人権侵害と事件

2014年10月10日、オーストリアウィーンで行われた、亡命クルド人によるイスラーム国を批判するデモ

2014年6月11日、イラクモースルにあったトルコ領事館にいたトルコの外交官や軍人、その子どもたち49人が、イスラーム国によって拉致された。のちにイラク人スタッフ3人は解放されたが、トルコ人たち46人は3ヶ月後の9月20日まで拘束されていた。解放後、トルコ人たちは無事に母国へと戻った。この拉致事件の解決には、詳細は不明であるが、トルコの情報機関と軍、警察当局が取り組んだとされる。身代金の支払いは無かったという[176]

2014年7月、イラクのモースルにあったイスラム教徒とキリスト教徒の双方が崇敬[177]する預言者ヨナの墓があるナビ・ユヌス (Nabi Yunus) 聖廟を爆破したほか、盗掘も行っており、これに関しユネスコイリナ・ボコヴァ事務局長が「カルチュラル・クレンジング(文化浄化)」であると批判した[178]

8月19日、拘束していた米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー斬首し、処刑動画が投稿された。ISは米軍による空爆への報復と主張している[179]8月20日ホワイトハウスはこの動画が本物であると発表した[180]。なお、フォーリー記者の処刑を担当した兵士は、動画の中で英語を話していたが、その発音イギリスの特徴のあることから、イギリス人の可能性が指摘されている。イギリスの警察などは、身元の調査を開始した[181]

2014年11月3日、オーストラリアシドニーで、シーア派の信者が銃で撃たれる事件が起こった。事件前、車に乗った男たちが「イスラーム国は永遠」「シーアの犬め」と叫ぶ姿が目撃されており、トニー・アボット首相は、イスラーム国支持者による犯行との見方を示した[182]

日本人の拘束と日本政府に対する2億ドルの身代金要求

2014年8月、「民間軍事会社CEO」を名乗る日本人男性がシリアで拘束され、流血している彼を尋問している様子を撮影した動画がYouTubeにアップロードされ、波紋を呼んだ。当初は日本政府などに対する身代金要求はなく[183]、シリア政府や武装組織「イスラム戦線」を通じて解放への交渉が行われている[184]と報道された。後にフリージャーナリストの男性も捕らえられ、2015年1月20日、72時間以内に身代金の支払いがないとこの二人の日本人人質を殺害するとイスラーム国メンバーが述べている動画が公開された[185]

脚注

  1. ^ 注 - 国際法の、国家の主権の規定について解説しておくと、「宣言的効果説」と「創設的効果説」があり、(第二次世界大戦前は「創設的効果説」が多数派であったが、第二次世界大戦後の国際社会では「宣言的効果説」のほうが多数派(=通説)になっている。つまり、近年の国際法の多数派的見解で言えば、実は、イスラーム国はすでに、国家主権を持つ主体として存在している。すでにイスラーム国は「国家の3要件」も満たし、なおかつ、国家樹立の宣言もしているので、国際法上、国家主権の主体として存在している、という扱いになっているのである。
    ただし、すでに国家として成立していて主権がある、ということと、他国がその国を「承認する」「承認しない」(=国家の成立を「確認」するか、それとも、感情的な事情や様々な事情で すでに国家であることを承認しないかということは、また違う次元(段階)の話で、各国の政府のそれぞれの判断である、というしくみになっている(一般人にも分かるように言えば、たとえある国家が国家としてしっかり存在していようが、他国の政府が意識的にその存在を認めて、外交という次元で「おつきあい」をするか それとも「しかと」するか、というようなことは、各国政府の判断だ、ということなのである。イスラーム国は、(多数派の見解として)国際法上はすでに国家としては存在しているが、他国の政府から(何らかの事情で)敬遠されていて「しかと」されていて、外交関係は持ってもらえない状態にある、ということなのである。
  2. ^ 宣言、というのは個人・団体・国家などが、自己の主張や考えを外部に表明することである。(出典:広辞苑第六版「宣言」)
  3. ^ 納税を済ませた商店などは、店のシャッターなどに、納税済みと判るしるし(マーク)をつけている。(NHK「ニュースウオッチ9」2014年10月22日放送分)
  4. ^ NHKの原稿書きスタッフの作り出した表現。実際には、国際社会の多数派の支持する学説「宣言的効果説」によって、国際法上は、(各国それぞれの、認証する/しない の判断にかかわらず)イスラーム国はすでに国家になってしまっており、主権もある。
  5. ^ ロンドンに本部を置くアラビア語日刊紙のアル・ハヤートと同名であるが、無関係である。
  6. ^ アルカーイダも以前インターネットを使って広報をしていたが、それは「手作り感」があるものだったという。だが、このイスラーム国の作っている広報動画などは、その品質がプロのレベルになっており、各国の人々(広告などの経験者、プロたち)が組織に協力していると考えられる、と言う。(NHK「クローズアップ現代」2014年10月24日)
  7. ^ 「シャーム」は ダマスカスの別名に由来する単語で、ダマスカスを指すほか、転じてシリア地方全体を指すのにも用いられる。

注釈

  1. ^ 報道されたラテン文字表記の地図には、アラビア語のラテン文字転写に様々な誤りがある、と指摘されている。地図にある Orobpa は Oroba ないし Ouroba、Qoozaz は Qoqaz、また Anathol は Anaṭol が正しいという[32]
  2. ^ この声明に対して、ヌスラ戦線のリーダーであるアブー・ムハンマド・アル=ジャウラニ (Abu Mohammad al-Jawlani) はイラク・イスラーム国との関係は認めたものの、合併については否定したうえアルカーイダのリーダー、アイマン・ザワーヒリーに対する忠誠を誓約した。しかしシリアで活動するヌスラ戦線のメンバーによると、多くのメンバーがISISに合流したという[57]

ISISイスラーム国 - W(保存)【前】 
ISISイスラーム国 - W(保存)【中】 


ISISイスラーム国 - W(保存)【出典Ⅱ】