July 14, 2005

“萌えバブル”はキタのか?

 アエラ(Asahi Shimbun Weekly AERA)の7月18日号で、「萌えバブル キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」と題して、この頃、流行りまくっているヲタの経済力を指摘した記事が出てきている。・・・一読後思ったが、死ぬほど客観的に書いているこのライター(3名の署名記事)自身、ゲームとかやらない人かな?・・・と。この手の記事特有の主観性を完全に省き、数字とインタビューのみの理由付けで書いたことが、逆に「ヲタを知らない人々」への説得力へ繋がる。ヲタという存在への精神論を書かずに、経済力と経済規模だけで彼らの存在を“ビジネスチャンス”と断言しきったのは、多分、良い見方だ。これは、ゲームに全く思い入れがないか、ゲームへの感情移入を切り捨てておかないとここまでは書けない。ヲタに対する偏見に満ちた意見は多いが、その手の感情論抜きでまとめたのは、新しい言論のタイプだと思う。・・・つまり、他人の趣味には口を出さないと言う意味において、趣味の傾向の一つとして普遍的に見ているライターも多くなってきたことを示している。

 みょんに話題になっている「第一回全国統一オタク検定試験」についても、少し触れている。企画した出版社であるビブロスが、ボーイズラブ系コミックでのし上がった会社であるのは、ちょっと笑った。一応、コミックアンソロジーや成年向けコミックスをリリースしているカラフルコミックスというブランドは持っているけど、ボーイズラブファン専門通販ショップをも持つ濃さには比べるべくもない。基本的に検定試験というのは、検定する側(採点する側)の権威に拠るから、いくら“OTAK”と威張ってみても、資格を発行する側が信用されないと意味を持たない。それは、今日の英検とTOEIC&TOFICとの企業における格差を考えれば分かるはずだ。・・・これで問題が腐女子向けに偏っていたら怒るぞ・・・男性ヲタの人々。

 実際、ここから論を展開させたせいか、ヲタを解説する記事にしては、女性(腐女子)向けの記事(記事は6ページ・実質A4/5ページの内、3ページを占有)が多く、どちらかと言うと、この記事の側面として、女性ヲタへの自己弁護を書いているような気もしないでもない。(それはそのハズ、この記事の署名3人のうち、女性が2人)。腐女子とヲタとの幸せな結婚例とか、“オヤジ萌え”を中核に声優インタビューは、男性声優のみだったり、「ボーイズラブには、少なく見積もって約120億円の市場が存在する」(---代々木アニメーション学院 ガールズコンテンツ・クリエイト科入学案内)ということを紹介していたりする。

 エロゲーを中核にした男性ヲタについての記事はあまり無いが、その視点が等身大タオルに向いているのは面白いところ。グッズ関係で主流になっているタオル・・・または抱きマクラだけど、あれはほんの十年前ぐらいには存在しなかった。AERAでも書いているが、本来、これらのグッズを生産できるようになったのは理由がある。市販のタオルを見てみれば良いが、タオルにイラストをプリントするということ自体は、そう難しいことではなかった。ただし、所謂キャラクター製品としては、ポスター並みの高画質が必要で、それは、当時の印刷技術では非常に高価、しかも、印刷側としては大量ロットで生産されなければとても元手を回収できないほど、印刷コストが高いものでもあった。このため、もしも作るとすると、現在のように2000〜3000円で販売できるような代物にならなかったのである。

 問題は、色の精細性とタオル特有の吸水性、使用時の耐水性をどう両立させるかであった。例えば、紙への印刷の場合、精細な印刷を行うためには、塗工量の大きい紙を必要とする。塗工というのは、紙の表面に白い水性ペイントような液を塗ることで、紙の生産時にこれを行うことで紙に平滑性と光沢を与える。印刷がインキで刷る製品である以上、インキが紙に吸収されたりしてしまうとクッキリとした線を出せない。そのため、インキは被印刷物に吸収されない方が良いし、通常、紙の印刷というのは、紙にインキが吸収されて色を出すのではなく、インキが紙の上に付着、積層することで色を出す。元来の紙は、表面上は凸凹しており、塗工液は、これを埋めて平滑に保つため、それを抑える塗工量の大きい紙は高価になり、その紙はピカピカと光るのである。ポスターとかに使われている紙は、この手の紙だ。

 印刷会社グラデスタオの場合、タオルはその性質上、吸水性を失わせることを出来ないことを前提に、マイクロファイバータオルと呼ばれる毛髪の約1/100という細さのタオルを作成することで、まず、被印刷物の平滑性をギリギリまで求め(密にした上で)、昇華転写インキと呼ばれる特殊なインキで、付着、積層するのでは無く、インキが熱で柔らかくなったポリエステル繊維に染み込むことで色を出している。ここからは予想だが、エロゲーメーカーから直で高画質の精画像を原稿として貰い、このデジタルデータのまま、シルクスクリーンで版を作って、印刷をしているのだろう。所謂、CTP。データ制作と製版工程を省き、さらに一定の色を出せるタオルを作り出したことによって、安定した色をタオルでも出せ、かつ、採算性の合う商品を作れるようになったと思う。従って、デジタルプリント技術の発達が、この会社を躍進させたと言っても過言ではない。

 この記事は、ヲタの概念を比較的メジャーな趣味である“鉄道ヲタ”から始めて、最終的に“エロゲー”まで紹介しきり、中高年層への解説文としては、オススメできる文章に仕上げている。ハッキリ言って、学生さんで親に隠れてエロゲーをやっている方には、親御さんへの紹介文として読んで貰っても良いかもしれない。ただ、エロゲー関係のインタビューの相手がちょっと不味かった気が。・・・なんで、Circusの人なんぞに・・・(汗。最近、コンシューマー進出が著しいけど、商法的には批判多いのに・・・(謎。・・・つーか、この人選から考えて、ライターさんは、ヲタ系の情報網に疎いことが丸わかりだったり。・・・どうせ、大手企業と絡んでいるメーカーを選ぶんだったら、minoriでも、Nitro+でも良かっただろうに・・・。・・・アエラは、ヲタ世代で買う人は少ないだろうとは思うが、私みたいな隠れヲタは、スーツでも読める雑誌を買うから目に止まるぞ・・・結構。因みになんて言ったかは、次の通り。

 「美少女ゲームはディズニーなどと並んでグッズ産業の筆頭格。ストラップ、ぬいぐるみ、テレホンカードなど、考えられる種類のグッズ作りましたね」ゲームに登場する仮想の土地や、家まで売りたいとも言う。(---松村和俊・サーカス会長,AERA Jul.18,2005)

 ・・・全然、買ったこともないメーカーなんだけど、何でこのメーカー嫌いな人は、徹底的に嫌っているか分かるような気がする。後半、殆ど詐欺な気が。・・・ついでに至極冷静なブロッコリーの人は、こんな事を言っている。

 「(自社制作の他、版権を取得し、その制作を手掛けることについて)キャラクターを作ったあとのアニメ化、漫画化やグッズ販売をどう展開するかが難しい」(---木谷高明・ブロッコリー会長,AERA Jul.18,2005)

 ・・・確かに。嫌われたら、元も子もない。

 萌えバブルは、横浜銀行傘下の浜銀総合研究所が、2003年度の“萌え市場”をゲーム、映像、書籍含めて、約888億円を試算してから始まったが、同研究所に拠れば、一都三県の未婚男女の単独世帯を87万世帯として、この層が趣味に使う金額を7400億円と試算し、それが“萌え市場”に流入することで、“萌えバブル”を生み出していると指摘している。

 ただ、私の意見を言わせて貰えば、“萌えバブル”というのは幻想に過ぎないと見ている。

 経済規模を数字で挙げて、萌え市場を取り上げているのは結構だが、この数字を見ていると、まるでヲタ文化が突如として、盛り上がったような印象を与える。だが、実際には、現在の萌え市場というのは、ヲタと呼ばれた文化層が、長い間かけて作り出した文化的集団でしかない。その総数は、徐々に増えてきただけのことであって、ブームのように急に生まれたものでもなければ、バブルのように弾けるものでもない。バブルのように思えるのは、この「“ヲタ層”や“萌え市場”が金になる」という簡単な図式・・・に、ヲタと貶めてきた社会が気付き、長引く不況下で、ヲタ層の依然劣らない購買意欲がクローズアップされただけだろう。ヲタにとって、バブルという現実感こそ、無関係な考え方でしかないのである。
 
 結局、バブルと騒いでいるのは、購買者ではなく、企業(≒一般人)だけである。非ヲタの“祭り”にあやかるほど、こちらはお目出度くないつもりだ。

 そうは言っても、社会的に、ゲームや漫画などの文化が公的存在になってきたことは良いことだし、その購買意欲に企業が注目してきたことは、前にminoriのバックに伊藤忠がいることデジターボとブロッコリー、インターチャネルのバックにインデックスとタカラがいることで書いてきた。おそらく、そのような企業、ゲームメーカーに企業が資本参加することは、これから多くなっていくかもしれない。だが、忘れて欲しくないのは、先に挙げたCircusが、かなり商法的にマイナスイメージを持たれてしまっているように、“趣味的嗜好”の購買層であるヲタ層は、“萌え市場”がどんな商品を出そうが、商品の良さでしか判断しないということだ。特に、エロゲー、ボーイズラブに、ブランドイメージは無いと考えて売り込むべきだろう。どんなに大手のメーカーであろうが、魅力的な商品を作れなければ逼塞せざるを得ない。それは、ELFの凋落が良く示す。大きいメーカーだから売れるわけでもなく、ヒットメーカーはいつ出るか分からない。その意味では寡占が難しい業界であり、寡占されれば魅力が無くなる業界であるとも言っても良い。だから、最後はAERAで一番良い言葉を言った・・・録画神の言葉で締めよう。彼は、見事にヲタ層の深層を言い当てている。

 「(HD&DVDレコーダー・RDシリーズ開発担当として)買うのは音楽とアニメファン。だから彼らの要求する水準に機能を付けようと考えた・・・(その機能が)地味だけど細かいこだわりが、ファンをつかむ」(---片岡秀夫・東芝デジタルAV事業部参事,AERA Jul.18,2005)


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