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 「子ども学園独立国家」…超展開、設定的に不可能、なんてのが4話から吹き荒れてる拒否反応なんだけども、ヴァルヴレイヴの芝居のやりかたはいつも「まずはじめに事実だけを見せ」「真実はそのあとから明らかになる」。全編詰め込みに詰め込まれた「思い込みを誘発させるテクニック」に負けないように、「なるべく先入観を払って」「なるべく細かく」観直してみましょうー。

 エルエルフの扇動からはじまる「独立」劇の流れはこう。まずは不安に支配された群衆の前で、ショーコが唯一頼りになると信じられてるロボットに乗って彼らに呼びかける
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 ここでは「群衆の興味を惹く」ため、独立が成立可能なロジックを簡潔に手早く説明する。それは成功し勝利の「V」を掲げるんだけど、そこで画面は一旦学園の外…モジュール77を取り囲むドルシア軍視点に切り替わってしまう
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 彼らの前にやっとあらわれたヴァルヴレイヴ、内部に突入しようとしてたバッフェ隊を一掃すると踵を返し、ドルシア軍ガン無視で自分のモジュールの連絡路を切り離してまわる。奇行にしか見えない敵ロボットの振る舞いに、ドルシア軍=観客視点は「こいつ何考えてんだ」ってリアクションを吐き出すんだけど、一方モジュールの中ではショーコが檄をとばし決をとる。
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 新生ジオールの独立が「国民」の突き上げる拳によって見事承認され、それと同時に彼らの国・モジュール77は母なるダイソンスフィアから切り離され、彼らは新たな道を歩み始める…
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 …この流れ、じつは決定的におかしいんスよ。


 「議決がとられてない時点でヴァルヴレイヴがモジュール切り離し作業を始めてる」の。

 連絡路をすべて切り離したハルトはモジュール内での決議もまったく確認せず、ただちにそのままモジュールを移動させにかかる。カタルシスの同時進行だからこそ「騙されるのだけど、つまり大胆なモジュールの切り離しと移動は「咲森学園の独立とはまったく関係がない」。認識と視点のズレを利用した印象操作のトリック。
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 モジュール内の場面構成では「まず興味を惹くため」に提案した次のカットでもういきなり決をとってるのだけど、この独立の提案と議決は「見せたシーンだけの流れ」だけじゃないってこと。
 外部視点でアードライが王子などとからかわれてる間に、興味を惹かれた群衆に対して「決をとるべき"これからの計画"」が視聴者には内緒で説明されてるんだ。画面に映された「決」はあくまで「咲森学園の政治的独立」に対してのもので、「モジュール77の物理的独立」については、それより前にとっとと決定されてるってコトなのよ。
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 じゃあ即行でその場で承認された「モジュール77の物理的独立」とは何かというと、6話でモジュール77を去りゆくフィガロ上院議員が最後に残した「じゃ、月で」のひとことで示された、「モジュール77ごと月へ移動し始める」作戦。
 ドルシアに占拠されたダイソンスフィアを「一刻も早く」脱出し、アルスの領土に逃げ込むという案が国家独立の如何に関わらず、生徒とアルス軍の立場の差にも関わらず、唯一ベストの行動だと満場一致で即座に了承されたワケ。
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 「じゃ、で」

 「独立」とはの独立であってじゃない、という時点でいかにもヴァルヴレイヴらしい描写だと思うのだけども、「月に逃げ込む」がモジュール切り離しの唯一の理由、この時点で独立に関する「できっこない」が瓦解していく。咲森学園の人間は誰ひとり「恒久的にモジュール77を独立運用させる」なんて最初から考えちゃいないということだ。

 仮にモジュールが人工太陽からエネルギー供給を受けてはじめて成立する「系」だったとしても、モジュール内に蓄えられてる資材やエネルギーが「月までの航海」にじゅうぶん足りる量なら離脱したってぜんぜん構わない。モジュール一基が片道航海の使い捨て宇宙船として機能するなら、それだけで離脱を可能とする条件は満たすんだ。
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 「物理的に可能」そんなことは当然中の当然として、そんなビックリ仰天アイデアが承認されちゃうなんておかしい?…いやまったくおかしくない。そもそもそれまでの彼らは「何」をしようとしてたんだ?「アルスの軍艦でダイソンスフィアから逃げ出そう」だ。逃げる、それはいい。じゃあいったい「ドコへ逃げる」つもりだったんだ?

 その肝心の部分がそこまでの流れで巧妙にはぐらかされてるんだけど、フィガロ上院議員が連れてきたのは「アルスの周回軌道軍」。それが難民を引き取って脱出するんなら「逃げて帰ろう」としてたのは彼らのホームベース、「」でしょう。

 そもそもジオールのダイソンスフィアがドコにあるのかというと、6話ラストでダイソン球からモジュール77を"追いかけて"きてるドルシア軍が「L2方面に"撤退"」してるんで、地球-月系の平衡地点ラグランジュ2と思われます。しかもラグランジュ点・地球・月の関係のなかでも「月とL2間」はごく近く、わずか6万km強しか離れてない。L2だけが月軌道の外側で「L2からみればが唯一・最短の人間拠点だから目的地は」、たったそれだけでも解として成立します。何かにつけて周到なんですコレ。
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 しかし取り逃がしたドルシア少年兵エルエルフの計により、座礁した軍艦に港が塞がれてしまい、生徒もアルス軍もモジュール77閉じ込められた…。
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 だったら方策はひとつ。さしあたってモジュール77ごと」月に向かう作戦だ。多少無茶でも月まで保てば構わない。ドルシア軍の囲みを突破し、座礁したアルス艦を修復する時間が稼げさえすれば、そこからは「元々のプランどおり」にアルス艦に皆が乗って、モジュールを捨てて月に向かってもいい。実際、一週間以上経過したのちアルス艦はフィガロ上院議員も乗せて彼らだけでモジュール77から旅立っている。もちろん月に向かって。
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 モジュールごと脱出はアルス軍にとっても生徒達にとっても最良の策。「宇宙コロニーのいち区画が、自らを母体から切り離して脱出し、一目散に逃げる」というのは、破天荒にみえてじつはその逆、順当中の順当な流れ

 この作戦に乗れば少なくともアルス軍・生徒達が共に目論んで頓挫しかかってたプランどおりにはコトが運ぶんだから、切り離して移動させはじめるコトに反対する理由は何ひとつない。いま既に敵軍に包囲されて絶体絶命なだから、ダイソンスフィアに繋がったままでも移動しはじめてもリスクは何も変わらない。そりゃ即決。
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 今すぐやんなきゃならない
モジュール77の物理的独立」をハルトに任せヴァルヴレイヴを送り出す。皆はそれから「咲森学園の政治的独立」について演説を聞いて、そっちの方を決めればいい。
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 これは積み重ねた状況上「咲森学園の政治的独立」と「モジュール77の物理的独立」にまったく繋がりを必要としないからこそ成立するトリックで、ふたつがまるで同義のように欺き切った見事な芝居。ここまでじつにくだらねー設定的描写をチマチマ見せてソッチに意識を向かせるコトで、「決をとる前から決議に沿って行動してる」っていう、指摘されれば誰でもわかるのに、言われないとなかなか気付かない「大胆なウソ」をつくコトに成功してるんです。

 そしてこんだけのトリックの積み込みはいったい何のためか?というと、それが当初に立ち返る話。「ロボットアニメにふさわしい同時進行のカタルシス」を成立させるため。「ひとだけで成立してしまうドラマ=ショーコによる政治的独立」と「ヒトならざるロボットでないと成立しないドラマ=VVVによる物理的独立」を同時に行わせて両者一体とするため。

 こんな細かいことなんかどうでもいいのに、観客には意識させないレベル、かつ本編だけで成立が可能な必要最低限のディテール描写をさりげなくさりげなく各所に盛り込む。ヴァルヴレイヴって何でここまで作り込んでるの?
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 これは革命機ヴァルヴレイヴがまず何よりも「ロボットアニメ」であり、長尺で手に汗握るアクションすればそれでいい、ドラマの核にロボットが不在でもいっこうにかまわない的な精神性希薄な「・ロボットアニメには堕しないという気概ですね。