そろそろ冬クールアニメの総評を書くべき時期ですが、言いたいことはほぼ先日上げた感想記事で書いたので省略。
今回は前の記事で書かなかった、「SHIROBAKO」と「四月は君の嘘」の2作品について書こうと思います。
結論から言うと、両方とも秋~冬クールの中でツートップと言えるくらい心に残る作品でした。
ただこのふたつ、単純なクオリティ・面白さで言えばどちらも遜色なく素晴らしいのですが、作り方や僕自身の観方が割と対照的だったのがちょっと興味深かったので、今回はその辺りもちょっと触れてみます。
しかし、多分いつもの感想記事とはだいぶ違うというか、本当にただの感想文的な何かにしかならない予感が……
もはや何を付け加えても野暮にしかならないことは重々承知の上で駄文を重ねる次第です。
まずは「SHIROBAKO」から。
これは細かい理屈とか抜きに、とにかく「面白い」「よくできている」と感じた作品です。
僕はどちらかというと1話1話の完成度を重視する方で、全体的なストーリーの流れとかはあまり気にしない方なのですが、これは珍しく「毎週続きが気になって」見ていました。
普段は、毎週たくさんの本数のアニメを見ていることもあって、そこまで面白くない作品は1.5倍速で、面白い作品だけ通常速度で視聴しているのですが、この「SHIROBAKO」は「めちゃくちゃ面白いけど続きが早く見たいから1.5倍速で見る」という超例外的な作品でもありました。こんなの初めて。
話の展開が早く、そのぶん情報量も登場人物も多くなり、そのうえ倍速視聴となると、まともに話を追うことすらできないんじゃないかという気もするんですが、不思議なことにそういうストレスはまったく感じなかったですね。
ちょっとキャラクター数が多いアニメになると、名前どころかキャラの存在すらまともに覚えられない僕ですけど、この作品に関しては、名前もそこそこ記憶していますし、ヴィジュアルを見ればほぼ全員「ああ、あの人だ」と思い出せます。
それだけ、それぞれのキャラが立っていて、かつ各人物の見せ場の作り方も上手かったということなのでしょう(毎回名前のテロップが入るのも大きかったかと)。
しかもそれを複雑な群像劇の中でわかりやすく見せていくというスタッフの芸当は、本当に凄まじいものを感じます。
僕個人の視聴スタイルとしては、最終話までは基本、毎週最新話を1回見るだけだったのですが、最終話を見終わって、改めて過去の話数の録画をちょっと見返してみました。すると、またいろいろ新しい発見が。
特に1話目は驚きで、キャラクターの説明とかきちんとした紹介とかが全然ないんですね。
もう最初からキャラクター同士の関係(会社という組織)ができあがっていて、ストーリーも始まっていて、視聴者は言うなれば彼らの日常を途中から見始めたという形(そう、視聴者にはドラマティックに映るストーリーも、キャラにとっては日常でしかない!)。
何というか、1話目なのに、もう10話目くらいを見ている気分でした。最初に1話を見たときは全然感じなかったのに。今にして思うと多分、既にこの時点で「SHIROBAKO」という作品は、あるべき形で完成されていたのでしょう。
そして、キャラクターの説明もなければ、専門用語とかの説明もほとんどありません。
僕自身は、最初に見たときは、「まあこれくらい、アニメ雑誌とかスタッフインタヴューとか読んでいれば普通に出てくる用語だし、アニメオタクなら基礎知識だろう」と思っていたのですが、どうも周りの友人の反応とか聞いていると、案外そうでもないことが判明。
率直に言いますが、みんな僕が思っているほどアニメに詳しくないんですね(爆何
それこそ、「原画と動画の区別もつかない」「コンテって何?」という人も少なくないみたいで、アニオタとしては「嘘だろ!?」「じゃあこの話全然わかんないんじゃない?」とか言いたくなるんですけど、どうもわからないなりに作品そのものは楽しんでいる様子。
なんか、専門用語とかはわからないけど、仕事の現場の大変さみたいなものはだいたい似てるから、そこに共感して楽しめる、という感覚らしいです。これはなるほどなあ、と(もちろん人によって様々でしょうけど)。
制作スタッフもそういうところまで計算して作っていたんでしょうか。
ちなみにこの問題、2クール目に入ってからがこれまた面白いところで、2クール目が始まってすぐの3~4話(13~16話辺り)は割と専門用語の説明が多いんですよ。
これは主人公の宮森あおいが入社2年目になって後輩ができた、という物語面とのリンク性の上手さを感じます。
要するに、1クール目は宮森がまだ新人だったからわからないことだらけで、視聴者も同じく専門用語とか全然わからず、ただハチャメチャな現場を眺めているだけ。
そして2クール目で宮森に後輩ができて、業界のことも少しわかって、ちょっぴり余裕が出てくる。そのタイミングで視聴者にもある程度専門用語の説明をして、作品(のストーリー)への理解に余裕を持ってもらって、宮森と同じ目線に立ってもらう。……という構造。
こういうキャラの立場の変化に連動した感情移入のさせ方が滅茶苦茶上手いです、この作品。多分、僕が気付かないだけで、他にもこういう技巧が随所に散りばめられているんだろうなあ。
あとは、思いつくままに羅列しますが、例えば20話辺りの平岡と他スタッフの喧嘩のくだりは、実に横手さんっぽいなあ、とか思ったり。
横手美智子さんの脚本って、特撮の戦隊脚本でも味方同士の軋轢を描くことが多くて、しかも毎回結構気合い入れて描いてらっしゃるので、そういう展開を好まれる方という印象があります(「天装戦隊ゴセイジャー」の序盤なんかそんな話ばっかりだった記憶が……)。
ただ、戦隊でそういうことやると、敵を前にしての無意味な内輪もめという方向になりやすく、ちょっと評判悪いんですけど、こういう作品だとそれがプラスに作用したように感じます。
他には、19話のアンデスチャッキーのエンディング映像が凄かったですね。
12話の菅野が説明している通りの絵面になっていてびっくり。12話の時点では「これ映像にしなくていいからって滅茶苦茶なこと言わせてるだろ(笑)」と期待してなかったんですけど、まさか本当に映像にしてしまうとは。スタッフの本気を見ました。
12話のカリスマ・井上俊之さんの馬シーンもそうですけど、作中で散々ハードルを上げた説明をしておきながら、それをきちんと作画にしてみせるという誠実さみたいなものは本当に素晴らしいと思います(でも作画スタッフは大変だったろうなあ(笑)
そしてあとはまあ、ベタですけど、最終回1話前。ずかちゃん良かったね、と((
これはホントにリアルに画面を前にして「良かったね」と声に出してしまいました(何
あの「少しだけ夢に近づけました」の台詞のリンクはさすがにズルい。柄にもなくマジ泣きしそうになりましたが、代わりに宮森がボロボロ泣いてくれたので、何とか堪えられました(
で、最終回。結局5人が一緒にアニメを作るところまでは描かれませんでしたが、そういう、夢をきちんと叶えるところまでは描かないところがやはりPAワークス作品っぽいですね。
むしろ5人が同じアニメに関わるところまで行けたというのが予想外なくらいでした。
これはぜひ続編も見たいけど、多分これ以上は作品的に蛇足なんだろうなあ。
しかし最終回は見てもそんなに特に感じなかったんですけど、1~2日経ってから時間差で妙に悲しくなってきて、「ああ、もう終わっちゃったんだなあ」と珍しくセンチに浸ってました(((
アニメでこんなふうに感じるのはいつ以来やら……
そして最終回後も、未だふっきれずに過去の話数をちょっとずつ見返しているわけですが、僕はなぜか絵麻ちゃんと杉江さんの会話シーンを集中的に繰り返し見てしまいます(何
何ででしょう。なんかこのコンビが妙に好きなんです。
まあ元々私服+ネクタイの組み合わせフェチの僕としては(誰も聞いてない)、ヴィジュアル的に絵麻ちゃんが凄く好みというのもあるんですけど(誰も聞いてない)、おさげも可愛いし(誰もry)、それに加えて、精神的にも技術的にも未熟な絵麻ちゃんをヴェテランのお爺ちゃんが気にかけてくれる、という構図が凄くいい(前半のせいで台無し)。
だけど杉江さんも器用じゃないから、最初は言葉足らずの助言で絵麻ちゃんを逆に追い詰めてしまう(7~8話辺り)。でも12話の杉江さん活躍の辺りから徐々に打ち解けていって、最後は絵麻ちゃんが杉江さんに積極的に教えを乞うまでになっていく。
ふたりとも恋愛感情とかはないだろうし、仕事仲間というにもやや離れ過ぎている年齢差。師匠と弟子というほどでもない。祖父と孫でもない。こういう何とも形容しがたい微妙な関係性が、多分僕の好みなんだと思います。
最終回の、杉江さん、絵麻ちゃん、久乃木さん、りーちゃんたち4人の牧場の取材シーンなんかも良かったなあ。
正直あの取材旅行だけで1本OVA作ってほしいくらいかも。絶対見ますよ、僕(何
…………わーなんだこれ。僕はいったい何を書いているんだ(((
なんからしくない感想になってしまいましたが、まあそういうらしくない気分にさせてくれるほど特別なアニメだったということです。いやはや感無量。