菅内閣・柳田稔法務大臣の閣僚記者会見全文は次の通りです。「あー」という言葉の継ぎ方が多いのですが、概ねこれを除外しております。また句読点については、筆者の考え方で打たせていただきました。尚、枠間の解説は筆者の感想です。
みなさん、こんばんは。この度、法務大臣、拉致問題担当大臣を拝命いたしました、柳田稔でございます。どうぞよろしく、お願い致します。 |
グレーのスーツで登場。国会議員バッジの脇に北朝鮮拉致問題解決を目指すことを示す「ブルーリボン」をつけていました。柳田稔氏は旧・民社党出身。北朝鮮の拉致疑惑をはじめて国会で取り上たのは、1988年1月当時の民社党委員長塚本三郎が最初。ここは自信があるのかもしれないが、報道によると拉致被害者家族ら関係者は「柳田氏が拉致問題に取り組んできたとは聞いたことがない」と当惑顔とのこと。
法務省は、法秩序の維持と、国民の権利の擁護を主としたる任務でございます。これは国民生活の基盤と、非常に密接な関係もあり、重い役割だと、そう思っています。 私が、はじめて法務大臣、またこういう関係に就くわけでありますので、常に国民の目線に立って、謙虚に、しかも柔軟な姿勢で、法務行政の先頭に立って、様々な問題を、取り組んでいきたいと思っております。 |
柳田氏は東京大学教養学部理科?類に入学後、中途退学し寿司職人になり、更に東京大学工学部船舶工学科へ再入学した変り種。「理系の法務大臣」としては、中央省庁再編後をみても11人中3人(第82代森英介=東北大工学部=、第75-76代南野知惠子=大阪大学医学部附属助産婦学校=、第74代野沢太三=東京大学工学部土木工学科=)とそれ程珍しくはありません。ただ「理系出身の法務大臣」は珍しくはありませんが、「元寿司職人の法務大臣」というのは空前絶後でしょう。卒業後神戸製鋼に入社後労組入り、民社党公認で衆議院議員に当選。
法務大臣就任に当たりまして、菅総理から二点について、ご支持を受けました。 一点目は、国民にとって身近で充実した司法をめざし、司法と、司法制度改革を推進しろと、いうことでございました。 そして、二点目が国民の人権を保障され、国民の人権が保障され、安心して暮らせる社会を作ると、いうことをいわれました。 この中でも特に、再犯防止の観点から刑務所出所者等に対する、就労支援の推進など、国民が安心して暮らせる社会の実現に向けて種々取り組んで参りたいと思っております。 また、え〜政府全体としての施策にございますように、新しい公共の理念をとりいれて、地域社会の、地域社会や民間の方々とより一層連携して、安心安全な社会の実現に向けて、まいし、邁進してまいりたいと、思っております。 また前大臣でございました千葉大臣、色々と議論を皆さんの前に提示したかと、思っておりますけれども、このことを含めて、党のマニフェスト、色々書かれております、このことも、色々と新しい取り組みも含めながら、頑張っていきたいと思っております。 |
以前にも申し上げたとおり、法務大臣職というのは基本的に「功労的なポスト」として利用されてきました。法務大臣ポストは「参議院議員枠」「長老系女性議員枠」「民間人枠」というような人事が割り当てられることが多いようです。また勿論弁護士出身の政治家がこのポストにつくことも珍しくありません。例えば千葉景子前法相は「参議院枠」「長老系女性議員枠」に当てはまり、弁護士出身であったということになります。
ただそれ程活躍できるようなポストではありません。例えば法務省経験者から総理大臣になった政治家はいませんし、非常に地味目なポストであるといえます。一九九三年の死刑モラトリアム解除後の法務大臣で著名な方を挙げるとすると、後藤田正晴(55代)、高村正彦(70-71代)、鳩山邦夫(79-80代)あたりがあげられるくらいです。後藤田氏はリクルート事件(1988)や佐川急便事件(1992)、高村氏は有事法制や犯罪被害者保護法や児童虐待防止法の立法、検察審査会法や少年法の改正といった重大な事案があったためと思われます。
しかしながら柳田稔法相はこういった起用ではなく、本人も仰っているとおり「またこういう(法務行政)関係に就くわけであり」、派閥調整型の功労ポストとして採用されたと思われます。また通常参議院枠は自民党時代は「2〜3」が割り当てられていましたが、政権交代後の民主党は「4〜5」と増えています。これも影響しているでしょう。
次に、拉致問題担当大臣として菅総理から言われたことは、国の責任において拉致問題の解決に取り組み、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて、全力を尽くすようにと。 私は民主党の前、最初当選した時は民社党でした。当時大先輩に中井先生(中井洽)もいらっしゃいました。色々とご指導を賜っておりますので、中井先生のお考えも、十分聴かせてもらいながら、精一杯努力をしていきたいと思っております。 特に、中井大臣になりまして、拉致問題対策本部、色々と組織改正もしたと、いう風に思っておりますんで、その体制の強化もしてまいりたいと思っておりますし、膠着した状態に拉致問題ございますんで、なんとか突破口を開いて、いろんな情報を収集しながら、全力で取り組んでまいりたいと思っております。 北朝鮮は、色々と、最近、いろんな話が出ております。韓国の哨戒船撃沈の事件、それから金正日国防委員長の訪中、更には44年ぶりの朝鮮労働党代表者会議が開催すると、いった動きもございます。 こういった動きを考えながら、拉致被害者の家族のみなさんの、高齢化、このことも考えますと、安全に一日も早く、帰国していただくように、最大限の努力をする、ということが私の最大の使命だろうと、そう思っております。 これからも頑張ってまいりますので、どうぞ宜しくお願いを致します。 |
法務大臣のコメントより流暢な気がしたのはなぜでしょうか。法務大臣としてのコメントはレジュメを見ながらというシーンが多かったのですが、拉致問題担当大臣としてのコメント、特に中井前国家公安委員長の話しをするときには暖かい感じで記者に語りかけた陽に思います。しかし「柳田氏が拉致問題に取り組んできたとは聞いたことがない」(拉致被害者家族)とのことなので、このあたりのどうなのでしょうか。
【記者1】テレビ朝日の(はい、はい)拉致問題についてお尋ねします。あの政権交代でですね(うんうん)拉致問題に[聞き取れず]、まぁいまのところ目に見える(うん、そうですね)大臣、今後ですね、必ず突破口を開くという、情報蒐集以上のですね、どういったことに取り組みながら拉致問題の解決に向かおうとお考えですか。 |
はい、私は先ほども触れましたように、当選した時に民社党でございまして、当時からこの拉致問題は党を挙げて真剣に取り組んでおりました。当時あの党の職にいたのが荒木さんで、今代表されていますが、その当時からいろんな意見交換もしておりましたし、今でも年に一ニへん、逢う機会もありますんで、そういった方々とのお話とか、またあの韓国の皆さんとのお話を通じていろんな情報を得ながら、頑張っていきたいと。 私の最大限の目標は、まぁいろんなことがあるかもわかりませんけども、安全に一日も早く、帰っていただくことに、全力を挙げることだと、そう思っております。 |
【司会】はい、すみません、あと一問でおねがいします。 |
【記者2】すいません、あ、いいですか?日本経済新聞のウエムラです。死刑制度についてお伺いします。かつて法務大臣を、あの、皆様方の中には、死刑を執行されなかった方もいれば、あの、そうでなく、粛々とされていく方もいらっしゃいますが、大臣、死刑制度についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?それと、あと法務省内には、制度の存廃を含めて議論するという省内勉強会があるわけですけれども、どのような方向性で運営されていくおつもりか、二点についてお伺いしたいです。 |
はい、もう皆さんもよくお分かりのことだと思いますけれども、裁判所の判断を尊重しなければならないと、同時に、法の定めるところにしたがって、慎重かつ厳正に対処すべきだと、私はそう考えております。 制度の廃止についてはですね、今色々と議論がはじまっておりますし、その議論も見守りながら、あと国民の世論も、どういうふうなことになるのか、そういうことも見守りながら、やっていきたいと思っております。で、省内にも勉強会がありますんで、その中で鋭意検討を進めていきたいと、考えております。 |
これは明確に死刑執行を粛々と行っていくという意思表示と見てよいでしょう。ただ死刑執行のサインについて積極的とも言えず、あまり考えたくないような気もします。12月の執行があるかどうか、もしなければ「退任直前のサイン」というパターンかもしれません。
【司会】はいありがとうございました、これで柳田大臣の記者会見を終わらせていただきます |
「無難な人事、無難な会見」という感じですが、就任直後に大阪地検特捜部事件や尖閣諸島問題と立て続けに問題が山積するとは思っていなかったでしょう。これらはそれぞれ柳田法相の管轄だと思いますが、あまり報道されておらず、軽いという印象が否めません。これはマスコミの評価もこの程度ということなのでしょうか。
とりあえず千葉前法相の執行及びこの会見だけを見れば、民主党政権下における死刑廃止はかなり遠ざかったような印象を受けました。なぜEUは鳩山前首相のときに圧力を掛けなかったのでしょうか。鳩山前首相ならば「死刑廃止は世界の潮流」といわれれば、あまり考えずに廃止に踏み切ったと思うのですが。