虎馬:年金積立金管理運用独立行政法人 - W
正式名称 | 年金積立金管理運用独立行政法人 |
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英語名称 | Government Pension Investment Fund |
略称 | GPIF |
組織形態 | 独立行政法人 |
所在地 | 日本 〒100-8985 東京都千代田区霞が関一丁目4番1号 日土地ビル 北緯35度40分15.29秒 東経139度45分1.336秒 / 北緯35.6709139度 東経139.75037111度 |
資本金 | 1億円 |
負債 | 106兆7,532億2,172万6,131円(2012年度末) |
人数 | 71名(常勤職員) |
理事長 | 三谷隆博 |
目的 | 年金積立金の管理及び運用を行うとともに、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資すること |
設立年月日 | 2006年4月1日 |
所管 | 厚生労働省 |
ウェブサイト | http://www.gpif.go.jp/ |
年金積立金管理運用独立行政法人(ねんきんつみたてきんかんりうんようどくりつぎょうせいほうじん、Government Pension Investment Fund / The Pension Welfare Service Public Corporation、GPIF)は、厚生労働省所管の独立行政法人である。公的年金の積立金運用を行っている。
事務職員は運用の専門知識を持たないため、実際の運用は金融機関に委託している[1]。具体的な委託先は公表されている。2014年4月現在の委託先は、野村グループとゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント[2]他多数[3]である。
従来、公的年金の積立金運用は、特殊法人である年金福祉事業団が財政投融資に預託して行っていた[4]。しかし、 第2次橋本内閣が進めた特殊法人改革によって2001年(平成13年)3月に同事業団は廃止され、国は年金資金の自主運用を求められることになった。
そこで、2001年(平成13年)3月の同事業団廃止の直後、同年4月1日に年金資金運用基金へ改組された。2006年(平成18年)4月1日には、年金積立金管理運用独立行政法人が設立されて、同日付で廃止された同基金から年金積立金の管理・運用業務を引き継いだ。
役員
2013年(平成25年)4月1日現在の役員は次の通り[5]。
運用内訳
安倍晋三首相[7][8]の意向で、2014年10月31日から国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%になった[9][10]。このようにリスク資産の割合を増やすのは、株価対策の道具[11]にされかねないなどの批判が出ている[12][13][14][15]。
多くはベンチマーク[16]に連動するように運用するパッシブ運用[17]であるが、一部はアクティブ運用[18]も行っている。
このうち国内株式の運用において、アクティブ運用は伝統的なものとスマートベータ型[19]とに分離されている。パッシブ運用はベンチマークごとに[20]運用委託を受けた担当が分かれている[21]。
スマート・ベータ指数とは、広範な銘柄群を時価総額で加重した「市場指数」に対して、①特定の属性を持つ銘柄を対象に、②時価総額以外の基準でウェイトを付与することで構成される指数である。ファンダメンタル指数や低ボラティリティ戦略(最小分散)指数が代表的だ[22]。これらを用いた運用は、株価指数に連動した騰落率(ベータ)を目指すインデックス運用と、株価指数を上回る超過収益[23](アルファ)を狙うアクティブ運用の中間に位置づけられるという[24]。
- ファンダメンタル指数は、売上高・キャッシュフロー・株主資本・配当金の4項目から算出する。この指数は、ロバート・アーノットのリサーチ・アフィリエイツ社が考案した。時価総額加重平均という主流的指標の、赤字銘柄が人気のあるせいで指数に組み込まれる問題を克服した。克服の過程においては、1990年代後半にジェームス・オショーネシーやジェレミー・シーゲルなどがそれぞれ投資法を発表している。
- 低ボラティリティ戦略とは、下方リスクに対応し、ポートフォリオのボラティリティを抑制した投資戦略の総称である。異なる研究者が様々な手法を提唱している。リスクコントロール指数や最小分散ポートフォリオ、リスクベースストラテジーなど。フィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズ[25]らの資本資産価格モデルに関する研究[26]は、これらの基礎になっている。
運用実績
年金積立金の自主運用を始めたのは、前身の年金資金運用基金が設立された2001年度(平成13年度)からである。同年度から各年[27]の収益額は下の表に掲げてある。2001年度(平成13年度)から2013年度(平成25年度)までの累積収益額は35兆4,415億円にのぼる。収益率の分母となる運用資産額は、2013年度(平成25年度)末で126兆5,771億円[28]であった。2011年末時点では年金基金の中で、2位のノルウェー政府年金基金(5,755億2700万米ドル)に2倍以上の差をつけて資産額は世界最大(1兆3,948億7300万米ドル[29])である。
2007年からの世界的金融危機によりそれまでの収益のほとんどが消し飛び累計収益が1兆円を割り込んでしまったため、批判を受けた[30]。
年度 | 収益額 | 収益率 |
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2001年度(平成13年度) | −6,564億円 | −1.80% |
2002年度(平成14年度) | −2兆5,877億円 | −5.36% |
2003年度(平成15年度) | +4兆7,225億円 | +8.40% |
2004年度(平成16年度) | +2兆3,843億円 | +3.39% |
2005年度(平成17年度) | +8兆6,795億円 | +9.88% |
2006年度(平成18年度) | +3兆6,404億円 | +3.70% |
2007年度(平成19年度) | −5兆5,178億円 | −4.59% |
2008年度(平成20年度) | −9兆6,670億円 | −7.57% |
2009年度(平成21年度) | +9兆1,850億円 | +7.91% |
2010年度(平成22年度) | −2,999億円 | −0.25% |
2011年度(平成23年度) | +2兆6,092億円 | +2.32% |
2012年度(平成24年度) | +11兆2,222億円 | +10.23% |
2013年度(平成25年度) | +10兆2,207億円 | +8.64% |
累計 | +35兆4,415億円 | +2.51% |
脚注
- ^ 委託先の選定に当たっては金融の専門家で構成される運用委員会の諮問を受ける。
- ^ 国内株式アクティブ運用におけるスマートベータ型。野村グループとは、野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー株式会社と野村アセットマネジメント。 Chief INVESTMENT Officer Japan’s GPIF Appoints Smart Beta Managers Headlines April 07, 2014
- 国内報道では委託先がゴールドマンと野村だけであるかのような書かれ方をしていた。 日経新聞 公的年金、高利回り投資へ ゴールドマンなどに委託 2014/4/2付 情報元 日本経済新聞 朝刊
- ^ スマートベータ型の他、伝統的アクティブ運用では、
- インベスコ・アセット、キャピタル・インターナショナル、ナティクシス・アセット、日興アセットマネジメント、フィディリティ、みずほ投信投資顧問、ラッセル・インベストメント、JPモルガン、DIAMアセットマネジメント、他2社。
- ^ 年金福祉事業団は1961年(昭和36年)11月25日に設立。年金資金の運用は1986年(昭和61年)4月18日に開始。
- ^ 役員一覧、年金積立金管理運用独立行政法人。
- ^ 2010年(平成22年)4月1日就任
- ^ 2014年5月1日、シティ・オブ・ロンドンで次のように演説した。
- 「世界最大の年金基金、7300億ポンドを超える運用資産を持つGPIFについては、1月、ダボスでお話をしたように、”forward-looking”な改革を進めて参ります。その一環として、ファンドマネジメントのストラテジーを決める委員会のメンバーが一新されました。ドリルの刃は最大速度で回転しています。」
- ^ 野村証券と岩田一政によれば、50兆円の外債を購入するファンド設置を検討している。 Bloomberg FRB議長を安倍首相が手助けか-外債購入ファンド構想で 2013/01/14 12:46 JST 原題:Abe Aids Bernanke as Japan Seen Buying $558 BillionForeign Debt
- 現実的な財源は公的年金の他、同様に運用が委託されている郵便貯金と簡易保険である。郵貯・簡保については、日本郵政公社が投資顧問会社及び資産管理銀行の選定を公表している。
- まず郵便貯金について。
- ・投資顧問会社8社(国内株式:シュローダー投信投資顧問株式会社、大和住銀投信投資顧問株式会社、日興アセットマネジメント株式会社、三井住友アセットマネジメント株式会社、メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ株式会社、UFJアセットマネジメント株式会社。外国株式:興銀第一ライフ・アセットマネジメント株式会社、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社。)
- ・資産管理銀行4社(資産管理サービス信託銀行、ステート・ストリート信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行)
- 次に簡易生命保険について。
- ・投資顧問会社8社(国内株式:ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社、シュローダー投信投資顧問株式会社、大和住銀投信投資顧問株式会社、富士投信投資顧問株式会社、メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ株式会社。外国株式:興銀第一ライフ・アセットマネジメント株式会社、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社、大和住銀投信投資顧問株式会社、東京海上アセットマネジメント投信株式会社、メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ株式会社。外国債券:興銀第一ライフ・アセットマネジメント株式会社、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社、富士投信投資顧問株式会社、三井住友アセットマネジメント株式会社。)
- ・資産管理銀行2社(資産管理サービス信託銀行、ステート・ストリート信託銀行)
- 出典の下記プレスリリースは「ユーザー名」「パスワード」が求められるが、どちらとも半角英文字の「guest」を入力することにより閲覧できる。
- 日本郵政公社 投資顧問会社及び資産管理銀行の選定について 2004年3月31日
- 運用状況は「金銭の信託の委託先別時価残高及び運用実績」と「金銭の信託の委託先別報酬額」を参照されたい。 日本郵政 旧日本郵政公社ディスクロージャー誌
- まず郵便貯金について。
- 現実的な財源は公的年金の他、同様に運用が委託されている郵便貯金と簡易保険である。郵貯・簡保については、日本郵政公社が投資顧問会社及び資産管理銀行の選定を公表している。
- ^ 短期資産は資産構成から外された。2012年12月末から変更までの運用内訳は国内債券60.14%、国内株式12.92%、外国債券9.82%、外国株式12.90%、短期資産4.23%であった。
- Bloomberg GPIF:内外株25%に倍増、国内債35%に引き下げ-新資産構成 2014/10/31 19:35 JST
- 朝日新聞 国債引き下げ電撃発表、GPIF理事長「日銀と連携ない」 2014年10月31日20時22分
- 時事ドットコム 年金運用、株式投資を倍増=国内債券は大幅減 2014年10月31日
- 東京新聞 年金運用 国内株式25%に倍増 政権意向反映、リスクも 2014年10月31日 夕刊
- ^ この10月から、GPIFは国内株式での運用比率の目安を12%から20%台半ばに大幅に引き上げる方向で調整していた。麻生太郎財務相との協議を経て塩崎恭久厚生労働相が決定すると報じられた。 日経新聞 公的年金、国内株運用20%台半ばに 大幅上げへ調整 2014/10/18 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版
- ・従来の上限は18%だった。 日経新聞 公的年金、株式運用の上限撤廃 20%台に拡大へ 2014/8/10 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版
- ・塩崎は安倍首相の経済政策「アベノミクス」相場に乗って約2年で約2800万円の含み益を得ていた。 しんぶん赤旗 塩崎厚労相は“株長者”/年金の株運用拡大を主張/消費税10%へ「好景気」演出 2014年9月22日 9時33分
- 出典には塩崎の保有銘柄も書かれている。GPIFの保有銘柄は書かれていない。
- ・21日、塩崎厚生労働相は記者会見でGPIFが日本株の目安を20%台半ばまで引き上げるとの報道について「全く知らない」としており、「有識者会議や成長戦略にのっとって議論してもらっている」と述べた。 公的年金運用、日本株買い増しを 伊藤・政策研究大教授日本経済新聞 2014年10月21日
- 同日、有識者会議の座長を務める伊藤隆敏は日本記者クラブで記者会見し、年金支払いに伴う積立金取り崩し部分へは保有する国債を充て、残りの90兆円は10年超の運用を前提に、リターンが国債よりも高くなるものに投資するのが望ましいと答えた。 日本経済新聞 伊藤隆敏氏、GPIF「90兆円はリターンが国債より高いものに投資を」 2014/10/21 17:53
- ^ アベノミクスの第3の矢成長戦略の一環。
- 東洋経済ONLINE アベノミクス「3の矢」でGPIF見直しが再浮上 2013年06月11日
- 「経済成長戦略自体に、どうも株価を上げることで成長戦略が成功したというような証にしたいという意図がある。端的に言えば、GPIFにもっと日本株を買わせる。あるいはそのストーリーを広めることによって日本株の株価を上げる」
- ^ しんぶん赤旗 年金削減に歯止めを 2014年10月16日(木)
- ^ 佐々木憲昭 年金の安全運用逸脱、積立金の株投資を批判【14.06.03】 この時点で外国株式が15%運用されている。動画も配信されている。 YouTube 年金の安全運用逸脱、積立金の株投資を批判 2014/07/18 に公開
- ^ 週刊ポスト2013年6月28日号では、株価下落による資金の目減りまで懸念されている。 NEWポストセブン 安倍政権 高い支持率維持のため「国民のカネ」に手をつけた 2013.06.18 16:00
- ^ 第一生命の永濱利廣は、「株安に伴って日本株の占める比率が所定の数値を下回ると、その調整のために買いを入れることになります。言わば、下がれば下がるほど買うロジックなので、結果的にGPIFは市場の安定化装置的な役割を果たしているのです」と述べる。 WebYenSPA! 株買支 毎日400億円の怒涛の買いで日経7000円を維持!?〈その1〉 2014年10月閲覧
- ^ 運用成果を評価する際に、相対比較の対象となる基準指標。市場の動きを代表する指数を使用。 GPIF 用語集 ハ行 TOPIXなど
- ^ 市場は効率的であり、情報の収集・分析等のコストを支払って機動的に運用しても継続的な超過収益は得られないという考え方を前提に、原則として市場を構成する全ての銘柄をその構成比率どおりに保有して、市場平均並みの収益率を確保することを目指すインデックス運用。市場に対する影響に配慮して比重を高くしているという。
- ^ 市場の非効率的な面に着目し、さまざまな非効率な要因を分析することによって、市場平均とは異なるポートフォリオを構築する。ベンチマークに対して相対的に高い超過収益を出すことを目的に運用する方法。
- 運用収益を上げるべく、優秀なファンドマネージャーを高額な報酬で雇用し、より積極的にアクティブ運用させるべきとの見解がある。一方、アクティブ運用では長期的に見てパッシブ運用のリターンを上回ることは困難であり、またアクティブ運用では高額な委託手数料が必要でありコスト面でも不利である、等の意見もある。
- ^ アクティブと言いつつインデックス運用である。後述のスマートベータ指数を用いる。
- ^ TOPIX、JPX日経400、MSCI Japan、RusselNomuraPrimeの4部門。用語集に無いベンチマークもある。
- ^ 割り当ては脚注[2]と[3]に記した。
- ^ 野村総合研究所 スマート・ベータのリスクとコスト 2014年2月号
- ^ 平成18年度の国内株式部門の超過収益率は、アクティブ運用−0.16%、パッシブ運用+0.28%であった。
- ^ インデックス運用でありながら超過収益が見込めるという意味。中間に分類されるわけではない。
- ^ 2人が手がけたブラック-ショールズ方程式はロングターム・キャピタル・マネジメントのボラティリティ・トレードにそのまま応用され、13億1400万ドルの損失を出した。このヘッジファンドは遂に破綻して救済融資を受けた。融資に参加した14の金融機関を下に掲げる。
- ^ Jensen, Michael C., Black, Fischer and Scholes, Myron S.(1972), “The Capital Asset Pricing Model: Some Empirical Tests”, Studies in the theory of Capital Markets, Praeger Publishers Inc., 1972; see also Fama, Eugene F., James D. MacBeth, “Risk, Return, and Equilibrium: Empirical Tests”, The Journal of Political Economy, Vol. 81, No. 3. (May – Jun., 1973), pp. 607–636.
- ^ 運用結果は四半期ごとに公表される。
- ^ 平成25年度 業務概況書、年金積立金管理運用独立行政法人、2014年(平成26年)。
- ^ P&I / TW 300 analysis - Towers Watson, By Towers Watson | September 2012.
- ^ asahi.com(朝日新聞社):公的年金が消えていく? - 荻原博子の”がんばれ!家計” - ビジネス・経済
関連項目
外部リンク
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