研修実施機関
日本防災士機構では、30万人の防災士を生み出すことを目標としている。そこで防災士資格取得の条件の一つである「防災士研修講座」については、同機構が直接行うのではなく、広く研修実施機関を募り、全国各地で講座を開催できる態勢を整えたいとしている。
平成15年6月に愛知県が自治体として始めて防災士養成事業に参加してから全国の自治体で養成研修が行われている。平成26年6月現在で、42の地方公共団体のほか6つの国立大学と15の民間および教育機関が実施している。平成22年2月末現在では、全防災士38,489名のうち22,240名が防災士研修センターの研修講座を受講して防災士になっている。日本全国で研修講座を開催している研修実施機関は防災士研修センターだけである。
受講料は防災士研修センターを利用した場合は、防災士教本、資料、会場研修、履修確認レポート(添削式)の費用が5万3千円となる。自動車安全運転センターから発行されたSDカード(発行後2年以内)の写しを受講申込書に添付して提出することで2千円の優遇割引を受けることができる。履修証明を得た後は、受験料3千円が必要である。
防災士研修民間機関
過去の実施民間機関
防災士研修教育機関
- 国立大学法人 名古屋大学
- 国立大学法人 徳島大学
- 国立大学法人 香川大学
- 国立大学法人 愛媛大学
- 国立大学法人 熊本大学
- 国立大学法人 鹿児島大学
- 公立大学法人 宮崎公立大学
- 青森中央学院大学
- 東北福祉大学
- 千葉科学大学
- 常葉大学
- 四日市大学
- 福山大学
- 福岡大学
- 福井工業高等専門学校
- 明石工業高等専門学校
防災士資格取得の特例
日本防災士機構では、既に防災に関しての一定の知識または実践力を身に付けていると認定された特定の資格者に対して、防災士資格取得の特例規定を定めている。
消防吏員に関する認証規定
平成16年9月、消防官(退職者を含む)にかかる防災士資格取得基準を決定し、全国消防長会に「消防職員にかかる特例」制度の制定を通知している。消防吏員は、救急救命実技講習認定基準の認定対象となる。
赤十字救急法救急員の特例
日本赤十字社の赤十字救急法救急員や赤十字救急法指導員は、防災士資格取得特例コース申込書(防災士認証書式日本赤十字社用1号)を機構に通知すると1日の集中養成研修を受講する必要がある。申請した場合、機構が試験会場および試験日程を選定し、申請者に対して防災士資格取得試験実施通知書および試験受験申請書(防災士認証書式日本赤十字社用2号)等の書類が郵送される。防災士教本代3千円と受験料3千円を払い込み試験日の1ヶ月前までに必要な書類を返送すると教本が届き受験まで自宅学習となる。
赤十字救急法救急員は、赤十字救急法基礎講習および救急員養成講習が2.5日間(約18.5時間)で受講証が発行される。最終日の認定試験(学科および効果測定)に合格すると資格有効期限のある認定書が郵送される。赤十字の教材費は3千円程度。
防災士養成研修講座と救急員養成講習の内容が全く違うという理由から、この特例コースの設定に対して既修得者の一部から異論が出ていた。平成21年6月7日に開催された第5回日本防災士会定期総会に全国各地から220名の防災士が参加。総会の質疑応答で長野県の防災士から「日赤は特例で安く資格を取れるのか」「総会の質疑応答は公開されるのか」といった発言があった。この質問に対して、日赤特例で認証された防災士も認証委員会により十分な知識があると認められていると回答していたが、現行の特例コースの適用期限は平成22年3月31日までとなり改定後の特例コースでは機構が別途定める旧養成研修の履修が条件となった。
防災士資格取得試験受験料3千円と防災士資格認証登録料5千円は同じである。
警察職員に関わる特例
平成19年12月、警察職員にかかる防災士資格取得基準について検討を行い、警察庁に「警察職員にかかる特例」制度の制定を通知している。
履修による取得
徳島大学では、全学共通教育の教養科目として「災害を知る」前期2単位「災害に備える」後期2単位の2科目を4月の開講から翌年2月まで週1回32週にわたって講義や実習を受講し修得することで、環境防災研究センター長から徳島大学防災リーダーとして認定され、徳島大学防災リーダーには防災士受験資格が付与される。防災リーダー講座修了式と合わせて防災士試験模擬テストが行われる。翌週、防災士資格取得試験に臨む。
千葉科学大学では、薬学部の1~3年次に特定の3科目6単位を履修、または危機管理学部の1~3年次に5科目7単位を履修することで、防災士資格取得試験の受験資格を得ることができる。学内で実施される認定試験に合格することで防災士の資格が得られる。
環境学園専門学校は、防災士の資格取得指定校であり、卒業と同時に防災士の資格を取得できる。
富士常葉大学の環境防災学部は、防災士資格の課程が認定されている。
香川大学産学官連携推進機構危機管理研究センターでは、2010年(平成22年)秋頃から、防災士養成講座の短期コースの開講を予定している。
防災士育成事業
新潟県妙高市では、防災士の資格取得の経費に対して講座受講の40日前までに補助金交付の申請を行うことで必要経費の全額補助を受けることができる。また、茨城県守谷市・龍ケ崎市、千葉県我孫子市、新潟県糸魚川市・上越市、長野県小諸市、山梨県韮崎市、岐阜県瑞浪市・中津川市、福井県勝山市、岡山県備前市等、一部経費の補助をし、防災士育成事業もしくは自主防災組織育成事業として助成を行っている自治体もあるが、補助金交付の対象となる経費は、防災士養成研修講座受講料、資格取得試験受験料、資格認証登録料および旅費の一部。その他、交付対象として自主防災組織や自治会に所属または推薦を受けた者とされていることが多い。
愛媛県西条市は、平成18年から各地区の自主防災組織のリーダーを対象に受講料など資格取得費用を市が全額負担する防災士養成講座を開設している。石川県金沢市や愛媛県松山市でも資格取得費用を全額補助する制度を導入している。(2007年(平成19年)10月9日公明新聞)
栃木県日光市では、市内在住または市内在勤者を対象に日光市防災士養成講座を無料で開講している。
平成21年6月7日現在、14県32の自治体が実施した防災士育成事業によって養成された防災士は約7,000名である。
受験資格が付与される無料講座
奈良県自主防犯・防災リーダ研修の修了者には防災士資格取得試験の受験資格が与えられる。受講料は無料。教本代は必要。平成18年度の修了者は145人(うち防災士登録者は98人)、平成19年度の修了者は135人(うち防災士登録者は104人)。
和歌山県地域防災リーダー育成講座「紀の国防災人づくり塾」の全講座を受講し修了した者には修了証(知事名)が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が付与される。受講料は無料。教本代は必要。
茨城県では、防災士制度が確立される以前より防災に関する幅広い知識と技術を身につけるための、いばらき防災大学を開催していている。防災の専門家による講義だけでなく、消火用ポンプや救助用機材を使った実技講習も取り入れている。必要な課程を受講することでいばらき防災大学の修了証が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が与えられる。受講料は無料。平成13年度の受講者127名(修了者115名)、平成14年度の受講者108名(修了者96名)、平成15年度の受講者74名(修了者70名)、平成16年度の受講者61名(修了者59名)、平成17年度の受講者45名(修了者43名)、平成18年度の受講者35名(修了者33名)、平成19年度の受講者56名(修了者48名)、平成20年度の受講者39名(修了者36名)。
長崎県防災推進員(自主防災リーダー)養成講座を修了した者には知事名の修了証が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が付与される。講座を3日間受講し、かつ、防災士教本による事前学習を行い、レポートを提出した者は、3日目に実施される防災士資格取得試験を受講できる。受講料は無料。
熊本県地域防災リーダー養成講座火の国ぼうさい塾の3日間の講義を全て受講した者には熊本県知事からの修了証が授与され、防災士資格取得試験の受験資格が認められる。受講料は無料。
三重大学自然災害対策室と三重県の協働で、みえ防災コーディネーター育成講座が開講されている。全32講座のうち26講座以上受講した者は、みえ防災コーディネーターとして認定され、防災士資格取得試験の受験資格が得られる。受講料は無料。
これらの他にも無料ではないが、幾つかの自治体で教本代程度の自己負担で防災リーダー養成講座等の名称で講習が行われており、受講すれば防災士資格取得試験受験資格が得られる。また最終日に試験が行われるような日程のものが多い。
受験資格に官民格差の問題[編集]
2005年(平成17年)4月18日の神戸新聞によると、防災士の資格取得試験を受験する際に修了しておくことが必要な研修講座をめぐって官民格差が問題になっている。自治体で研修講座を受講すれば無料で済む受講料が民間実施機関で受講すると5万円以上かかるため、すでに民間実施機関で研修講座を修了した受講生から「あまりに不公平」と反発の声が上がっている。県が講座を開く前に民間実施機関の研修講座を経て資格を取得した県内の男性会社員は「同じ県で同じ資格を取るのに、費用が違い過ぎる」と反発。同様に資格を取った男性公務員も「資格を生かす場が少ない現実を考えると、民間実施機関の受講料は高過ぎる」と本音を漏らした。そうした実情に、日本防災士機構は「地域の防災力を高めたい自治体と、研修内容の充実に務める民間機関は目的が違う」と官民格差を容認した上で「多様なニーズにこたえられる方が、関心の広がりにつながるのでは」としている。
認証登録状況
日本防災士機構では、ホームページのTOPに都道府県別の防災士認証者数を1位から3位まで、4位から10位まで、11位以下を色分けして、全国の都道府県ごとの防災士認証者数を表記した図を掲載している。防災士認証者数30万人を目標に国民運動として防災士の育成を推進したいと呼びかけている。東京都の防災士認証者数が突出している理由として民間による防災士研修講座の開催が東京会場に集中している現状がある。地方での防災士研修講座の開催は自治体の防災士養成事業への取り組みに依存する傾向となっている。2010年(平成22年)1月18日の毎日新聞によると、日本防災士機構の玉田三郎専務理事が「中国地方では、他の地方と比べて防災への認識が低い感は否めない。震災発生前の近畿地方の認識に近いのではないか。」と話したとしている。
防災士認証者数都道府県別順位表 | |||||
順位 | 都道府県名 | 認証者数 | 順位 | 都道府県名 | 認証者数 |
1位 | 東京都 | 7,185名 | 1位 | 東京都 | 7,261名 |
2位 | 大分県 | 5,084名 | 2位 | 大分県 | 5,215名 |
3位 | 愛媛県 | 4,717名 | 3位 | 愛媛県 | 4,815名 |
4位 | 愛知県 | 3,750名 | 4位 | 愛知県 | 3,789名 |
5位 | 埼玉県 | 3,201名 | 5位 | 埼玉県 | 3,240名 |
6位 | 神奈川県 | 2,990名 | 6位 | 神奈川県 | 3,022名 |
7位 | 千葉県 | 2,919名 | 7位 | 千葉県 | 2,963名 |
8位 | 石川県 | 2,583名 | 8位 | 兵庫県 | 2,657名 |
9位 | 静岡県 | 2,560名 | 9位 | 石川県 | 2,617名 |
10位 | 兵庫県 | 2,537名 | 10位 | 静岡県 | 2,569名 |
(平成26年2月末現在) | (平成26年3月末現在) |
防災士認証者数の推移
2002年(平成14年)6月1日の法律文化に掲載されたインタビューの中で、貝原俊民会長(当時)は、向こう10年間で40万人くらいの防災士を誕生させることができると予測を述べている。
- 2003年(平成15年)10月 - 防災士第1号認証
- 2006年(平成18年)2月 - 10,000名に到達
- 2007年(平成19年)11月 - 20,000名に到達
- 2009年(平成21年)3月 - 30,000名に到達
- 2010年(平成22年)6月 - 40,000名に到達
- 2012年(平成24年)3月 - 50,000名に到達
- 2013年(平成25年)2月 - 60,000名に到達
- 2013年(平成25年)11月 - 70,000名に到達
防災士認証登録者数一覧表 | |||||||||||
2003年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | |
1月 | ─ | 42,703名 | |||||||||
2月 | ─ | 10,000名 | 38,489名 | 43,276名 | 61,296名 | ||||||
3月 | ─ | 1,581名 | 5,008名 | 10,620名 | 16,955名 | 21,485名 | 30,000名 | 39,204名 | 43,948名 | ||
4月 | ─ | 39,820名 | 44,314名 | 51,375名 | 64,742名 | ||||||
5月 | ─ | 39,914名 | 44,503名 | 51,851名 | 65,239名 | ||||||
6月 | ─ | 5,900名 | 11,810名 | 17,888名 | 22,983名 | 31,824名 | 40,000名 | 44,728名 | |||
7月 | ─ | 2,272名 | 12,324名 | 24,633名 | 40,344名 | ||||||
8月 | ─ | 12,847名 | 18,655名 | 40,679名 | |||||||
9月 | ─ | 6,911名 | 13,605名 | 19,231名 | 25,595名 | 33,739名 | 54,345名 | ||||
10月 | 216名 | 26,344名 | 41,380名 | 69,534名 | |||||||
11月 | 8,187名 | 14,817名 | 20,000名 | 70,000名 | |||||||
12月 | 4,075名 | 9,008名 | 15,569名 | 20,666名 | 27,732名 | 42,260名 | 72,563名 |
2009年(平成21年)3月16日のフジサンケイビジネスアイによると、防災士認証登録者は2009年3月に3万人に到達したが、そのうち1万人超は全国特定郵便局の局長である。
2009年(平成21年)5月20日の日本防災士機構通常総会において、古川貞二郎会長は、平成23年度中に防災士認証者数5万名達成という目標を掲げている。
認証登録者の内訳
2007年(平成19年)1月17日の読売新聞で、防災士の資格取得者の内訳が報道された。内訳は平成18年12月末現在の認証登録者の男女比と年齢層である。全国の資格取得者のうち、50歳以上が過半数を占めている。
防災士認証者の男女比 | ||
男(93.1%) | 女(6.9%) | |
(平成18年12月末現在) |
防災士認証者の年齢層 | |||
30歳未満 | 3.7% | ||
30歳代 | 13.0% | ||
40歳代 | 26.5% | ||
50歳代 | 38.1% | ||
60歳代 | 16.0% | ||
70歳以上 | 2.7% | ||
(平成18年12月末現在) |
産経新聞(2007年(平成19年)9月6日)によると、資格取得者の最年少は12歳の小学6年生、最年長は90歳代の男性である。また、読売新聞(2007年(平成19年)12月4日)では、全国最年少は小学5年生(認定当時)と報じている。
自治体職員の資格取得
栃木県栃木市は、2007年(平成19年)10月25日に日向野義幸市長はじめ全職員618人を対象に防災士資格を取得させると発表している。当時、東京都荒川区が一部職員に防災士資格の取得を実施していたが、全職員が資格の取得を目指すのは全国で初めてであった。約700万円をかけて5ヵ年で全職員が防災士資格を取得することを決め、2007年(平成19年)11月に実施された防災士資格取得試験では、日向野義幸市長以下53人の職員が防災士資格を取得している。
防災士の組織化
防災士の有志で組織する日本防災士会は、「自助」、「共助」の原則のもと、会員のネットワークを構成し、防災士としての活動と技術研鑽を支援することを目的として、小宮多喜次、浦野修の2名を代表幹事とした20名の役員体制で平成16年10月12日に設立された。地域等の特性等に対応する活動を通じて日本防災士会の目的達成に寄与するために各地で支部を結成し、地元自治体や防災関連団体との連携を深め、会員相互のネットワークを構築して有為の活動を推進している。平成22年3月末現在、防災士認証登録者総数は39,204名であるが、日本防災士会の会員数は一割強の4,939名となっている。会員数の伸び悩みは、災害ボランティア活動をするために年会費5,000円が必要なのかという疑問の声も上がっており、会員になるメリットが少なく、入会後の具体的な会員活動が明確になっていないことが原因とされている。また、研修など会のイベントは都心部で開催されることが多く、地方の会員は会の活動に参加する機会が乏しいことなどから、各地で支部を発足させる動きが広がり、今では全国37の都府県に支部が存在する。千葉県2支部6ブロック、東京都8支部、神奈川県4支部、大阪府2支部5ブロック、広島県2支部、福岡県2支部3分科会と、複数の支部、支部の下にブロックや分科会が存在する都府県もあるが、元々少ない会員数に対して支部が多く結成されたこともあって、各支部の会員数は増えないままの現状がある。会員拡大にあたり、滋賀県支部ならびに福井県防災士会では、防災士の資格は入会後でも構わないとしている。東京都世田谷支部では、防災士の資格がなくても準会員になれる。また、大阪府支部では、防災士の資格がなくても役員会の承認により入会できるように取り決めている。
鳥取県では日本防災士会鳥取県支部と鳥取県庁とが協定を結び、鳥取県内で開催される各種防災啓発イベントに、講師や運営リーダーを派遣することとなっている。そのほか、消防機関との合同訓練、機関誌の発行を行っている支部も少なくない。
さらに消防団との連携を深めて地域の人々を守ろうと、防災士が「機能別消防団員」に個人的に加入しようという動きもあるが、地域防災の担い手である消防団員が減少している現状で、「なぜ地域防災活動に関心があるのなら、最初から消防団に加入していないのか?」という声もある。
法人化
日本防災士会は平成22年度定期総会において特定非営利活動法人化について議決し、東京都に対して承認申請を行い、平成22年11月17日付けで認証され、同月25日に設立登記され、特定非営利活動法人日本防災士会が設立された。
支部の独立
日本防災士会東京都世田谷支部の支部長は、日本防災士会が特定非営利活動法人に移行するための準備を進めていることに対する会員の意見を世田谷支部の会員交流ボード(電子掲示板)で求めていた。法人化は本部のみで、支部は別団体とする方向で検討されていることから、支部ごとに法人化準備の動きが散見されるようになった。既に、日本防災士会の支部としながらも青森県防災士会および福井県防災士会は独立した名称の防災士会として団体を立ち上げている。また、青森県防災士会は平成20年3月5日、日本防災士会湘南支部は平成20年4月15日に、それぞれNPO法人として認証されている。日本防災士会には役員会で承認されたシンボルマーク・キャラクター・ロゴタイプがあるが、NPO法人青森県防災士会では県の地形をモチーフとする独自のロゴを使用している。
支部結成の実情
支部の結成については、本部に会員個人情報開示申請書の提出をすることで日本防災士会の会員名簿を入手して、名簿に記載された会員の連絡先に電話をして支部設立の協力を要請している。10人以上の人数確保が見込めた段階で支部設立準備会員によって役員を定め支部結成届出書を本部に提出する。その際に支部結成活動支援金申請書と支部結成時の構成員となる防災士名簿(防災士番号記載)を提出することで1名あたり2,000円の支部結成活動協力金が本部から交付される。
日本防災士会は、防災士の資格を有する者で会費を納入した会員により構成しているが、日本防災士会の支部規定において、支部の承認申請では支部構成員名簿に防災士番号を記載する必要があるが、支部設立後の構成員の資格については触れていない。そのため、一部の支部については、防災士の資格がなくても入会できる現状が存在する。
日本防災士会の組織委員会では、支部活動アンケートを実施している。支部からの回答率は第1回目と第2回目と共に6割前後であったが集計された結果が出ている。支部運営の問題点および課題については、運営費用不足を挙げる回答が飛び抜けて多かった。支部会費の状況については、15件の回答のうち支部設立初年度から不足しているという回答が5件、今後不足するという回答が9件、わからないという回答が1件、しばらくは不足しないという回答は0件だった。活動費確保の方策の問いには、日本防災士会からの支援を要請や会員の増加を求める回答が多かった。支部の厳しい財政事情をアンケート結果が裏付けている。
任意団体の設立
- 2007年(平成19年)5月26日、宮崎県内在住の防災士31名によって「宮崎県防災士ネットワーク」が結成された。同年8月には県央支部が設立されている。平成20年5月24日現在、宮崎県防災士ネットワークの会員は防災士74名。宮崎県は、宮崎県地震減災計画における自主防災組織の充実に向けた具体的な取り組みとして、防災士ネットワーク加入者300名を目標に掲げ、自主防災組織のリーダー育成を推進している。
- 2007年(平成19年)6月17日、新潟県上越市の防災士養成講座で資格を取得した防災士が中心となり上越市防災士会が結成された。防災士の資格がなくても入会できる。上越市防災士会は、地域づくり団体新潟県協議会に登録されている。新潟県上越市では、安全・安心、環境保全プロジェクトの自主防災組織整備事業として上越市防災士会の活動をサポートし、より効果的な地域防災活動の推進を目指したいとしている。
- 2007年(平成19年)8月、和歌山県橋本市で防災士ら有志による橋本防災士の会が立ち上げられた。偶数月の第2日曜日の午後に市役所の会議室を借りて勉強会を開催している。防災士の資格がなくても参加できる。
- 2007年(平成19年)12月、東京土建一般労働組合世田谷支部の防災士7名が、職人の技を大地震対策のために生かしたいとして世田谷防災士の会を設立した。
- 2008年(平成20年)2月、埼玉県草加市では、地域が主催する防災訓練などで消防との連携を図るために、草加市防災士の会が発足した。会長には警察庁OBが就任している。
- 2008年(平成20年)3月9日、宮城県の女性防災士らで輝く女性隊が結成された。女性の視点で防災活動することを目的としている。平成18年5月1日現在、宮城県内の婦人防火クラブは1,966組織でクラブ員の総数は303,283名。ともに全国一を誇っている。
- 2009年(平成21年)9月1日、東京国際大学はTIU防災士団を結成している。防災士の資格を有する教職員と学生で構成される。同大学の1年次から3年次の在学生は、防災士資格取得講座を30,000円で受講できる。資格取得者は自動的にTIU防災士団に加入し、災害ボランティア活動に加わる。同大学は欧米人初の防災士を輩出していて、現在、TIU防災士団で防災地図の英訳などの活動を始めている。
課題
日本防災士機構、日本防災士会は、平成20年8月に、宮城県が条例制定を目指している「震災対策推進条例(案)」に、「宮城県防災指導士」を制度化する動きがあることに反発し、名称が類似しているばかりか、「防災士」資格の上位上級資格を容易に連想させる。また、「防災士」は特許庁により商標原簿に登録された商標登録(登録第4833713号・登録日平成17年1月21日)であるとして、「防災指導員」等、「士」の名称を外すようにと、宮城県内の防災士にも呼び掛けて組織的に意見を提出し、宮城県では、「宮城県防災指導員」と変更することになった。
更に、総務省消防庁が行った「消防法施行令・施行規則改正案」をめぐるパブリックコメントにおいて、「防災管理者」の取得に際しては、「防災士」の取得者に優遇措置を講じてほしいと言う意見を提出した。総務省消防庁も回答で「公的資格取得に際して、民間資格の取得者を優遇はできない」としている。
上記2つの行動に対して、地域防災組織や災害ボランティアの中には、いち民間資格である防災士が自分達の利益のために地域の防災行政制度や国の資格に対して、名称変更要求や優遇措置の要求を行うのは行きすぎなのではないかとの声も少なくないが、これについて日本防災士会や日本防災士機構は特にコメントを出していない。
脚注
- ^ 国家資格にならない「防災士」ビジネスの闇 週刊現代「永田町ディープスロート」2010年5月25日
- ^ 防災のための専門的資格:例えば地すべりなどの地盤災害においては、技術士(応用理学地質や土質及び基礎)やシビルコンサルティングマネージャー(応用理学地質や土質及び基礎)などの資格を保有する個人の専門家がいる。他に、建築士やライフライン保守等の専門家もいる。
- ^ 宮城県沖地震は、地震調査研究推進本部により、今後30年以内の地震発生確率を99%としている。
- ^ 東京湾北部地震による被害は、死者約1万1千人、経済的損失約112兆円に上ると予想されている。
関連項目
参考文献
- 2001年(平成13年)3月 - 「自然災害の危機管理―明日の危機を減災(ミティゲート)せよ!」、佐々淳行(著)、大型本:282ページ、ISBN 4324063982・ISBN 978-4324063989
- 2001年(平成13年)4月 - 「防災学ハンドブック」、京都大学防災研究所(編集)、単行本:724ページ、出版社:朝倉書店、ISBN 4254260121・ISBN 978-4254260120
- 2002年(平成14年)8月 - 「防災事典」、日本自然災害学会(編集)、単行本:543ページ、出版社:築地書館、ISBN 4806712337・ISBN 978-4806712336
- 2014年(平成26年)6月 - 日本防災士機構ホームページ