幼いころのはっきりとした記憶はある早朝の出来事だ。まだ薄暗い小さな部屋で、父母とともに目が覚めた。家は高松の港の近くにあった。
「ボー、ボー」と汽笛が大きな唸り声を上げ続ける。いつまでもとまらない。「なにかあったんかな」。父母が不安そうにつぶやく。
外は深い霧に包まれていた。大人たちは港へ走った。やがて、ラジオがニュースを伝えた。
高松から岡山へ向かっていた連絡船「紫雲丸」が濃霧の中、大型貨車運航船と衝突し、修学旅行中の小学生ら168人が犠牲になったのだった。
僕の心に通奏低音のように流れる暗い響きは、このときの船の汽笛なのかもしれない。
「ボー、ボー」と汽笛が大きな唸り声を上げ続ける。いつまでもとまらない。「なにかあったんかな」。父母が不安そうにつぶやく。
外は深い霧に包まれていた。大人たちは港へ走った。やがて、ラジオがニュースを伝えた。
高松から岡山へ向かっていた連絡船「紫雲丸」が濃霧の中、大型貨車運航船と衝突し、修学旅行中の小学生ら168人が犠牲になったのだった。
僕の心に通奏低音のように流れる暗い響きは、このときの船の汽笛なのかもしれない。


