前エントリーのコメントと他の所のコメントもちょっと足して、Bobbyさんへのお返事です。

 

> >製造元のIntervetによれば、2070例の牛サンプルで特異性99.95%、1029例の豚サンプルでは99.71%の特異性だそうです。

> さすがプロの文献調査は詳細ですね。しかし、マーカーワクチンも、ワクチンとの抗体判別手段も「ない」という議論は、このテストキットによって、前提条件が少し変わってくるかと思います。このようにして、全体として議論を前に進める事ができれば、これを読んだ政治家や官僚、メディアやその他おおぜいの人達に、なにかしら良い影響を与えられる可能性に期待しています。

私の専門は臨床検査学ではありませんが、おほめにいただいてありがとうございます。

政治家やメディアはどうか知りませんが、官僚の方々は私ごときとは比べ物にならない程、状況を良くご存知であろうと思います。

 

> 誤解があるようです。ワクチンあるいは検査キットがある、という事を何回か書きましたが、「決定的」だとは思っていません。

> オリジナル資料で100%と書いているのに、勝手に感受性の%を引き下げて議論するというそもそもの問題

ちょっと誤解があるようなので、説明を加えます。

 

少し方法論の話をしますので、退屈かもしれませんが、ご辛抱下さい。

病気の診断のための検査が、使用に耐える有用なものかを判断するのに、最も基本的かつ重要なことは、

1. 感受性(sensitivity:検査は病気があるときにどれくらい陽性になるか

2. 特異性(specificity:検査は病気の無いときにどれくらい陰性となるか

2点です。

まず検査の感度、感受性が低かったら、検査をする意味がありません。検査は病気の存在を鋭敏に検出できることが、第一義的です。感受性は、病気のある個体にそのテストをした場合、何パーセントに陽性結果が出るかで示されます。

そして次に、じゃあ鋭敏な検査なのはわかったけれど、今度は病気のない人に、検査が陽性に出てしまうのでは困ります。正常な人に薬を投与したり手術をすることは避けなければなりません。それを示すのが、特異性です。特異性は、病気のない個体にその検査をした場合、何パーセントに陰性結果が出るかで示されます。

検査陽性:検査(+)

検査陰性:検査(-)

a, b, c, dをサンプル個体数とすると

    

 

病気あり

病気なし

検査(+)

a

b

検査(-)

c

d

 

感受性=(a / a + c x 100 %

特異性=(d / b + d x 100 %

となります。

 

何か新しい検査方法について報告するとき、この感受性特異性の二つが明確に示されていることが必要不可欠になります。

bobbyさんにご紹介いただいたリンクの中に、pdf資料としてある、Intervet 社の22nd Conference of the OIE Regional Commission for Asia, the Far East and Oceaniaにおける報告です。

http://www.foot-and-mouth-disease.com/Binaries/68_33112.pdf

私はこれをIntervetの宣伝広告と言いました。

 

このpdf資料のなかでIntervetは自社のデータとして特異性について、牛と豚についてそれぞれ1,000例を越えるサンプルデータをカラフルなグラフ付きで報告しています。ところが、感受性のデータは一つも示していません。100と言っていますが、他人の報告を引用しているだけです。つまり題目は学会で報告したようですが、科学的データ報告としては全く片手落ちで、報告の体をなしていないのです。また自社製品に都合の良い文献を引用して述べているだけなのです。それで私はこれを宣伝広告と呼んだのです。引用文献の詳細については前エントリーをご覧下さい。この報告は2001年のようですが、その後このChekit-FMD-3ABCという検査キットが口蹄疫検査の主流にもなっていず、OIEの勧告も依然として変更されないことからも、この報告の信憑性Chekit-FMD-3ABC有用性について何が示唆されているのか、もうおわかりだと思います。

 

バイオメディカル系の研究では、現実世界を網羅して調べることはできません。現実の病人を一人残らず調べるには、マンパワーも研究費も到底及びません。そこでサンプルを選び出して調べ、それが現実世界(母集団)を代表しているとの仮定の上に、データ結果から結論を導き出します。サンプル数が小さいと、そのサンプルグループは現実世界を代表していないことがあります。そこで1,000頭検査したら750頭で陽性の作り話を加えたのです。これだと私の架空の感受性75ですから、同じくbobbyさんの紹介されたリンク先のニュースからfoobirdsさんが見つけ出されてアゴラのコメントでおっしゃっているChekit-FMD-3ABC の感受性70に比べて、私のでっちあげの数字のほうがIntervet に好意的であったわけです。

 

獣医学のことはわかりませんが、感受性は、80その検査が実際の使用に耐えるものかどうかのカットオフ値であると記憶しています。医療に使われる検査のほとんどは、85%以上の感受性でしょう。Chekit-FMD-3ABC 感受性70だとすると、使用に耐えるレベルではないと思われます。「決定的」という言葉は、この「実際の使用に耐えるレベル」という意味で用いました。