May 03, 2005

集約するエンターテインメント。

 コンシューマーハードの最大の問題点は、結局のところ、兌換性が無いということだ。ゲームソフト購入のためには、ハード所持が前提であるコンシューマーは、ゲームハードのシェアが、そのソフトウェアの売り上げの上限値を決めてしまう。つまり、ハードが出回っている数以上に、対応ソフトウェアが売り上げを伸ばすことはない。そして、そのハードのシェアを決めるのは、ハード性能以上に、ソフトラインナップが大事だということは、現在のPS一人勝ちが証明している。この点で、コンシューマーハードにおけるソフトウェアメーカーとハードウェアメーカーは、まさに一蓮托生。セガサミーもそうだが、バンダイ+ナムコも、このような業界構造こそが、今の経営再編の潮流に結びついていくのだろう。


  「総合玩具最大手のバンダイとゲーム大手のナムコは2日、9月下旬に経営統合すると発表した。玩具・ゲーム業界は少子化の影響で国内市場の先細りが確実で、「機動戦士ガンダム」などの有力キャラクターを持つバンダイと業務用ゲーム機や「太鼓の達人」などソフト開発に強みがあるナムコの組み合わせで競争力強化を図る。統合後の連結売上高(06年3月期予想)は4600億円となり、玩具とゲームソフトを柱とするエンターテインメント企業では、セガサミーホールディングスに次いで国内2位となる。


  経営統合は両社がこの日午前、それぞれ臨時取締役会を開いて決定した。9月29日に両社の共同持ち株会社「バンダイナムコホールディングス」を設立し、バンダイとナムコを事業会社として傘下に置く。


  持ち株会社は、両社の株式を移転する方法で設立。ナムコ株1株に対し持ち株会社株1株、バンダイ株1株に対し同1.5株をそれぞれ割り当てる。持ち株会社の社長には、バンダイの高須武男社長(59)、会長にはナムコの高木九四郎副会長(61)が就任する。6月下旬に両社が開く株主総会で正式決定する。」(---May 2,2005 毎日新聞)


 先に合併したスクウェアエニックスは、旧スクウェアが、勝手に大コケしたというイレギュラーから生まれた産物であったが、ゲームファンの満足度はともかく、企業経営的には却って良かったのではないだろうか。ゲームメーカー専業としてやってきたスクウェアと、ゲーム開発は下請けに任せて、企画とその周辺商品、出版、玩具と手広くやってきていたエニックスとは、最初から肌合いが違うと言われていたが、逆に言えば、全く企業体質・収入構造が違うことで、各々の業務が重なることがなく、スムーズに合併できた。このため、スクウェアエニックスは、旧スクウェアの開発陣を自社ブランドで手に入れ、自らゲーム開発を行う傍ら、他社の開発チームを使うことに躊躇いがない。そして、旧スクウェアの方は、ゲームハードという呪縛から解き放たれ、PC進出を本格化している。その砕氷船となったのが、オンラインRPG・FF11であることは言うまでもない。共に代表タイトルとはいえ、PS2のコンシューマーハードであるDQ8を他社に任せ、自ら主導したのが、MMORPG・FF11とiアプリ・FF&DQであることを考えると、彼らが将来的に、“どの分野”で稼ごうと考えているのが見えてくる。


  繰り返すが、コンシューマーハードの問題点は、兌換性が無いということだ。ハードメーカーが、自らのハードに上位兌換性を与えようが(任天堂→GBA/NDS、SCE→PS1/PS2)、与えまいが(任天堂→GC、SEGA→SS/DC)、それは勝手だが、今までのソフトウェアの資産と、ソフトウェアメーカー側の論理からすれば、どちらが良いか?・・・は、明白だろう。兌換性を与えることで、ゲームハードに制約を与えるため、高性能を持った新機種が出しにくい・・・という意見も尤もだと思う。だが、消費者視点で考えれば、そんなことはあまり関係がない。「楽しめれば良い」という絶対的な消費者上位主義が貫かれているエンターテインメント産業において、性能の向上が必ずしも、売り上げに比例しないのは、それが故である。だから、スクウェアエニックスは、早期にハードを見切っている。今のゲームメーカーにとって、マルチ展開とは、(PS&SS並立時代に、双方のハードで同じソフトウェアがリリースされたように)複数のコンシューマーハードに展開することではなく、据置コンシューマハード・携帯コンシューマーハード・PC・携帯電話の4種の中から、最も売り上げが見込めるジャンル別にタイトルを振り分けることである。


  前に、インデックス+タカラ連合(インターチャネル+デジターボ)による「萌え」ゲー市場支配の可能性については、ちょっと書いたが、これなどは、分かりやすい例。最初から、購買層を絞ることで、一定のパイを確保する作戦に出ている。ヲタ層&ヲタ予備軍をターゲットにするならば、爆発的な売り上げは望めないにしろ、一定の売り上げは可能。マーケティングも非常に限定されているから、大成功が無いわりに、大失敗もない。所謂、「弱者連合」なのだが、利益が見込めるという点では、上位メーカーを超える安定さを得られるかもしれないのだ。「エロゲーメーカー&ブランド(PCゲーム開発)→ビジュアルアーツ+ホビボックス(PCゲーム販売元)→インターチャネル+デジターボ(コンシューマー移植・携帯等モバイルコンテンツ制作)→アトラス・ブロッコリー(アーケード&周辺商品販売)・・・この流れの秀逸さは、一切、表の顔であるインデックスが出てこないということ。インデックスは、まだ、livedoorの轍を踏んでいない。


  バンダイとナムコの合併が示すのは、このような“流通経路”と、キャラクターの“供給源”を得なければ、先細りするゲーム業界において生き残れないということを意味すると同時に、少子化という病が、すでに日本という国家全体の経済を圧迫し始めたことを示している。その事実は、コンシューマーハードの今までの販促が、若年層に偏っていた以上、最初にそのダメージが現れるのが、ゲーム業界であることは必然だったとはいえ、最早、大企業になってしまったコンシューマーゲームメーカーには、それに対処するだけの余裕がないことも露呈したと言える。PCゲームが、PCの普及を機会に、徐々にメジャー化しつつあり、ブロードバンドの普及は、MMORPGを大きく商業的に成功させた。それは、人々の「ゲーム」が、単一にゲームハードを指していた時代が終わり、コンシューマーハードは、その“性能”こそが、新規メーカーの参入を困難にし、業界全体の停滞を促していたことにようやく気づかせる契機になったのだ・・・と思う。


  そして、これから来るのは、開発者の“囲い込み”だろう。インターチャネル+デジターボが、「萌え」に狙いを定めたように、そのような優良なコンテンツを開発できるメーカー、開発者、原作者に、商業・同人問わず、大手の手が伸びるに違いない。また、スクウェアエニックスが、ゲーム作成から、そのメディアミックスまで担当するように、ゲーム・コミック・ライトノベルの、ヲタ系エンターテインメントを一括して行う企業も多くなるハズ。そして、そんな企業は、業界の“介在者”として、大きな力を持つだろう。その端緒として言うなれば、スクウェアエニックスによる「ひぐらしのなく頃に(07th Storming Party)」のコミック化(ガンガンパワード春季号(3月24日発売)より鬼隠し編,監修:竜騎士07 漫画:鈴羅木かりん/ガンガンWING6月号(4月26日発売)より綿流し編,監修:竜騎士07 漫画:方條ゆとり/Gファンタジー6月号(5月18日発売)より祟殺し編,監修:竜騎士07 漫画:鈴木次郎)は、その試金石の一つだ・・・と考えられる。


 即ち、仲介の商業メーカー(PCゲームメーカー)を介さずに、ダイレクトに接続した、同人とコンシューマーメーカー(出版)の結合・・・という意味において・・・だ。ひぐらしは、現時点でアルケミスト移植が既定路線だが、これも同じく、PCゲームを経ず、コンシューマーゲームメーカーによって、作品が制作される。形振り構っていられない・・・が、本音かもしれないし、それほど、コンシューマーは、キャラクターの供給が滞っていると言えるのかもしれない。


「コンシューマ化は、『ひぐらし』が、初めて開拓して道を作る、未踏の領域に踏み入ったと言えないこともないかもしれません。」(---Apr.11,2005 竜騎士07氏,ひぐらしのなく頃に 製作日記


 ・・・この言葉は、当然、それを意識している。


 本来、ageの「君望」コンシューマー化で、メジャーの道を進んだアルケミストは、自社開発部門を持っていない。従って、彼らの立ち位置は、コンシューマーで言う旧エニックスと同じで、企画・監修、周辺商品販売が主である。「君望」の場合は、PCエンジンソフト開発の流れを組むヒューネックスが開発を担当している。開発元がないという自由は、旧エニックスがそうだったように、何処とも組めるという優位性でもあったのだが、一旦は、ageと組んだはずのアルケミストは、age自身のソフト供給の停滞もあってか、その後、距離を置いた。そして、次に手を組んだのが、minoriになっている。


 アルケミストは、自社開発部門を持たないことから、前述したインターチャネルとも関係があるが、その別方面で、フジテレビとスカイパーフェクTVとも関係がある。だから、Windアニメは、スカパーのAT-Xで放映された。そして、このフジサンケイグループが、livedoor問題で露呈したように、その大株主の一つに伊藤忠商事があった。・・・これが先か従かは分からないが、minoriブランドを保持するコミックスウェーブのバックは、伊藤忠商事である。OHPを見る限り、アニメ制作会社である日本アドシステムズはともかく、その主要株主を構成する企業は、例えば、エニライツは、伊藤忠商事のコンテンツ企画制作子会社、スペースシャワーネットワークは、伊藤忠が資本参加しているケーブルテレビ・衛星通信放送事業の販売・供給を行っている企業と言うわけで、伊藤忠本体の株式比率を分散させているものの、実質的な間接統治に近いカタチになっている。そして、スペースシャワーネットワークのCSデジタル放送供給先は、ソフトバンクとフジサンケイグループの関係を書いたときに指摘したように伊藤忠商事とフジテレビが12.48%の資本を保持するスカイパーフェクTVだから・・・関係がないと言うのは無理がある。


 既に企業等に勤めている方ならば理解できるように、法人向けの営業の場合、飛び込みや新規参入でも無い限り、何の縁もない企業・団体が、いきなり提携だとか、共同プロジェクトを立ち上げるなんて真似はしない。何らかの関係があり、それを“縁”にして、企業は結びつく。それは、ゲーム・アニメ業界でも変わらないと思う。アルケミストを例にしたとき、ageと距離を置いたアルケミストは、メディ倫系からソフ倫系へシフトし、minori、AUGUST、戯画に結びついた。ソフ倫の理事でもある戯画の表の顔は、TGLであることは誰でも知っているが、現在のTGLは、すっかりコンピュータシステム及びプログラムの企画、設計、開発、販売及び受託を基調としたSE系のIT企業。ゲーム部門は分社化したTGL企画・・・つまり、戯画に集約されている。そして、TGLは、ビジュアルアーツと並ぶエロゲーメーカーの育成、連携にも積極的で、これを「パートナーブランド」と呼ぶのは、周知の通り。そして、この中には、自社ブランドである戯画も、AUGUSTも含まれる。(また、インターチャンネルでコンシューマー化する、ねこねこソフトも含まれている。)戯画ブランドであるショコラ&バルドに、かつては自分の名義でゲームをリリースしていたTGLが、自社開発しないわけない(だから、ショコラにはコンシューマー開発元が明記されていない)し、美少女系コンシューマーゲーム開発に実績のあるヒューネックスは、AUGUST「Princess Holiday」「月は東に日は西に」、minori「BITTERSWEET FOOLS」「Wind -a breath of heart-」、ねこねこソフト「みずいろ」「ラムネ」・・・全部、この会社がコンシューマー移植を行っている。販売元が違うだけであり、その意味で言えば、ヒューネックスは、現在の代表作を販売しているインターチャネル・アルケミスト両企業にとって、大切な技術提携相手と言える。


 キャラクター供給元である、ソフ倫とメディ倫が対立するならば、その流通経路も二分するわけで、結果として、コンシューマー化の経路も二通りできると言うことだ。だが、皮肉なことに、その“開発元”は、PCゲームも、コンシューマーゲームも一つしかない。勿論、アルケミストが同人ソフトハウスとの提携を試みているように・・・インターチャネルがモバイルコンテンツとキャラクター商品に展開し始めているように・・・双方とも、次の顧客層掘り起こしに余念がないから、後は分からない。しかし、この両者が、エロゲー業界との強固な繋がりを持とうとしているのは、事実であり、そのバックには、大手企業の影があると言えるのは、以上がその理由になる。



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テイルズやナジャヴ等で愛すべきナムコさんとGジェネやらWSなどの愛すべきバンダイしゃんが合併するようでそれについて率直な感想でも行きます。
ナムコ×カプコンの後は、ナムコ×バンダイかよ!【CODY スピリッツ!】at May 03, 2005 12:45
・雨。大変だ。朝もバタバタ夜もバタバタ。あと、玉置成実が大変なことになっているみたいですね。また「BUBKA」かあ…。それと、人権擁護法案に反対する全国地方議員の会のメンバーの皆様頑張って下さい。私も頑張って人権擁護法案粉砕に尽力します!!・5月5日投...
萌え関連市場【炎のコマース】at May 08, 2005 10:32
太鼓の達人 太鼓の達人(たいこのたつじん)は1999年にナムコ(協力:ユーズBMBエンタテインメント)が発売した音楽ゲーム、およびそのシリーズである。演奏する楽器は専用の太鼓。プレイステーション2版も発売されている。情報元:Wikipedia...
太鼓の達人【【太鼓の達人】】at May 16, 2005 19:31
この記事へのコメント
 ハイエンドのエンターテイメント業界である美術の産業構造と同じようになってますね。具体的には、画家と画商の関係か。画商は、希少価値を生み出すために画家を囲い込みますが(一番有名な例はコッホ)、それと同じ事がエンターテイメント業界で起きているのでしょう。
Posted by うみゅ at January 16, 2006 09:13