October 07, 2004

「ランス此船璽絞壊〜」評。

 

 
 「宿命的」というコトバがあるならば、ELF・ALICE両ブランドほど、宿命的なブランドは無い。ともに設立は1989年。この年、当時の代表的エロゲーメーカーであったジャストが、IDESと共同、新ブランドを設立する。これが「カクテル・ソフト」であり、後にF&Cへ発展することになるIDESの2大ブランドとして、現在のエロゲー業界の大本になっていった時代。(それはこの結果生まれた、F&C出身のクリエイターが移籍後も他ブランドで中心人物として活躍していることからもわかる。)

 フェアリーテールから独立してまでも独自路線を目指したELFと、殆ど徒手空拳からエロゲー業界へ踏み出したALICE。

 ・・・最強の変人と最多の奇人
 ・・・投影しやすい主人公と個性的な主人公
 ・・・メディアミックス路線とゲーム一本での販促
 ・・・メーカー統制型OHPとユーザー介入型OHP
 ・・・絵柄を統一する美麗なグラフィックと原画の個性を尊重するグラフィック

 ・・・頂点として潮流を創造する者と、潮流を否定し我流を追求する者

 ・・・180度全く違うスタンスを保っているメーカーであり、15年経ってみれば、「横綱」と呼ばれるのは、この2大メーカーである。

 両ブランド最大の激突は、1996年12月。「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」と「鬼畜王ランス」。共にファンからは神格化される作品になるのだが、双方とも「プレーヤーに物語へ介入させる」というゲームとして基本的な行動をさせることを念頭におきながら、AVGとSLGでシステムは相反し、ルートは幾つもあっても、物語の結末は一つに集約される前者に対して、後者は、敵と味方が全く入れ替わってしまう展開など、プレーヤーの選択によっては幾つもの可能性が開けるマルチエンドを作り上げるという、対照的な展開を見せる。

 そして、2004年8月27日。8年前の再戦である。片や、「正統派純愛系SLG」・・・エロゲーの金字塔であり、すべての純愛系エロゲーの祖・「同級生」正統な系譜と、萌えゲーの創始者「下級生」の名を受け継ぐ後継者。片や、ALICE処女作以来、15年続くシリーズである「RANCE」の銘・・・その“銘”を受け継ぐ9代目であり、本編正式ナンバー6番目、累計第8作にして、8年ぶりの大型「RANCE」・・・「3DダンジョンRPG」。


 鉄板と大風呂敷。


 まさに両ブランドの看板作同士、システム面でも技術力を比較されることになる、老舗の誇りを賭けた大勝負となった。相変わらず、販促方法も対照的で、ゲーム発売前からTVアニメも決めて、声優を中心にメディア露出を大々的に展開するELFに対して、あくまでALICEはゲームだけでの勝負を決め込み、コミュニティに限定した販促に努める姿勢を崩さない。


 話題のある販促か?持続性のあるセールスか?

 
 ・・・どこまでも、対照的な道を行く。


 どちらが勝利したのかを語るのは、ここでは無意味だ。先の勝負が実質的には二年以上に及んだことからわかるように、この結果が示されるのは、一年ぐらい先のことになるだろう。

 ゲーム業界にもたらした影響だけを論ずれば、ALICEはELFの二枚三枚落ちどころか、他のエロゲーメーカーとほぼ同列の存在に過ぎない。ALICEは「横綱」と評されてはいても、Webに大きなムーブメントは起こしたゲームは「鬼畜王」を除けば、殆ど、登場しなかった。ALICEはいくつかの幸福に恵まれたメーカーの一つだが、「ブランドイメージを代表する作品が無い」と言うのも、このメーカーの幸福だろう。少なくとも、「一つのゲームの評判がメーカーブランド自体の評価と同一」にされていない。だから、シリアスも、おバカも、純愛も、陵辱も、調教も作れるし、ジャンルはAVG、SLG、RPG全部作れる。基準はただ一つ。「遊べるエロゲー」であることである。(この部分は、さすがにメンバーが「エロゲーを作ることに誇りがある」と言い切った会社であり、「エロゲー“しか”表現できない物語」を紡がせれば、これほど上手く物語をエロ以外に“発展させない”メーカーも無い。正直な話、「エロが無いランス」とか誰がやりたいと思う?)

 何を作っても許されるし、容易く、世情の斜め上をひた走る。

 アリスファンの、この「許容性」というのは、少し、葉鍵月型各ファンや他メーカーのファンには理解しづらいと思う。極端に言ってしまうと、バカゲーへの寛容性とも言い換えても良いが、古参のファンが多い割にキャラデザインが変わっても大丈夫・・・どー考えても、エロCGに程遠い、グナガンのご褒美CGとかに、何でレアモノの価値を認めるのか?・・・とかを考えると、このように言うしかないし、そんなコミュニティを15年かかって作り出したALICEは、なかなか、商売上手だったと言える。



 ・・・前置きが長くなった。

 「RANCE」は古いシリーズである。第一作は1989年。なんと15年続くシリーズであり、“同一の主人公を描いたRPG”としては、実は、世界的に見ても、長期的なシリーズになる。洋ゲーを除くと、国内でこれに匹敵できるのは、1987年から、かれこれ17年、同一のキャラクターを主人公にすえているA-RPGの頂点・「Ys」(Falcom)ぐらいしかない。・・・まぁ、“史上最も他機種に移植され続けているシリーズ”(機種としては世界最多。別にだからどうしたと言うしかないのだけど。)と比較するのは酷だとしても、同一の主人公を描き続けることが如何に難しいのかは、判ってもらえると思う。

 エロゲーの場合で言えば、もっと問題は深刻で、「物語上の主人公が同じ」と言えば、「その周辺人物も同じ」と言うことになるので、「Hシーンの描写に新鮮味が欠ける」という、エロゲーの性質上の問題が発生する。そのため、エロゲーには、まず、シリーズ物が少ないし、世界観設定が継続(「同級生(ELF)」・「とらいあんぐるハート(JANIS)」等)するならまだしも、同じ主人公でメインヒロインも同じ、その上、それが累計9作もやっているシリーズは例に無い。

 「RANCE」シリーズは、別にシナリオ的に評価できる部分は無い。世界観設定は、エロゲーでも最大を誇るが、別に緻密でもない。このシリーズを最初からやっているプレーヤーは、このシリーズの設定が如何に「後付」で「継ぎ足されてきた・積み重ねられたきた」設定であるか知っている筈だろう。

 だから、端的に言えば、この作品群は、ランスがすべて。

 ランスが許容できなきゃ、始まらない。

 ランスの、ランスのための、ランスによる物語である。


 「RANCE」シリーズは、第1作・第2作まで現在の主要登場人物が出揃い、第3作「リーザス陥落」で世界観設定がやっと表に出てきた。その中で、主人公・ランスは、“最初から”鬼畜だったし、何より、英雄でも勇者でも天才でも無かった。そう描かれたことは一度としてなく、なぜ、シリーズ最高傑作だった「鬼畜王ランス」をALICE製作陣はOHPにおいて、あれほど執拗に“番外編”と繰り返すのか?・・・その理由を挙げれば、鬼畜王のランスは、「ALICEが描きたいランスでは無い」部分が混じっているため。それは、私が何を言わなくても、その「悲劇」をクリアした人間には分かるだろう。ゲームとしては、あまりに意外性に満ちた、しかも、その結末までゲームは継続できるという、鬼畜王の評価を不変にした箇所だが、あれは「ランスとしてはあってはならない描写」だったのだろう。

 「正義も感動も悩みとか葛藤とか、なーーーんもなく、
  エロゲーのRPG主人公としてもっとも最適な男。 」
 (---Alicesoft Official Homepage)

 ・・・このOHPが説明するように、殆ど「大きな子供」なランスがALICEの描きたいランスであり、このゲームの「売り」は、結局、その部分である。だから、とり氏がアリスの館で述べたように「鬼畜王」が神格化されたのは、ALICEにとっては、予期しないところだったのではないか?その結果が、「RANCE」シリーズの生みの苦しみとなり、ランス5が実に三作品潰して、やっと「5D」として誕生、そして、その時の「5A」をベースに本作品があることから考えると、「エロゲーのRPG主人公としてもっとも最適な男」とは言うには簡単だが、そのキャラクター性を果たして、ゲームとして「売り」できるかどうかは、ALICEでも冒険にならざるを得なかったのだろう。このランスという主人公を肯定できるか否か・・・が、このゲームの評価にするにおいて、最大の分かれ目であり、ランスが嫌いならば、どんなに女の子が魅力的でも手を出さないほうがいい。「RANCE」シリーズは、一貫して、そのスタイルを捨てないシリーズでもあるのだから。だが、このシリーズほど、「エロゲー」の覇道を歩く物語もないということは言っておく。


 さて、肝心の内容のほうだが、久しぶりの「大型」ランスと言うことで、マニュアル見れば、分かるだろうが・・・やっと、マトモなプロフィール載せられるようになったねぇ・・・(年齢とか)・・・と、別な意味でしみじみと。

 ジャンルとしては3Dダンジョン-RPG。本当にコンシューマーでも見習って欲しいぐらい快適。試してみると、2世代くらい前(推奨スペックギリギリ)のノートPCでも余裕で遊べる。殆どノートPCだと動かないゲーム、画面効果でゲーム性自体が悪くなっているゲームが多い中でよく作ったモノだと感心。あまり、ゲーム中は用途は無いが、上下左右グリグリ動ける(天井も床も眺められる)ので、試してみて欲しい。随分と細かにテクスチャを作ってある。何で、こんなに快適なのかは、アリスの館の妹尾氏のコメントが全てだろうと思う。分からん人には何やら・・・って言葉が出てくるが、見ていない人は参照してみるといい。・・・よく分かっていますよ。ALICEは。

 戦闘システムとかは、選択式で単純、基本的に力押しで勝てるシステムなので、戦闘の駆け引き要素は薄い。物語進行は、活動力と玉集めをどう考えるかがポイントになる。一応、イタリアで簡単に手に入るのだけど、それができない場合は、面倒かもしれない。猿玉・鷲玉は必要だったかもしれないけど、蟹玉は無くても良かったのではないかな?

 物語の構成としては、全CGを時間さえかければ、一回のプレイで回収できる(7章)ので、玉集めを別にすれば、良いユーザーに優しい構成。ダンジョンを繰り返すことにストレスは感じるが、同じ手間を二度はかけさせない作り方は非常に良いと思う。時間をかけたのに、クリアできない・・・と怒りを与えるよりはマシだろう。

 音楽面は、OP曲である「ゼス崩壊」と、マリア&志津香テーマ「魔法使いの女の子/R6」、何か妙に好きな「買い物依存症」ぐらいか。
 

 物語上の大きなポイントは、OP-MOVIEで一目瞭然なのだが、「世界秩序を変革する可能性を秘めた三人」が遂に出会ったことが大きい。OP-MOVIEにてエロゲーなのに、ヒロイン同様の価値を認められた野郎ども・・・“ゼス王”ラグナロックアーク・スーパー・ガンジー・“流浪のヘルマン帝国第一王子”パットン・ミスナルジ・・・“リーザス王位継承(リア認定)候補者”ランス。鬼畜王で、ある程度描かれるが、この三人、現在の人類圏の秩序を完全に変革する可能性を持っている。

 ランスは、どう考えても暴君にしかならないはずの素質を持っているリアを更正(結果だけを見れば、リーザスには大きなプラス。かなみちゃんがいくら不幸であっても。今回でも、リアは、十分に「策謀の女王」になれる実力を見せている。)させ、リーザス王家の絶対性を否定し、ガンジーは国王でありながら、「魔法王国」を否定し、パットンは現へルマン帝国の体制を否定している。この行き着く先は、どうやら、階級差別の撤廃。今回の物語が、ゼスの階級差別から始まったように、ランスが「自分のハーレムでの平等」を説くように、物語が「歴史」として描こうとしているのは、ランスがこの平等論を振り回した先にある「何か」であるらしい。

 ランスをカオルが「若い頃のガンジー」と評したように、ガンジーは「国王としてあるべき可能性のランス」の雛形なのかもしれない。(側近には手つけているし)ガンジーとランスが、マブダチ状態になっているのを見た千鶴子がびびった場面が7章であり、パットンが「連れて帰りたい」とハンティに語るのも、当たり前。この三人、波長が完全に同じようであって、「物事を他人任せにしない」。そして、自分が思うことをやれるだけの実力を秘める。その魅力とは何なのだろうか?

 ランスは誰を殺せばいいのか尋ねる復讐ちゃんにこう答える場面がある。
 

---部屋にやってくる復讐ちゃん・冒頭

 復讐ちゃん
 「どんなにやさしそうな奴も憎い奴や殺したい奴が必ず何名かいたぞ。お前もそうだろ」

 ランス
 「ああ、いっぱいいる」

 ランス
 「でも、全部自分でやる」

 復讐ちゃん
 「・・・・・・・・・私の存在意義を否定するのか」

 ランス
 「しないよ。だって、お前、けっこう可愛いしな」

(---以上、句読点位置原文どおり)


 自分に対する絶対的な自信。これは普通に描くと、物凄く嫌味なのだが、ランスは、欠点が余りに多い人物なので、嫌味にならない。今回の物語でも、ゼスを危機に陥れる片棒を担いだのが彼ならば、ゼス崩壊を食い止めて奪還した功労者も彼である。つまり、数万人を死に至らしめた原因も彼だし、ゼスの長きに渡った差別を破壊したのも彼である。どちらに重きをおくかは、それぞれの考察者の問題だが、ガンジーやパットン、当事者たちは後者の功を多く感じたようだ。6章EDで、あのまま、マジックと結婚していれば、書物は彼を「英雄」として称え、彼の戦いは「歴史」に刻まれただろう。それをしないのが彼の味であり、登場人物たちがランスに感じる魅力。「後に歴史に刻まれる戦いと―――決して語られる事のない戦いが―――」(---ONE PIECE 23 P122-123)と言う様な表現があるが、多分、ランスが描きたい物語も、これに近いのだろう。


 ・・・生き様をそっくりそのまま世界に反映する。


 これで、彼は、彼の我欲の果てに我知らず、リーザスとゼスの歴史を大きく変えた。EDで描かれたように、「姫」繋がりで、パットンを中心に次への布石が多かったことから考えても、今度はヘルマンだろうか。リアVSマジックの対決も面白そうだし・・・並み居るヒロインを押しのけて、シィル・かなみ・マリア・志津香に続く「運命の女」に登りつめそうなコパンドンのその後も見たいし(コパの今までのヒロインの誰とも違う属性は、年上属性以上に、「組織を編成できる」能力を持ち、「資金力」を保持し、さらにランスの浮気を容認できること。ランスは、とうとう自分専用のパトロンを手に入れたことになる。ランスと組織が結合すると、鬼畜王といい、アイスフレームといい、その作用は推して知るべしである。)・・・何か、欲ボケと痴話喧嘩で歴史が動きそうで怖かったりもする。


 ランスの唯我の行く先に何があるのか。それを手繰る楽しみは大きい。次が待ち遠しくなる。


 物語は作者に愛されてこそ、幸福足りえ、手繰る者にそれを分け与える。・・・それがよく分かる作品。




 
 ・・・特に関係ないけど、この物語、最後まで「純愛」貫き通したのって、サイアスとウスピラだけ(サイアスからすれば、いまだ、思いを遂げられず)なんだよね。こーゆー二人って、好きだなぁ・・・。
 



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この記事へのコメント
あんたスゴイな、俺初めてランスをプレイしたくなってきたよ。
他のレビューもそうだがよく物を見て理解してる。
サンキュ!
Posted by 通りすがり at December 13, 2005 03:45
馬鹿か・・・・
Posted by 旅人 at January 06, 2007 23:55
ほとんど完全な世界を持つ「馬鹿」とは・・・つまり・・・
Posted by 奈々氏の男 at February 05, 2007 19:05
俺のことだ
Posted by ななし at September 13, 2010 18:31