−その2−で、読点をうつときの基本原則として、書く人が1個の思考のかたまりを述べている場所ごとに読点で区切る、読む人に1つの場面を思いうかべてほしい場所ごとに読点で区切る、この2つを提案しました。
 
今日は実践編です。
 
原則をそのまま子どもたちに伝えても、具体的な指針にはなりません。
子どもたちが読点をうつべきかどうか迷ったときわかりやすく指導できるように、原則に則りながら実際の用法を検討してみましょう。
 
文部省の表記指針は、読点をうってもよい場所を羅列しています。その後、消してもよいとか、省略するとか書いてあるからわかりにくいのです。
子どもたちに教えるときは「絶対読点をうつべきである」場合を教えてあげないと、子どもたちの実用にはなりません。
 
読点をうつべき場合
 
例としてあげたものは、第3の規則の最初の例を除き文部省の表記基準に載せられているものです。
 
第1の規則 別々の文に分けようとしたら分けられるとき、読点をうつ。
私の原則に言う、「1個の思考のかたまり」、「1つの場面」がこれにあたります。
 
例:父も喜び、母も喜んだ。(「父も喜んだ。母も喜んだ。」と分けられる。)
例:おや、いらつしやい。(おや。いらっしゃい。)
例:はい、さうです。(はい。そうです。)
 
第2の規則 文頭の接続詞など、場面の転換を表す語の後に読点をうつ。
文頭に置いた「時を表す副詞句」もこのグループに準ずる。
 
例:しかし、私は〜
例:また、私は〜
例:ただし、例外として〜
例:昨夜、私は〜
 
第3の規則 読み間違えられるおそれがあるとき、読み間違えられないように読点をうつ。
 
例:ははははははえるといった(母は、歯は、はえるといった。)
例:「まつ、すぎ、ひのき、けやき」もここに含みます(「まつすぎひのきけやき」では何のことかわかりません)。
 
読み間違えのおそれのある特殊な例として、分配法則ab+ac=a(b+c)が成り立つ文章構造のとき、aの後に読点をうつ(そうしないとab+cと誤解されるおそれがある)があります。
「例:真っ黒な、カラスとトビが」。この場合、読点があると真っ黒なカラス+真っ黒なトビの意ですが、「真っ黒なカラスとトビが」と書いてしまうと、真っ黒なカラス+そうでないトビと誤解されるかもしれません。
 
以上、3つの規則を仮説として提示しておきます。
たいそうな批判をし、大上段にふりかぶったわりには尻切れトンボのような気もしますが、そこはご勘弁ください。
 
書く人の個性
 
私は読点をうち過ぎる傾向があります。私の提示した原則にそって見直すと不必要なテンをいくつも使っています。
 
例えば、以前書いた「よい作品の共通点は、子ども自身が、自分の言葉で、本当に深くまで考え抜いた結果を文章にしたものであるということです。」の文は、「よい作品の共通点は子ども自身が自分の言葉で本当に深くまで考え抜いた結果を文章にしたものであるということです。」としても、おかしいとまではいえません。「子ども自身が」、「自分の言葉で」をつい強調したくて読点をうったのでしょう。
 
また、文章にはリズム感も大事です。文をタッ、タッと刻んで読んでほしいときに読点を活用することもあります。
 
読点のうちかたもまた一つの文体、その人の個性だと言えるかも知れません。