤丸箇所を拡大したのが下の写真です。

IMGP7015

 よく見るとナットを締め忘れています。
 単純なミスですが、建物が歪む原因にもなります。
 
IMGP7045

 ナットからボルトが2~3山以上必要ですが
 現状は、ボルト山無し

IMGP7043

 ボルト山無し
 
 このケースは、ボルトの長さが元々短いことが
 原因でしたので、ボルトの長さを変更して頂き
 ました。 
 


筋交い金物

先日の金物検査での指摘事項 筋交い金物

筋交い金物では、以下のようなビス打ち忘れ
が結構あります。

IMGP7030

IMGP7014

図面上は、壁倍率2となっていても、取付け方が
誤っていれば、求められる強度が無いと云う事です。



基礎パッキン

先日の金物検査での指摘事項 基礎パッキン

基礎パッキンは、コンクリート基礎と土台の間に
取付け、通常、床下の換気を促す役割があります。
(但し、気密パッキンは、換気しないためのものです。)

コンクリート基礎天端全てに敷き込む工法と、部分的に
敷き込む工法があります。

この部分的に敷き込む場合、以下の挿絵のようなルール
があります。

Baidu IME_2013-2-1_10-1-1
                 Jotoキソパッキン資料

特に以下の箇所は重要です。

① アンカー設置箇所

② 柱直下箇所

③ 土台継手箇所


IMGP7028

柱は、垂直荷重を土台を介して基礎へ伝えます。
そのため、中央に見える柱の下には、基礎パッキン
が必ず必要な箇所となります。

この柱の下を確認すると・・・・

BlogPaint


柱直下の矢印箇所に基礎パッキンの敷き込みが
抜けています。

垂直荷重がかかると土台を上から折り曲げる力
となります。

ついうっかり、忘れたミスですが、是非とも防いで
おかなければいけない事項です。

検査と名が付けばみな同じ?その2

検査会社と名が付けばみな同じ?その1の続き

瑕疵担保保険、公的な中間検査が完了した翌日の検査


1

筋交い金物を固定するビスが1本打ち忘れています。
この金物は、合計6本で留めなくてはいけません。

IMGP2621

ボルトの締め忘れがあります。

BlogPaint

梁のつなぎ部分に短冊金物を忘れています。

瑕疵担保の検査や公的な検査が完了したから
と云っても、問題点は残っている場合があります。

何故ならば、それらの検査では、金物一つ一つ
をチェックしていくことは無いからです。

一般の方におかれては、同じ時期にする検査に
大きく違いが無いように思われるかもしれませんが
検査内容に違いがあるのは事実です。

我々は、金物検査となると、建物の規模により時間
の違いは出ますが、1時間から2時間程度はかかります。

瑕疵担保保険の検査員さんや公的な検査員さんは、
私が知る限り10分から15分で帰って行かれます。


お客様から以下のようなメールを頂きましたが・・・・・

不動産業者から瑕疵担保保険でも2回検査があることを
聞いたので、検査内容が重複するのであれば、その重複
する検査は省略しようかと思います。ついては、その保険
会社の検査は、青山建築コンサルタントが行う検査と違い
があるでしょうか・・・?

この検査時間の違いは、検査内容やチェック項目に
違いがあると云う事です。

瑕疵担保保険の検査や公的な検査を受けているから
何の問題点も無い!とは言い切れ無いと云う事です。

何とかなるさ~と、まぁいいか~

私は、胃がんの手術をしてから、ストレスためずに生活することを
心がけています。

そこで、ストレスを解消する方法が重要となりますが、ストレスを感じ
にくい物事の考え方も非常に重要だと思っています。

その考え方の根本は、”何とかなるさ~”です。

自分の目の前に、何らかの壁が立ちふさがり、右も左も前も後も
八方塞がりでどうにもならない状況があったとしても、”何とかなるさ~”
と、か~るく受け、そして流すこと・・・・これが出来れば何も怖いものは
ありません。

このように”何とかなるさ~と、か~るく受け、そして流す”と、云うと、大変
無責任な感じに取られるかもしれませんが、私は、これが究極の責任感
ある考え方だと思っています。

悩み苦しみストレスを溜め込んで、その結果体を壊したり、最悪の場合
自らの命を絶つと云うことがあった時、責任感の強い人程、自分を追い
詰めてしまうと云うように言われることがありますが、私はこれは間違い
だと思います。

本当に責任感の強い人は、”何とかなるさ~と、か~るく受け、そして流す”
ことが出来る人で、自らの悩みや苦しみから派生するストレスをためずに、
体を壊さない考え方の出来る人だと思います。



”まぁいいか~”は、許容範囲を拡大するニュアンスがあります。
これもストレスを感じない一つの考え方ですから、使い方を間違わなければ
良い考え方だと思います。

しかし、正しい答えや方法が決まっている場合は、残念ながら良い結果にな
ることは少ないように思います。

誰が見ても許容範囲内と認識できるものであれば別ですが・・・
正しい方法から外れてしまった場合は、問題を残す結果となります。

下の写真は、先日、金物検査でお伺いした建物です。
恐く大工さんは、この金物を取り付けた際、付け直すのも面倒
だし、”まぁいいか~”と、思ったのでしょう。


IMGP2955

許容範囲を自ら広げた訳ですが・・・・
”まぁいいか~”で、許容範囲を超えてはいけませんね・・・


検査と名が付けばみな同じ?その1

先日、検査依頼回数をご検討のお客様から以下のような
内容のメールを頂きました。

不動産業者から瑕疵担保保険でも2回検査があることを
聞いたので、検査内容が重複するのであれば、その重複
する検査は省略しようかと思います。ついては、その保険
会社の検査は、青山建築コンサルタントが行う検査と違い
があるでしょうか・・・?

9月29日の私のブログに記載した内容と同じことが
昨日、別の現場でもあったのでそのことを記載します。

施工会社さんから5日の夕方に、保険会社の検査があるので
ご都合よろしければ、同時刻に来てもらいたいと連絡がありました。

しかし、当方は既に予定が入っており、翌日6日の午前中にお伺い
することになりました。既に保険会社の検査は終わった後ですが、
多岐にわたり指摘事項が出て来ました。

この日は、名古屋の住宅検査会社カノムの長井さんと一緒に
検査をしました。
どのような指摘事項であったかを回数を分けて紹介して行きます。

今回はその1 釘に関する指摘事項

IMGP2640

耐力壁に打たれた釘が間柱から飛び出ています。
これでは釘が効いていませんので是正が必要です。

IMGP2628

耐力壁に打たれた釘が打ち込み過ぎています。

IMGP2627

構造用合板9mmに対して、打ち込み寸法は6.8mmです。
残りの厚みは、2.2mmしかありません。地震等の
外力を受けると、容易に釘が合板を貫通します。
このような箇所が複数ありましたので是正が必要です。

IMGP2629

釘の縁空き寸法は、10mm程度必要です。
現状は5mm程度となっています。釘の位置が端
に寄り過ぎ、地震等の外力を受けると合板の端が
ちぎれてしまうので、是正が必要です。

IMGP2645

屋根野地板の釘が垂木から外れています。
是正が必要です。

IMGP2624

雲筋交いが1本の釘だけで留められている箇所
が多数あります。
釘は原則として2本以上必要です。

構造上重要な事項ですが、保険会社の検査では
ノーチェックであったということです。

次回へつづく

関所は多い方が良い!

先日、瑕疵保険の検査、公的な中間検査を完了して、
最後に当方が金物検査にお伺いした建物です。

IMGP1754

ビス3本を打ち忘れています。

IMGP1774

ビス6本を打ち忘れています。

IMGP1801

ネジ山がつぶれて、ねじ込みが出来ないため
そのまま放置されています。

我々の検査では、金物一つ一つの内容及び
取付状況を確認していきますが、瑕疵保険や
公的な中間検査ではそこまでチェックされることは
ありません。

手造り作業の中には、”忘れる”と云うミスが必ず
つきまといます。

たかがビスの打ち忘れと軽く考えてはいけません。
これから長年住まうこととなる住宅で、このようなミス
はあってはいけないのです。

上にあげた3箇所は、地震や強風を受けた際に歪や
倒壊の原因にもなりうる重要な構造部分です。

我々の仕事は、現場でのミスを防ぐために設けられた関所、と云うか
防波堤としての役割を担っており、依頼主が安心・安全に暮らすことが
出来る住宅が完成するようにサポートすることです。

金物は取付の状態が肝心

床及び土台と柱を固定するL型の金物です。

10kNの引き抜き力に抵抗できるよう設置されて
いるものです。


IMGP0861

構造用合板の継ぎ目に上部のビスが打たれて
います。たかがビス1本、されど、その効力は
正しく打ったものと差があります。


IMGP0884

位置を変更是正した状態

IMGP0868

屋根野地板を支える垂木と梁を繋ぎとめる
ひねり金物です。釘が1本抜けています。
また打たれている釘も若干打ち込み不足の
ようです。

たかが釘1本、されど、その効力は正しく打ったも
のと差があります。

強風が吹き、屋根の弱い箇所が一箇所めくれ上
がると、そこから一気に屋根全体が巻き上がる
ことにもなりえます。


金物はついていれば良いわけでなくその取付
方で強度に違いがでます。



振れ止めについて

先日の金物検査においても指摘事項として上げました
振れ止めについて記載します。

振れ止めの施工忘れ?と云うか施工しなければいけない
ことをご存知でない施工業者さんが多いように思います。


振れ止め
挿絵をクリックし、拡大してご覧下さい。


振れ止めは建築基準法施行令第46条に記載があり、「小屋組には振れ止め
を設けなければならない。」とあります。

振れ止めの役割は、小屋束の下部が単独で動くのを防ぐことです。
上の挿絵のように、けた行方向に梁が掛かっていない箇所は、特に振れ止め
の働きが求められます。

この振れ止め未施工の現場は非常に多いです。







ドリフトピンのチェック

ドリフトピンの取付忘れは結構多いです。

但し、本日お伺いした現場においては1本の漏れ
もありませんでした。

CIMG0575

マジックで印がされた箇所が各所にありました。

CIMG0574

おそらく、取付完了後、チェックがなされ、ドリフト
ピンの入れ忘れがあった箇所にマジックで印を入
れたものと思います。

このようにチェックされた箇所を見ると、私は
「いいですね(*´∀`*)・・・!」と嬉しくなります。

構造上重要であり、且つ忘れることが多い箇所
だけに2重、3重のチェックがあって良いのです。

因みに役所や保険会社の検査では、ピンまでチェック
の対象にはなっていません。

やりっ放しの仕事ではなく、施工者自らがチェックする
体制が必要です。

しかし、残念ながら、この当たり前のことが出来てい
ない現場が多いです。






住宅検査指摘事項その1

我々が住宅検査を行い指摘事項としてあげる項目は、
多岐にわたりますが、どのような工程の検査であっても
その結果は概ね以下の内容です。

① 忘れていた。

② 知らなかった。

③ 勘違いしていた。

④ 問題あることは分かっていたが、さほど重要と考えていなかった。

この中でも①の忘れていたが、一番多い指摘になります。

取り付け忘れ、締め忘れ、打ち忘れ等、これらは、直接仕事を
した方がチェックした上で、現場管理者が改めてチェックをする
ことで、そのミスを防ぐ必要があります。

我々が検査に入る段階では、このように、既に2回のチェック
があるべきなのですが、そのようなチェック体制が出来ている
現場は非常に少ないのが現状です。

金物検査を例にあげると以下のようなことがあります。
とても単純なミスですが、このミスが一番危険です。

P1020598のコピー

筋交いプレートのビス打ち忘れ
地震の際、歪み倒壊の危険があります。

BlogPaint

火打梁取付金物入れ忘れ
地震の際、歪み倒壊の危険があります。

BlogPaint

ホールダウン金物締め忘れ  ナットを手で廻した状態
地震の際、歪み倒壊の危険があります。

BlogPaint

雲筋交い釘打ち忘れ
地震の際、歪み倒壊の危険があります。


一般素人の方には、信じがたいことかもしれませんが、
経験上、金物検査において、このようなミスが指摘事項として
ひとつも無かった現場は過去にありません。

「プロとして、自分の仕事に責任を持つ」言葉で云うと簡単であり、
当たり前のことですが・・・・
実際に私もそれが出来ているのか。自分自身にも問い続ける言葉です。

余談ながら、仕事に対して、余りにも責任感が強過ぎる性格の人間は、
大体消化器系がやられるようです。
「過ぎたるは及ばざるが如し」何ごとも過ぎるといけません。

「責任感が強い」のは良いですが、「責任感が強過ぎる」と病気になります。
全ての動詞に「過ぎる」を付けた行動は、必ず何らかの問題を起こします。

食べる、飲む、働く、遊ぶ、悩む、考える、求める、

これらを程良く、柔軟にこなし明るく生きることが、健康の秘訣だと思い
ます。
過ぎたる生活をし続け、正に消化器系のがんを経験した私の実感(笑)


話は、戻りますが・・・人間は、忘れると云う欠点があります。
それを自覚した上で、「ミスをいかいに防ぐか。」
事の重要性を十分認識しない限り、上述のようなミスは永遠に無くなら
ないように思います。

工事関係者は、個々の建物に関わるのは一時ですが、
建物所有者は、この先何十年とそこに住まうことになります。

構造上のミスは、天災の際には人命に関わることを
工事関係者の方には、改めて認識頂きたいと思うところです。

次回は、②の知らなかったを取り上げます。

釘の打ち込み

外壁構造用面材の釘の打ち込み過ぎの問題は、
とても多い指摘事項として上がります。

P1110718

面材の縁あき寸法は10mm以上必要です。

P1110721

釘の打ち込み過ぎは、構造用面材に求められる
強度が確保できなくなります。

P1110703

9mmの面材に対して4.05mmの打ち込み
がある箇所

釘の増し打ちで是正を行いますが、この増し打ちを
打ち込み過ぎてしまうと、更に強度が低下することに
なります。

釘打ち機の空気圧を調整し、丁寧な施工が必要です。


欠陥住宅って何?筋違プレート

筋違プレートの取付け不良

筋違は土台、柱、梁と金物で緊結します。
この金物は、正しく取付いてこそ、その能力を発揮
します。

P1080340

背割り部分にビス穴があります。
ビスが打てないために、縦に4箇所ビス穴の状態
のままになっています。

地震の揺れに対して、筋違は重要な役割を果たします。
取付け方法を誤ると、設計上求められている強度が
無いと言うことになります。

このような場合は、筋違プレートの形状を変更して
取付けしなければいけません。


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欠陥住宅って何?母屋のジョイント

金物検査 チェックその3

母屋のジョイント部は、かすがい等で緊結しておく
必要があります。


BlogPaint












ジョイント部分に金物がありません。


BlogPaint













片面だけでなく両面ともかすがいで固定
是正完了




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欠陥住宅って何?ひねり金物

金物検査  チェック その2


垂木と軒桁をひねり金物で固定します。

P1080232

台風などの強風を受けても屋根がめくれ上らない
ためにも重要な金物です。

ここでのチェックは、

・ Z金物専用釘であること(鉄釘はNG)。
・ 付け忘れがないか否か。
・ 釘の打ち損じがないか否か。(上の写真)


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欠陥住宅って何?ボルト・ナットの締め込み

金物検査  チェックその1

鉄骨造の建物においては、ボルト・ナットの締め込みについて
1次締め、2次締めとシビアに行われます。

それが木造の建物においては、どこの現場も適当極まりない状態です。

木造住宅では部材を緊結するために、ボルト・ナットを多用します。

しかし、その金物のボルト・ナットの締め込み作業をする大工さんが、
ナットの頭からボルトの山が、どれだけ出ていなければいけないかを
知らないことが実に多いです。
これは、大手ハウスメーカーを含む全ての建設会社に言えることです。

P1080253P1080247


P1080244P1080242


P1080245P1080230

上の写真はどの箇所も締め込みが足りません。


素人の方にすると理解できない話だと思います。
構造上大変重要である金物の取り付けが軽んじられている現状を是非
知って頂きたいと思います。

そのボルト・ナットの締め込みが足らなければ、大きな地震力を受けた時には、
当然そこから建物がひずみ、大きな被害を受ける可能性があるのです。

それも1箇所、2箇所の締め込み不足ではなく、1軒当たり問題箇所が20箇所
前後はザラです。

P1080219P1080294

  ボルトの山がひと山        是正後
     是正前                      
  

素人でも確認できることですから、もし建築中の方は、是非確認して
みて下さい。
たぶん問題の多さにぞっとなさると思います。

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新築住宅検査 その4

金物検査 ②

下の写真は柱と筋違を留める金物です。
地震の際、耐力壁として揺れに抵抗する部分となります。

「ビスを打ち忘れてますね・・・」と指摘しますと(赤丸内)
「あっ!忘れてましたね・・・」と即座にビスを打ってもらいます。

そこに悪意などある訳もない、単純に忘れていたというミスです。


P1020598のコピー


しかし、この単純なミスが地震の際人命に影響する可能性を秘めています。
金物検査でこのような箇所を見つけると・・・・
つくづく「今日検査に来て良かった・・・・」と思います。


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新築住宅検査 その3

金物検査 ①

ボルトナットの締め込み不足
これは本当に多い指摘事項の一つです。

P1060189

ねじ山がナットから出ていません。

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プロフィール

欠陥住宅って何?

私が検査にお伺いします。

一級建築士 
土地家屋調査士 佐野公則​

自己紹介
住宅検査関西
青山建築コンサルタント代表

関西を中心に住宅検査をおこなう
一級建築士であると共に
土地家屋調査士として登記業務もおこなっている。

後悔しない住宅造り、住宅購入
の案内人として、日々欠陥住宅、
新築住宅、中古住宅の検査をおこない、建築の素人の方々の安心、安全な住い造りをサポートしている。

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