April 07, 2006

男性主導/女性主導、上。

 別にジェンダーの話をしたい訳ではないんですが。


 私は、物語に対して男性的、または女性的と区分することがあります。作品から受けるイメージのことなんですが、キチンとした意味で言えば、物語を男性が主導するか、女性が主導するかを指して使っています。ギャルゲー・エロゲーという区分からすると、(既に指摘している人もいるように)これらの作品群は女尊男卑が主流です。萌えゲーになんて特に……ですか。男性キャラは立ち絵無し、目無しは当たり前、物語的には添え物、よくて消耗品であることも珍しくない。さらには(主人公にすら)明確な人格は与えられていない作品もありますね。

 人間を描写する作品として考えれば、これは歪な構図です。主人公の周りに女性しかいないなんて考えられないし、主人公の描写よりもヒロインの描写の方が密なんてのもおかしい。ヒロイン側には問題山積みなのに、主人公はお気楽トンボだったり、意味不明に熱かったり醒めていたりする。物語全般にわたって活躍するのは女性ばかりだったり、男性がまともに関わってこない作品もある。

 ですから、そういった矛盾を考える際に、物語を主導し、魅力的に要所を締めるキャラクターは、男性なのか、女性なのか。物語は“どちらの性別に偏って構成されている”のか。それらをまとめて見ることで、物語を男性主導/女性主導で区分けして、そこからプレイヤーが好感を抱く物語とは何か?……を説明できると思ったわけです。

 それからしてみると、凌辱系作品群の多くは、(当然なのかもしれませんが)殆ど男性主導です。その類型については、bmp_69さんがまとめて(■ 参照:bmp_69雑記「凌辱エロゲーの諸類型」)いらっしゃいますのでそちらを参考にしてもらうとして、要するに、凌辱者は被害者に対して一方的な暴力を発揮しているから凌辱者なのであって、被害者が凌辱者をコントロールする……なんてことになったら、それは単なるイメージプレイであって凌辱が成立しない。現実でも、性的被害(強姦・猥褻等)の判定に、同意であったか云々の話が出ますが、それと同じことですね。

 もちろん何にしても例外はあるもので、今度、期待している第二作が七年ぶりに登場する「ツグナヒ(1999,ブルーゲイル)」は、主人公の復讐凌辱をメインにしながら、物語は、ヒロイン側の心情吐露と、凌辱に思い悩む主人公という構図を取ります。凌辱者になりきれない復讐者と、被害者になりきれないヒロイン。主人公主導と見せかけて、主人公自身は妹・奈々の幻影に惑わされ、その復讐心をいい様に操られて"本当の復讐対象"からゲームの対象にされていますし、被害者側のヒロインたちも、罪無き子羊と言うより、家族間、友人間と、色々と問題を抱えて罪の意識を持っている。つまり、この作品において、本質的に物語を主導しているのは、最初の凌辱被害者・奈々と、その凌辱者であったヒロインの父親たち。本編は、そこから始まった余韻に過ぎないとしている(このため、女性が物語を主導し、凌辱劇の実行犯が主人公であるという配置になる。)。だから(自己完結ではなく他者への)“償い”ってタイトルにもなっている訳ですが。

 また、徹底的な男性主導の凌辱劇の例として著名なのが、「悪夢(1996,Studio Mebius)」です。主人公一派が修学旅行中の女子学生をバス一台分拉致監禁して、とにかく犯るというこの作品。凌辱は凌辱ですが、性的嗜好から考えると意外とノーマルだったりします。SMプレイにはしるという訳でもなく、変態的な行為も無く、主人公たちは服剥いで犯るだけ。ただし、女性側の思惑は無視。感じるとか、快楽に堕とすとかはまったくもって無くて、主人公陣はひたすら女性キャラを(ひかりを除いて)一対一で犯していく。その後に刀でぶった切られたり、アジトに火付けられて焼け死んだりしますが、まぁ、至極当然の末路なんで問題は無く。

 逆に、凌辱系以外の作品は、男性主導/女性主導を区分していくと、主流は女性主導です。これは、比較的主人公が主導的な意味を持つ作品でも、物語のキーポイントとなるキャラクターを挙げると女性であることが多い。これは、萌えゲーのみならず、燃えゲーと呼ばれる作品ですらそうで、特に男性キャラの比重が強いType-MoonやNitro+でも変わりません。

 「月姫」「Fate」の奈須きのこ氏の場合は、双方ともメインヒロインと主人公の出会いを起点に、物語全体の説明役を同格のヒロインとして一人、特別に置いた状態でスタートします。キーは「月姫」がアルクとシエル、「Fate」がセイバーと凛。魅力的な男性キャラは多いですが、果たして物語の展開に必ず必要かと言えばそうじゃない。ぶっちゃければ、どのキャラクターも噛ませ犬扱いになっていて、事実、FateのHFルートでは、主要キャラの半分以上が喰われるか殺されるかして(メインヒロインの一人ですら)物語から退場させられてしまいます。

 燃えゲーの筆頭Nitro+の場合は、少なくとも虚淵玄氏と鋼屋ジン氏は、完全に女性主導型のシナリオ。虚淵氏の「Phantom」のアイン&ドライにしろ「鬼哭街」の端麗にしろ、彼女たちは主人公の半生に強く絡みついてしまった結果、主人公の戦う理由に位置づけられ、自分もしくは主人公が戦わざるを得ない状況を作り出されていく(もしくは自分から作り出していく)。鋼屋氏は、戦いに巻き込んだのがアル・アジフ(デモンベイン)であり、白の竜姫(竜†恋)だったら、その戦いに身を置いてしまった主人公を“ヒロインの方が自分の思うが侭に”ハッピーエンドに導いていってしまうのが特徴。双方とも、男性主人公・男性脇役を魅力的に描けるライターではありますが、本質的に女性主導な物語展開という点は変わりません。

 こう分けていくと、男女関係の拗れが描かれる「はるのあしおと」も、擬似家族間の問題解決に踏み込む「家族計画」、女性性愛の陰惨さと純粋さが描かれる「腐り姫」も、女性主導。姉萌えの物語である「姉、ちゃんとしようよっ!」と強気っ娘属性特化の「つよきす」は言うに及ばず。主人公・彼方が非人間的な大悟を見せていくため「こなたよりかなたまで」では心理的な弱さの面はヒロインの方が担当しますし、「ラムネ」を含めたねこねこソフト作品群は、女性心理描写に重きが置かれ、男性キャラはさほど重視されていません。


 では、男性主導の作品は無いのか?……と言えばそうでもないのが、エロゲーがエロゲーたる所以。このジャンルの面白いところでしょうか。

(続)


■ 参考:
はじめてのC お試し版「エロに非エロを足すのではなく」
0号線「陵辱の性表現」

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この記事へのコメント
ESではお世話になりました。
私個人としては、男性主導・女性主導は特に気にしたことはありませんが、age作品だとメインに一人ないし二人がいてそれ以外に行く時は「女性側が主体の略奪愛」になっているような感じを受けます。
Nitro+作品だと「アクが強い・クセのある女性」が話を作り出す作品が多いのかな?って思います。
あと、「腐り姫」ですが蔵女(または樹里)という「加速装置」によって女性陣が禁忌の愛につぱっしる作品に見えてしまうんです。(これは微妙かもしれません)
たまに来て変な事を口走るかもしれませんが、相手してくださいね。(笑)

Posted by hiromaru at April 08, 2006 07:50
書いてみたけど、あんまりにも纏まらないので、
どうしようか?と思っていたり。
メールも一通頂いたんですけど、
この質問に今までの論だと答えられないのですよね。

>たまに来て変な事を口走るかもしれませんが、相手してくださいね。

特にお気になさらずに。
極端なハナシ、エントリに関係ない質問でも構いません。
Posted by 9791 at April 08, 2006 21:48