(予備知識として「馬鹿が正義である時代」を読んでいただけると助かります。)

『百マス計算でバカになる(常識のウソを見抜く12講座)』(著者:寺脇研)なる本があるらしい。
出版社の紹介文によると、
「これから「ウソと非常識」についての授業を始めよう。この授業の目的は、思考停止状態になりそうな脳に刺激を与えることだ。いまの日本にはウソや非常識が大手をふって歩いている。(中略)たとえば、あなたは「百マス計算をやれば頭がよくなる」と思っていないか?そう信じて一生懸命子どもにやらせているあなたは、もう立派な思考停止状態だ。百マス計算が頭をよくするなんて、実は誰も言っていないし、そもそもあんな作業で頭がよくなるわけがない。実際私は、百マス計算で算数が嫌いになり、それがきっかけで不登校になった子どもを知っている。(中略)本書を読んで、ぜひともフリーズした脳を再起動してほしい。」

本を売らんがための出版社のアピール文でありながら、これほど胡散臭い宣伝文も珍しい。

まず、書名。
ブームを起こした「百マス計算」を取り上げたら売れるだろうという商売っ気が鼻につく。「バカになる」も、語彙の貧困さに眩暈がする。まさに羊頭狗肉、人がとびつくような書名をでっち上げただけで、多分、百マス計算についてはほとんど調べていないだろう、書かれてないだろうと予想できます。

もう一つ、嘘つきがよく使う詭弁が使われている。
詭弁を弄する人は、自分の身近の極端な例を根拠に、それをあたかも疑いのない真理のように広げて見せることで人を騙します。
「実際私は、百マス計算で算数が嫌いになり、それがきっかけで不登校になった子どもを知っている。」がそれです。
「私は給食のにんじんがいやで不登校になった子どもを知っている、だから給食にはにんじんを使わないようにしよう。」などと言ったら、アホかと言われるだけでしょう。それと同じことを得々と語っているわけです。


案の定、アマゾンのブックレビューを見ると、「最も参考になったカスタマーレビュー」が、「予想はしていたが読まなければよかった。」「よく平気で見え透いたことを、恥も感じることなく語れるものだと呆れるしかない。」です。

次の人のレビューが、「衝撃的なタイトルに惹かれて買ってみたのですが、タイトルの「百マス」に関係する話は20ページぐらいで終わってしまい、全体の10分の1もありません。おまけに、百マスでバカになったというデータは示されておらず、「百マス計算で算数が嫌いになり、それがきっかけで不登校になった子どもを知っている」と書いているのみ。」「このような人を馬鹿にした人物が文科省の重要ポストに就いていたということに憤りを感じる。 」

世間の「常識」の健全なことに、ほっとします。



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